個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました


No.18

(……ビビってる暇はない。この試合の次は、私の番だ)

 

 フィールドの修復が終わり、再開された第二回戦。

 第2試合は、飯田天哉 VS 塩崎茨。

 

 ツタによる広範囲攻撃を得意とする塩崎さんに対し、飯田くんは「レシプロバースト」による超加速で一瞬にして勝負を決めた。

 速い。スキルや継承を使わない単純なスピードなら、今の私では勝てないかもしれない。

 

(個性把握テストのときはぎりぎり私が勝ってたんだけどな)

 

 ヒーロー科に弱い人間なんていないし、その上で皆常に成長を続けている。

 彼もまた、「速さ」を武器にするライバルだ。

 

     *

 

 そして、第3試合。

 

 マイク先生の入場の合図の実況が流れフィールドに向かう。

 

 私はフィールドに立つ。

 目の前には、腕を組み、静かに佇む常闇くん。

 そして彼から伸びる影、『黒影(ダークシャドウ)』。

 

「……来たか、疾き者よ」

「お手柔らかに頼むよ、常闇くん」

 

 体育祭での今までの彼の戦闘を振り返る限り相性は、正直言って悪い。

 『黒影』は攻防一体。離れていても攻撃できるし、懐に入っても自動で防御してくる。

 私のスピードで翻弄しようとしても、あの影は全方位に対応できる。

 まさに変幻自在だ。

 

『START!!!』

 

 開始の合図と共に、私はサイドへ走った。

 足を止めたら『黒影』に捕まる。常に動き続け、的を絞らせない。

 

「行け! 黒影!」

「アイヨッ!!」

 

 黒い影が伸びてくる。

 速いし、射程も長い。けれど、私の脚力なら振り切れる!

 

 【スキル発動:『危険回避』】

 

「ちょこまかと……!」

「当たらなきゃ意味ないよ!」

 

 私は挑発しつつ、隙を伺う。

 中距離じゃ埒が明かない。一気に懐に入って決めるしかない。

 そう判断して、私が踏み込もうとした瞬間だった。

 

 私はジグザグにステップを踏み、影の爪を紙一重でかわす。

 攻撃が空を切り、常闇くんの顔に焦りが見え――ない?

 

(……変だ)

 

 彼は攻撃を外すたびに、少しずつ後退しているわけでも、距離を取ろうとしているわけでもない。

 むしろ、私の走るコースを限定するように、じわじわと私を自身の懐へと誘い込んでいる?

 

「ようやく近づいてきたな。少し話をしよう…俺は緑谷と轟の戦いを見ていた」

 

 常闇くんが、唐突に口を開いた。

 彼は攻撃の手を緩め、私を真っ直ぐに見据える。

 

「緑谷は、お前の発光を全身へのエネルギー循環と捉え参考にしようとしていたという」

「え、そうなの?!」

「あぁ、緑谷が轟戦で何か『個性』で手ごたえをつかんでいそうだったからな、試合前に聞いたよ。……だが、感化されたのは奴だけではない」

 

 常闇くんが右手を掲げる。

 それに呼応するように、ダークシャドウが彼の右半身へと巻き付き始めた。

 

「USJでの一件。お前が見せた『変身』。……あれは、俺に個性の新たな可能性を見せた」

 

 影が彼の腕を覆い、肩を包み、半身を覆うように形成されていく。

 あれは……防御? いや、装着?

 

「おばあちゃんが言っていた……」

「…ん?」

 

 常闇くんが、どこか遠くを見るような目で、厳かに告げる。

 

「『俺は常闇の中へ踏み込み、陰とともに歩む男』……常闇踏陰だ」

「それダメだって!」

 

 彼は天を指差し、そして私に向けて言い放った。

 

「変身……!」

 

 ゴオォォッ!!

 

 黒いオーラが爆発する。

 彼の右半身は完全に黒影と同化し、巨大な爪を持つ異形の腕となっていた。

 そこから放たれるプレッシャーは本物だ。

 

「今はまだ半分だが……お前を一発殴ることくらいはできる」

 

 彼は腰を落とし、迎撃の構えを取る。

 そういうの、嫌いじゃない。

 「変身」して強くなる。それは私の十八番だ。

 私の前でそれをやるってことは、そういうことだよね?

