個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜 作:雪乃 宿海
昨日ありがたいことに7万UAを突破しました。
まさかこんなにも多くの方に読んでもらえるとは書き始めの頃は思ってもいませんでした。
引き続き天馬の活躍をお楽しみください。
USJ襲撃事件から翌々日。
学校は臨時休校を経て、今日から再開された。
「皆!!朝のHRが始まる席につけ!!」
「ついてるよついてねーのおめーだけだ」
今日は委員長も元気だ。
朝のホームルーム。
教室のドアがガラリと開き、包帯でグルグル巻きのミイラ男が入ってきた。
「お早う」
ミイラ男の口から発せられる声は相澤先生のものだった。
「相澤先生!?」
「相澤先生復帰早えええ!!!!」
「プロすぎる」
「先生、無事だったのですね!」
「無事言うんかなぁ、アレ…」
クラス中が驚きの声を上げる。
相澤先生は両腕を吊り、顔面も包帯で覆われた痛々しい姿だったが、その眼光だけは死んでいなかった。
「俺の安否はどうでもいい。何より戦いはまだ終わっていない」
教室に緊張が走る。
まだヴィランが?
「体育祭だ」
「「「クソ学校っぽいの来たあああああ!!」」」
みんながズッコケる中、私は思わずニヤリと笑ってしまった。
体育祭。
それはつまり、全校生徒が見守る中で行われる、雄英最大の「レース」だ。
「敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?」
「逆に開催することで、危機管理体制の盤石さを示すって…考えらしい。警備は例年の五倍に強化するそうだ。何より雄英の体育祭は、
かつてあったというオリンピックに代わる日本の一大イベント。日本中の注目が雄英に集まるという。
先生の説明に、教室の熱気が高まっていく。
「当然、全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」
そう八百万さんのいう通りヒーロー科にとって、体育祭はただの行事じゃない。プロヒーローへの就職活動、のファーストインプレッションを決めるための最大のショーケースなのだ。
「時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ」
「燃えてきた……!」
「やってやるぜ!」
私も拳を握りしめる。
USJでは醜態を晒した。
今度は違う。私の「走り」を、日本中に見せつけてやる。
*
昼休み。
予鈴が鳴ると同時に、私の席に女子たちが集まってきた。
「ねえねえ天馬ちゃん! ちょっと聞きたかったんだけど!」
芦戸さんが身を乗り出してくる。
後ろには葉隠さんや耳郎さんもいる。
その目はキラキラした尊敬の眼差し……というよりは、未確認生物を見るような好奇心に満ちていた。
「USJの時のアレ! いきなり服変わったじゃん!? なにあれ魔法少女!?」 「すっごいフリフリで可愛かったけど……あれどういうこと?」
耳郎さんが不思議そうに首を傾げる。
「駿河さんの個性って『馬』だよね? 異形型だと思ってたんだけど……なんで服が変わるの?」
「そうそう! 物質生成? それとも変身?」
私は苦笑いする。やっぱりそこ、突っ込まれるか。
私の勝負服(特にスペちゃんの)は、この世界基準で見てもかなり「アイドル寄り」のデザインだ。しかも個性登録の内容と矛盾している。というかまともに説明したら「ウマ娘システム」の話になってしまう。
私は落ち着いて、何食わぬ顔で、もっともらしい顔で、まじめな面持ちで、大嘘をつくことにした。
「あれね。……みんな、馬の『葦毛』って知ってる?」
「あしげ?」
「そう。生まれた時は黒っぽいのに、大人になると真っ白になる馬がいるの」
私は自分の胸を張って言い切った。
「あれは、たぶん葦毛の馬が白くなるのの、すごい版」
「「「……はあ?」」」
女子全員の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「いやいや、まだ色が変わるのは分かるけど、フリルとかリボンは生えてこないでしょ!?」
「そこはほら、個性の神秘? 私の気合が毛並みに反映されて、結果的に服っぽく見える的な。私もよくわかってないんだよね~」
「無理があるよ!!」
総ツッコミを受ける横で、緑谷くんがブツブツと呟きながら入ってきた。
「なるほど……生物学的な擬態の一種になるのか……?ブツ いやでも…馬に擬態するなんて言う話は聞いたことが…。ブツブツ 一体どういう原理なんだ?ブツブツブツ…」
「緑谷くん、戻ってきて~」
私がツッコミを入れると、緑谷くんはハッとしてノートを開いた。
「あ、ごめん! でも凄かったよ駿河さん。あの時の、空気を切り裂くような加速……! 一瞬、オールマイトかと思うくらいの迫力だった!」
「ありがと。……でも、燃費が悪くてね。すぐガス欠になっちゃうのが課題かな」
