個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
前回の天馬視点です。
思ったよりも反響が大きくて作者はびっくりしています。


No.3

 事故から数日が過ぎていた。

 

 リビングのソファに座り、私は擦りむいた膝に貼られたガーゼをぼんやりと眺めていた。

 傷の治りは早かった。医者は「若いからね」と笑っていたけれど、私は知っている。これも『ウマ娘』としての代謝の高さゆえだ。

 

 視線を空中に向けると、私にしか見えない半透明のウインドウが浮かんでいる。

 

 【スキルヒント獲得:『集中力』Lv3】

 【スキルヒント獲得:『ロケットスタート』Lv2】

 【ステータス変動:スピード+5】

 

 あの事故の瞬間。

 私の体は、前世の記憶にある「ゲームの挙動」を再現した。

 人間としてのリミッターを外し、物理演算を無視するかのような初速で飛び出し、子供を救った。

 

「……本当に、ゲームなんだ」

 

 あれから数日間、個性についていろいろ試してわかったことがある。まとめるとこう…

 

 まず身体的特徴。

馬の耳と尻尾:頭頂部に馬の耳、腰に尻尾が生えている。

感覚の鋭敏化:耳は非常に良く、遠くの物音や背後の気配に敏感。

バランス制御:尻尾は走行時に重心バランスの維持に必要。

超人的な脚力:時速70kmを超えるスピードを出せる。

 

 これのせいで私は自分の個性を「馬」だと勘違いしていた。

 

 次にゲームシステムの具現化。

UIの具現化:ステータス等を可視化できる。

ステータスの可視化:自分や他人の能力を5項目で数値化して視認できる。

コンディション把握:→自分や他人の体調ややる気を把握できる。

 

 それと驚いたのが継承関連だ。

スキルの獲得:詳しい条件はわかってはいないがスキルヒントを獲得しそれをもとにスキルを獲得することができるみたいだ。スキル欄にスキルがないことから集中力とロケットスタートはまだ獲得していないようだ。

因子継承:試しに継承と念じてみたらUIがしっかり出てきた。継承欄は空欄で私はまだ何も継承していないことだけがわかる。

 

「……今現在わかっていることはこれだけ。さて、これをどう周りに説明するか。というか、そもそも説明する必要があるのか?」

 

 私は、窓の外をぼんやりと眺めながら考える。

 

 もし、私が「システムを通じて無限に成長できる」なんて馬鹿正直に公表したらどうなるか。

 この世界には、強すぎる個性や異質な個性を「資源」や「脅威」としてしか見ない人間が確実にいる。公安、ヴィラン、あるいは狂信的な研究者。

 

(『ウマ娘』なんて概念、この世界には存在しない。説明しても「精神疾患者」か「新種のオカルト女」扱いされるのがオチだ。それに……)

 

 視界の端に映るUIを見つめる。

 

(私のステータスやスキルが『数値』として見える。それは、他人の『限界』や『才能』も残酷なまでに可視化してしまうってことだ。そんな目を持ってるなんてバレたら、私は誰かを値踏みするだけのスカウトマンか、戦場を支配するただの道具にされるかもしれない)

 

 それは、走ることが純粋に好きな私にとって、最も避けたい未来だった。

 

「……よし。決めた。私の個性は、どこまでも『馬』だ」

 

 どれほど速くなっても、どれほど不自然な動きをしても、全部「馬が持っているポテンシャル」だと言い張る。幸い、この世界は個性の解釈が広い。

 私が「馬だ」と信じて走り続ければ、それはこの社会において『馬』という個性として成立するはずだ。

 

 一番大切なのは、誰かに決められたシステムに従うことじゃない。

 私が、私として走って、納得できる「一番」を掴むこと。

 

 自分の掌を握ったり開いたりする。

 この体には、成長の上限がないのかもしれない。

 トレーニングし、実戦を経験すればするほど、数値は青天井に伸びていく。もし私が本気でこの力を磨けば、あのオールマイトにだって追いつけるかもしれない。

 

 そんな、非現実的な高揚感と、正体のわからない力への恐怖が入り混じっていた時だった。

 

「天馬ー。お客さんよー」

 

 玄関からお母さんの上擦った声が聞こえた。

 

「なんかすごい人来ちゃったんだけど! ほら、テレビに出てる……!」

 

 ドタドタと廊下を走る音。

 そして、リビングのドアが開いた瞬間、私は息を呑んだ。

 

 そこに立っていたのは、長身の女性だった。

 ツートンカラーの髪。鋭さと愛嬌が同居した瞳。

 ラフな私服姿だけれど、その立ち姿には一分の隙もない。

 

「こんにちは。駿河天馬ちゃんで合ってるかな?」

 

 彼女はニカっと笑って手を振った。

 間違いない。現役のトップヒーローの一角。

 

「……レディ、ナガン?」

 

 その名前を口にした瞬間、私の視界にあるUIが新たな反応を見せた。

 彼女の頭上に、パラメータが表示されたのだ。

 

 【名前:筒美 火伊那】  【絆ゲージ:■□□□□(青・知り合い)】

 

(絆ゲージ……!? )

 

 私が内心で激しく動揺しているとは露知らず、ナガンさんは「お邪魔するわね」と軽い調子で私の向かいのソファに腰を下ろした。

 

