呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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昨日の俺の乞食行為が効いたらしく、いっぱい評価付きました。ありがとう!!!乞食の影響じゃなくて素直に評価してくれた人もありがとう!!!

改めてこの作品を読んでくれてる皆様、感想をくれる人たち、評価をつけてくれる方々、お気に入りしてくれる皆んな。その他この作品に何らかの形で関わってくれる皆様に、心より感謝します。


15. ゲームをしよう

さて、俺たちは謎の少女を引き連れ、ゲーム開発部の部室に戻ってきていた。

 

「???」

 

相変わらずハテナマークを出しっぱなしの少女。というか、少女というのもなんか変だし、名前ぐらいつけたいな。

 

一方、モモイとミドリは、マジでこの子を部員に入れるのかでちょっと揉めている。それはいいんだけど……ミドリさん、首絞めるのはちょっとやりすぎじゃないですかね。

 

……ん、少女が落ちているものに興味を示している。何やら白い、コントローラーのようだが……あっ、口に入れようとしてる。

口に入れようとした手を止めて、その手から優しくコントローラーを取り上げる。

 

「ダメだよ。それは口に入れるものじゃないから」

 

「……???」

 

うーん。工場で見た時はロボットっぽいと思ったけど……こうしてみると、それよりは赤子みたいだ。

 

お、向こうで結論がまとまったっぽいな。モモイがこっちに寄ってくる。

 

「先生、とりあえずその子……アリスのことなんだけど」

 

「アリスって呼ぶことにしたんだ」

 

「……本機の名称、「アリス」。確認をお願いします」

 

「そうだよ〜。あなたはアリス!どう、気に入った?」

 

それに対して、アリスは少し無言で考えた後

 

「……肯定。本機、アリス」

 

と返した。よかったね。

 

「それで、アリス。私たちの仲間になって!」

 

「嫌だったら、拒否してもいいからね?」

 

どうやらアリスを部員にする方針で固めたらしい。とは言っても、本人の意思次第だけど……あっまた何か食べようとしてる。

 

「こら、お話は聞かないとダメでしょ」

 

「……???」

 

都合の悪い時だけ赤ちゃんになっちゃうのか?

 

「……というか、部員にするとは言うけど、できるの?アリスは、ミレニアムの生徒じゃないでしょ?」

 

「そこは任せてよ!どうにか偽装する方法ならあるから!」

 

「さいですか」

 

「……でも、本当に大丈夫なの?この子、さっきから周りのものを齧ろうとしてるし……」

 

「「大丈夫」の意味を確認……「状態が悪くなく問題が発生していない状況」のことと推定、肯定します」

 

「また機械っぽくなった」

 

「お姉ちゃん!やっぱり無理があるよ!この口調じゃすぐに疑われるって!」

 

まあ、今のままだと無理だろうな。このままゲーム開発部にもいれないなら、俺が預かるか……

 

そう考えていたのだが、彼女たちは諦めるつもりはなさそうだ。何かしらこの部を存続させたい事情があるらしい。とは言っても別の方法もあると思うけど……

 

結局、アリスは部員にする方で進めるらしい。モモイは学生証をどうにかしに行き、その間アリスに話し方を教えて欲しいとのことだった。

 

「とは言っても……どうしよう……先生は、何かありますか?」

 

「いやあ……地道にやるしかないんじゃない?」

 

「ですよねえ……子供用の教育プログラムって、インターネットに落ちてるかな……」

 

「……正体不明の物を発見、確認を行います」

 

「ん?」

 

アリスが何か見つけたらしい。見ると、「テイルズ・サガ・クロニクル」と書かれた……あれ、これが件の「クソゲーランキング1位」を受賞したとかいう……?

