呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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あと一日……!

所持してる石は一天井分……当てたいのはケイと臨戦アリスと臨戦ホシノとクロコ。つまり全員。

果たして、全員当てられるのか……俺にできるのか……?

「どちらもありうる……そんだけだ」

かっしー!

「音量上げろ!!生前葬だ!!」

かっしー!?


27. 静寂

こうして、補習授業部とのお話は終わりを告げる。みんなは合格し、それぞれの生活へと戻っていくだろう。そしてそれは俺も……とはいかなかった。

 

補習授業部関連は解決してはいるが……その実、ミカのことやナギサのことなど解決しなければいけない問題が残りまくってる。加えて割と暴れたせいで事後処理もあるし、ついでにエデン条約が近いのもあって、それ関連でも少し助力している。

 

つまり何が言いたいかというと、物語はまだ続いてるよってことだ。

 

正直どこから手をつけたらいいか分からないけど、解決していかないことにはどうしようもないので……とりあえず、俺はナギサの元に訪れていた。

 

事情説明は済んでるらしいけれど、実はまだ謝れてないんだ。今冷静に振り返るとアレはいくらなんでもヤバすぎた。

そのせいか今まで避けられてたけど、今回なんとかお話の機会を取り付けてもらうことに成功した。

 

いつものティーパーティー専用スペースに入り、ナギサを探す……までもなく、いつもの位置にいた。ナギサもこちらを認識して、目と目が合うとその顔色が一瞬で悪く……

 

「まずは、本っ当にごめん」

 

土下座した。

 

「!?せ、先生!?」

 

「いくら何でもやりすぎだった。ナギサの心をすごく傷つけてしまったし、消えないトラウマを刻み込んでしまった。信頼を裏切ったとも言えるし……とにかく先生としてあるまじきことだ。本当にごめん」

 

本当に申し訳ないという言葉しか出てこない。ちょっと意趣返ししたいと考えてはいたが、あれはちょっとのレベルを超えていた。先生失格すぎる……本当に申し訳ない。

 

「そんな、そこまでしなくても……元の原因は、私にありましたし……」

 

「それはナギサを傷つけていい理由にはならない。何度でも言うが本当にごめん……せめてもの償いとして、できることなら何でもやらせてくれ」

 

「……それはつまり、先生に何を頼んでもいい、ということですか?」

 

「あくまで俺ができる範囲にはなってしまうけど……そのつもりだ」

 

これで償い切れるわけでもないと思う。許されるとも思わない。ただ、これで安らぎを得てくれるのなら何でもしよう。

 

「……それでは……その。本当に、何でもしてくれるのですよね……?」

 

「うん。嘘はないと誓うよ」

 

「……分かりました。では……いえ、その前に一度顔をあげてくれませんか?」

 

お許しをいただいたので、ずっと床につけていた顔を上げる。

 

「では……そうですね……」

 

……一体どんなことを願われるだろうか。この命と言われたら……

いや、なに考えているんだ俺は。生徒のためなんだ。俺の命なんて些細なことだろ。

 

とにかく、判決を待つ被告人のように、黙って待ち続ける。

ナギサは考えるように黙って目を紅茶に向けていたが、願いが決まったのか改めてこちらを向き直してくる。

 

「……言い方が難しいのですが、私とお友達になってもらえませんか……?」

 

「分かっ……え?」

 

どんな罰でも受けるつもりだった俺だが、予想外の言葉を前に思わず待ったをかけてしまった。

その俺を前に、罰が悪そうにするナギサ。

 

「……ダメ、でしょうか」

 

「いや、ちょ、待ってくれ。ダメではないけど、え?それでいいの?」

 

「はい」

 

「いや、自分で言うのもあれだけど俺は君の心を傷つけた張本人だよ?」

 

「それでもです」

 

「……ナギサがいいなら、いいんだけど……本当にいいの?」

 

「諄いですよ、先生。本当にこれでいいんです」

 

「……分かったよ。でも、ナギサがお願いするならまだ何でもするつもりだから、あんまり遠慮しないでね」

 

しかし、友達か……うーん……友達……

ヒナと同じように接せばいいか?

