個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜 作:雪乃 宿海
最初は精神世界で継承したウマ娘たちとしゃべれるようにしようと考えましたが緑谷とキャラ被りするので止めました。決してキャラを増やすのが面倒くさくなったとかではないです。決して。
「あれが
無数のモニターが並ぶ暗い部屋。
演習場Bの惨状と、そこから生還した受験生たちを見下ろしながら、ボサボサ髪の男――相澤消太が低い声で呟いた。
「いやぁ、速いなアイツ! 『馬』ってレベルじゃないぜ!」
隣で声を上げたのは、実況を終えたばかりのプレゼント・マイクだ。
彼は興奮冷めやらぬ様子で、駿河天馬のリプレイ映像を指差す。
「0Pロボの残骸を蹴り飛ばすパワーも相当なもんだ。……だが、それ以上にあの判断だな」
腕を組んで画面を睨むのは、ブラドキング。
彼の視線の先には、落下してくる瓦礫の軌道を瞬時に読み切り、最短ルートで突っ込んだ少女の姿があった。
「自分の身を守るための回避行動じゃない。他者を守るための攻撃的な機動。……合格ラインギリギリの点数を持っていながら、あの土壇場でポイントにならない人助けを選べる度胸。いいわ!」
18禁ヒーロー、ミッドナイトが艶然と微笑む。
教師陣の評価は概ね「肯定的」だ。
圧倒的な身体能力と、とっさの判断力。ヒーロー科にふさわしい資質。
だが、相澤の目だけは厳しかった。
「……校長。あの娘が、例の?」
相澤の視線が、モニター席の中央に座る小さな影に向けられる。
根津校長は、紅茶のカップを置き、楽しげにヒゲを揺らした。
「そうだよ。……彼女には『ある条件』を課していたんだけど、どうやら私の杞憂だったようだね」
根津がコンソールを操作し、集計結果を表示する。
そこに映し出された数値を見て、教師陣からほぅ、と感嘆の声が漏れた。
「ヴィランP45、レスキューP30。合計75点……文句なしの2位通過だ」
「1位の爆豪とかいう破壊神に次ぐ成績か。こりゃあ実力で堂々の合格だな」
沸き立つ教師陣の背後で、影に隠れるように立っていたガリガリに痩せた男――オールマイトが、静かに口元を緩めていた。
彼もまた、あの緑谷少年を助けるために飛び出した彼女の姿に、「ヒーローの本質」を見ていたのだ。
「……ま、いいでしょう」
相澤は気怠げに頭を掻き、モニターの中の、紫のリボンを揺らす少女を見据えた。
「どのみち、半端な奴なら俺が除籍するだけだ。……21人目の席、用意しておきますよ」
*
入試から一週間。
私の生活は、驚くほど静かだった。
ナガンさんとの特訓の日々が嘘のように、放課後は暇になった。
(……長い)
私はベッドに仰向けになり、天井を見上げていた。
手応えはあった。でも、確実じゃない。
あの0Pロボット戦でのタイムロスがどう響くか。ネガティブなシミュレーションばかりが頭をよぎり、不安に押しつぶされそうになる。
「……考えろ。今の私にできることを」
私は思考を切り替えるために、試験中の「あの現象」について検証することにした。
あの瞬間、私の姿は変わった。
体操服が弾け飛び、フリルのついた紫と白の衣装――『勝負服』へと変身したのだ。
私は空中に指を走らせ、ステータス画面を展開する。
以前まではロックされていた項目。
そこに見慣れないタブが増えていることに気づく。
【継承】
おそるおそるタップすると、ウィンドウの中に一つのアイコンが輝いていた。
黒鹿毛に白いメッシュ。優しげな瞳。
