個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
相澤視点と一部天馬視点です。


No.8

(……今年は豊作か、それともただの派手好きか)

 

 グラウンドに並ぶ21名の生徒たち。

 どいつもこいつも、個性という名の「エゴ」を撒き散らしている。

 だが、見込みはある。

 特に上位陣のスペックは歴代でもトップクラスだ。

 

「結果を発表する。トータル成績の順だ」

 

 俺は手元の端末を操作し、ホログラムを空中に投影した。

 口頭で説明するのは時間の無駄だ。

 

 ザッ、と並ぶ名前と数値。

 

 1位:八百万 百

 

(創造による適応力は万能に近い。文句なしのトップだ)

 

 2位:轟 焦凍

 

(推薦入試組。身体能力も高いが、氷結による推進力の応用がずば抜けている)

 

 3位:駿河 天馬

 

(……特(・)例(・)。基礎身体能力のバランスはトップクラス。持久力、瞬発力、パワー、全てが高水準でまとまっている。ボール投げの708mが効いて3位に食い込んだか)

 

 4位:爆豪 勝己

 

(センスの塊だが、柔軟性に欠ける。……そして何より)

 

「……は? 4位……?」

 

 爆豪が、信じられないものを見る目で順位表を凝視していた。

 肩が震えている。

 無理もない。入試1位のプライドが、推薦組と、そして自分より下だと思っていた「ポッと出の女」にへし折られたのだから。

 

「あ~あ、お山の大将に勝っちゃった」

 

(オイオイ…頼むから円滑に進めさせてくれよ…)

 

「あァ!? なんで俺があの馬女より下なんだよ!! ふざけんな!!」

 

 駿河に掴みかかろうとする爆豪を捕縛布で拘束した。

 だが、駿河は涼しい顔で――いや、少しだけ挑発的に唇の端を吊り上げていた。

 

「女の子の胸ぐらに掴みかかろうとするなんて随分と熱烈なアプローチだね。でも順位は順位だよ、爆豪くん。……ごめんね、私僅差でも突っかかってくるような格(・)下(・)には興味ないから」

 

「テメェ……!」

 

 一触即発の空気。

 どちらが先に動くかといったところで俺は捕縛布を持つ腕の力を強め爆豪を駿河から引き離す。

 

「暴れるな。時間の無駄だ。ったく、何度も個性使わすなよ…俺はドライアイなんだ」

 

 俺は目薬を差し、全員を見渡した。

 そして、最下位で震えている緑谷出久に視線をやる。

 

「ちなみに除籍ってのは嘘だ」

 

「「「ええええええええ!?」」」

 

「君らの最大限を引き出すための『合理的虚偽』だ」

 

 全員が脱力し、安堵の声を上げる。

 だが、俺の中では冷めた計算が続いていた。

 緑谷出久。あの「指先だけ」の制御。見込みゼロではないが、扱いづらい。

 そして、もう一人の問題児。

 

「……これにて終わりだ。教室にカリキュラム等のプリントがあるから目を通しておくように」

 

 生徒たちがゾロゾロと更衣室へ向かう。

 緑谷にリカバリーガール(ばあさん)の元へ行くよう指示を出し、もう一人の問題児(駿河天馬)、その背中に声をかける。

 

「駿河。お前は残れ」

 

 ピタリ、と彼女の足が止まった。

 振り返った彼女の瞳には、怯えではなく、どこか「来るべきものが来た」という覚悟の色があった。

 

「……面談だ。着替えたら生徒指導室に来い」

 

 彼女が頷き更衣室へと向かうのを確認し、俺は踵を返した。

 校舎の影、死角になっている通路へ足を踏み入れると、そこで思いがけない人物から声を掛けられる。

 

「相澤くんのウソつき!」

 

 声のする方を向くと、角から筋骨隆々の金髪男が姿を現した。

 No.1ヒーローのオールマイトだ。

 

「オールマイトさん…見てたんですね…暇なんですか?」

「『合理的虚偽』て、エイプリルフールは一週間前に終わってるぜ」

 

 オールマイトは豪快に笑う。

 このNo.1ヒーローは、ヒーローとしては一流だろうが教師としては素人以下の初心者だ。

 話を聞けば「君も緑谷に可能性を感じた」なんてくだらないことを言う。

 

(君も…?まったくいち教師が特定の生徒に対して肩入れするなんて)

 

「随分と肩入れするんですね…?教員としてどうなんですか、それは」

「あ、ああ、そうだった。……もう一人の『彼女』のことだ」

 

 ごまかすようにオールマイトの視線が、グラウンドを歩く少女――駿河天馬の背中に向けられる。

 

「駿河少女。……彼女もまた、素晴らしいヒーローになる素質がある。だが……」

 

 オールマイトの声色が、少しだけ曇る。

 

「君が彼女を呼び出したのは、例の件かい?」

 

「……ええ」

 

