呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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あけおめ!新年一発目からこのタイトルなのなんかアレだね!


幕間:私はロリコンではありません

青空が広がっている。快晴とまではいかないが、雲は少なく、いい天気と言えるような天気だ。

 

そしてその下で飛び交うのは……無数の銃弾。

 

「てめえら今日こそぶっ殺してやる!!」

 

「それはこっちの台詞だァ!!」

 

物騒な言葉も飛び交っている。

 

本日。青空の下。俺は銃弾飛び交う治安最悪の場所……ゲヘナ学園へとやってきていた。

 

理由は、先日ホシノ救出作戦にて風紀委員会に力を貸してもらったのでそのお礼(ちょっとお高いお菓子セット。左手の紙袋に入ってる)をしようと思ったからだ。

いやーしかし。噂以上に物騒だなゲヘナ。誇張とかなしでさっきから銃撃戦しか見てない。すごく怖いね!

 

まあ怯えていてもしょうがないので、とりあえず本校舎に入ることにする。風紀委員会の部屋ってどこだろう……ということで、廊下を歩いていくとそれらしき部屋にたどり着く。

 

コンコン、とノックをすると誰かがこちらに歩いてくる音が聞こえてくる。そして扉が開いた。

 

「はい、何のご用、で……」

 

「や。こんにちは」

 

出迎えてくれたのはアコだった。中を見ると、ヒナやイオリ、チナツもいる。じゃあ彼女たちにも挨拶しようとしたところで、突然バタンと扉が閉じられた。

 

コンコン。

 

「お帰りください」

 

「せめて用件ぐらい聞かない?」

 

扉の向こうから凄まじい敵意を感じる。確かに前は敵だったけど、今は先生と生徒だから許してください。

 

「アコ。入れてあげて」

 

「えっ!?ダメですよヒナ委員長!こんな奴相手にしてはダメです!」

 

挙げ句の果てにこんな奴呼ばわりだ。悲しい。

 

だが、そのうち再び扉が開いた。今度はヒナがお出迎えしてくれてる。アコは……何故かチナツに羽交締めされてる。

 

「うちのアコがごめんなさい、先生。何かご用かしら?」

 

「あー、先日のお礼をしようかと」

 

そう言って、持ってきていた紙袋を見せる。

 

「委員長!そいつの言うことを聞いてはいけません!」

 

「アコの言うことは一旦無視して大丈夫よ。とりあえず、中に入ってちょうだい」

 

「あ、はい」

 

ということで中に入ると、イオリからジトッとした目で見られた。

 

「……どうした?」

 

「!な、何でもない!」

 

絶対になんかある時のやつ。多分この前、足を舐めたことだろうなあ。でもアレは言われたからやっただけじゃん。許して。

 

「さ、先生。ここに座って」

 

「どうも」

 

出された席に座る。というか、そんな長居するつもりないんだけど何で俺は素直に座ったんだ?

 

まあいいか。

 

「改めて、先日は協力してくれてありがとう」

 

「そこまで感謝されるようなことじゃないわ。私たちは、あくまで犯した過ちを償っただけ。それに、敵はほとんど先生が倒していたしね」

 

「それでも、協力してくれて感謝してる。だから、こちらがお礼なんですけど」

 

言いながら中身を取り出す。少しお高めの和菓子や洋菓子などなど、美味しいものをたくさん持参しました。

 

「……これって、確か……?」

 

「ケーキもあるよー」

 

どんどんとお菓子を出す。その間ヒナはこちらをジィーッと見てくる。

 

「……どうした?」

 

「いえ、随分高いものばかりだと思っただけ」

 

「へえ。すごい偶然もあるもんだ」

 

全部のお菓子を出し終わった。用事は本当にこれだけだし、もう帰ってもいいんだけど……

 

「……それじゃあ、今から休憩にしましょうか。先生も、一緒にこれを食べましょう」

 

どうやら、風紀委員長さんは対談をお望みらしい。

 