 

「それじゃあ、改めて。俺は九条カケルっていう」

 

「?」

 

首を傾げるナギサ。

 

「友達になるなら、名前は知っておかないとでしょ?普段はシャーレの先生で通してるけど、それだと他人行儀すぎるしね」

 

「なるほど……呼び方などはどうしたらよいでしょうか?」

 

「別に好きに呼んでいいよ。単に先生のままでもいいし、本当に何でもいい」

 

「では、カケル先生と呼んでも構いませんか?」

 

「うん。全然大丈夫。改めてこれからよろしくね、ナギサ」

 

「はい、それではよろしくお願いします……カケル、先生」

 

とまあ、ナギサとの一件は一応これで一区切りということに「そういえば、少し疑問に思ったのですが」

 

「ん?どうしたの?」

 

「何故、先生は自分の名前ではなく「シャーレの先生」という肩書きで名乗っているのですか?」

 

「?何でそんなこと聞くの?」

 

「いえ、ふと疑問に思いまして……普通人に自己紹介する際、名前だけということや名前と肩書き両方で名乗るのはよくあることだと思いますが、肩書きだけというのはなかなか聞かないので……」

 

「まあ、そうだけど。別に俺という名前に意味はないと思ってるからなあ」

 

「意味がない……?」

 

「そ。何て言えばいいかな。先生という立場で、俺という個人はいらないと思ってるから」

 

「それは……公私を区別する、という意味合いでしょうか?」

 

「まあそんな感じじゃない?」

 

最後によく分からない問答こそ挟まったものの、改めてナギサの一件は一区切りとなった。

 

実は何でナギサがあんなこと望んだのか分かんなすぎてモヤってるけど……まあ、ナギサが満足そうだったからいいか、と納得させることにした。

 

さて、次は……アズサのお話でもしよう。

 

まず、アズサは実はセイア襲撃の実行犯だったらしい。それで、本来はセイアを殺すつもりだったらしいんだけど……元々アズサ自身アリウスの諸々に思うところがあったらしく、セイアからの助言をもらった結果、セイアの死を偽装し今に至るというわけ……とのこと。

 

何だっけか。アリウスの教義……「vanitas vanitatum omnia vanitas(全ては虚しいもの)」……だったか?アズサ自身それに共感しつつ、しかし思うところがあったらしい。全て虚しいからといって、足掻くことをやめてはならないと……

 

そういうわけで、アズサはアリウスを裏切った。

 

そしてトリニティも彼女の本当の居場所でない以上、事件が終わるとアズサをどうにかしないといけなかったのだが……そこを、シスターフッドの長「歌住サクラコ」が解決してくれた。諸々の件を考慮して、アズサをトリニティの正式な生徒にしてくれるとのこと。本当にありがたい限りだ。

 

これがアズサの話。

次は……セイアの話でも。

 

アズサに命を救われたセイアだったが、傷を負ってないわけではなかった。襲撃に際して爆発があったらしく、それで傷を負ったとのこと。

 

事件後、最初に彼女の元に辿り着いたのは救護騎士団団長「蒼森ミネ」で、彼女はティーパーティーの一員が襲撃された、という異常事態を鑑みてセイアを匿う判断をしたらしい。

実際、ミカがティーパーティーを裏切っていた以上素晴らしい判断だったと言えるだろう。

 

それで、その後トリニティ郊外にセイアと共に出て、二人以外誰も知らない場所にて療養しているとのことだが……セイアは未だ目を覚まさないらしい。体の傷は癒えてるのにも関わらず、ずっと眠り続けている……おまけに原因不明だと。

 

そしてそれが今も続いている……これがセイアの現状。

 

次は……ハナコについて話すか。

とはいっても語ることは少ない。

 

シスターフッドに何かの対価を払ったハナコだったが、その対価は「トリニティから退学しないこと」だったらしい。

 

何でそんなこと……?と聞いた時は思ったけど、冷静に考えれば補習授業部で信頼できる友を得なければ、ハナコはすぐにでも自主退学していたことだろう。それを憂いた故の対価だと考えると、納得がいく。まあその時点ではもうハナコに退学する気はなかっただろうけど。

 

信頼……といえば、ハナコと「信じること」について少し語らった。

 

いつか、ナギサも言っていたが……どれだけ仲を深めようとも、俺たちは他人にすぎない。その本心を知ることはできず、ならば信じることなど夢想にすぎないのか……

 

「んー……難しい話だけど……俺の意見を言うなら、結局真に人を信じることは無理だと思ってる」

 

「他人の本心を知ることはできないから、ですか」

 

「そうだね。けど、それでも人が人を信じるのは……信じたいって思ってるからなんだろうな」

 