 

「お前も変身しろ。俺の新たな可能性がどこまで通用するか見たい」

「いいよ、常闇くん。君がその気なら……」

 

 私は深く息を吸い込み、自身の奥底にあるシステムにアクセスした。

 常闇くんが個性をコスチュームのように着用し戦闘することをミッドナイト先生が止めないところを確認した。目の前でライバルが「変身」して挑んできているのに、こっちだけ体操服で戦うなんて、ウマ娘の名折れだ!

 

「私も、全力で相手してあげる!!」

 

 カッ!!!!

 

 私の体がまばゆい光に包まれる。

 体操服が光の粒子となって弾け飛び、現れたのは白と紫を基調とした、フリルのついた勝負服。  腰には蹄鉄のチャーム。右耳には紫のリボン。

 

 【継承:スペシャルウィーク】

 

 継承が終わりミッドナイト先生の方に確認の意味を込めて目線を送る。

 そうするとミッドナイト先生からはただ、コクリと首肯のみが返ってくる。

 

(へぇ止めないんだ。まぁこういうの好みか先生。なら真っ向勝負あるのみでしょ!)

 

 会場が「うおぉぉ!? 何だ!?着替えた!?」とどよめく中、私は地面を爆ぜさせた。

 

「行くよッ!!」

「来いッ!!」

 

 真正面からの激突。

 小細工なしの殴り合い。

 

 ドゴォォォォン!!

 

 私の拳と、常闇くんの影の爪が交差する。

 衝撃波が広がり、互いの頬が歪む。

 重い。脳無ほどじゃないけど、生身の人間とは思えない密度!

 

「らぁぁぁぁっ!!」

「ヌゥゥン!!」

 

 一歩も引かない。

 殴る。殴られる。

 私の蹴りが影の鎧(彼の腹)を捉え、彼の爪が私の肩を切り裂く。

 痛い。でも、楽しい!

 

 ガギィッ!!

 

 互いに渾身の一撃を入れ合い、弾かれるように距離が開いた。

 私は踏みとどまるが、常闇くんが大きくよろめく。

 纏っていた影が霧散しかけ、彼の生身が露出しそうになる。

 

(限界か!?)

 

 私は好機と見て踏み込む。

 だが。

 

「まだだァァッ!!」

 

 常闇くんが吠えた。

 剥がれかけたダークシャドウが、意思を持ったように無理やり彼の体に食らいつき、再固定される。

 

「なっ!?」

 

 驚く私の顔面に、死に体だと思われた彼からのカウンターが迫る。

 避けられない。

 私は歯を食いしばり、額でそれを受けた。

 

 ゴチンッ!!

 

「ぐっ……!?」

 

 視界が揺れる。

 私はよろめきながらも、ニヤリと笑って彼を睨みつけた。

 

「……ブラフかよ」

「いいや……Plus Ultra(更に向こうへ)だ」

 

 常闇くんもまた、肩で息をしながら不敵に笑う。

 かっこいいじゃん。

 

「上等……!!」

 

 私は拳を握り直す。

 次で決める。

 私の全力と、君の全力。どっちが強いか――!

 

 彼の目には、ただ勝ちたいという闘志以上の、何か熱い意志が宿っていた。

 それは、私の知らない彼の一面。

 クールな仮面の下に隠された、泥臭いまでの情熱。

 

「これで……決める!!」

「これが、最後だ!!」

 

 私たちは同時に踏み込んだ。

 もはや小細工はいらない。

 互いの全力をぶつけ合う、ただそれだけのシンプルな決着。

 

 ドゴオオオオオオオン!!!!

 

 会場が揺れた。

 私の右拳と、常闇くんの影の拳が真っ向から衝突する。

 衝撃波がスタジアムを駆け巡り、砂埃が舞い上がる。

 

 拮抗。

 いや――

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

 私は更に踏み込んだ。

 スペちゃんの「ド根性」が、私の背中を押す。

 負けない。ここで引いたら、ウマ娘じゃない!