「まあ、いいけどさ」

 

「イオリ。何か飲み物をお願い。私は食器を並べるわ」

 

「委員長!私がコーヒーを作りますよ!後食器も私が並べます!」

 

「……アコちゃんの作るコーヒー、あんまり美味しくないじゃん」

 

「イオリ?」

 

「お、お茶持ってきまーす!」

 

「アコ行政官。あまり暴れないでください」

 

「暴れてません!」

 

「……騒がしくてごめんなさい、先生。」

 

「いや、別にいいけど……」

 

なんか、思ったよりはみんな仲良さそうでよかったな。

 

それからなんか大きい円卓が出されて、その上にお皿が乗っけられる。席も並べられて、それぞれ座る。

 

ちなみに席順は右回りにヒナ、アコ、イオリ、俺、チナツだ。アコは席に縛られている。最初こそ抵抗していたが、ヒナがお菓子を食べさせてくれると分かった途端大人しくなった。

 

お茶会の準備もできたところで、ヒナが号令をした。

 

「それじゃあ、美味しく頂きましょう」

 

……というか、何で俺の皿にも乗ってるんだ?これお礼のはずなんだけど。

 

「時間を貰い受けるお代……ということで、食べてくれるかしら」

 

「……何で分かったの?」

 

「雰囲気がそう言っていたから」

 

すごいなこの子。俺仮面つけてるのに……仮面つけてるのに?あっやべ。

 

……まあ、ホシノにバレたからそこまで執拗に隠す意味も無くなったし、別に取ってもいいかな。今も仮面をつけてる理由は仮面=シャーレの先生になってるからだし。ということで仮面を取った。

 

「……整った顔立ちね」「普通に顔がいいのがムカつきます」「先生、そんな顔だったのか」「なるほど……」

 

うわ、何かムズムズする。

 

「俺の顔より、お菓子を食べな?」

 

そう言ったら、みんなお菓子を食べ始めてくれた。全体的に好感触な反応がある。厳選した甲斐があったな。

 

俺もお菓子を食べ始めながら、ヒナに問う。

 

「それで、俺から何が聞きたいの?」

 

「特に何が聞きたいとかはないわ。ただ、あなたがどんな人なのか興味を持ったの」

 

「あー……じゃあ、世間話でも?」

 

「そうね。何か話してくれると嬉しいわ」

 

「委員長!こんな奴に構う必要はむぐ」

 

「アコは少し静かにしましょう」

 

何か文句を言おうとしたアコの口がお菓子で塞がれた。納得いかない目をしているが、黙々とお菓子を食べている。ちなみに羊羹。

 

「それじゃあ……どうしよ。俺人に披露できる小話のネタとか無いよ」

 

「……私の足を舐めた件は?」

 

「どうせみんな知ってるでしょ?」

 

聞いたらみんな頷いた。悲しい。

 

「それでも敢えて話すなら……アレは不本意なものだったと弁解します」

 

「嘘つけぇ!!めちゃくちゃ嬉々として舐めてたじゃん!」

 

「そんなこと無いよ。イオリが舐めろっていうから仕方なく……」

 

「じゃあ何であの速度で舐めたんだよ!?」

 

「……この話はやめましょうか」

 

ヒナが恥ずかしそうにしている。

 

「ごめんな。ほら、イオリも謝ろう」

 

「何で私まで!?」

 

「最初にこの話題出したのイオリだし」

 

「ぐっ…………ごめんなさい、委員長」

 

「大丈夫よ」

 

……なんか、本当にいい子すぎるな。こういう子ほど、何か抱えてるってどこかで聞いたことがあるような……情報が抽象的すぎるな。

 

「それにしても、まるで別人ね」

 

「……俺が?」

 

「ええ。アビドスで会った時は、先生としての印象が強かったけれど……こうしてみると、何だか思ったよりも……」

 

「……思ったよりも?」

 

「何でもないわ」

 

