個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
いつもより少し長いかもです。


No.12

「……安心してください、先生。……あんな鈍足じゃ、私の『背中』も見えませんよ」

 

 私は相澤先生を抱えたまま、敵との距離を取るためにバックステップを踏んだ。

 緑と白の勝負服が風に舞う。

 呼吸が荒い。心臓が早鐘を打っている。

 『コンセントレーション』と『先頭の景色は譲らない…!』の同時発動。今の私が出せる最高速度(トップスピード)を一瞬で叩き出した反動だ。スタミナの消費が激しい。

 

「……チッ。速いな、バグかよ」

 

 死柄木が苛立ちを隠そうともせずに私を睨む。

 脳無がゆらりと振り返った。その虚ろな目が、再び私と瀕死の先生をロックオンする。

 

「脳無、あいつを殺せ。……速いだけで攻撃力がねェなら、捕まえれば終わりだ」

 

(……マズいな)

 

 私は冷や汗を流す。

 一撃離脱なら私の勝ちだ。でも、ここから先生を守りながら、あの化け物(脳無)と黒霧のワープ、そして死柄木の崩壊を同時に相手にするのは、今の私のレベルじゃ荷が重すぎる。  爆豪くんたちが来るまで数秒。その数秒が、永遠に感じる。

 

「……脳無、やれ」

 

 死柄木が指を振る。

 脳無が地面を蹴り砕き、再び砲弾のように迫る。

 速い。さっきより加速している!?

 

(迎撃……いや、回避……ッ!)

 

【レアスキル発動:『コンセントレーション』】

【効果:スタートが得意になり出遅れる時間が少なくなる】

 

 慌てて『コンセントレーション』を発動する。今の私の時間感覚において、その動きは止まってはいないものの、十分に「視える」。

 私は半歩、左に軸をずらす。

 風圧が髪を撫でる。脳無の拳が、私の残像を空しく殴り抜けた。

 

「グオオオオオ……」

 

 脳無が驚いたように振り返る。

 だが、その視線の先に私はもういない。

 

「鬼ごっこは得意なの。……捕まえられるものなら、捕まえてみなさいよ!」

 

 まぁ強がりなんだけど。

 パワーでは勝てない。『ショック吸収』がある限り、私の蹴りも決定打にはならない。先生を抱えた状態で逃げ続けなければならない。

 けれど、今の私には『サイレンススズカ』の脚がある。

 

 しかし、余裕をこいてばかりもいられない。

 視界の端にあるUIが、警告色に点滅し始めていた。

 

【体力:■■■□□□□□】

 

(……燃費が悪いなッ!)

 

 サイレンススズカの爆発的なスピード。

 それは、私の肉体にあるエネルギーを薪にして燃やす。

 特にこのモードは、常時限界を超えて全力疾走をしているようなもの。

 長くは持たない。

 

 だけど…

 

「ハハッ! ……ヤバイ気持ちいい!」

 

 体力が二割を切ったあたりから楽しくてしょうがなくなってくる。

 走っているという実感、誰よりも速いという実感が、脳内物質がドバドバ出しているのがわかる。

 死と隣り合わせのレース。

 心臓が早鐘を打ち、肺が熱い。

 でも、足は止まらない。もっと速く、もっと前へ。

 この「先頭の景色」は、誰にも譲りたくない。

 

 だが、限界は唐突に訪れる。

 

【体力:■□□□□□□□】

 

(ア、レ…?)

 

 ガクン、と膝に力が入らなくなった。

 足が重い。息が上がって、酸素が足りない。気持ち悪い。

 視界が明滅し、スローモーションだった世界が、通常の速度に戻り始める。

 勝負服も光の粒子になり元の戦闘服(コスチューム)に戻り、スピードが落ちる。

 その一瞬の隙を、怪物は見逃さなかった。

 

「グアァァァッ!!」

 

 この怪物にストレスが在るのか分からない。でも散々こいつの前をちょこまかと逃げ回ったのだ。脳無が大きく振りかぶった拳が私を殺さんとしていることがわかる。

 

 死。

 

 死への恐怖が全身を駆け回った瞬間。

 しかしこの恐怖はすぐに霧散することになる。

 

 ドォンッ!!!!!