【継承ウマ娘:スペシャルウィーク】
【相性:◎】
【継承固有スキル:『シューティングスター』】
【詳細:レース終盤に前の方で相手を抜くと勢いに乗って前に出てさらに加速力がちょっと上がる】
「……やっぱり、スペちゃんだ」
私は詳細文を読み込み、息を吐く。
「ちょっと上がる」という、システム特有の曖昧な表現。だが、あの時の爆発的な加速力は「ちょっと」なんてレベルじゃなかった。
(継承……か)
これは、単にステータスが上がるだけの機能じゃない。
過去の名馬たちの魂を借り受け、その想いと共に走る力。
まだアイコンは一つだけだが、今後、私が成長すれば他のウマ娘の力も借りられるようになるのかもしれない。
不安な待ち時間の中、私はそのシステムが示す無限の可能性に、少しだけ救われるような気がした。
*
そして、その日は来た。
家に帰ると、テーブルの上に一通の封筒が置かれていた。
雄英高校からの通知。
手に取ると、紙切れ一枚とは思えないほど重く感じた。
「……ふぅ」
私は自室に入り、机の上に封筒を置く。
深呼吸を一つ。
UIの心拍数モニターが、少しだけ上昇している。
「よし、開けるか」
私はペーパーナイフで封を切り、中身を取り出した。
出てきたのは書類……ではなく、掌サイズの金属円盤だった。
ゴトッ、と机に置いた瞬間。
ブォン! という音と共に、ホログラムが空間に投影された。
『――やあ! 駿河天馬くん!』
「……え?」
投影された映像を見て、私は目をぱちくりさせた。
スーツを着こなした、白くて小さな動物――ネズミの校長先生だった。
『私が雄英高校校長の根津さ。……いやあ、君の走りは見事だったのさ! モニター越しでも伝わる疾走感、素晴らしかったよ!』
ネズミの校長先生に戸惑う私をよそに、根津校長は愛想よく話し続ける。
『早速だが、結果を伝えよう。君の筆記試験は優秀さ。特に数学と物理の応用力は目を見張るものがある』
それはそうだ。「レース運び」の計算はずっとやってきたから。
『そして実技試験。君が獲得したヴィランポイントは45点』
45点。
校長の口から出た数字に、私は拳を握りしめる。
やっぱり、ギリギリだ。他の戦闘特化の受験生なら、もっと稼いでいてもおかしくない。
『例年のボーダーラインを考えると、これだけでは少々心許ない数字だね。……しかし!』
校長の声が、芝居がかったトーンで跳ね上がった。
『ヒーローとは何か? ただ敵を倒すだけの存在かい? 違うね。人々を救い、希望を与える存在だ。……君はあの時、試験のルールを度外視してでも、瓦礫の下の彼らを救おうとした』
ホログラムの映像が切り替わる。
そこには、私が0Pロボットの瓦礫を蹴り飛ばし、緑谷少年と麗日さんの前に着地した瞬間の映像が映し出されていた。
そして、それを別の角度から必死に見ようとする飯田くんの姿も。
『誰かのために身体を張り、圧倒的な速度で危機を粉砕したその行動。これぞヒーローの本質! どうしてこれを評価せずにいられようか!』
校長が肉球のある手をバッと広げる。
『雄英高校は、その「救助活動」にもポイントを与えているのさ! 駿河天馬、君にはレスキューポイント30点が付与される!』
「――30点!?」
予想外の加点に、私は思わず声を上げた。 30点。ヴィランポイントと合わせれば……。
『トータル、75点!これは文句なしの合格なのさ。……そして、今年の受験者全体で見ても、2位という素晴らしい成績だよ』
(2位……!)
