度々俺は面白くない……と凹んでから、その度に髙羽の話にあった「売れるのはずっと面白いやつとずっと自分のこと面白いと勘違いできるやつ」という言葉を励みに頑張ってます。なんか違う気もするけど。
というか、上澄作品たちが凄すぎるだけだしね。うん。きっとそのはずさ。
と、いうことで。パヴァーヌ編はーじまーるよー。
14. 不思議な少女との邂逅
シャーレは、小さなお手伝いとかもする。
具体的に何してるのかと言うと、いなくなったペットの捜索をしたり、街の掃除をしたり、宅配便を配達したり……
要するに何が言いたいかと言うと、シャーレは世間から何でも屋さんとして認識されているんだ。
まあ、俺としては特に異存はない。基本的に何でもできるから、別に苦しいとか思ったことはなかった。
ただ、何でも屋さんと言うのは何でもするから何でも屋さんであるわけで……現在、俺は一つの依頼で頭を悩ませていた。
アビドスの時と同じように、手紙で送られてきた依頼。内容は、廃部の危機にある自分たちの部活を救ってほしいというもの。それだけならよかった。問題は……その部活が、ゲーム開発部であるということ。
白状しよう。俺、九条カケルは人生でゲームというものをやったことが一度もない。
正確に言えば、ボードゲーム的な何かはホシノやユメ先輩と遊んだことはあるのだが……いわゆる、ビデオゲームというのだろうか?そういうものを全く遊んだことがない。
理由は主に二つ。一つは、アビドスにいた頃は娯楽に金を使うことがなかったこと。そしてもう一つの理由は……ぶっちゃけ、そんな興味がなかったんだ。
このことをアロナに知られた時は、『先生……時代遅れですね』と憐れまれた。は???
しかし、知らないからといって見て見ぬ振りはできない。当然助けにいくのだが……未知を司る部活を助けることが、果たして俺にできるのだろうか……?
こういう時、シャーレが何でもできるみたいな風潮が無ければなあと、ふと思ってしまうのだ。というかいまだに俺が大人という誤解も解けてないし、本当にもう、どうしようね。
そんなわけで、俺はゲーム開発部のある、ミレニアムサイエンススクール……通称、ミレニアムにやってきた。
ミレニアム。ゲヘナ、トリニティと並ぶ三大マンモス校の一つで、特筆すべきはその技術力の高さ。
キヴォトスにおいて最新鋭、最先端の名を冠するものは基本ここから出ており、その影響力は計り知れない。
そんなすごい技術力を持つ学校の、ゲーム開発部。俺は何か助けになれるんだろうか……?
不安を抱えつつ、件の部室がある場所まで歩いていく。そろそろ着くな、大丈夫かなあ……
それから、ゲーム開発部の部室を見つけ、その扉を開こうと歩みを早くしたところで……何か、白くてデカいものが俺に飛んできた。
咄嗟に手で掴んで、その正体を探る。白くてデカい箱のようなものだ。何だこれ?どうやらそこの窓……というか、あそこはゲーム開発部の部室じゃないか?じゃあ、これってゲーム開発部のもの……?
恐る恐る、再度自分が持っているものを見る。……俺が掴んだ際、力が入りすぎたのだろうか。指が貫通してる……
「すみませーん!それ、私たちのプライステーション……えっ?」
「あっ」
ピンクの猫耳っぽいものをつけた、金髪の少女が部室から出てきて、そして俺の持ってるものを見て固まり、そして叫んだ。
「……プライステーションがっ、壊れてるぅ!!??」
「すみませんでしたあぁぁっっ!!!」
土下座した。
「本当にごめん。まさかそんな大事なものだとは思わなくて……」
「いや、先生が謝る必要はないです。全部投げたお姉ちゃんが悪いので」
土下座した後、もう一人、ピンクの子に瓜二つな緑の猫耳をした少女が部室から出てきて、事情を説明した後部室の中に入れられた。
どうやらあの白い箱はゲームをするのにすごく大事なものだったらしい。いつでも怒られる準備はできてたんだが、何でかピンクの子が怒られていた。
曰く、あの白いやつは据え置きのものらしく、普通は投げないのだと。へえー。
「……とはいえ、壊しちゃったのは本当にごめん。後で弁償するよ」
「いや、多分先生が掴んで壊したのは外側だけだからゲームするのに支障はないはずです……多分」
そんな奇跡ある?
