個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜 作:雪乃 宿海
リハビリなので短めです。
「……痛っ」
青山くんに勝利して控え室への通路を歩きながら、私は頬に貼られた絆創膏を指でなぞった。 ヒリヒリとした痛みが、今の戦いのヒヤリとした記憶を呼び起こす。
(……冷静に考えれば、アホなことしたなぁ)
私はため息をつく。
青山くんの『ネビルレーザー』。
名前の通り「
だというのに、私はそれをただの「飛び道具」として認識してしまっていたのだ。
原因は、私のスキル『集中力』への過信だ。
このスキルを使えば、世界はスローモーションになる。飛んでくる石も、BB弾も、パンチも、すべて「見てから」避けられた。
だから無意識に思い込んでいたのだ。「どんな攻撃も、発射された軌道を見てから避ければいい」と。
でも、相手は光。
その光が、私の慢心を焼き払った。
いくら私の体感時間を引き延ばしても、光の到達速度は変わらない。
「撃った」と認識した瞬間には、もう着弾している。
(知識として「光速」を知っていても、実戦でそれを肌感覚として理解できていなかった……。スキルに頼りすぎてた証拠だ)
ナガンさんとの訓練を思い出さなければ、私はあのまま「見切れない弾丸」に撃ち抜かれ続けて負けていただろう。
勝ったとはいえ、内容は薄氷。
自分の「戦い方」の穴を見せつけられた気分だ。
「……気を引き締めないと。多分次はもっと化け物なんだから」
私は頬をパンと叩き、気合を入れ直した。
(痛ってぇ~~~~)
慢心は捨てろ。
スキルは万能じゃない。使うのは、私の頭と、経験だ。
*
私が医務室から観客席に戻ってくると、会場は異様な熱気に包まれていた。
第一回戦、最終試合。
爆豪勝己 VS 麗日お茶子。
会場中から「か弱い女子を甚振るな」というブーイングが飛ぶ中、爆豪くんは容赦なく爆破を叩き込み続けていた。
でも、私は知っている。
彼が容赦しないのは、相手を「か弱い女子」として見ていないからだ。
対等な、警戒すべきライバルとして認めているからこそ、彼は全力を出す。
「あ、天馬ちゃん戻ってきた!」
「……すごい」
私は観客席の手すりを握りしめる。
麗日さんの、あの執念。
爆豪くんとの戦闘でできた瓦礫を浮かしそれを一気に落とすという策を講じ、最後まで勝利を諦めずに倒れた彼女の姿に、私は胸が熱くなるのを感じた。
(私も、負けてられないな……)
勝者、爆豪勝己。
これで一回戦の全試合が終了し、ベスト8が出揃った。
*
そして始まった、第二回戦(準々決勝)。
緑谷出久 VS 轟焦凍。
開始直後から、フィールドを勢いよく駆け巡る氷結を、緑谷くんが指を犠牲にした衝撃波でそれを砕く。
自らの身体を壊しながら戦う緑谷くんの姿は、痛々しくも鬼気迫るものがあった。
右手、左腕。使える部位が減っていく。
轟くんの氷結は止まらない。
追い詰められた緑谷くんが、一瞬、動きを止めた。
その視線が、ふと、観客席の私と交差した。
*
痛い。感覚がない。
右手の指は全部折れた。左腕も、さっき氷結に捕まりそうになった時咄嗟に使ってしまった。 轟くんの氷は、速くて、重い。
それに『個性』だけじゃない…。判断力…、機動力…、全ての能力が、強い!!
「守って逃げるだけでボロボロじゃねぇか」
そう言って轟くんはとどめを刺そうと僕に近づく。体微かに
(震え…!?そういうことか、ちくしょう!)
「悪かったな。ありがとう緑谷。おかげで…奴の顔が曇った。」
『左を使わず
騎馬戦前の彼の宣言がフラッシュバックする。
「その両手じゃ、もう戦いにならねぇだろ。終わりにしよう」
『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結を…!!』
「どこ見てるんだ…!」
ドォオオン!!