 俺は懐から目薬を取り出し、点眼した。

 

「ボール投げで見せた不可解な挙動。……入試前に校長から聞かされていた『懸念』が、現実味を帯びてきました」

 

「根津校長から……」

 

 俺の脳裏に、数週間前――入試直前の校長室での会話が蘇る。

 

          *

 

 ――2月上旬、入試直前の校長室。

 

「A組を21人編成にしてほしいのさ」

 

 紅茶の湯気が立つデスクの向こうで、根津校長は開口一番そう言った。

 

「定員オーバーですよ。それに合理的じゃない」

 

俺が即答すると、校長は「まあまあ」と笑いながら一枚の資料を差し出した。

そこに映っていたのは、馬の耳のようなものを持つ少女の写真。

 

「駿河天馬。……本来なら、彼女には『推薦枠』を用意してもよかった。ある人物と……そして公安委員会からも、直々に『入学させてほしい』と強い要請があったからね」

 

「……コネ入学ですか。雄英も地に堕ちましたね」

 

 俺が毒づくと、根津校長はヒゲを揺らして笑った。

 

「まさか! 私がそんな不合理を許すと思うかい? ……だから条件を課したのさ」

 

 校長は資料をトントンと指で叩いた。

 

「彼女には一般入試と同じ日に、同じ試験を受けてもらう。そして、正当に合格ラインを超えた場合のみ入学を許可する、とね」

 

「なら、普通に一般合格扱いでいいでしょう。なぜわざわざ特(・)例(・)なんて枠を作るんです」

 

「彼女のために、他の未来ある若者の席を一つ減らしたくなかったのさ」

 

 根津校長は事もなげに言った。

 

「雄英の定員は決まっている。彼女が優秀であればあるほど、本来なら40番目に滑り込めたはずの子が弾き出されてしまう。……それは教育者として忍びない」

 

「だから、定員外の『41人目』として枠をこじ開けた、と?」

 

「そういうことさ。……それにね」

 

 ここからが本題だと言わんばかりに、校長の声のトーンが下がった。

 

「彼女を正規の生徒と区別し、あえて君のクラスに君に任そうとしたのには、もう一つ理由がある」

 

「……公安絡み、ですか」

 

「そうさ。彼女の個性に関して、公安からある懸念が報告されている」

 

 校長が、黒い瞳で俺を射抜いた。

 

「複数個性の所持疑惑」

 

「……は? 複数個性?」

 

 俺は呆れた声を出した。

 都市伝説じゃあるまいし。

 

「通常なら推薦入試で活躍した轟君のような複合個性と判断するところさ。だが、観測したデータが歪すぎる。……もし彼女が、AFOのような巨悪になりえる存在だとしたら?公安はそう判断したのさ」

 

「……ただの女子中学生が、ですか」

 

「可能性はゼロじゃない。だからこその特(・)例(・)であり、A組指定なんだ」

 

 根津校長は真剣な眼差しで俺に告げた。

 

「もし彼女の中身が暴走し、制御不能になった時……即座にその力を消せる人間がそばにいる必要がある。頼めるかい? イレイザーヘッド」

 

          *

 

「……あの時は、校長の考えすぎだと思っていましたがね」

 

 誰にともなく呟いた。

 

「異形型の彼女が、俺の『抹消』で身体制御を失った。……あり得ない話です。彼女の中には、確実に『馬』とは別の独立した力がある」

 

 校長の言っていたオカルトじみた懸念が、黒に近いグレーへと変わった瞬間だった。

 

「自壊する緑谷出久に、中身の知れない駿河天馬。……今年のA組は、とんだ問題児集団になりそうだ」

 

 オールマイトは申し訳なさそうに、けれど信頼を込めて笑った。

 

「すまないね。だが、君なら彼らを導けると信じているよ」

 

「買い被りすぎです」

 

 俺は彼に背を向け、生徒指導室へと歩き出した。

 

     *

 

 放課後の生徒指導室。

 無機質な長机を挟んで、俺と駿河天馬は対峙していた。

 彼女は姿勢良く椅子に座り、まっすぐに俺を見ている。

 肝が座っている。やはり、ただの中学生上がりじゃない。

 

「単刀直入に聞く」

 

 俺はコーヒーを一口啜り、彼女の目を覗き込んだ。

 

「ボール投げの1投目。……お前、何をしようとした?」

 

「……集中して、全力で投げようとしただけです」

 

「言葉を飾るな」

 

 俺の声が低く響く。  彼女の眉がピクリと動いた。

 

「俺は直感した。投げる直前、お前が個性を使いボールを投げる動作とは別に何かに意識を向けていることに、……だから消した」

 

 俺の個性『抹消』は、発動系や変形系の個性因子を一時的に停止させる。

 異形型である彼女の耳や尻尾は消せない。

 本来なら、俺が睨んだところで、彼女の身体能力に大きな変化はないはずだ。

 