「だとしても、見た目が壊れてたらなんか嫌でしょ。遠慮しないでいいよ」
「……そこまで言うなら、じゃあ……お願いします」
「任せて。ちなみにいくらぐらい?」
「●万円ぐらい……」
「結構高いんだね」
まあその程度で俺の貯金は崩せないけど。
そういうわけで、俺に関してはこの件の落とし前がつきそうなんだけど……
「……ところで、あの……ピンクの子は、何を?」
「ポ●モンの色違い厳選させてます」
「?」
「ミドリー!助けてえ!全然ダン●ルがボールに入らないよ!」
「えっもう色違い出たの!?早くない!?」
「ふふん、私の豪運にかかればこの程度……あーーー!また捕まらなかったあっ!」
……よくわかんないけど、二人とも納得してるみたいだし、いいか。
それからしばらくわちゃわちゃやってたけど、そのうち二人で「やったーーー!」と喜びの声を上げた。なんか成し遂げたらしい。よかったね。
「……そろそろ、本題に入ってもらっても……いいかな?」
「あっ……ごめん先生!忘れてた!」
「めっちゃはっきり言うじゃん」
パン!と手を合わせて謝ってくるピンクの子。一応声かけてよかった……
さて、そういうわけでまずはお互いに自己紹介をし合った。
全体的にピンクなカラーリングをしている、元気な子がモモイ。全体的に緑なカラーリングをしている、落ち着いた子がミドリというらしい。二人は姉妹で、モモイが姉なんだとか。
あとは、今ここにはいないけどユズという部長もいるらしい。彼女たちが、俺に依頼をしてきたゲーム開発部。
「……で、俺は何をすればいいのかな?実はビデオゲームとかやったことないんだよね……」
「えぇっ!?そんなの人生の十割損してるじゃん!じゃあ一緒にゲームやろうよ!ほら、代表的な名作ならここにはいっぱいあるから……」
「お姉ちゃん、本題はそうじゃないでしょ?」
「ハッ!そうだった……」
なかなか愉快で楽しい子達だな。
「ゴホン……じゃあ、先生!一緒に『廃墟』に行こう!」
「???」
「お姉ちゃん、もう少し説明しよう?」
「それもそうだった……じゃあ最初から順に説明するね」
ということでお話を聞く時間なんだけど……なんか、よくわからない。
生徒会四天王ってなんだ?ていうか生徒会に襲撃されたの?大丈夫?
え、もしかして何かの暗号だったりする?俺がゲームやってないからわからないとか……
何かしらゲームしてくるべきだったかと、後悔する俺の後ろから、なんか聞き覚えのある声がした。
「それに関しては、私から直接ご説明しましょうか?」
「そ、その声は!」
振り向くと、見覚えのある顔だ。
なんかモモイがまた何か言っている。冷酷な算術使いって何?