「子供っぽいか?」

 

「!?なっ、」

 

図星か。

 

「何で……?」

 

「雰囲気がそう言っていたから。なんてね」

 

「……実際は?」

 

「俺が子供なのは本当だから。頑張って大人ぶってるけど、結局は君たちとそんな変わらないよ」

 

「……そういえば、先生は十七歳という噂を聞いたことがありますが……」

 

「ああ、それ本当だよ」

 

チナツの言葉に頷く。そうすると、ヒナはどこか驚いたようにこちらを見てくる。

 

「……十七歳?」

 

「うん。ヒナも同じだっけ」

 

「ええ、私も十七よ」

 

「……まあ!?私も十七ですけどね!?」

 

アコがまた騒ぎ出したが、再び菓子を口に突っ込まれている。今度は煎餅……煎餅丸ごとはキツくない?

 

「先生は、すごいわね」

 

「そうか?」

 

「そうよ。だって、本当なら私たちと同じように、ただの生徒でいていい年齢なのに……先生になって、人を助けるために動くなんて……本当に尊敬するわ」

 

「そうかな。自分では、それがやるべきことだと考えてるだけだからなあ……」

 

「……本当に、すごいわね」

 

尊敬の目でこちらを見つめるヒナ。

 

「でもさ、それってヒナもじゃない?」

 

「……え?」

 

「だって、ヒナだって、本当はただの生徒でいていいだろ?それなのに、風紀委員長として人を助けるために動いてるじゃん」

 

「いや、私は……」

 

「何をそんなに卑下してるのか知らないけどさ。ヒナだって俺と同じくらい……というか、俺より凄いと思うけど」

 

「やるじゃないですか」

 

アコが突然割り込んできた。びっくりした。ちゃんと煎餅食えたのかお前。

 

「……先生」

 

「ん?」

 

「その……ありがとう」

 

「……どういたしまして?」

 

何でか感謝されてしまった。まあ、いいことが起きたんならよかったね。

 

「しかし、世間話か……」

 

「先生!?まだその段階にいるのか!?」

 

何を話そうと考えていたら、イオリからツッコミが入った。

 

「え?」

 

「いや、え?じゃないだろ!今普通に話してたじゃん!!」

 

「……確かに」

 

「バカなのか!?」

 

馬鹿とはなんだ。先生になるにあたって、俺は必死で勉強したんだぞ。

 

「……まあ、まだお菓子も余ってますし。次のお話を聞かせてください」

 

「いや、だから俺には小話のストックがないんだよ」

 

「ハッ!先生と言えども所詮は十七の若造ですか!」

 

「お前もだろ」

 

「お、お前!?」

 

やべ、思わずいつもの口調でツッコミが出た。

 

「うーん……そうだ、ヒナの話でも聞かせてもらえないか?」

 

「確かに、先生の話を聞くぐらいなら、ヒナ委員長のお話を聞く方が百億倍有意義ですね。やるじゃないですか」

 

「これ貶されてんの?」

 

「貶しているに決まってるでしょう!?」

 

貶されてた。

 

「後、先生はヒナ委員長の呼び方を変えてください。呼び捨てじゃなく、ちゃんと敬語をむもご」

 

「アコうるさい」

 

今度はケーキ一切れいったんだけど。大丈夫か?

 

「先生、私の話を聞きたいって……」

 

「いや、俺にお話のネタが無いから、申し訳ないけどヒナに何か話してもらおうかなあと……ごめん、いくら何でも無いわ」

 

「い、いや。大丈夫よ」

 

「いいの?」

 

「ええ。なんでも聞いてちょうだい」

 

あ、俺が聞くんだ。いやそうか、話を聞くだもんな。言葉難しい。

 

「そうだなあ……普段何してるの?」

 

「普段は……まず、朝六時に起きて」

 

「うん」

 

「諸々の支度をしてから、すぐに学校に来て風紀委員会としての活動をするわ。それからは……」

 

「……それから?」

 

「それから……夜の二時頃、場合によっては三時頃まで活動をして、終わったら帰って明日の準備をしてから寝るわ」

 

「ん?……え、冗談?」

 

「?いえ、冗談じゃないけれど……」

 

え?いや、え???