 

それを見たミドリは、せっかくだしこのゲームをやらないかとアリスに声をかける。それも勉強になるかもしれないと。

 

「……ここまでの言動の意図、完璧には把握しかねます。しかし……肯定、アリスはゲームをします」

 

「ほ、本当に!?ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」

 

「そういえば、「テイルズ・サガ・クロニクル」って二人で遊べるの?」

 

「いえ、一人用ゲームです……後、こう言ってはアレなんですけど、先生はコレを普通のゲームだとは思わないでくださいね」

 

「え?」

 

「先生はビデオゲームを遊んだことがないんですよね?だから、私たちのゲームでビデオゲームがどんな物なのか把握するつもりだったのかもしれないですけど……コレを一般的なゲームだとは絶対に思わないでください」

 

「あっ、はい」

 

自分たちでそこまで言うほどか。じゃあまあ、外れ値として楽しもう。

 

アリスが、何を話してるんだろうという顔をしていたので、「気にしなくていいんだよ」と頭を撫でると、「了解」と微笑んで返された。可愛いね。いや警戒を解くなよ。

 

そのうち、準備ができたみたいなので、アリスにコントローラーを持たせて、ゲーム開始。

 

「アリス、ゲームを開始します……」

 

画面に文字が映し出されていく。へえー。こんな感じなんだ。ミドリからの説明とかも受けつつ見ていく。

 

最初はチュートリアルというものがあるらしく、Bボタンを押してという旨の指示が画面に出される。そして、アリスは言われるがままにBボタンを押す……

 

すると、爆発音がして、〈GAME OVER〉という文字が表示される。

 

……???どういうことだ?まるで意味がわからんぞ……アリスも驚いた顔をしている。

 

「あははははっ!」

 

すると、後ろからモモイの笑い声。用事は済んだのだろうか。ミドリが聞くと、どうやら、用事をしにいったはいいもののもう誰もいなかったらしい。

 

「予想できる展開ほどつまらないものはないよね!本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」

 

何だそれ。いくら何でもクソすぎる……ああ、だから「クソゲーランキング1位」か。

 

「も、もう一度始めます……」

 

アリスの声が若干震えてる。大丈夫かな。

 

「再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

 

大丈夫じゃなさそうだな。

 

今度は、さっきの部分には引っかからず、無事にAボタンを押して武器を装備できた。そのまま画面の中の……キャラクターか。キャラクターを操作すると、唐突に画面が切り替わる。

 

どうやら戦闘をするらしい。水色の水饅頭みたいなやつが画面に表示されている。プニプニと言うらしい。かわいい。

 

「緊張、高揚、興味」

 

アリスが感じた感情を言葉にする。何だか、普通に面白そうだけど……

 

どうやら、攻撃はAボタンで行うらしい。秘剣:燕返し……二回攻撃するらしいけど、どんな技なんだろう。

そしてアリスがAボタンを押す。

 

「行きます、プニプニに対して……秘剣!つばめ──」

 

その瞬間。プニプニが銃を取り出し、それがアリスの操作していたキャラクターを攻撃した。そして再び〈GAME OVER〉……

 

どうやら、死んだらしい。銃弾一発で死ぬとか弱すぎないか?ほら、アリスもまた驚いて固まっちゃったよ。

 

「思考停止、電算処理が追いつきません」

 

すごいな「テイルズ・サガ・クロニクル」。まさか思考停止させるとは。ある意味ではすごい成果では?

 

「……リブート、再開します」

 

「頑張れー」

 

「今度は銃の射程距離把握に努めながら、接近しすぎないようにプニプニを排除します」

 

おお、なんかいけそう。ちなみにどうやって剣で銃を突破するつもりなんだ?

 

そう思ってたのだが、どうやら斬撃なるものがこの世にはあるらしく、それを駆使してアリスは見事最初の関門を突破するのだった。

 

それからも、数々の難関がアリスの前に立ちはだかった。

 

バグとやらで攻撃が一切通らない敵を、攻撃判定を置いておく?とかいう技で倒したり、体力の桁を二つ間違えたという最強の敵を、コンティニュー後も体力状況を維持するというバグ技で倒したり。

 

このゲームが普通でないことはよくわかる。敵への勝ち方が毎回正攻法を逸脱しているようなものばかりだし、ストーリーもよくわからん。母親がヒロインかつ前世の妻で、その妻の元に腹違いの友人とかいうパワーワードすぎる存在がタイムリープしてくるとか、マジで何言ってんの?という感じだ。

 

だけどそこにこそ、このゲームの魅力が詰め込まれているような気がした。その誰にも想像できない、飛び抜けたアイデアたち。それらは場合によっては異端だと叩かれることもあるだろう。