あっ、ユウカがこっち向いた。
「や、ユウカ」
「先生……はあ、こんな形で会うなんて」
なんか前チナツと会った時も同じこと言われた気がする。もしかしたらそういう呪いなのかもしれない。
それから、ユウカとモモイが話をし始めて、ゲーム開発部の置かれた現状が見えてきた。
ミレニアムで部活をやっていくには、どうやら部員が一定数いるか、あるいは一定以上の成果を出さなければいけないらしい。しかし、ゲーム開発部はそのどちらも満たしてないため、廃部の危機に置かれている……ということ。
とはいえ、何も成果を出してないというわけではなく、彼女たちが作ったゲーム……テイルズ・サガ・クロニクルというゲームは、何かの賞を取ったとのこと。
「じゃあ大丈夫なんじゃないのか?」
「……その反応を見るに、先生はご存知ないようですね。『テイルズ・サガ・クロニクル』……このゲーム開発部における、唯一の成果です」
「?だから成果があるなら、大丈夫じゃないのか?それとも、一定の基準を満たしていないとか?」
「どちらかというと後者ですね……『テイルズ・サガ・クロニクル』が受賞したのは、『今年のクソゲーランキング1位』です」
……よくわかんないけど、多分不名誉なことなんだろうな。
それからも、二人の話し合いは続く。その果てに、モモイは結果で示すと宣言した。どうやらそのための切り札もあるらしい。その切り札を用いて、「テイルズ・サガ・クロニクル」の続編、「テイルズ・サガ・クロニクル2」を、「ミレニアムプライス」に出すらしい。なんぞそれ?
聞けば、ミレニアムの中でも最大級のコンテストとのこと。それは今から二週間後にあるらしいので、それまでは廃部を免除する……ということで話がまとまった。要はすごい出来のゲームを作ればいいってことだな。俺には無理だ。
「……ふう。まさか先生の前でこんな、可愛くないところを見せてしまうことになるなんて……」
おや、ユウカが何やら呟いている。そんなに俺の前でいい格好したいのか。なんか先生になってから周りの人からの好感度がすごい上がるようになった気がするんだよなあ……
「そんな気にしなくてもいいのに。ユウカはいつも可愛いよ?」
生徒を肯定することは大事だ。自信がつきすぎるのは良くないけど、自信がなければできないことも多い。だから先生は褒めてあげて、生徒が自分を肯定できるようにしないといけないんだ。
先生の教えはいつも俺の心の中にある。あの人の意思は俺が継いでいくんだ。
「……ありがとう、ございます」
「?どういたしまして?」
「……ユウカにも心ってあったんだ……」
「モモイ」
「あっ、つい本音が」
「ビンタとゲンコツとチョップ……全部盛りね」
「選ばせてくれないの!?」
なんかモモイがユウカから攻撃を受けている。何したんだ?
「ふう……それでは、次はもっと違った、落ち着いた状況でお会いしましょうね、先生。それではまた」
「またねー」
そして、ユウカは帰って行った。
「……それにしても、先生はすごいですね。大人ってあんな風に口説くんだ……」
「?何の話?」
「しかも無自覚!?鈍感系主人公とか……ゲームの中だけの話じゃなかったんだ……」
また暗号だ。よくわかんない。
「……それで、モモイ。さっき言っていた切り札って何かな?」
「いてて……それはもちろん、先生のことだよ」
「え゛」
俺ゲームのこと何もわからないって言わなかったっけ!?
「ああいや違くて!話を戻すと、私たちの目的は『廃墟』にあるの」
聞くところによると、「廃墟」と呼ばれる、かつて連邦生徒会が立ち入りを禁止していた危険な地域に「G.Bible」という、最高のゲームを作れる秘密の方法が入っているものがあるのだと。
ただ、「廃墟」は本当に何もかもが未知数な危険な場所らしく、そこを安全に行くために俺の力が必要……ということだった。
よかった。そういう方面なら俺も活躍できる。
「了解。任せなさい」
「ぃやったー!じゃあ、早速行こう!」
「え、今?」
「先生……明日って、今なんだよ」
「???」
「お姉ちゃん、先生そのネタわかってないみたい……」
「えっ!?先生●ョジョわかんないの!?」
「ゲームは本当に知らなくて……」
「ゲームじゃなくて漫画だよー!」
……俺は、もしかしたら十七のくせにそういうものに疎い、時代遅れなのかもしれない。何となくホシノが一人称をおじさんにしていた理由がわかった気がして、悲しくなった。
まあ、そんなこんなありつつも「廃墟」までやってきたわけなんですけど……
何か、正体不明のロボットが常時徘徊している。危険とはこういう意味だったのか……?