 

え?????

 

いや、おかしいだろ。何がおかしいって……全部おかしいだろ。は?いや、ダメでしょ。何かしらの法に違反してない?

 

周りを見ると、みんなもショックを受けたように口元を抑えてる。初耳だったらしい。そりゃそうだよな、知ってたらこんな生活させないもんな!

 

「ヒナ」

 

「?どうしたの、先生?」

 

「とりあえず今日はお休みにしよう」

 

「え?」

 

「私、今から不良共鎮圧してくる」

 

「私もサポートします」

 

「!?い、イオリ!?チナツ!?」

 

「アコ」

 

「誠に遺憾ですが、言いたいことはわかります。私が書類作業をこなしましょう。ああでもヒナ委員長に何かあった場合は問答無用であなたを地獄に堕としますのでヒナ委員長を蝶よりも花よりも丁重に扱ってくださいというか私が書類作業をこなしつつヒナ委員長と一緒に休憩すればいいのではやっぱりそこ変わってください」

 

「よし」

 

「えっ、えっ?」

 

「じゃあ、行こうか」

 

「え???」

 

そういうことで、急遽「ヒナを休ませよう大作戦!」が始まるのだった。

 

 


 

 

「とりあえずは、お昼ご飯か?ヒナ、普段ご飯はどうしてるの?」

 

「い、いつもは食堂で食べたり……自分で作ったお弁当を食べたり……」

 

「そうか、なら思ったよりも食事情は……待て、自分で作ったお弁当?」

 

「え?」

 

「今自分で作ったって言った?」

 

「い、言ったけれど……」

 

マジかよ。少ないであろう自由時間もそんなことに使うとは……頑張りすぎって怖い。

 

「ちなみに今日は?」

 

「今日は……食堂で、済ます予定だったけど」

 

「なるほど……じゃあ、ひとまず食堂に行くか」

 

「わ、わかった……って、そうじゃなくて!先生!?私には、仕事が……」

 

「?」

 

「何で「何言ってるのか分からない」みたいな顔してるの……?」

 

いや、何言ってるのかわかんないし……というか、仮面つけるの忘れたな。まあいいか!

 

「ここか食堂……」

 

食堂と書かれた看板のついてる扉。開いて中に入る。

 

「それじゃあ早速……うわあ」

 

中は酷い有様だ。そこら中にご飯が溢れてるし、何なら銃を撃ってる音も聞こえる。食事を貰う列はめっちゃ長い上割り込みとか発生してるし……酷いなこれ。

 

「……普段こんな場所で食べてるの?」

 

「そ、そうだけど……」

 

頭痛くなってきた。この学園マジでヤバすぎる!

 

これいつか大幅に介入しないといけないか……!?と考えていると、生徒の一人がこちらを向いた。

 

「ん?……!?ひ、ヒナが来たあ!!」

 

「え?」「うわ、マジかよ」「今日いつもより早くね?」

 

「しかも男連れてる!!!」

 

「「「マジで!!??」」」

 

やっべ。そういえば仮面つけてないと先生だとわかんないんだった!

 

「くっ、仕方ない。逃げるぞ!」

 

「えっ、えっ、」

 

「ヒナと男が逃げるぞお!!」

 

「囲めー!!」「問い詰めろ!!!」「良いご身分だなチクショー!!」

 

このままだと何か非常に良くないことが起きるので、ヒナの手を手繰り寄せて、抱きかかえる。

 

「せ、先生!?」

 

「ちゃんと掴まってろよ!」

 

「え、それはどういう──」

 

呪力を足から放出して、全力で逃げる!