 

 バキィッ!!

 

 均衡が崩れた。

 私の拳が、影の防御ごと彼の拳を押し込み、そのまま彼の胸元へと突き刺さる。

 

「がはっ……!!」

 

 常闇くんの身体が宙を舞った。

 影の鎧が霧散し、生身の彼が地面に叩きつけられる。

 彼は何度かバウンドし、場外ラインを越えてようやく止まった。

 

『しょ、勝負ありィ!! 凄まじい真っ向勝負! 勝者、駿河天馬ァァァ!!』

 

 実況が響き渡る中、私は構えを解き、荒い息を整えた。

 勝った。

 でも、右手がジンジンと痺れている。ギリギリだった。

 

 私は場外で仰向けになっている常闇くんに歩み寄る。

 彼は空を見上げたまま、静かに息を吐いていた。

 

「……一発殴るって言ってたけど、何発も打たれた。あれはブラフ?」

 

 私が軽口を叩くと、彼は口元をわずかに緩めた。

 

「いや……お前が打ち合いに付き合ってくれたからな。……だが、限界はとっくのとうに超えていた」

 

 その言葉通り、彼の横では疲れ果てたダークシャドウが「ムニャムニャ……」と寝息を立てている。

 無理やり限界を超えて、私に食らいついてきていたのだ。

 

「甘く見てたよ。もっとクールな男だと思ってた」

 

 私が正直な感想を漏らすと、彼はふっと目を細めた。

 

「……お前には勝ちたいと、そう思っただけだ」

 

 その言葉に込められた熱量に、私は少しだけ驚いた。

 勝ちたい。

 それは単なる勝負欲だけじゃない気がした。

 まるで、「俺を認めさせたい」「俺もここにいるぞ」と叫んでいるような、そんな切実な響き。

 

(……そっか)

 

 私はニッと笑い、彼に手を差し伸べた。

 

「やっぱり、クールだね」

 

 常闇くんは私の手を取り、力強く握り返してきた。

 その掌は熱く、そして頼もしかった。

 

 こうして、私たちの「変身対決」は幕を閉じた。

 これで準決勝進出。ベスト4。

 

     *

 

 私は担架に乗せられる常闇くんを見送り、選手ゲートへと向かった。

 薄暗い通路に入ると、前方から殺気を纏った影が歩いてくるのが見えた。

 

「……爆豪くん」

 

 彼はこれから、準々決勝第4試合――切島くんとの試合に向かうところだ。

 私とすれ違いざま、彼は足を止めた。

 その凶悪な眼光が、私の全身を舐めるように睨めつける。

 

「オイ、馬女…」

 

 背筋が凍るような殺気。

 

「クソ髪の次はテメェだ……。あの『変身』、必ず使え」

 

「……え?」

 

「ハンデなんざいらねェ。全力のテメェを完膚なきまでにブッ潰さねェと、意味ねぇからな」

 

 彼はそれだけ言い捨てると、私の横を通り過ぎて光の中へと歩いていった。

 背中で語る、絶対的な自信。

 切島くんとの試合など、通過点だとでも言うように。

 

「……言ってくれるじゃん」

 

 私はその背中に向かって、ニヤリと笑った。

 私の全力を引き出した上で勝つ。

 それが、爆豪勝己という男のプライド。

 

「いいよ。望み通り、最高の状態で相手してあげる。でもそのクソ髪くんに負けないようにね」

 

 私は拳を握りしめ、控え室へと足を向けた。

 いよいよ、決戦の時が迫っていた。




天馬「ねえ、常闇くん。なんでそんなに私に勝ちたかったの?」
常闇「……孤高に生きるのも悪くはないが、深淵に一人で挑むのは時に危うい。……俺は、お前の隣に立てる男でありたいと思っただけだ」
天馬「えっ、なんかプロポーズみたい!?」
常闇「なっ!? ち、違う! 共闘者としての意味だ!」
爆豪「イチャついてんじゃねェ!!クソ髪の次はお前だ!!」
切島「俺は負けねぇぞ!爆豪!」

続く?
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