どうやら二人はあんまり戦闘したくないらしく、俺たちは隠れながら「G.Bible」を探している。
ロボットどもは俺たちには理解できない……機械語、とでも言うのだろうか?そんなもので会話をしている。壊れたオートマタとかとはまた違う、意思のある脅威。なかなか不気味で怖いな。
隠れている間、モモイが「廃墟」についてまた語り出す。ここを封鎖していたのは、正確に言えば連邦生徒会ではなく、連邦生徒会長だったのだという。文字が一つあるかないかの違いだが、この差は非常に大きい。組織として危険を認知していたか、個人で危険視していたかで話は全く変わってくるのだ。
失踪した連邦生徒会長。一体何者だったのか……
そして、ヒマリという生徒が言うには、ここはキヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる場所だと。その子はよく知らないが、なんか凄そうなので多分言っていることはあっているのだろう。
だからどうしたって感じだけどな。俺たちにとってはここはロボットが徘徊しているだけの、変な場所ってだけだ。
しかし、いつまで隠れていよう。このままだとここで野宿になるなあ……なんて考えてたのだが、おや、今ロボットと仮面越しに目が合ったような……ん?
「……あれ、なんか包囲されてない?」
「え?やだなぁ先生。そんなわけないじゃん」
「お姉ちゃん!後ろ!後ろ!」
「え?そういうネタ?」
「違うってば!本当に後ろにいるよ!」
そう言われたモモイの後ろには、たくさんのロボットたちが……
「うわわわわあああぁぁぁ!!!???」
「いつの間に……!?」
やばい、どこかになんかないか……いや抽象的すぎるだろ!
あっでも、なんか工場っぽいもの見えたな!ひとまずあそこに行くか!
「二人とも、聞いてくれ!あっちの方にある工場っぽい場所に避難する!指揮は俺がするから急ぐよ!」
「わ、わかった!」「わかりました!」
そういうことで、ロボットの軍勢から逃げていく。おわっ、めっちゃ銃弾!後ろを振り向くわけにはいかないな。
立ち塞がるロボットたち。ロボットらしく統制も取れていて、なかなか厄介だが……モモイとミドリも負けていない。姉妹コンビネーションで敵を蹴散らしている。
とにかく脇目も振らず逃げ続け、何とか工場に到着した。ここなら入り口は限られているから、相手は少しずつしか入ってこれない。ここで数を減らす……!
そう思って、振り向いたのだが……何故か、さっきまであんなに追いかけてきていたロボットたちは、興味をなくしたように散っていた。
「……どういうことだ?」
「あれっ、ロボット追ってきてない……?何でか分かんないけど、とにかくラッキ〜、で良いのかな?」
「良くないよ!うわあああん!もういや!いったいなんでこんなところで、ロボットたちに追われなきゃいけないの!」
一安心……と思っていたら、ミドリに限界が来てしまった。急いでミドリの方に向かって、頭を撫でる。
「よーしよし。落ち着いて、俺がいるから大丈夫だよ」
「うぅ……先生あったかい……」
そしたら抱きつかれた。よしよし、こわかったね。
「ほら、深呼吸しよう。息吸って?」
「すぅーーー……」
「吐いて」
「はあぁぁぁ……」
「今度はそれを三三七拍子でやってみよう」
「すぅ……今なんて言いました?」
よし、落ち着いたな。
「しっかし……ここは本当に何なんだ?」
「うーん?よくわかんないねぇ」
「これってテンションの切り替えについてけない私が悪いんですか?」
ひとまず適当に歩いてみるか。そう考えて、一歩踏み出したところで……
『接近を確認』
「ん?」
何やら、部屋全体に声……というよりは、機械音声的なものが響いた。
『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』
「え、え!?何で私のこと知ってるの?」
『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』
「私のことも……一体どういう……」
『対象の身元を確認します。九条カケル、資格がありません』
「ありゃ、俺もダメなのか」
「へぇー、先生ってそんな名前だったんだ」
「まあね」
しかし、何なんだこれは?