 

「!?わっ、な、」

 

「逃したか……」「ロケットみたいに飛んで行った……しかも横向きに」「男の方化け物すぎない?」「化け物の彼氏はまた化け物」「抱きしめあって逃避行とか漫画かよ」

 

そのまますごい速さで廊下を走り抜ける。走り抜ける?飛び抜けるかもしれない。

 

そしてそのうち、廊下の壁が見えてきたのでそのまま突き破る。ごめん!後で弁償はするから許して!

 

そして、そのままの勢いで飛んで行き……シャーレについた。

 

「……よし」

 

「?、??」

 

「ごめん。乱暴にしすぎた。大丈夫?」

 

「……あんまり、大丈夫じゃない」

 

「だよな!ごめん!!!」

 

ちょっとフラフラしてるヒナを支えながら、シャーレの中に入る。

 

「……何で、シャーレに?」

 

「いや、食堂がダメだったからご飯を作ろうとしたんだけど……台所がある場所思い浮かばなくて」

 

ソファにヒナを寝かせる。

 

「本当にごめん。ただでさえ疲れてるだろうに、こんなことしちゃって……」

 

「……うん」

 

「今からご飯作ってくるから、ここで休んでてくれ」

 

そう言って、台所まで向か──

 

「……ヒナ?」

 

ヒナが、俺の服を掴んでいた。

 

「え、あ。ご、ごめんなさい。何でもないの……」

 

……もしかして、ヒナも。

 

「その、これは違くて。私、ちょっと疲れてるかも……」

 

「いや、俺が悪かった。ヒナの言うこと聞かずに暴走しすぎたな」

 

ヒナのそばで屈んで、目と目を合わせる。

 

「ヒナは、俺に何をして欲しい?」

 

「……何を、って言われても……」

 

「俺にできることなら、何でもするよ」

 

「何でも……」

 

人って厄介なものだな。善意で動いてるつもりでも、それが人のためになってるとは限らない。ちゃんと人の意見を聞かないと、むしろ悪いことにもなりかねないから怖いものだ。

 

心の中で反省をしていると、ヒナがおずおずと話し始める。

 

「……それ、じゃあ」

 

「うん」

 

「その……頭を撫でて欲しい」

 

 

まあ、言われたなら撫でるか。

 

ヒナの白い髪に手を乗せて、できるだけ優しく動かす。サラサラだ。激務の中で髪のケアも完璧なことある?

 

「ん、……」

 

「……これで、いいのか?」

 

「うん……」

 

そのまましばらく撫で続ける。そうしていると、ヒナの目が段々閉じてきて、そのうち寝てしまった。

 

すぅ……すぅ……と規則正しい寝息のヒナ。聞いた話だと普段三、四時間しか寝てないらしいし、当然のことだな。いっぱい寝るんだぞ。

 

今のうちに、ヒナが目覚めた時いろんなおもてなしができるように準備を……おや、電話がかかってきた。

 

「もしも『先生!?ヒナ委員長に男がいたとゲヘナ中で話題になっているんですけど何やったんですかあなたアレだけヒナ委員長に何かあったり変な噂が流れた時は地獄に堕とすと言ったのに何ですか私の話を聞いていないんですかその耳では私なんかのお話は聞き取れないってことですかとにかく今すぐに詳細な事情説明を』電波が悪い」

 

切った。また電話がかかってきた。

 

「もし『なんで切るんですか?????』一回落ち着け。事情は話す」

 

ということで食堂でやらかしたことをかくかくしかじか。

 

『……なるほど。馬鹿なんですか?』

 

「面目ない」

 

『まあ、委員長に何か悪い噂が付き纏ってはいけないので、すでに噂を流した奴らは処分しています。また、実は単なる見間違いだったという旨の噂も流しているので、そこまで酷い事態にはならないはずです』

 

「ありがとうございます」

 

処分ってなんですか?と思ったが聞かないでおこう。

 

『本当にですよ。もっと感謝してください。第一あなたがやらかさなければ……はあ』

 