 

 入口の扉が、凄まじい爆音と共に破壊された。

 舞い上がる粉塵。空間が一瞬で静まり返る。

 脳無ですら、その威圧感に足を止めた。

 

 そこに立っていたのは、ネクタイを引きちぎり、怒りに顔を歪めた大男。

 いつもの笑顔はない。

 ただ、圧倒的な「怒り」だけを纏って、彼はそこにいた。

 

「もう大丈夫……!」

 

 その声は、低く、地響きのように腹に響いた。

 

「私が、来た!!」

 

 No.1ヒーロー、オールマイト。

 

     *

 

 そこからは、瞬きすら許されない時間だった。

 オールマイトが消えたかと思うと、次の瞬間には広場のヴィランたちが吹き飛び、私と相澤先生、緑谷くんたちが安全圏へと移動させられていた。

 

「相澤くん……すまない」

 

 オールマイトが、私の横で言う。

 あまりの速さに、私の目では捉えきれなかった。

 これが、No.1……!

 

「駿河少女、君もよくやった。相澤先生を守ってくれてありがとう。さあ、相澤先生をより安全な場所へ運んであげなさい」

「……わかりました。でも、オールマイト気をつけて。あの黒いヤツ、打撃が通じません」

 

 私が警告すると、オールマイトは力強く頷き、脳無へと向き直った。

 

 ドゴォォォォォン!!

 

 腕をクロスして放たれた、オールマイトの『CAROLINA SMASH(カロライナ スマッシュ)』が脳無に突き刺さる。

 衝撃波だけで水難ゾーンの水が巻き上げられ、暴風が吹き荒れる。続けて脳無の攻撃を躱したと同時に空いた鳩尾に強烈なパンチをお見舞いする。

 私は顔を覆いながら、その光景に釘付けになった。

 

「マジで全っ然、効いてないな!!!」

「効かないのは『ショック吸収』だからだ」

 

 死柄木は脳無の個性と弱点を喋る。自分のおもちゃがオールマイトに通用したのがよほどうれしいようだ。

 

「知ってるよ! 命を賭して私の後輩を守り抜いた未来のヒーローから聞いたからね! でもそういうことなら…やりやすい!」

 

 オールマイトは脳無の脇腹に腕を回し…

 

 ズドォォオン!!!

 

 そのまま砲弾が着弾したかのような爆発を起こしながらバックドロップを決めた。

 

(え、噓でしょ!? あの脳無をバックドロップ!? 規格外でしょ!?)

 

 しかし砂埃が晴れて現れたのは、脇腹から血を流すオールマイトだった。

 

「っ~!! そういう感じか…!!!」

「コンクリに突き立てて動きを封じるつもりだったか? それじゃ脳無は封じれないぜ? いいね黒霧、期せずしてチャンス到来だ」

「あイタ!」

 

 脳無がオールマイトを捕まえて、黒霧がワープゲートを使いオールマイトを引きちぎる作戦であったと黒霧は語る。初めて見るNo.1のピンチ。

 

「蛙ス…っ…ユちゃん、相澤先生担ぐの代わって…!!」

「ええ、でもなん…え?」

 

 梅雨ちゃんに相澤先生を任せると、理由を聞く梅雨ちゃんを無視して緑谷くんはオールマイトへ駆け寄る。

 

「オールマイトォ!!!!」

「浅はか」

 

 そう言って黒霧はワープゲートを広げ、緑谷くんを飲み込もうとする。

 

「どっ!! け邪魔だ!!! デク!!」

 

 爆音が響いた。

 爆豪くんが黒霧のワープの発生源である実体部分を見抜き、爆破と共に押さえ込んだ。

 

「っと動くな!『怪しい動きをした』と俺が判断したらすぐ爆破する!!」

 

 ――パキ、パキ。

 

 唐突に脳無の半身が一瞬で氷漬けになる。

 轟くんが駆けつけ、切島くんも敵の退路を塞ぐように飛び込んできた。轟くんの氷結によって脳無の手は緩み、オールマイトは脱出に成功する。

 

「平和の象徴は、てめェらごときに殺れねえよ」

 

 戦況が一気にひっくり返る。

 が、死柄木の態度は依然変わらない。

 

「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入り口の奪還だ」

 

 死柄木がそういうと半身を凍らされていた脳無は、体が割れ崩れているというのに起き上がり、崩れた体から筋肉の筋を凄まじい速度で再生させ元の体を作り上げる。

 

「嘘、再生した!? 『ショック吸収』の個性じゃないの!!」

 

 私が驚愕すると、死柄木はまたおもちゃを自慢する子供のように能力を開示する。

 

「別にそれだけとは言っていないだろう。これは『超再生』だな」

 