『対象の身元を確認します……◼️◼️先生』
「え?」「……何今の……音……?」
……は?
「あれ、っていうか先生って、先生のことじゃないの?」
「うーん?何かややこしい……先生?」
まさか、見えてるのか?
『資格を確認しました、入室権限を付与します』
「えぇっ!?」
「え、どういうこと!?先生はいつからこの……先生?」
馬鹿な、何故機械がそこまで認識できる?そんな簡単に認識できる領域ではない。ただの技術じゃ百パー無理だ。ならば、高度な技術に加えて、何か……神秘、とか?
いや、そこはどうでもいい。何でそんなものがここにある?もしかしてここは、迂闊に立ち入って良い場所では……
「せ、先生?大丈夫?」
「すごく、汗が出ていますけど……」
「っ、悪い。少し考え事してた」
『才羽モモイ、才羽ミドリ、九条カケルの三名を、先生の「生徒」として認定、同行者である「生徒」にも資格を与えます。承認しました』
考えるべきは、この先何かヤバいものがあったとして……そこから、二人を逃す方法だ……!
『下部の扉を開放します』
「は?」
下部……まさか!?
咄嗟に二人を押して逃がそうとするも、遅かった。俺たちの下にあった、床に擬態していたハッチが開き、重力に引かれて全員落ちていく。まずい!
高さ次第では致命傷までいかずとも、動けなくはなる。最善は、二人をそれぞれ片手で抱き寄せ、俺だけが衝撃を受けること……!
幸い懸念していたほどの高さはなく、無事に着地できた。二人を地面に下ろしつつ、安否確認をする。
「二人とも、大丈夫か!?」
「う、うん!ビックリしたけど、先生が着地してくれたから平気!先生は!?」
「俺も大丈夫だよ。自分で言うのもアレだが、結構頑丈だからね……ミドリは?」
「……し、心臓……止まるかと……」
「ビックリしたよな、ごめん。怪我とかは?」
「そ、それは、大丈夫……です」
「そうか、よかった」
……この高さなら、別に誰でも怪我することは無かったな。となると、単に移動用の隠し扉……にしてももう少しなんかあるだろ!?急に落とすなよ!
「そんなに深いところまで落ちたわけじゃないみたいだけど……ん?……えっ!?」
先に行って、周りを見ていたモモイから疑問の声が上がる。
「ん……?どうしたのお姉ちゃん……?……えっ……!?」
それに追随したミドリからも、同じような声が聞こえた。
そこまで驚くようなものとは何だろうと、二人が覗き込んだ場所を俺もみる。
……なるほど、こりゃ驚きだな。
天から陽の光が差し込む。上を見上げれば、外まで穴が開いているようだった。
そして……目の前には、円形のスペースがある。外側の床の材質は、この施設全体に使われているような金属らしきものだが、一度内側に入ると雑草が生えている。
その、草に囲まれた、どこか失われた文明という雰囲気を醸し出す空間の中央。そこにある、小さな椅子に少女が座っていた。灰色の長い髪をしていて、服を着ていない。
近づいてみれば、その子は眠っている……いや、違うな。生気を感じないというか……まるで、電源の切れたロボットのようだ。
「二人とも、念の為近づかないで」
「うぇっ!?でも……」
「アレが万が一危険なものだったら、モモイたちには先に逃げてもらう必要がある。だから、頼む」
「……わかった」
この場に満ちる異様な雰囲気は、その可能性を感じさせるのに十分すぎた。
まずは、触れずに観察だけしてみる。特に異常はなし。次に、触れてみることにする。少女の肌は、少なくとも人間と変わらない。そのまま警戒しつつ、周りを見ていると、遠くから見ていたモモイが声を上げた。
「あれ?先生!そこに何か文字が書かれてない?」
「ん?……本当だ。よく見えたね」
「ふふん!ゲームばかりしてても、視力は落ちてないんだよ!」
「凄い気もするけど、誇らしげにいうことじゃなくない?……えーと……A L - I S……?」
「……アリスってこと?」
「……先生、アイの場所は1じゃないですか?」
「え?……本当だ。ミドリもやるね」
「えへへ……」
AL-1Sか……でもさっぱりわかんないな。あまりにも全てが未知数すぎる。