そこまで言って、私はこれ以上突っ込まれる前に会話を打ち切ることにした。
緑谷くんの分析スイッチが入ると、本当に正解にたどり着きそうで怖いのだ。
「……あー、ハイハイこの話は終わり!」
私はパンと手を叩き、強引に立ち上がった。
「そんなことよりお腹空いた! ご飯ですよ。ご飯! 今日の日替わり何かなー! さあ行こう!」 「えっ、ちょっ、天馬ちゃん!?」
「あ、逃げた……」
呆気にとられる女子たちと、苦笑いする緑谷くんを置いて、私は早足で教室を出た。
これ以上聞かれたらボロが出る。逃げるが勝ちだ。
*
食堂へ向かう道中、合流した飯田くんと麗日さんと食堂が混むからと私を追ってきた緑谷くんと一緒に、私たちは再び体育祭の話で盛り上がった。
「みんな、気合い入ってるねぇ」
「そりゃそうさ! 僕たちはプロを目指してここに入ったんだからね!」
飯田くんが鼻息荒く語る。
その横で全く顔がうららかではない麗日さんが、ものすごい形相でこちらを睨む。
「デクくん、飯田くん、天馬ちゃん、頑張ろうね体育祭」
「顔がアレだようららかさん!!?」
「麗日くん!どうした!キャラがふわふわしているぞ!」
あんな顔されたから一瞬身構えたが彼女はただただ気合が乗っているだけのようだ。
「麗日さんはさ、なんでヒーロー目指したの?」
「えっ!? 私!?」
緑谷くんの質問に、麗日さんが少し言い淀む。
そして、照れくさそうに頭をかいた。
「……お金、稼ぎたくて」
「「お金!?」」
緑谷くんと飯田くんが驚く。
麗日さんは慌てて「いや不純だよね!」と弁解しようとするが、私は首を横に振った。
「なんで? 立派な理由じゃん」
「えっ、そうかな? 天馬ちゃん……」
「プロなんだから稼いでなんぼでしょ。それに、使い道があるんでしょ?」
私が聞くと、麗日さんは実家が建設会社で貧乏なこと、両親を助けたいことを話してくれた。 なんて健気な子なんだ。目頭が熱くなる。
「だから私はヒーローになってお金稼いで、父ちゃんと母ちゃんに楽させてあげるんだ」
「ううっ……麗日くん! 君はなんて素晴らしい志なんだ!!ブラボー!!」
飯田くんが拍手喝采し、緑谷くんも感動していると曲がり角から笑いながらオールマイトが現れた。
「おお!!緑谷少年がいた!!ごはん…一緒に食べよ?」
「乙女や!!!」
「ぜひ…」
そんな一幕があり緑谷くんはオールマイトに連行された。
そして話題の矛先は自然と私に向く。
「天馬ちゃんは? 天馬ちゃんは何のためにヒーローに?」
「私?」
私は少し考える。
お金のため? 名声のため?
……いや、もっとシンプルで、切実なものだ。
「……『憧れ』かな」
「憧れ?」
「うん。昔ね、すごく好きな女性ヒーローがいたの。強くて、美しくて……誰よりもカッコよかった」
私は記憶の中にある、紫色の髪をしたスナイパーの姿を思い浮かべる。
遠くからでも、どんな敵でも撃ち抜くその姿は、子供心に衝撃だった。
「今はもう表舞台にはいないんだけどね。でも、彼女みたいになりたいって思ったんだ」
そこまで言って、私は少しだけ悲しげに笑った。
彼女がどうなったのか、噂レベルでは知っている。
だからこそ。
「彼女みたいに美しく、強く在りたい。……それだけだよ」
しんみりした空気を払うように、私は明るく付け加えた。
「さ、食堂に入ろう!早く入らないと席埋まっちゃうよ!」
*
放課後。
私たちが教室を出ようとすると、廊下が騒然としていた。
出口を塞ぐように、数十人もの生徒たちがこちらを睨んでいる。
「な、なんだコリャー!?」
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろザコ。敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてぇんだろ」
爆豪くんが平然と歩み寄る。
普通科やサポート科の生徒たちだ。
彼らは「敵情視察」に来たのだと言った。
そんな彼らに向かって爆豪くんは見下したように言い放つ。
「意味ねぇからどけ、モブども」
「ヒーロー科の連中がどんなもんか見に来たんだが……随分偉そうだなぁ」
「ああ!?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
紫色の髪をした気怠げな男子生徒が、前に出てきた。
「体育祭の結果次第じゃ、普通科からヒーロー科への編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……。敵情視察?少なくとも俺は調子に乗ってると、足元ごっそり掬っちゃうぞっつー宣戦布告をしに来たつもり」
A組の空気がピリつく。
爆豪くんもそうだけど大胆不敵だなこの人も。
「隣のB組のもんだけどよぅ!!敵と戦ったつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!!えらく調子づいちゃってんなオイ!!」
また不敵な人キタ!