 

だけれど、そのアイデアたちは、俺たちに未知という面白さを教えてくれる。このゲームは、何かが違っていればすごいゲームになれた。そんな気がした。まあ、所詮は素人の意見だが。

 

ゲームを始めてからおよそ三時間。アリスは、数々の思考停止やエラーを重ねながらも、トゥルーエンドに到達した。

 

「こ、ろ、し、て……」

 

「よく頑張ったなアリス、おめでとう」

 

「あうぅ……」

 

「すごいよアリス!開発者二人が一緒とはいえ、三時間でトゥルーエンドなんて!」

 

本当によく頑張ったと思う。俺がプレイしていたら多分何回かモニターを破壊している。そんなこともせず、ただひたすらにトライ&エラーで頑張り続けたアリスは、まさに勇者だ。

 

それに、本来の目的も達成しつつある。この三時間のプレイを通して、アリスの喋り方が流暢になってきたのだ。

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」

 

……流暢に、なってきた。うん。機械的よりかはずいぶん良くなったと思うよ。

 

……おや、ミドリが何やらソワソワしている。

 

「と、ところでその……こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど……わ、私たちのゲーム、どうだった?面白かった!?」

 

期待の目線で見つめられるアリス。目を閉じて、思考をした後、言葉を吐き出す。

 

「……説明不可」

 

「え、ええっ!?なんで!?」

 

モモイがびっくりしている。アリスはじっくりと考えながら、少しずつ言葉を出す。

 

「……類似表現を検索。ロード中…………面白さ、それは、明確に存在……プレイを進めれば進めるほど……まるで、別の世界を旅しているような……夢を見ているような、そんな気分……もう一度……もう一度……」

 

必死に言葉を探すアリス。その瞳から、涙が溢れた。

 

「ええっ!?」

 

「あ、アリスちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

ただ、涙を流すアリス。それは、言葉に表せない感情を語ってくれるには十分なものだった。

 

「……ちゃ、ちゃんと、全部見てた」

 

どこからか、そんな声が聞こえた。見れば、部室に設置されていたロッカーが開いてる。

 

中から出てきたのは、赤い髪をした、厚着の生徒。

 

「ユズ!」

 

モモイが喜んだように声をかける。この子が、部長のユズか。

 

どうやら俺たちが廃墟から帰ってきた時からロッカーの中にいたらしい。かなりの人見知りのようで、多分俺やアリスがいたから出て来れなかったのかな?申し訳ないことをした。

 

ユズは、一歩一歩、ゆっくりとアリスに近づくと、絞り出すように言葉を発する。

 

「えっと、あの、その……あ、あ、あ、……」

 

「あ……?」

 

「……ありがとう」

 

そういう彼女は、本当に嬉しそうな顔をしている。

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて……泣いてくれて……本当にありがとう」

 

「???」

 

「面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」

 

……きっと、何度も否定されてきたんだろう。彼女は今、本当に嬉しそうにしている。

 

俺からも、言うべきかなあ。でもこの雰囲気に水を差すのもなあ。

 

「……とにかく、あらためまして。ゲーム開発部の部長、ユズです。はじめまして、アリスちゃん。それに、先生」

 

「ん。はじめまして。シャーレの先生です」

 

「……その、先生からみて、私たちのゲームはどうでしたか?」

 

おっ、向こうから話題を振ってくれた。

 

「……そうだな。まあ、素人の俺からみても普通じゃないことはわかったよ。とんでもない、って言葉がとてもよく似合うって感じだ」

 

「うっ……そ、そうですよね」

 

「でも、そこに面白さを感じた」

 

「……え?」

 

「奇想天外、イカれている。それは欠点ばかりじゃない。予想できないアイデアの数々は、見ているだけでもすごく面白かった。あまりにぶっ飛びすぎてるってのは否定しないし、実際そこが原因でダメだと認識されてるのかもしれないけど……そのぶっ飛び具合こそ、このゲームの最大の魅力だと思うよ」

 

「先生…………ありがとうございます……!」

 

「いいえ。こちらこそ、良いものを見せてもらったよ」

 

「……うわ、なんか……ちょっと私も泣きそう」

 