「てめぇ…」
壊れた指を弾いて迫りくる氷結を打ち消す。
「震えてるよ…轟くん」
「…!?」
「『個性』だって身体機能の一つだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんじゃないか?でそれって、左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか…?」
「…ッ!?うるせぇよ。俺は左は使わ…「皆本気でやってる!!」」
「勝って目標に近づく為に、一番になる為に!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷ひとつつけられちゃいないぞ!…」
「
「何の…つもりだ。全力?クソ親父に金でも握らされたか?イラつくな…!!」
そう言って轟くんは僕へ走って突っ込んでくる。壊れた指で氷結を打ち消したのだ、まだ残弾があると読んで近距離戦へ持ち込もうとしている。
僕は障害物競走や騎馬戦で
観客席に視線を走らせる。
そこで、心配そうにこちらを見ている駿河さんと目が合った。
(……駿河さん)
脳裏に蘇るのは、騎馬戦での彼女の姿。
あの青白い発光。
爆発的な加速。
今の僕のやり方は、指先という「点」で爆発させているだけだ。
そうじゃない。
駿河さんのように、身体中を駆け巡るエネルギーをイメージするんだ。
(身体の一部じゃない。全身に流れるように、ワン・フォー・オールを…)
(グッ…!100%はダメだ。今の身体じゃ確実に壊れる)
(出力を絞るんだ。卵が爆発しないように……レンジの中で熱を通すように……)
僕は歯を食いしばり、ワン・フォー・オールを全身へと回す。
バチバチと、緑色の稲妻が身体を走る。
「ぐっ……がああああ!!」
ドンッ!
『モロだぁ!!!生々しいのが入ったあ!』
「ぐぅう…!!」
全身の骨が、ミシミシと悲鳴を上げた。
激痛が脳を焼く。
ダメだ。調整が効かない!
体感で10%……いや、15%!? 今の僕の「器」じゃ、この負荷を受け流せない!
(くそっ……ぶっつけ本番じゃ、制御しきれない……!!)
解除されたワン・フォー・オール。
騒めきが広がる会場。今にも倒れそうなボロボロの木偶の坊がここで攻勢に出たことに驚きを隠せないようだ。
苦し気な表情を浮かべながら轟君は、氷結を繰り出す。
しかし、そこに先ほどまでの勢いはない。
僕はもう一度指を弾いて打ち消そうとするが…
(ぐっ…握れない…!なら…!)
親指を頬の内側へひっかけ弾く。
「何でそこまで…」
「期待に応えたいんだ!笑って応えられるような、カッコイイ人に…なりたいんだ!!!だから全力で!やってんだ!皆!」
もう両腕は使い物にならない。不格好に突進するくらいしかできない。
痛い、辛い、もう倒れてしまいたい。
(…でも、それでも僕が伝えないと!)
「君の境遇も君の決心も僕なんかに計り知れるものじゃない…!でも、全力も出さないで一番になって、完全否定なんてフザけるなって今は思ってる」
「うるせぇ…!」
「だから、僕が勝つ!君を超えて!」
「うるせぇ!俺は親父を…「君の!力じゃないか!!」」
*
私は彼が自分の動きを参考にしようとしたことなど露ほども気づかず、ただ心配そうに見守ることしかできなかった。
それでも、彼は諦めない。
ボロボロの身体で、叫んだ。
その言葉が、凍りついていた轟くんの心を溶かす。
左半身から、爆発的な炎が噴き上がった。
ドォォォォォォォォン!!!!
最後の大激突。
セメントス先生とミッドナイト先生が止めに入らなければ、本当にどちらかが死んでいたかもしれない威力。
爆風が収まった時、立っていたのは――轟焦凍だった。
「……化け物じゃん」
あんなの、まともに食らったらウマ娘の頑丈さでもタダじゃ済まない。
これが、雄英のトップ層。
私が目指す「一番」の座には、あんな怪物たちが鎮座しているのだ。
ブルッと体が震える。
これから戦うであろう強敵たちを前に若干の畏怖と高揚感が胸を高鳴らせる。
私の番は次の次。
対戦相手は…
常闇踏陰
続く?