「信じたいから、信じる?」

 

「そ。たまにいるんだよ、どうしようもなく信じてみたくなる人間っていうのが。そういう時、人は信じられるかどうかとか関係なく、そいつを信じたくなる。だから信じる」

 

「……つまりは、信じるかどうかは個人の尺度次第だと?」

 

「まあ、簡単に言えばそうなるかも。これが正解ではない……というか正解なんてないと思うから、あくまで解釈の一つね」

 

「いえ……少なくとも、私はそれが正解だと思います。だって、私も信じたくなってしまった人間ですし」

 

「……そうだな。俺もそう思うから、信じてもらうために色々やるんだ」

 

俺にとってはこれが正解なんだと、そう信じよう。

 

「ハナコは、俺のこと信じてくれてる?」

 

「もちろんですよ」

 

「そっか。ありがとな」

 

俺の言葉にハナコは笑顔を見せたが、何故かすぐにその顔を曇らせてしまう。

 

「……ところで、少し話は戻るんですけど」

 

「どうした?」

 

「先ほど、先生は信じたいから信じることについて、経験談のように話してましたが……先生にも、信じたくなった人がいたんですか?」

 

「ああ、まあね」

 

「どんな人だったんですか?」

 

「んー……そうだなあ。俺にとっては、光そのものみたいなやつ。あいつに出会わなきゃ、俺は碌な人生送ってなかっただろうな」

 

「それがホシノさん?」

 

「そう……あれ?名前出したっけ?」

 

「前のヒフミちゃんとのお話的に、そうかなあと思いまして」

 

「あー、ね。まあそういうこと」

 

「そうですか……」

 

声が暗い感じがして、ハナコの方を見れば同様に暗い顔をしていた。

 

「……何でそんな暗い顔してるの?」

 

「えっ?あっ……」

 

自分でも気づいてなかったのか、驚いた様子をみせるハナコ。その後すぐに手で顔を隠そうとする。

 

「俺のせい、かな」

 

「い、いえ。違うんです。これは、私が……私のせいで」

 

「なら、何でそんな顔してるのか教えて欲しい。ハナコのそんな顔は見たくないよ」

 

「……ごめんなさい。これは、言えません」

 

そうやって、無理して笑うハナコを見て。

 

「……そっか」

 

自分に嫌気がさす。

 

つくづく俺は力不足だと思う。何も分からないまま、他人を傷つけてしまう。他人に隠させてしまう。

 

俺がもっと強いなら、きっと誰にも悲しい顔はさせないのだろう。誰にも辛い思いを抱えたままにさせないのだろう。

 

俺はまだまだすぎる。もっと先生という立場に相応しくならなきゃ……

 

……ああ、話が逸れていたかな。ハナコの話をしてたんだっけ。とはいえこれ以上語ることもないだろう。

 

最後は……ミカの話を。

 

しかしこっちも語る内容がない。何しろ面会を完全に拒否されてしまってるんだ。

推測でもいいなら、彼女は少なくともティーパーティーを辞めることにはなるだろう。何なら退学までいくかもしれない。

 

ミカがやったことは許されていいものではないだろう。そこにどんな事情があれ、罪は罪なんだ。

だから、せめてその重荷を俺にも背負わせて欲しい。一人の辛さはよく知っている。

 

ミカを隣で見守って、そしていつかミカが心から笑えるようになった時は……ナギサたちとまた仲良くして欲しいな。

 

……本当に力不足だなあ。

 

もっとミカに寄り添っていれば、少なくとも今回の件は起こらなかったかもしれない。もっとナギサと話し合っていれば、みんな信じ合えてたかもしれない。

 

過去を振り返ってもどうしようもない。そんなことするぐらいなら未来を見た方がマシだ……俺は、よく自分にそう言い聞かせる。だが実際それを実践できたことはない。

 

一番の反例はユメ先輩のこと。ユメ先輩を失った日から、後悔しなかった日はない。毎日ふと思い出しては、救えなかった自分が憎くなる。

 

どれだけ後悔しても、何も変わらないのに。

 

……ダメだな、色んなことがありすぎて少し気持ちが不安定になってる。

一月弱一切寝てないんだ。そりゃあ鬱にもなるさ。エデン条約が終わったら、ちゃんと寝よう。

 

そういえば今更だけど、俺はエデン条約の調印式に参加するつもりだ。何でかって聞かれても……流石に行っとかなきゃいけない気がしたから、としか言えない。

 

