呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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4. 便利屋襲来

セリカが襲われた日から数日。

あの日からセリカの態度は軟化し、俺相手でも敵意を見せることは無くなった。すごく嬉しい。やっぱり共通の敵を倒すのが友達への第一歩なんだな。

 

そのおかげか、俺も対策委員会にずいぶんと馴染んできまして……本日は、アビドス対策委員会の五人と、それに加えて俺。合計六人による、定例会議……俺は初参加だけど、いつもやってるらしいので定例会議。がいつもの教室で行われていた。

 

ざっくりと、会議の内容をまとめていこう。

まず、最初の話題はヘルメット団が所有していた戦車に関して。パーツをバラして調べたところ、どうやらキヴォトスで使用が禁じられている違法機種だったらしい。

何やら、ヘルメット団は明らかに過剰な戦力を保有してるらしく、裏に何者かがいるのは明白で、そしてついにその正体がわかるかも……ということだった。

 

ここまでが前座で、ここからが本題「学校の負債をどう返済するか」についての議論だったのだが……まあ、とりあえず全員の意見を振り返ってみよう。

 

セリカ→ゲルマニウム麦飯石ブレスレットで一攫千金

 

初手で既に怪しかったけど、念のためどんなもんかと聞いてみればマルチ商法だった。セリカってこういうの騙されやすいのか……純粋でいいねと喜ぶべきか、はたまた危機感がないと憂うべきか。今回は後者だな。当然却下。

 

ホシノ→拉致して生徒を増やそう

 

何言ってんだお前?目的はともかくとして手段が終わってる。まあ、ホシノとしては冗談のつもりだったらしいが、何故かシロコが乗り気だったのが気にかかるな。当然却下。

 

シロコ→ん、銀行強盗

 

却下。理由の説明はいらないだろう。ちなみにかなり綿密に練られた計画だったし、覆面まで作ってあった。この子怖い。

 

ノノミ→アビドスアイドル化計画です⭐︎

 

この中だとマシな方だな。他が酷すぎるだけとも言う。こちらもそれなりに練られた計画だったが、悲しいかなセンスが致命的にダサかった。

それはそれとしてやるために必要なことがありすぎるので、こちらも却下。

 

これにて意見は全部となる。碌なものがない。

ところで、何故俺が会議を思い返していたか。気になる人もいるだろう。

 

その理由は、俺がこの意見の中から一つ採用しないといけないからである。先生が選んだものなら間違いないとのこと。はい?

何故ここまで信頼されているのか全くわからないが、まあとにかく俺が選んだものをやることになるらしい。

目の前には、アイドルをやりたくなさそうなセリカ、アイドルをやりたそうなノノミ、無言で覆面を被るシロコ。俺が選んだ答えは──

 

「全却下に決まってるだろ」

 

「そ、そうですよね」

 

当然全却下である。俺の言葉に、アヤネが安心したように言葉をこぼした。

 

「ん、銀行強盗……」

 

「いや、普通にダメだろ。先生として、犯罪を許可することはできないよ」

 

「アイドル化計画は……」

 

「この中だとマシだけど、その時間でバイトとかしたほうが多分稼げるよ。アイドルは不安定な職業だからね」

 

「そう、そうなんですよ……!」

 

何故か俺の隣でアヤネがめちゃくちゃ首を縦に振っている。何だか怒気も感じるな。

 

「アヤネ、言いたいことがあるなら言っていいんだぞ」

 

「……ありがとうございます、先生。では、遠慮なく……」

 

その後、ガチギレしたアヤネにより、俺を除いた全員が説教された。すごい迫力だったよ。温厚そうな人ほど怒らせちゃいけないね。

 

 


 

 

さて、説教も終わり、お昼時だよーということで再びみんなで柴関ラーメンにやってきた。俺への当てつけかな?

 

まるで癇癪を起こした子供を宥めるかのように世話をされるアヤネを眺めつつ、誰もいない時に食べたラーメンの味に思いを馳せる。相変わらずの素晴らしい美味しさだったなあ。

 

……おや、お客さんが来たらしい。セリカが入口の方で応対をしている。ここら辺では見たことのない生徒だな。

何やら騒がしいが……大丈夫かな?