「怪我の具合はどう? 膝、まだ痛む?」

「い、いえ。もう治りました。……有名なヒーローが、わざわざ私なんかのために?」

「数日前、トラック事故に遭いそうだった子を助けたでしょ?天馬ちゃんくらいの子にはとてもショッキングな出来事だからそのアフターケアに来たのよ」

 

 朗らかに事情を話してくれるレディ・ナガンに安堵した。

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 私は努めて冷静に、礼儀正しい小学生を演じた。

 けれど、紅茶を一口すすった彼女の瞳が、スッと細められた瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 

「いいのよ、市民を守るのが仕事だから。……それより、あの時のこと聞かせてくれる?」

 

 彼女の声色は優しい。けれど、その奥にあるのは明確な「尋問」の気配だった。

 

「どうやったの? あなたの個性、『馬』なんでしょ? 少し調べさせてもらったわ」

 

 調べた。

 

 その言葉の重みに、心臓が跳ねる。

 私の個性届には『馬』としか書いていない。でも、あの時の動きは明らかに馬の範疇を超えていた。自分の個性を『馬』として決めたのなんて今さっきだ。

 

「『馬ができることは大抵できる』。確かにサラブレッドは速いわ。でも、あの時の君の動き……生物としての溜めが全くなかった。馬にしては、初速が異常すぎる気がしないかしら?」

 

 カマをかけられている。

 彼女は気づいている。私の動きが、通常の異形型の理屈とは違うものだったことに。

 なぜレディ・ナガンが私の個性を気にしているかはわらかないが、ここで下手な嘘をつけば、怪しまれる。でも「前世のゲームキャラの能力です」なんて言えるわけがない。

 

 私は脳内の「賢さ」ステータスを総動員した。

 子供が言っても不自然ではなく、かつ科学的に聞こえる「馬の言い訳」。

 

「……必死だったから、よく覚えてないんです。ただ、『間に合わせなきゃ』って思ったら、体が勝手に動いて」

 

 まずは、ヒーローへの憧れを匂わせる常套句でジャブを打つ。

 彼女は「ヒーローのようなセリフね」と笑ったが、目は笑っていない。

 私は一呼吸置いて、畳み掛けた。

 

「それに……馬は、臆病な生き物ですから。驚いて逃げ出す時は、自分でも信じられない力が出るんです。火事場の馬鹿力……いえ、馬力が出ただけですよ」

 

 そして、学校の図書室で読んだ知識を、さも自分のことのように付け加える。

 

「あと、私……普通の人より心臓が大きいんです。心臓が大きくて強いと、いきなりトップスピードを出しても負担は少ないって。……私の個性は『馬』だから、学校の図書室で馬についていろいろ調べたんです」

 

 ナガンさんは、じっと私の目を見ていた。

 その視線は、私の網膜の奥にある真実まで見通すような鋭さだった。

 数秒の沈黙が、永遠のように感じる。

 

「……そっか。火事場の馬力、頼もしいわね」

 

 ふっ、と彼女の纏う空気が緩んだ。

 合格、したのだろうか。それとも、これ以上聞いても無駄だと判断されたのか。

 

「ねえ天馬ちゃん。君、それだけの力があるなら、将来は雄英高校のようなヒーロー科を目指してるの?」

 

 不意打ちのような質問。

 雄英高校。ヒーロー。

 前世の私が憧れた世界。今の私が持つチート級の力。

 目指すべき場所なのは間違いない。

 

 でも…。

 

「……いえ。わかりません」

 

 口をついて出たのは、迷いの言葉だった。

 

「なんとなく、漠然とヒーローになれたらいいなとは思ってましたけど……。最近、自分が何者なのか、何のために走るのか、よくわからなくなってしまって」

 

 それは演技ではなかった。

 突然蘇った記憶。人間離れしていく肉体。

 私は「駿河天馬」として走りたいのか、それとも個性に走らされているだけなのか。

 

「でも……走ることは、好きです」

 

 それだけは、嘘偽りのない本心だった。

 

「……そう」

 

 ナガンさんは、少しだけ毒気を抜かれたような顔をした。

 そして立ち上がると、テーブルに一枚の名刺を置いた。

 

「もし進路が決まったり、その力で困ったことがあったら連絡して。……お姉さんが、相談に乗るから」

 

 その言葉と共に、私の視界の隅で【絆ゲージ】のメモリがピクリと一つ上昇したのが見えた。  ほんの少しだけ、心の距離が近づいた証。

 

「ありがとうございます……レディ・ナガン」

 

 私は名刺を両手で受け取った。

 彼女はヒラヒラと手を振りながら玄関を出ていく。

 

 残された名刺には、シンプルな連絡先だけが書かれていた。

 私はそれを、宝物のように胸に抱いた。

 今はまだ、ただの「知り合い」。

 でも、この人となら。

 自分の正体も、この溢れ出る力の使い道も、いつか話せるようになるかもしれない。

 

 そんな予感が、私の胸を少しだけ熱くさせていた。




ナガン「普通は主人公の視点を書いてからだと思ってんすがね……」
ナガン「オイ、あんた達…別視点の書き方ってヤツを知ってんだろ…?」
ぱいなっぽー天馬「いいや…聞いたことがねェな…」(すっとぼけ)

続く?
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