「今度またお礼を持って行きます」

 

『いや、来なくていいです……そういえば、今ヒナ委員長はどちらに?』

 

「ああ、ヒナなら俺の隣で寝てるよ」

 

『は?』

 

「え?」

 

めっちゃドスの効いた声。それからアコは少し黙った後、ゆっくりと俺に聞いてくる。

 

『……寝ている、というのは……ただ、普通に寝ている、ということですね?』

 

「いや、逆にそれ以外なんかある?」

 

『ふぅ……そうですよね。ヒナ委員長はお疲れですから……はい。分かりました』

 

「おう。それじゃあ、ヒナが起きた時のために色々準備するから……あ、そうだ。ヒナが好きなものとか知ってる?」

 

『私のコーヒー、ですかね』

 

「おっけー。じゃあバイバイ」

 

切った。さて、それじゃあコーヒーの準備もしておくか。

 

 


 

 

「んん、んぅ……」

 

体がなんだか重い。私は、何を……

 

「ん。起きた?」

 

「……せん、せい?」

 

目を開くと、先生がいた。目の前で、オフィスチェアに座っている。

 

「……私は……確か、頭を……!」

 

それから、何をしていたか思い出して、恥ずかしい気持ちが込み上げてくる。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「え?謝ることあった?」

 

「だって、私が言って……その、頭を撫でてもらったのに。その最中に寝てしまって……」

 

「いや、全然大丈夫だけど……」

 

そう言う先生は、本当に大丈夫だという顔をしている。この人は、表情に感情がよく出る。

 

「まあ、ずいぶんぐっすり寝てたなとは思うけど」

 

「え……?」

 

「ほら、今午後六時だし」

 

「!?」

 

確か、食堂を訪れたあたりが十二時だったから……大体六時間寝てる……!?

 

「っ、行かないと」

 

「どこに?」

 

「ゲヘナに……私がいないと、みんなが困るから……」

 

ソファから立ち上がる。

 

「先生。今日はありがとう。またいつか、こんな日が……」

 

「いや、行かせないけど」

 

「え?わ、」

 

歩き出そうとしたところで、先生が私の手を掴んで引っ張った。そのまま私は先生の膝の上に座らされる。

 

「今日はお休みだって言ったでしょ?」

 

「で、でも。私がいないと、みんなが……」

 

「……まあ、否定はしてあげれないよ。風紀委員会がヒナのおかげで回ってるのは事実だしな」

 

「だったら」

 

「でもさ。行っちゃう前にこれぐらいは見ておこう?」

 

そう言って、先生がスマホの画面を見せる。そこにあったのは、イオリやチナツからの先生へのメッセージ。

 

『先生!委員長はちゃんと休めてるか?多分あの人は、今も仕事をしなくちゃって思ってるから、こう言っておいてくれ』

『私たちの頑張りを、無駄にしないでくれってな!そしたら、委員長も休んでくれると思う』

 

『先生。委員長はちゃんと休めてるでしょうか?仮に仕事が気になって、うまく休めていないようでしたら「私達の思いを無駄にしないでください」という旨の言葉を言ってください』

 

「……これは」

 

「これがほぼ同じタイミングで来たから、びっくりしたよ。すごいいい仲間を持ったね」

 

……

 

「みんな、ヒナに休んで欲しいって思ってるんだよ。だから、せめて今日ぐらいは、ね?」

 

「……」

 

「全力で仕事をできるのは凄いことだけど、だからといって休憩を蔑ろにしちゃダメだよ。いっぱい働いたら、その分いっぱい休むべきだ。まあ、ヒナの仕事量を考えたら一日じゃあいっぱい休んだとは言えないけど……」

 

「……先生」

 

「ん、どうした?」

 

「えっと、その……」

 

正直、本当に私が休んでいいのか、わかっていない。二人はああ言っていたけど、でも私がいないとダメな気もしていて……

 