で、そのためには当然トリニティとゲヘナ両方に出るよーって形式的に伝えにゃならんわけで……トリニティには報告し終わってるから、後はゲヘナに伝えにいくだけだった。

 

 

 

ということで。やって来ましたゲヘナ学園。一応表向きにはゲヘナの生徒会がエデン条約を進めてる所なので、今からゲヘナの生徒会長に会いにいく。

 

実はゲヘナの生徒会メンバーは一切会ったことないんだよね……ヒナによれば、風紀委員会と犬猿の仲らしく、生徒会長の羽沼マコトはシンプルに面倒臭い人で、後は飛び級して来た幼い子がいるとかいないとか……

 

まあ会えば分かるやろ。ということで会ってみた。

 

「キキキキッ!お前が「シャーレ」の先生か!」

 

「そうだよ。はじめまして。確かマコト……だったよね?」

 

「ほう、こちらの調べはついているということか……つまりは、このマコト様と協力したいと」

 

……?

 

「だが、そう易々と信頼するわけにはいかんなぁ……何せ、「シャーレ」の先生はあの憎っくき空崎ヒナとあんなことやそんなことをする仲らしいからな!」

 

……???

 

「はっ、万魔殿の情報もたかが知れたものですね。ヒナ委員長がそんなことするはずないでしょう!」

 

「なあアコ、さっきから何の「先生は黙って肯定しておいてください」あっはい」

 

アコの顔が今まで見たことないぐらい険しい。不用意に触れるとまずそうだ。

 

「マコト先輩……話を変な方向に捻じ曲げないでください」

 

そう言うのは、赤い髪をした少女。この子は……多分苦労人なんだろうな。マコトの所業に関して諦めたような表情してる。

 

「こちらの「シャーレ」の先生はあくまで、形式的な問題で私たちに会いに来ただけです。エデン条約にも参列されますので」

 

「……なるほどな……全て(ブラフ)だったというわけか……だが、その程度で我々万魔殿を出し抜いたと思うなよ?」

 

勝手に勘違いしただけなんだよなあ。

そのまま少し見つめ合うと、満足したのかマコトが背を向けた。

 

「よし、帰るぞイロハ」

 

「はい?もういいんですか?」

 

そしてマコトと赤髪の少女……イロハと呼ばれた子は去っていった。

 

「……何だったんだ」

 

「しょうもない連中ですよ」

 

「もしかしなくてもめちゃくちゃ嫌いだよね」

 

「当たり前でしょう。ヒナ委員長がいつもお忙しいのは十割あいつらのせいですよ」

 

本当に憎そうに語るアコ。この話題変えた方がいいな……

 

「まあ、何だ。久しぶりだね、アコ」

 

「もう会わなくてよかったのですが」

 

「元気だった?」

 

「無視しないでください」

 

アコはため息を一つ吐くと、「まあまあ、ですかね……」と答えてくれた。

 

「それにしても、先生もエデン条約に参列されるとは……」

 

「意外だった?」

 

「いえ、先生とヒナ委員長が接する時間が増えてしまうなと懸念しています」

 

「……」

 

「……何ですかその沈黙は」

 

「何でもない」

 

……嫌われてるのか判断しにくいんだよなあ……

 

「この後はトリニティに?」

 

「いや、さっき行ったとこ」

 

「なっ、いつの間に……!?風紀委員会の行政官である私が、そんな重要な情報を見逃していた……!?」

 

「たまにはそういうこともあるでしょ」

 

「ヒナ委員長の隣に立つ立場としては、一生の不覚です……最近忙しかったとはいえ、先生の行動を監視できていなかったなんて……」

 

……なんか不安定になってるか?表情が切羽詰まってるように感じる。

 

「あんま自分を責めるなよ?今の時期、そういうこともあるさ」

 

「……ふぅ……そうかもしれないですね……」

 

「落ち着いた?」

 

「認めたくありませんがね」

 

苦々しい……が、さっきよりは余裕のありそうな顔だ。

 

「ところで、ヒナは?」

 

「お帰りください」

 

「気になっただけだって。またお仕事?」

 

「……まあ、そうですね。所用でゲヘナの外に……」

 

「忙しそうだな……エデン条約が終われば、落ち着くと思うけど」

 

「そうだといいんですけど……」

 

……あれ、もしかしてアコってヒナが引退考えてるの知らないかこれ?

