個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。


No.14

「雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!」

 

 プレゼントマイクの入場の合図と観客席からの歓声がスタジアムに響く。

 選手入場の合図だ。

 

「どうせてめーらアレだろ。こいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?」

 

 噂にもなった。ニュースにもなった。だからこそだろう。

 プレゼントマイクが煽った通り観客席からは期待のこもった歓声が私たちに向けられる。

 

「俺らって完全に引き立て役だよなぁ」

「たるいよねー…」

 

 他クラスの生徒たちがぼやく声が聞こえるが、今の私にはそれどころではなかった。

 視線。圧倒的な数の視線。

 カメラのレンズ。そしてプロヒーローたちの査定の目。

 

(……たくさん見てる)

 

私はごくりと喉を鳴らす。

スキルは使えないな。

 

「選手宣誓!」

 

 ミッドナイト先生の声が響き会場がざわつく。

 

「1-A!爆豪勝己!!」

 

 1年A組、爆豪勝己。入試一位の彼が壇上に向かう姿を見て隣にいる緑谷君が驚いたような声をあげる。

 

「え~かっちゃんなの!?」

「あいつ一応入試一位通過だったからな」

 

 そう補足する瀬呂くんの声が聞こえたのかC組の方から「ヒーロー科の入試な」という声が聞こえた。敵対心や僻みを孕んだ言葉を言えば黙っていない男が今壇上に上がった。

 

「せんせー」

 

 気だるげにマイクの前に立った彼は、ポケットに手を入れたまま言い放った。

 

「俺が一位になる」

 

 会場中からブーイングの嵐。A組の皆が頭を抱える。

 でも、私は少しだけ口角を上げた。

 

(……言うねぇ)

 

 大口を叩いて、自分を追い込む。

 そういうところは嫌いじゃない。

 

(でも君に勝って一位になるのは私だよ!)

 

 そうにらむと壇上の爆豪くんから視線が返ってきたような気がする。

 

「さーてそれじゃあ早速一種目目行きましょう!! いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!さて第一種目今年は…コレ!」

 

 ホログラムに表示されたのは『障害物競走』。

 総勢11クラスによる、スタジアムの外周全長約4kmのサバイバルレース。

 ルールは簡単。コースを守れば何でもアリ。

 ルール説明をするミッドナイト先生が指さすとその先にあるゲートが開かれ「さぁ、さっさと位置につきまくりなさい」と私たちを促す。

 

 私たちはスタートゲート前に殺到した。

 狭い。数百人が一つの門に押し寄せている。

 押し合いへし合い、怒号が飛び交う。

 

(……これじゃ動けない)

 

 スタートを告げるランプに視線が集まり、誰かがゴクリとのどを鳴らす音が聞こえるほど各々が集中力を高める。

 ひとつ、ひとつとランプが点灯していく。そして最後のランプ。

 

「スタ――ト!!!」

 

 私はゲートへ殺到する集団には加わらず、あえて一歩引いて最後尾で立ち止まった。

 無理に突っ込んで揉みくちゃにされるより、道が開くのを待つ方が賢明だ。

 私の「賢さ」ステータスがそう告げている。

 

 すると、私の横で数人の生徒たちが、コースとは逆方向――ミッドナイト先生の方へ向かおうとしていた。

 経営科の生徒たちだ。

 

「あれ、君たちは走らないの?」

 

 私が声をかけると、電卓を片手にした男子生徒が眼鏡をクイッと上げた。

 

「僕らの戦場はここじゃないんでね。観客席での物販……そこで売り上げという名のスコアを叩き出すのが僕らの体育祭さ」

「なるほど、商魂逞しいねぇ」

「君は行かないのかい? ヒーロー科の優等生さん」

「まぁ、ちょっとね?ほら、混んでるから」

 

そういって私がゲートの方に指をさすとゲートの方から悲鳴と冷気が押し寄せてきた。

 

「くそっ! 動けねぇ!」

「冷てぇぇぇ!」

 

 轟くんだ。

 彼がスタートダッシュと同時に広範囲を凍結させ、先行する生徒たちの足を封じたのだ。  ゲート内は氷漬けになった生徒たちで阿鼻叫喚。

 物理的に足が地面に張り付いて動けない者、転倒する者で通路は完全に塞がれた。

 

 パニックになる集団。

 私はそれを、最後尾から静観する。

 今突っ込めば、あの団子状態に巻き込まれてタイムロスするだけだ。

 

 数秒後。

 個性を使える生徒たちが氷を砕き、あるいは強引に突破し始めたことで、密集していた集団がバラけ始めた。

 氷の上だが、走るスペースは確保できた。

 

(……よし)

 

 私は軽く屈伸をして、重心を落とす。

 スキルは使わない。光ったら面倒だから。

 使うのは、鍛え上げた基礎能力(ステータス)だけ!