でも、少なくとも。二人……きっと、アコだって同じことを考えてるはずだし、三人の気持ちを無視することはできない。

 

「私……休んでみる」

 

「!、そっか……!」

 

そう言ったら、先生の顔がパッと明るくなった。三人だけじゃなかったのね。

 

「じゃあ、とりあえず何したい?どんな願い事も俺が叶えるよ」

 

「……それじゃあ、お腹が減ったから……ご飯、食べたい」

 

「よしきた。任せときなさい」

 

そう言うと、先生は私を膝から下ろした後、「こっちだよ」と私の手を掴んで歩き出す。

 

ついていくと、ダイニング、でいいのだろうか。そんな感じの場所があって、席の一つに座る。それから少しすると、先生がカレーライスを持ってきた。

 

「ということで、本日の料理はカレーです」

 

「……私が寝てた時に作ったの?」

 

「うん。じゃあ、食べようか」

 

手を合わせて、いただきます。

 

「……どう、かな」

 

「……おいしい……」

 

「よかったあ」

 

ほっとした顔をする先生。

 

……すごく美味しい。今まで食べた中で、一二を争うぐらいには。

 

「先生って、料理もできるのね」

 

「まあ、昔諸事情あってね。大体のことは並以上にできると自負してる」

 

「これは並以上の範疇を超えてると思うけれど……」

 

昔、何があったのかしら。

 

気になるけれど、詮索していい領分ではないような気もして、黙々と食べ続けた。

 

「……ごちそうさまでした」

 

「お粗末さまでした、と。じゃあ、次は何がしたい?」

 

「次は……」

 

あまり休んだことがないから、こういう時何をすればいいのかわからない。何かしたいけど、何もしたくない。そんな矛盾した気持ちを抱えてる。

 

「……何もしたくないなら、それでもいいけど」

 

「そういうわけじゃ、無いのだけれど……」

 

「うーん。あんまりシャーレには娯楽も無いしなあ」

 

そう言って、先生は席をたった。そのままどこかへ行こうとしている。何かないか、探しにいくつもりなのだろう。

 

「……行かないで」

 

「え?」

 

「え?……えっあっ、え、い、いやその、今のは」

 

気づくと言葉が溢れていた。私は、何を言っているの。落ち、落ち着いて。弁解を……

 

「今のは、違うの。なんだか、言葉が勝手に出てきて」

 

「ヒナって本当は寂しがりやだよね」

 

「!?!?!?」

 

「いや、そんな顔されても。寝る前だって、俺が行こうとしたの止めてきたし」

 

顔がすごく熱い。恥ずかしい。いつも我慢してたのに、なんで今日は。

赤くなってるだろう顔を見られたくなくて、俯く。

 

「まあわかるけどね。ほら、おいで」

 

「……?」

 

恐る恐る顔を上げると、先生が腕を広げていた。

 

「寂しい時は抱きしめるのが一番なのさ。おいで」

 

優しい声で、顔で。そう言ってくれる先生。

 

不思議なことに、普段なら絶対に相手にしない申し出を、この時は素直に受け入れていた。

 

先生に近づいていって、その胸に飛び込む。

 

「はい、ぎゅー。よしよし。いつも頑張ってて偉いね」

 

そう言って頭を撫でてくれる。労いの言葉をかけてくれる。

 

「せんせぇ……」

 

「どうしたー?」

 

「もっとほめて……」

 

「……ん?」

 

「ほめてぇ……」

 

気づくと、いつも……というか、今まで出たことがない甘い声が出ていた。

 

「……寂しがりやってより、甘えん坊の方だったのか」

 

「せんせい?」

 

「何でもない。ヒナはすごいなあ。毎日風紀委員長として、いっぱいお仕事頑張って、自分の時間を削ってまで人のために動けるのは本当にすごいよ。しかも、風紀委員のみんなから聞いたけど、成績もいいんだってな。勉強も頑張れて偉いよ」

 

「えへへ……」

 