 

「……まあいいか。そろそろ帰るよ」

 

「そうですか。もう夜ですし、背後にはお気をつけください」

 

「怖いこと言わないでよ……」

 

内心、うへえとホシノの真似事をしつつ、部屋から退出しようとドアの前に立ったところで……ドアが開いた。

 

「あれ、ヒナ?」

 

そこにいたのはヒナだった。急いで来たのか、少し呼吸が荒く、顔も心なし赤い。

 

「……見送る」

 

「い、委員長?明日まで出張だったはずでは……?」

 

「思ったより早く片付いたから。アコもお疲れ様、私が送ってくるから休んでて」

 

「あ、はい……」

 

「ほら、先生」

 

……まあ、せっかく見送るといってくれてるし、一緒に行くか。

 

アコに手を振って別れ、パタンと閉じたドアまで見送った後、廊下を静かに歩く。既に月が照らしている時間なので、当然誰もいない。俺とヒナの足音だけが響く。

 

「ふぅ……」

 

「仕事だったんだって?お疲れ」

 

「……カケル先生の方こそ、トリニティの件は落ち着いたの?」

 

「まあ、一区切りはついたんだけど……次から次にやらなきゃいけないことが出てきてさ……」

 

「そう……じゃあ、まだ私に言ってないことが色々あるのね。前言った分だけならとっくに終わってるはずでしょう?」

 

「まあ、ね。これはトリニティのことだし……ヒナに伝えるのもどうかなーって思ってさ」

 

「ふーん……」

 

横を向けば、少し子供っぽい表情を見せてくれるヒナ。

何でかそれに少し笑いが出た後、再び前を向く。

 

「そんな心配しなくても。別にそこまで無理してるわけじゃないよ?」

 

「……あまり嘘つかないでちょうだい。普段より身体の動かし方に無駄がある」

 

「えっ!?嘘!?」

 

「嘘よ。やっぱり無理してるのね……」

 

「……計ったな……」

 

「カケル先生も人間なんだから、あまり無理しないでね?」

 

「……努力する」

 

何というか、強かだなあ。本当にホシノに似て来た気がする……

 

「……そっちこそ、あんま無理しないでよ。引退する前に倒れましたーとか本当に洒落にならないから」

 

「少なくとも、カケル先生よりはマシだと思うけど?」

 

「本当に強かになっちゃって……」

 

「こんな私は嫌い?」

 

「んな訳。どんなヒナでも好きだよ」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

話しているうちに、気づけば校舎の出口まで来ていた。

隣に立っていたヒナを置いて、俺だけ外に出る。それから振り向いてヒナを見た。

 

「じゃ、帰るよ」

 

「ええ。次は調印式でね」

 

「ああ……なあ、ヒナ」

 

「どうしたの?」

 

「引退の件。アコに……というより、俺以外に話してないの?」

 

「そうね。そんなに大げさなことじゃないし……」

 

「まあ、そっか。今のうちにシャーレに欲しいものあったら買っとくけど?」

 

「それじゃあ……後でメールで送っておく」

 

「おっけ。じゃあ……」

 

そのまま別れを言おうとして……なんでかヒナがちょっと不機嫌そうな顔になってることに気づく。

 

「どうしたの?」

 

「仮面。つけっぱなしだから」

 

「あー……忘れてた。ごめんね」

 

言いながら仮面を外す。

 

「……じゃ、またな。ヒナ」

 

「うん。またね……カケル」

 

言った後、やっぱり名前呼びは恥ずかしいのか少し顔を赤くするヒナ。倒れなくなっただけ成長してはいるのかも。

 

「それはそれとして。無理に名前呼びしなくてもいいんだよ?」

 

「いいの。どうしても、会うたびに一回は呼んでおきたいから」

 

「ヒナがいいならいいけどさ」

 

仮面を被り直して、それじゃあと手を振って別れる。

 

そうして、時間はあっという間に過ぎていき……

 

 

 

 

 

エデン条約調印式、当日を迎える。




最近ジョジョ七部を読み返していたんですが、何度読んでも面白い。近くあるアニメ化が本当に楽しみです。

それで、読んでてふと思ったんですけどヴァレンタイン大統領って結構先生に近い性格してる気がします。

やり方に問題はありまくりですが、守ると誓ったものに対する姿勢に似通った部分を感じました。誰か大統領が先生になる二次創作書いてくださいお願いします(他力本願)
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