飯田くんや緑谷くんが慌てる中、爆豪くんはフンと鼻を鳴らして心操くんの横を通り過ぎた。
「……上等だ」
「待てよコラ爆豪! お前がヘイト集めたせいで俺たちまで巻き添えだぞ!」
「関係ねェよ」
爆豪くんは振り返りもせず、言い放った。
「上に上がりゃ、関係ねェ」
その言葉に、切島くんがハッとした顔をする。
単純明快。
強い奴が勝つ。それだけの話だ。
「……ま、そーいうことだね。でも」
私は入口をふさぐように立っている爆豪くんに向かって不敵に笑って見せる。
「カッコつけてるトコ悪いけど、どいてくれる? ……私どんな場所でも格下に構ってる暇はないの」
「てめェ…ソレ喧嘩売ってるってことでいいんだよなぁ?」
「そ、今度こそ白黒ハッキリつけよーじゃん」
「上等だ馬女!」
爆豪くんへの
「
ウマ娘の顔面から放たれる可愛い可愛い満面の笑みを向けそう言い放つと、廊下の
(((そういえば忘れてたけどこの人も中々不敵な人だった!)))
*
それからの2週間。
私はひたすらに走った。場所は近所の海浜公園。
課題は明確だ。「スタミナ不足」。
スズカさんの脚は速いが、今の私のスタミナではすぐに空っぽになる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
砂浜に足を取られながら、限界まで足を回す。
心臓が破裂しそうだ。肺が鉄の味がする。
あの時、私の足が止まったせいで、先生を危険に晒した。
(二度と、あんな思いはしたくない……!)
もっと長く。もっと強く。
ただの速さじゃない。最後まで走り抜く「強さ」が欲しい。
【トレーニングレベルが1上がった】
視界の隅に、無機質なログが表示される。
意識が朦朧とする中で、新たなログが表示される。
【ステータスランク上昇】
【スタミナ:C → C+】
その瞬間。
鉛のように重かった体が、フッと軽くなった気がした。
呼吸が深く入る。足の筋肉が、まだ動くと叫んでいる。
その高揚感のまま、私はさらに砂浜を蹴った。
バシュッ!!
「――っ!?」
足元が、光った。
一瞬、私の足裏から青白い光の粒子が弾け飛び、流星の尾のように後方へ流れたのだ。
【スキル習得:『位置取り押し上げ』】
【効果:レース中盤に中団以降で速度がわずかに上がる】
「うおお……すごい! 速い! ……って、えっ?」
私は砂浜で急ブレーキをかけ、自分の脚を見下ろした。
今、光ったよね?
確かに光った。私のスキル発動に合わせて、派手なエフェクトが飛び散った。
「……いやいやいや、待って待って」
私は青ざめて頭を抱えた。
「これ、マズくない?」
ゲームならカッコいい演出だ。でも、ここは現実。
戦いの最中に「これから加速します!」ってピカピカ光って教えるようなものだ。
それに、私の個性はあくまで「馬の身体的特徴を持つ異形型」として登録している。
服の変化について「葦毛のすごい版」なんて適当な嘘をついたばかりなのに、今度は足元が光ったら?
(どう説明するの!? 「最近ちょっと気合が入って光るようになりました」とか? 絶対に怪しまれるじゃん!)
しかも明日は体育祭。
プロヒーローもマスコミも、日本中が見ている前で、このピカピカお披露目?
「うわぁぁ……どうしよう……」
強くなった手応えはあるのに、それ以上に「運用リスク」と「説明責任」という現実的な問題特に後者が重くのしかかる。
私は強烈な頭痛を感じながら、夜の海に向かって深いため息をついた。
*
そして迎えた、雄英体育祭当日。
1年A組の控え室。
私はまだ、昨日の「発光問題」に対する
そんな中。
「緑谷」
轟くんが、緑谷くんに声をかけた。 クラス最強の一角。その彼が、なぜか緑谷くんを指名した。
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思ってる」
「え……う、うん」
「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな。……別にそこ詮索するつもりはねえが、お前には勝つぞ」
静かな、しかし強烈な宣戦布告。
周りの空気が凍りつく。
切島くんが止めようとするが、轟くんは聞く耳を持たない。
「仲良しごっこじゃねェんだ。何だっていいだろ」
そう言って背を向けた轟くんが、ふと足を止めて私の方を見た。
時間にして数秒、彼が私の顔を黙ってじっと見るが、何かに納得したように控室の出口に足を向ける。
轟くん、爆豪くん。
強力なライバルたち。
彼らに勝つためには、あの「光る脚」を使わないわけにはいかない。
バレるリスクも、説明の面倒くささも、全部まとめて走り切るしかない。
『1年ステージ、生徒の入場だ!』
プレゼント・マイク先生の実況が聞こえる。
歓声が地響きのように轟く。
私は立ち上がり、大きく息を吸い込んで覚悟を決めた。
「さあ、行くか!」
誰よりも速く。
誰よりも前へ。
天馬「7万UAだってすごいね!」
作者「ほんとになんでこんなに行っちゃったかなぁ」キリキリ
天馬「ありがたいことなんだからいいじゃん!みんなほんとにありがとね!」ウマムスメスマイル
続く?