「笑った顔も素敵だね。ヒナは可愛いしかっこいいし仕事をすごい頑張ってるし勉強もできるし性格もいいしで本当にすごいよ。ヒナがいるからゲヘナはギリギリ秩序を保ってる。いつも本当にありがとう」

 

頭を先生の胸に擦り付ける。

 

「……せんせいのいいにおいがする……」

 

「なんか恥ずかしいな。まあいいか。好きなだけ嗅いでいいよ」

 

「すきぃ……」

 

それからしばらくその体勢だった気がする。どれくらい経ったか、わからないけれど。だんだんと正気に戻ってきて……

 

これ、どうしよう。

 

私は本当に何をしていたんだ。あまりにも恥ずかしすぎる。何であんな甘えた声を出したんだ。すごく恥ずかしい。顔を上げられない。

 

でも、ずっとこのままってわけにもいかないから……意を決して、顔を離す。

 

「……ん、お終い?」

 

「……ええ、その。十分、堪能……じゃなくて。癒してもらった、から」

 

「そうか」

 

すごく気まずい空気。心なしか、先生も顔を赤らめてるような気もする。すごい恥ずかしい……

 

「えーーーっと……それじゃあ、次にして欲しいこととか、ある?」

 

「……ううん、もう大丈夫よ」

 

抱きしめていた手も離して、離れる。

 

「え、でも」

 

「本当に、大丈夫なの」

 

ちゃんと、目と目を合わせて、言葉にする。

 

「その。みんなのおかげで、ちゃんと休めたと、思う。前より体も軽い気がするし、頭もハッキリした気がする。だから、大丈夫」

 

「……」

 

でも、あまり見つめられるとまた恥ずかしくなって、結局目を逸らしてしまった。

 

「……本当の本当に、大丈夫なんだな?」

 

「ええ。それは本当よ。絶対に大丈夫」

 

「……俺から見ても、大丈夫そうだし……まあいいでしょう。よく休めたね」

 

「先生のおかげよ」

 

そう言うと、先生は穏やかに笑う。

 

「力になれたならよかった」

 

そう笑ってくれる先生を見ると、なんだか温かい思いが自分の中に芽生えたのを感じる。

 

「……それじゃあ、行くわね」

 

「え、送ってくけど」

 

「ごめんなさい。アレは私でもちょっと……」

 

「大不評だなアレ。ならしょうがないか」

 

大袈裟に頭を振る先生。そのまま、別れようとしたところで

 

「あ、そうだ。ちょっと待ってくれるか?」

 

「?」

 

「数分だけ。お願い」

 

「別に、いいけれど……」

 

どうしたのかしら、と待っていると、先生がカップを一つ持ってきた。

 

「コーヒーを一杯、いかがかな?」

 

それらしい言葉と、身振りをしてくれる先生。

 

「……ええ。せっかくなら、頂いていこうかしら」

 

受け取り、恐る恐る口をつける。深い苦味、だけどあまり苦手とは思わなかった。

 

「どう?」

 

「そうね……また、飲みにきても?」

 

「!……もちろん」

 

「それじゃあ、また必ず来るわ。だから……」

 

「?」

 

「その、いつまでも先生と呼ぶのも他人行儀だし。名前を……教えてくれないかしら」

 

ちょっとだけ振り絞った勇気。目を見て、問いかける。

 

「……九条カケルだ。改めてよろしく、ヒナ」

 

「ええ、よろしくね。カケル先生」

 

その日。私と先生は仲良くなった。




ちなみに俺も十七です(隙自語)

さて改めて。今年はエデン条約編の完結目指して頑張ろうと思います。あわよくば最終章突入できてるといいな。

そういうわけで。皆さんと関わり始めたのはつい一週間前ぐらいですが、今年もよろしくお願いします。

今新3Dみたけどイロハとイブキやんけ!万魔殿とも絡ませりゃよかった!まあこれ書いてるの16:02だからどうしようもないけどな!いつか書きまぁす!
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