その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に一人の少年の顔が浮かんだ。
校門ですれ違った、アッシュブロンドの髪の少年。爆豪勝己。
私の個性がA⁺と判定した、あの圧倒的な威圧感の塊。
(1位は、間違いなくあいつだ)
具体的な点差はわからない。 けれど、事実として私は負けたのだ。
(……悔しい)
合格できた安堵はある。でも、それ以上に胸の奥がチリチリと焼ける。
レースなら結果が全てだ。2着は敗北でしかない。
あの「天才」の背中が見える位置につけた? そんな慰めはいらない。
私は、誰よりも前を走ると誓ったんだ。
(次は、絶対に抜く)
私は見えないライバルの背中を強く睨みつけた。
『来てくれたまえ、駿河天馬くん。雄英は君のような最高のヒーローの原石を歓迎するよ!』
プツン、と映像が消えた。
静寂が戻った部屋で、私は机に突っ伏した。
「……受かった」
*
数日後。我が家に大きな段ボールが届いた。
雄英高校の制服だ。
早速、袋からブレザーとスカートを取り出し、鏡の前で合わせてみる。
「……うん、やっぱり」
案の定、スカートの後ろに尻尾を通す穴はない。
雄英は異形型の生徒へのサポートも手厚く、申請すればオーダーメイドで作ってくれるそうだが、それには当然追加料金がかかる。
今後のトレーニング用具や、ヒーローコスチュームの改良費を考えれば、少しでも節約しておきたい。
「お母さーん! ちょっと手伝って!」
私はリビングにいる母を呼んだ。
母は私の手にある制服を見ると、嬉しそうに、そして少し寂しそうに微笑んだ。
「まあ、立派な制服……。天馬も高校生なのねぇ」
「感傷に浸るのは後にして。ほら、ここ。尻尾の穴開けなきゃ」
「はいはい。あんたは小さい頃からそうだったわねぇ」
母は慣れた手つきで裁縫箱を取り出した。
私服のズボンやスカートは、いつも母がこうして加工してくれていた。
でも、今回は違う。
「今回は自分でやる。……やり方、教えて」
「あら?」
「もう高校生だし、いつまでも頼ってられないから」
母は少し驚いた顔をした後、優しく頷いた。
チャコペンでの印の付け方、ミシンの速度調整、ほつれないための端の処理。
母の指導を受けながら、私は慣れない手つきでグレーのスカートにハサミを入れる。
カタカタカタ……。
ミシンの音がリビングに響く。
一時間後、私の尻尾にぴったりフィットする「天馬専用・雄英制服」が完成した。
「……よし。完璧」
袖を通し、スカートを履き、尻尾を通す。
鏡に映る自分は、どこからどう見ても「雄英生」だった。
*
夕暮れ時。 私は新品の制服を着たまま、河川敷に来ていた。
ボロボロのゴールポストと、タイヤの跡が残る土のグラウンド。
ナガンさんと特訓した、あの場所だ。
「……似合ってるかな、ナガンさん」
誰もいない空間に問いかける。
返事はもちろんない。今はもう、彼女はここにいないのだから。
私は鞄を置き、革靴からランニングシューズに履き替えた。
「確認……しとかなきゃね」
私は軽く屈伸をし、意識を集中する。
試験の時のような、あの「変身」ができるかどうか。
「…………」
瞼を閉じ、強く念じる。
イメージするのは、あの紫の勝負服。
だが、何度試しても、身体が熱くなるだけで、服が変わることはなかった。
「……やっぱり、無理か」
UIの『継承』タブもグレーアウトしたままだ。
どうやら、あの変身は「誰かを本気で守りたい」という極限状態か、もしくは何らかの条件が揃わないと発動できないらしい。
『集中力』のような通常スキルとはわけが違う。
「ま、簡単に最強モードになれたら苦労しないよね」
私は苦笑し、靴紐を結び直した。
でも、道筋は見えた。
いつかあの力を完全に自分のものにして、いつでも引き出せるようにする。
それが、雄英での私の課題だ。
私は夕陽に向かって走り出した。
制服のスカートを翻し、尻尾をなびかせて。
「――見ててよ、ナガンさん」
風を切る音が、私への祝福のように聞こえた。
「私、雄英で一番になってみせるから」
ゲートは開いた。
ここからは、プロへの道だ。
次回
天馬「我が名は、駿河天馬!異世界より一番を獲りにこの地へ来た。そなた達は雄英の学び舎に集いし、私の一番を脅かすというライバルか!」
瀬呂「……なぁ、アレって」
切島「漢らしい名乗りだな! 時代劇か!?」
耳郎「いや、ジ〇リでしょ」
飯田「駿河君と言ったな! その自己紹介は著作権的に非常にリスキーだ! ヒーローとしてコンプライアンスは遵守したまえ!」
続く?