 

「そろそろ行くよ。……道が空いたからね」

「そうか、頑張って」

「ありがとう。そっちもね」

 

 私は地面を蹴った。

 最後方からの、大捲り。

 私の戦場(レース)は、ここからが本番だ。

 

     *

 

 一方、先頭集団。

 第一関門『ロボ・インフェルノ』。

 入試の時に見た巨大ロボット仮想敵たちが、行く手を阻むように立ちはだかる。

 

「一般入試の……!」

「こんなのが何体も……!?」

 

 後続が足を止める中、轟焦凍は冷徹に氷を放ち、巨大ロボを一瞬で凍結させて停止させた。

 そして、その股下を悠々と抜けていく。

 

『1-A轟! 攻略早い! ……が、あいつ凍らせた時に不安定な姿勢で止めてやがる!』

 

 ガラガラと音を立てて倒れ込んでくる巨大な氷塊。

 後続を潰すためのトラップだ。

 轟は振り返りもせずに走る。だが、その表情にはわずかに焦燥の色が混じっていた。

 

(おかしい。……なんでアイツがいねぇ)

 

 轟は走りながら、周囲の気配を探る。

 爆豪は後ろから来ている。他のA組の連中も何人かは氷を抜けてきたようだ。

 だが、この種目において警戒していたはずの「駿河天馬」の姿がない。

 

(アイツの『個性』なら、この種目は独壇場だろ)

 

 USJで見せた、あの常識外れのスピード。

 スタートの瞬間に誰よりも速く飛び出し、このロボット地帯さえも一瞬で駆け抜けると思っていた。

 それとも、氷に巻き込まれて動けなくなっているのか?

 いや、あの反応速度を持つ奴が、あんな単純な初見殺しに引っかかるとは思えない。

 だとしたら――

 

「オイ! 待てや半分野郎ォ! よそ見とは随分余裕じゃねェか!!」

 

 思考を遮るように、後方から爆音が響いた。

 爆豪勝己だ。

 彼は両手からの爆破を推進力に変え、凍りついたロボットの頭上を飛び越えて迫ってくる。

 

「チッ、爆豪!」

 

 轟は舌打ちをして加速する。

 今は目の前の敵に集中するしかない。

 だが、二人はまだ知らない。

 最後方から、凍てつく地面すらグリップにして加速する「脚」が、非常識な速度で迫ってきていることを。

 

     *

 

 氷の上が滑る?

 関係ない。

 私の脚力は、地面との摩擦係数に依存しない。叩きつけるような踏み込みと、瞬時に重心を移動させるバランス感覚。

 たとえ氷上だろうと、そこが「地面」である限り、私は走れる。

 

 ダァァァァァッ!!

 

 爆発的な加速。

 最後尾から、凍りついた集団の中へと弾丸のように突っ込む。

 

「うわっ、なんだ!?」

「風!?」

 

 動けない生徒たちの間を、縫うように進む。

 右へ、左へ。

 停滞する数百人の群れを、私は一瞬で置き去りにしていく。

 いわゆる『ごぼう抜き』。

 

 競馬で言うなら、最後方からの直線一気。

 群衆に沈むつもりはない。

 ゲートを抜け、視界が開ける。

 前方には、まばらに走る先行集団。

 

実況(あそぼ)うぜマミーマン! さっそく仕掛けてきたのは……オオオオッと!? なんだカメラの端っこのあの加速はァ!?』

 

 マイク先生の声が裏返る。

 大型モニターのカメラが、あわてて私を捉えた。

 

『最後尾から一気に集団をぶち抜いてきやがった! 1-A、駿河天馬! 速えぇぇぇぇ!! カメラが追いつかねェ!!』

 

 歓声がどよめきに変わる。

 私はその声援を背中に受けながら、さらにギアを上げた。

 見える。

 土煙の向こうに、巨大な鉄塊と、先頭を行く二人の背中が。

 