 死柄木が言うには、脳無はオールマイトの攻撃に耐えるために改造された人造人間だという。  体の再生を終わらせた脳無は、死柄木の指示を全うすべく黒霧に馬乗りになっている爆豪くんに恐ろしい速度で突進する。

 

「かっちゃん!」

 

 緑谷くんが叫ぶ。

 

 しかしこれを受けたのはオールマイトだった。脳無の猛スピードに対応できなかった爆豪くんを助け、突進を腕をクロスに組みガードすることで受け止めた。

 

「…加減を知らんのか」

「仲間を助けるためさ仕方ないだろ? 他が為に振るう暴力は美談になるんだ、そうだろう? ヒーロー?」

 

 死柄木は続ける。同じ暴力でもヒーローか敵かで善悪が変わる。所詮お前は抑圧のための暴力装置だと、(ヴィラン)お前(ヒーロー)は何が違うのかと、お前を殺すことでそれを世に知らしめてやるのだと。

 

「そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ嘘吐きめ」

「ハハ、バレるの早ッ…」

 

 死柄木はいたずらがバレた子供のように不気味に笑う。

 

 数的優位にあると判断した切島くんたちがオールマイトに共闘を提案する。

 

「とんでもねぇ奴らだが俺らでオールマイトのサポートをすれば…撃退できる」

「切島くん! だめ! 私たちじゃただの足手まといになる。あの三人の敵は別格で、私たちはまだ高校生にヒーローの毛が一本生えてきたような素人なんだよ。オールマイトはその三人から私たちを守りながら戦うことになる。ここは逃げるべきだよ」

「でもここで逃げたら漢じゃねぇって!」

「駿河少女の言う通りだ! 逃げなさい。大丈夫、プロの本気を見ていなさい!!」

 

 オールマイトは何かを覚悟したような顔をする。

 

「何故なら私は…平和の象徴なのだから!!」

 

 そしてオールマイトと脳無のラッシュ対決が始まった。

 一発一発が私たちにとって必殺の威力。それを、秒間何発もの速度で叩き込む。

 

「真正面から殴り合い!?」

 

 すごい。

 ただ純粋なパワーとスピードで、相手の特性ごとねじ伏せようとしている。

 

()()ではなく()()ならば、限度があるんじゃないか!?」

 

 オールマイトの拳が光る。

 

「私の100%を耐えるなら! さらに上から!! ねじ伏せよう!!!」

 

 視認できないほどのラッシュ。

 脳無が空中に浮いたまま、殴られ続けている。

 熱い。空気が摩擦で燃えているみたいだ。

 私は思わず後退った。これが、トップヒーローの世界。

 

「ヒーローとは! 常にピンチをぶち壊していくもの!!」

(ヴィラン)よ、こんな言葉を知っているか!?」

 

 オールマイトが拳を振りかぶる。

 その背中に、私はとてつもない大きさの「何か」を見た気がした。

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!!!」

 

 ドッゴオオオオオオオオオオオオォォォォン!!!!!

 

 最後の一撃。

 その一撃で、脳無はUSJのドーム天井を突き破り、空の彼方へと消し飛んだ。

 雲が割れ、光が差し込む。

 

「…………は?」

「漫画かよ……」

 

 私と切島くんは、同時に呟いた。

 ショック吸収を無効化するほどの馬鹿力。

 これが、平和の象徴。

 

     *

 

「チートが……」

 

 死柄木が震えている。

 怒りを露にして憎悪の目をオールマイトに向ける。

 

「全ッ然弱ってないじゃないか!! あいつ俺に嘘教えたのか?」

「どうした? 来ないのかな!? クリアするとかなんとか言っていたが…出来るものならしてみろよ!」

 

 憎悪を向けてきたと思ったら突如、不安定に喚き始めた死柄木。

 死柄木を追い詰めたと確信した轟君たちはその場を後にしようとする。

 しかし私と緑谷君はその場を動けなかった。

 

【オールマイト】

【体力:■□□□□□□□】

 

(体力もうないじゃない!? No.1をここまで追い詰めるなんて…)

 

 ステータスUIが示すのは絶対的な事実。オールマイトは「さぁどうした!?」と叫び注意を引いているが、もしこのまま本当にほとんど無傷の死柄木と黒霧が向かっていけば手負いのオールマイトはなすすべなく殺されてしまう。

 現に黒霧によって落ち着きを取り戻した死柄木は、黒霧と共にオールマイトへ攻撃を仕掛けようと動いているがオールマイトは仁王立ちのままだ。本当に限界なのだろう。

 

 No.1のピンチに彼の大ファンである緑谷くんが飛び出していく姿が強烈に私の視界に映った。  オールマイトを庇うように飛び出した緑谷くんは黒霧へ攻撃を仕掛ける。

 

 しかし黒霧と死柄木は反応していた。

 黒霧を通し手先だけをワープさせ緑谷を攻撃しようとする死柄木。

 

(まずいまずいまずいまずい!!)