「お姉ちゃん……あんまりそんなこと言わないで。私もちょっとやばい……」

 

「先生が、三人を一瞬にして泣かした!この人でなし!」

 

「アリス。言いたいことはわかるけど普通に傷つくから人でなしはやめよう」

 

ちょっとわちゃわちゃしたけど、何とかみんな泣き止んでくれた。

 

「……えっと、それで……この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん。これからよろしくね」

 

「よろ、しく……?……理解。ユズが仲間になりました、パンパカパーン!」

「……合ってますか?」

 

「あ、うん。だいたいそんな感じ、かな」

 

ちょっと困惑した様子のユズだったが、今のアリスは、ゲームを楽しんでプレイしてくれたからこそだとわかったようで、すぐに笑顔になった。

 

その後、モモイ、ミドリ、ユズで次アリスにどのゲームをプレイさせるかで話し合っている。どんなゲームでも、アリスは楽しんでくれそうだけど。

 

それからはゲーム三昧だった。今アリスが遊んでいるゲームたちは、いわゆる名作に分類されるものらしく、それを見ながら俺も一般的なビデオゲームというものを学んでいく。

 

RPGやアクション、ノベルゲームからシューティング……ゲームと一口に言っても、多くの種類があるもんだな。

 

気づくと、時間も夜遅くなっていた。普通ならそろそろ寝た方がいいと言うところだけど……まあ、今日ぐらいはいいだろう。

 

そのうち、俺とアリス以外は寝てしまったが、アリスは今もゲームに熱中している。今プレイしているのは高難易度アクションゲーム。ゲーム性もストーリーもよく作られている名作だ。

 

「……」

 

「……先生。アリスはあなたに問います」

 

「ん?どうした?」

 

「何故、このキャラクターは泣いているのでしょうか」

 

味方キャラの一人が敵キャラを殺したが、味方キャラが泣いているシーン。その味方と敵は、過去恋人だったらしい。

 

「んー……愛ゆえに、ってところかな」

 

「愛……アリスには、それが理解できなかった」

 

「まあ、愛なんて言葉で表せるほど単純じゃないしね……このゲームとかどう?乙女ゲームってやつらしくて、これなら愛を学べるかも」

 

「ならば、この戦いが終わった時、アリスはそのゲームをプレイすると約束しよう!」

 

「よーし。頑張れー」

 

そして、アリスは目に見えて人間らしさというものを獲得していった。自分の感情を、自分の言葉で表現している。アリスは、人間になった。

 

たまに俺も協力したり、バトルもしたりしつつ、時は過ぎていき……気づけば、朝になっていた。

 

「うーーん……」

 

「お、ミドリが起きそうだ」

 

「ミドリも目覚めそうなのですか!?」

 

「食いつきがすごい」

 

それから、アリスはミドリのそばに座り、目覚めた彼女に一言。

 

「ようやく気が付いたか……無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいいな」

 

うん。実に流暢に話すようになったな!

 

ユズも目を覚まし、朝だなぁと感じていると、モモイが戻ってきた。

 

というのも、途中でモモイも目覚めて、アリスの学籍を偽造してくると言って走っていったのだ。帰ってきた彼女はアリスに学生証を渡している。どうやら偽造は無事成功したらしい。

 

「パンパカパーン、アリスが「仲間」として合流しました!」

 

そういうことで、アリスは正式に仲間となったと言っていいのだが……一つ、足りないものがあった。

 

それは「武器」だ。キヴォトスにおいて武器を持たない人間など現在の俺を除いていない。それがあって初めて、アリスはキヴォトスに生まれたと言える。

 

こちらも、モモイは策があるらしく、武器を調達するついでにミレニアムをアリスに案内することとなった。




作者お気に入りの高難易度アクションは「Celeste」と「Hollow Knight: Silksong」。「ロックマン」シリーズもかなり好き。
それ以外だと「Bloodborne」と「ドラゴンクエストビルダーズ2」がめちゃくちゃお気に入り。(隙自語)

みんなもやってみよう!と言いたいけど、「Celeste」と「Hollow Knight: Silksong」は生半可な気持ちで手を出しちゃダメだぞ。いやマジで。
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