 第一関門『ロボ・インフェルノ』。

 轟くんが凍らせた巨大ロボが、バランスを崩して倒壊を始めている。

 後続を遮断する、巨大な壁。

 

「くっ、汚ねぇぞ!」

「あんなの通れるわけ……!」

 

 先行していた生徒たちが、倒れてくる質量に怯んで足を止める。

 普通なら、止まる。

 あるいは、迂回する。

 

(……止まるわけないでしょ)

 

 私は減速せず、むしろ倒壊するロボットの懐へと飛び込んだ。

 

「ちょっ、駿河さん!?」

「死ぬぞ!?」

 

 八百万さんたちの悲鳴が聞こえる。

 でも、私には見えている。

 倒れてくる腕と、地面の隙間。

 わずか一メートルほどの空間。そこが通り道だ!

 

「お邪魔しまーすッ!!」

 

 ズドオオオオオン!!!!

 

 轟音。

 土煙。

 ロボットが完全に倒れ、道を塞いだ。

 会場が一瞬、静まり返る。

 ……が。

 ヒュンッ!!

 土煙を切り裂いて、一人の影が飛び出した。

 

『なななな!? 倒れるロボットの隙間をスライディングで駆け抜けたァァァ!! 命知らずかコイツ!!』

「ふぅ……服が汚れる」

 

 私はジャージについた土埃を払いながら、顔を上げる。

 目の前には、驚愕に目を見開いてこちらを振り返る、二人の背中。

 

「……は?」

「あァ!?」

 

 轟くんと、爆豪くん。

 二人の間に割って入るように、私は並走した。

 

「楽しそうなことやってんじゃん!……さあ、ここからが本番だよ!」

 

 ニカっと笑う私に、爆豪くんの顔がみるみる怒りに染まり、轟くんの瞳が警戒に細められた。

 

「チッ、調子乗んじゃねぇぞ馬女!!」

「……速いな」

 

 爆豪くんが威嚇し、轟くんが冷ややかな視線を向ける。

 二人の警戒度が跳ね上がるのを肌で感じる。

 最高の気分だ。

 私は二人に並走しながら、挑発的に笑いかけた。

 

     *

 

 続く第二関門『ザ・フォール』。

 深い谷底に綱が渡されただけの、落下即アウトのエリア。

 轟くんは氷の上を滑るように綱を渡り、爆豪くんは爆風で空を飛んでショートカットしていく。

 私は――

 

「よっと!」

 

 綱渡りなんてしない。

 谷底から突き出た岩の柱を足場に、重力を無視したような三角飛びで駆け抜けた。

 もはや道なき道を行くのはお手の物だ。

 爆豪くんは爆発で空を飛び、轟くんは足から連続で氷を生成することで綱の上を進んでいく。

 空を飛んでいる分爆豪くんが有利。次点で私。この条件で一番不利だったのは轟くんだ。

 しかし三人の距離はあってないようなもの。

 すぐに差は詰まり互いにトップを譲らないまま、私たちは横並びであっという間に最終関門へと到達した。

 

     *

 

 第三関門、『一面地雷原・怒りのアフガン』。

 一面に埋められた地雷。踏めばピンク色の爆煙と共に吹き飛ばされる。

 威力は本種目用だが、足止めには十分だ。

 轟くんと爆豪くんが、互いに牽制し合いながら、地雷のない場所を探りつつ進んでいる。

 そのせいでペースが落ちている。

 

(チャンス!)

 

 私は二人の間を、慎重かつ迅速にすり抜けた。

 私の目には、彼らが踏んだ安全な場所と、これから踏むべき場所が見えている。

 

「ちょいと失礼!」

「あァ!? 邪魔だ!!」

「どけ駿河!!」

 

 狭い安全ルートでの三つ巴。

 右から爆豪くんの爆発、左から轟くんの氷結。

 それを紙一重でかわし、肩をぶつけ合いながらのドッグファイト。

 

「よそ見してる暇あるの!? 先頭は――いただきッ!」

 

 私が二人を僅かにリードし、トップに躍り出ようとした、その瞬間。

 

 

 ズドオオオオオオン!!!!