「だが、お前は消された瞬間、まるで糸が切れた人形のようにバランスを崩した。……46メートル。あれが、お前の地力か?」

 

「…………」

 

 駿河は黙り込んでいる。

 俺はさらに言葉を重ね、彼女の反応を観察する。

 

「通常、複数の特性を持つ個性は複合個性として処理される。轟のようなケースだ。お前の場合も、『馬』の身体能力に、何かしらの増強系の個性が付随した複合個性……と診断することもできるだろう」

 

 そこで一度言葉を切り、俺は鋭い視線を向けた。

 

「だが、お前のは妙に馴染んでいない」

 

「……え?」

 

「生まれつきの複合個性なら、息をするように両方を扱えるはずだ。だがお前は、1投目でそのプラスアルファを消された瞬間、パニックを起こして身体制御を失った。……まるで、後付けされた部品が急に動かなくなったようにな」

 

 駿河の顔色がさっと青ざめた。

 図星か。

 根津校長が言っていた前情報と、今のちぐはぐな反応を合わせれば、結論は一つだ。

 

「お前の中には、個性とは別の力が独立して存在している。……そうだろ?」

 

(……やっぱり、先生にはわかってるんだ)

 

 一方、駿河天馬の内心はパニック寸前だった。

 バレた。完全にバレた。

 先生の言う独立した別の力……それはつまり私が任意で発動する『スキル』のことだ。

 異形型の肉体とは別の、システム由来の力。

 それを使おうとした瞬間を、先生は正確に感知し、消去した。

 つまり、この人は私の「ウマ娘としての肉体」だけでなく、「ゲーム的なシステム」の存在にまで勘づいている。

 

(スキルの使用タイミングまで見抜くなんて……プロの観察眼、怖すぎる)

 

 俺は彼女の沈黙を肯定と受け取った。

 複数個性。AFOに関わる可能性か…。

 いずれにせよ、一人の少女が抱えるには重すぎる。

 

「……先生。もし、私が『持っている』としたら、除籍ですか?」

 

 しばらくの沈黙の後、彼女が口を開いた。

 試すような視線だ。

 

「いいや。雄英は来るものを拒まない。……だが」

 

 俺は身を乗り出し、彼女に釘を刺す。

 

「自分の力を把握しきれていない奴は、死ぬぞ」

 

 彼女の肩が震えた。

 

「1投目のように、そのプラスアルファが不発だった時、あるいは敵に封じられた時。……その瞬間に身体制御すら失うようじゃ、プロの世界では命取りだ」

 

「……はい」

 

「お前のそのフィジカルは武器だ。だが、その中身がわからない状態のままなら、それは時限爆弾でしかない」

 

 駿河は唇を噛み締め、深く頷いた。

 

(先生は、未制御の『スキル』に頼るなと言っている……)

(こいつは、未制御の複合ではないおそらくは別の個性に振り回されている……)

 

 互いの認識は決定的にズレている。

 だが、「現状の危うさ」に対する結論だけは一致していた。

 

「……今日の2投目。あれは悪くなかった」

 

 俺の言葉に、駿河が顔を上げた。

 

「小細工なしの、純粋なフィジカル。……お前の本質はそっちだ。別の力に頼りすぎるな」

 

「……! はい……ありがとうございます」

 

 彼女が深々と頭を下げる。

 俺の勘が正しければ、彼女は何らかの「補助機能」のような感覚でその力を使っている。

 まるでゲームのプレイヤーのように。

 だが、現実はゲームじゃない。身体は一つしかないんだ。

 

「話は終わりだ。帰っていい。……ああ、それと」

 

 部屋を出ようとした彼女の背中に、一つだけ付け加える。

 

「爆豪とは程々にな。校舎を壊されたら始末書の山だ」

 

「……善処します」

 

 彼女は苦笑いをして、部屋を出て行った。

 

(駿河天馬……)

 

 扉が閉まった後の部屋で、俺は手元の端末に目を落とす。

 そこには、根津校長から転送されてきた彼女の個人データが表示されていた。

 

【駿河 天馬】

【備考:公安委員会 監視対象案件】

 

 その赤い文字を見つめながら、俺は独りごちる。

 

「……校長も人が悪い。こんな厄介な『特(・)例(・)』を押し付けるとはな」

 

 緑谷出久に、駿河天馬。

 今年のA組は、とんだ問題児を抱え込んだもんだ。

 

「……ま、守ってやるのが教師の仕事か」

 

 俺は重い溜息を吐き、職員室に向かう。

 予感通り、波乱の1年になりそうだ。




面談後
天馬「ところで作者はなんで毎日投稿しなくなったんですか?」
相澤「あぁ、どうやら感(・)想(・)欄(・)で(・)の(・)鋭(・)い(・)ご(・)指(・)摘(・)に結構食らってたらしい」
天の声(作者)「やめて…言わないで…恥ずかしいから!」

続く?
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