「……先生、その。その子が可哀想なので、服を着せてあげてもいいですか?」
「え?」
「予備の服は、いつも持ってきてるので」
どういうことだよとツッコミたいが、今はそういう場合じゃないな。この子には何があるかわからないから、申し訳ないけど断ろうとして、気づく。
……俺は、この子をどう思ってるんだ。正体不明の、危険視すべき存在なら、
俺は、この子も人として見ている。
「……わかったよ。俺はあっち向いてるから、終わったら言ってくれ」
「はい、わかりました」
明後日の方を向いて、考える。俺は何故あの子も人として見ている?何故、こんなにも油断している。
……ああそうか。この場で、ただ一人座っている彼女を見て、重ねたのか。
「……先生。終わりました」
「ん」
それから、彼女の方を向いて……何か、警報のような音が聞こえた。咄嗟にミドリを掴み、離れてたモモイのもとに連れて行く。
「ぅえっ?」
「えっ?……えっ!?先生、さっきあそこに……」
「静かに」
口元に人差し指を当て、静かにしてのジェスチャー。モモイが首を縦に振ったのを見てから、音の出所を探る。
音は、眠る少女から出ているようだった。再び近づく。
『状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します』
そう聞こえた後、眠り姫は目を覚ました。
……綺麗な、青い瞳をしている。その頭上にはヘイローも浮かんでいて、少なくとも外見は完全に生徒であるように見える。
彼女は、目を覚ました後、何をするでもなくただ目をパチパチとして、俺をじっと見ている。
「……状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか」
一度、口を開いた少女は抑揚のない、機械のような声と口調で話す。説明と言われても……
「……説明と言われても、ちょっと……先に、君が何者なのか説明してほしい」
そう問いかけると、少女は何か口に出そうとして……一度やめてから、再び言葉を発した。
「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」
……えぇ……
「……攻撃したりとかは……」
「否定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」
……接触許可対象ってどこまでだよ。俺だけなのか、モモイたちもいいのか……
「わ、私たちは、その……接触許可対象?っていうやつなの?」
「回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したと推定されます」
「……???」
「???」
こちらがハテナマークで返せば、向こうもハテナマークで返してきた。
さて、どうしようこれ。放っておくわけにもいかないし……かといって、連れて帰るのもな……
「……よし、決めた」
悩んでいると、何やらモモイが覚悟を決めたように呟く。
「先生。この子を連れて帰ろう」
「……理由は?」
何だかすごく嫌な予感がするが、決めつけるのはよくない。一度聞いてから判断を……
「ゲーム開発部の部員にする」
「……」
「お姉ちゃん……」
「ちょっと!?二人とも、そんなに呆れた顔しないでよ!?」
「いや……はあ。まあ、わかったよ」
「先生!?」「やった!」
……今のところは、特段何か異常があるというわけではない。この状況と、彼女の存在そのものが異常だと言われれば何も言えないけど。
だが放っておけば何か不測の事態に発展するかもしれない。となれば、今するべきはそばで見守ることだ。
そういうことで、俺たちはこの謎の少女を部室に連れ帰ることとなった。
ところでめっちゃ恥も外聞もなく言うんですけど評価ください(乞食)
よく高評価や感想がモチベに繋がってるって感じの言葉聞くと思うんですけど、実際高評価貰えたり、感想貰えるとめっちゃ嬉しいんですよね。
ということで評価してくれると嬉しいです。でも強要するのも良くないのでしたくないならしなくていいです……