 

 

 後方で、これまでとは桁違いの爆発音が響いた。

 空気がビリビリと震える。

 

「えっ?」

 

 振り返る暇もなかった。

 頭上を、凄まじい勢いで何かが飛んでいく。

 ピンク色の爆煙を纏い、鉄板に乗って空を飛ぶ影――

 

「緑谷くん!?」

 

 思わず叫んでしまった。

 彼は入り口付近の地雷をまとめて掘り起こし、一気に起爆させてその爆風でカッ飛んできたのだ。

 

「デクゥゥゥゥゥ!!!」

「行かせるかァ!!」

 

 爆豪くんと轟くんが、なりふり構わず激走する。

 一瞬で置いていかれる。

 速い。

 このままだと、抜かれる。負ける。

 せっかく手にした一番が、奪われる。

 

(――嫌だ)

 

 私の脳裏に、理屈よりも先に感情が走った。

 光るとか、バレるとか、言い訳とか。

 そんな理性は、本能の前では無力だった。

 

(前を……走らせろッ!!)

 

 私の思考が焼き切れた。

 右足が、地面を噛む。

 

【スキル発動:『末脚』】

【効果:ラストスパートで速度がわずかに上がる】

 

 カッ!!!!

 

 瞬間、私の全身から強烈な青白い粒子がはじけて光った。

 それは一瞬だったとはいえ、周囲の選手たちには余計に眩しく、爆発的に見えただろう。

 

「なッ!?」

 

 横にいた爆豪くんが、その光に目を剥く。

 関係ない。

 私は光の尾を引きながら、弾丸のように加速した。

 

「届けぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 落ちて来る緑谷くんを追い抜こうとしたとき彼はさらに鉄板を振りぬき、私たちの足元の地雷を起爆させる。緑谷くんの前へ出ることしか考えていなかった私たちは不意を突かれた。そしてさらに爆風で勢いをつけた緑谷くんが着地と同時にゴールゲートへ駆け出す。

 

 轟くんと爆豪くんが並ぶ。

 その間に、もう一度スキルを発動し光り輝く私がねじ込む!

 横並びで競り合う。

 

『ゴォォォォォォル!!!!』

 

 スタジアムが白く染まるような大歓声。

 私は勢い余って地面に転がり込み、芝生の匂いを嗅ぎながら荒い息を吐いた。

 

『一着、緑谷出久!』

 

 実況の声が響く。

 ……負けた。

 あの一瞬の機転と執念に、私の脚は届かなかった。

 

『二着、轟焦凍!』

『そして三着……最後になんかスッゲー加速したァ!? 駿河天馬ァ!!』

「……はぁ、はぁ」

 

 私は地面に大の字になったまま、空を見上げた。

 3位。

 爆豪くんをハナ差でかわしてのゴール。

 

「……あ」

 

 そこでようやく、冷静な思考が戻ってきた。

 今の、見たよね? 全員。

 最後の最後、私、思いっきり発光してたよね?

 

「オイ」

 

 地獄の底から響くような声。

 恐る恐る横を見ると、4位になった爆豪くんが、私を見下ろしていた。

 

「テメェ……今の光、なんだ」

「……え、えーと」

「葦毛がどうとか抜かしてたよな? 葦毛は光るのか? あァ!?」

 

 さらに、ゴールした轟くんも、冷ややかな目で私の足元を見ている。

 会場のモニターには、ゴール直前のリプレイ映像。

 そこには、バチバチに青く発光しながら加速する私の姿が、スローモーションでバッチリ映し出されていた。

 

『おーっと!? 駿河ぁ、なんだあの光はぁあ! なんか光ってんぞぉ!どーなってんだイレイザーヘッド!』

『知らん…ハァ…』

 

 プレゼントマイク先生の実況と相澤先生のため息が追い打ちをかける。

 

「う、うわあああああん!!」

 

 私は顔を覆ってその場で転がり回った。

 終わった。

 もう「気合い」じゃ誤魔化せない。

 勝負には負けるし、秘密はバレるし(バレてはいないが怪しまれるし)。

 私の体育祭は、開幕から波乱万丈の予感しかなかった。




天馬(ちょっと作者!スキル発動のエフェクトなんてクソ仕様なんてなんで付けたの!)
轟「なぁ駿河、お前なんで光ったんだ?」
天馬「(げっ!?)え、えー、まー、その、気合…?」
轟「そうか気合なのか。すげぇな」
天馬(納得した!?)

続く?
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