 

 咄嗟だった。力も入らない足を必死に動かして、何ができるわけでもないのに飛び出した。

 

「駿河ッ!!!」

 

(誰が私を呼んだかもわからない。でも助けなきゃ! あと十歩踏み出せばいいだけなのに! 間に合わないッ!)

 

 悔しさに顔をゆがめながら私の知るウマ娘とは到底思えないスピードでただまっすぐ走る。  もうだめかと思ったその時だった。

 

 パアァァン!!

 

 入口から銃声が響いた。

 スナイプ先生をはじめとした、雄英の教師陣――プロヒーローたちが到着したのだ。

 

「ごめんよみんな、遅くなったね」

「飯田くん…!」

「すぐ動けるものをかき集めてきた」

「1-Aクラス委員長飯田天哉!! ただいま戻りました!!」

 

 形勢逆転。

 黒霧が死柄木を包み込む。

 

「死柄木弔…ここは退きましょう。もはや勝機はありません」

「ゲームオーバーか……覚えてろよ、平和の象徴……!そして、そこのバグり馬女もな……!!」

 

 死柄木が最後に私を睨みつけ、霧の中へと消えていった。

 

「……バグり馬女ってなによ」

 

 助かった安心感からか途端に、鉛のような疲労感が全身を襲う。

 膝が笑う。二度の変身とスキル連発。完全にガス欠だ。

 

 へたり込む私を、切島くんが慌てて支えてくれる。

 

「おい大丈夫か駿河!?」

「んーん、平気……お腹空いただけ」

「この状況で腹減るのかよ! やっぱお前肝座ってるよ!」

 

 呆れる切島くんの肩を借りて、私は立ち上がった。

 視線の先では、オールマイトが蒸気を上げながら立っていたが、すぐにセメントス先生が壁を作って彼を隠した。

 

     *

 

 USJの外には、パトカーと救急車のランプが赤々と回っていた。

 私たちは警察の指示に従い、怪我の有無を確認されていた。

 

「19、20、21……よし、両足重症の彼を除いてほぼ全員無事か」

 

 トレンチコートを着た刑事さんが、安堵したように息を吐く。

 緑谷くんは両足を骨折して医務室へ。

 そして、担架に乗せられて運ばれていく相澤先生の姿が見えた。

 全身包帯まみれ。両腕は複雑骨折。顔面も酷い状態だ。

 

(……ごめんなさい、先生)

 

 私がもっと早く、もっと上手く立ち回れていれば。

 悔しさが胸を刺す。

 でも、通り過ぎる担架の上で、先生の指がわずかに動いた気がした。

 ――生きている。

 最悪の結末だけは、回避できたんだ。

 

 プロヒーローの世界。

 悪意の塊のような(ヴィラン)たち。

 そして、それらをすべてねじ伏せるNo.1の背中。

 

 私たちは今日、ただの「生徒」から、本当の意味での「ヒーロー志望」になったのかもしれない。

 

「……帰ったら、ご飯山盛り食べよ」

 

 私の呟きは、サイレンの音にかき消された。

 こうして、長い長いUSJ襲撃事件は幕を閉じた。

 しかし、これはまだ始まりに過ぎない。

 この先に待つ激動の日々を、私たちはまだ知らない。




HWS「『チートさせてくれ』…って叫べよ…おまえの『活躍』は今…ほんの少しだけ残しといてやっている…作者に向かって『チートさせてくれ』と叫べば活躍だけはとらないでやろう」
天馬「あ…あいつに言えば…あいつに『チートさせてくれ』と叫べば…ほ…ほんとに…私を活躍させてくれるのか?」
HWS「ああ~、約束するよ~~~~~~~~~っ。やつの『メンタル』と引き換えのギブアンドテイクだ叫べよ…早く叫べ!」
天馬「だが断る」
HWS「ナニッ!!」
天馬「この駿河天馬が最も好きな事のひとつは自分で自分のことを強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ」

天馬になかなかチートさせてあげれていないなと思う今日この頃です。
続く?
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