 

見守っていると、特に何も無かったらしく、そのまま四人組は俺たちの隣の席に座った。

しばらくすると、向こうのテーブルにもラーメンが……いや、デッカ。ざっと十人前ぐらいはあるな。

 

どうやら、大将とセリカの厚意らしい。二人ともいい顔をしている。

四人組も最初は遠慮してたが、最終的には食べることにしたらしい。箸を手に取り、ラーメンを食べた。

 

「!!」

 

「お、おいしいっ!」

 

「なかなかイケるじゃん?こんな辺ぴな場所なのに、このクオリティなんて」

 

上から赤っぽい色の髪をしたどこか風格のある子、紫の髪をしたオドオドした雰囲気の子、白い髪をした元気そうな子の言葉である。どうやらお気に召したらしい。別に俺たちが何か関係してるわけではないが、鼻が高いな。

 

そう思ってると、仲良くなれそうと思ったのか、ノノミが四人組に喋りかけた。続けてみんなも喋りかけていく。

どうやら彼女たちはゲヘナの生徒らしい。ゲヘナか……噂によれば、とんでもなく治安が悪い場所らしいな。そんなところの所属とは、さぞ大変だっただろう。

 

そのまま話は盛り上がり続け、俺はそれを後方から腕を組んで見守る。双方共に楽しそうで結構。水を差すのもアレなので、俺は空気になることにした。

 

意気投合し、仲良くなった彼女たち。だがどうやら四人組の子たちには仕事があるらしく、このまま何時間も喋るわけにもいかないのでラーメンを食べ終わったあたりで、少し惜しみつつも解散となった。

 

そのままセリカ含む全員で学校に戻り、ゆっくりとしていたのだが、突然アヤネから報告が入る。

 

「校舎より南十五km地点で大規模な兵力を確認!」

 

「まさか、ヘルメット団が?」

 

シロコの言葉にまたあいつらかと、少し辟易とした思いを抱えるが、どうやら今回は違うらしい。

今回やってきたのは日雇いの傭兵。どこに雇われてるのかは知らないが、まあ放置するわけにもいかないので、出動する──

 

「いや、みんなは一旦ここで待機しておいてよ。まずはおじさんが様子を見てくる」

 

「え?」

 

──はずだったのだが、ホシノから制止が入った。

 

「でも、一人は危ないですよ!せめてもう一人ぐらいは……」

 

「アヤネちゃんは本当にいい子に育ちましたね〜」

 

相変わらずその飄々とした雰囲気は崩れていない。いや、崩れていないように見えるだけか。

 

「……でも、ここは私一人で出るよ」

 

その瞳は鋭く、剣呑な雰囲気がある。二年前の片鱗が、ちらりと漏れ出た。

それは重圧(プレッシャー)となって、俺たちを黙らせた。

 

「……とにかく、おじさんがいいよーって言うまで、いい子にしててねー」

 

「ちょ、ホシノ先……速っ!?」

 

言うが早いか、ホシノは平然と窓から飛び降りると、そのまま走って行ってしまった。

 

「……で、どうする?」

 

「ん、決まってる。先輩を追いかける」

 

「そうですね。このまま放置しておくことはできません」

 

俺が問いかけると、二年ズから頼り甲斐のある返事が返ってきた。その言葉で我に返ったのか、アヤネとセリカも各々の準備を始める。

 

「よし、それじゃあいつも通り俺とアヤネがサポートするから、遠慮なく行ってこい」

 

「言われなくても……!」

 

「三人とも、気をつけてくださいね」

 

セリカとアヤネも、臆している様子はない。なかなかどうして頼もしい。

そして、ホシノから遅れはしたが、こちらも出動した。

 

 


 

 

「……うへ、誰かと思えば君たちか」

 

「ぐ、ぐぐっ……」

 

誰よりも早く傭兵たちの前に立ったホシノは、傭兵たちを率いている者たちを見て目を細める。

それは、数時間前まで仲良く談笑していたゲヘナの四人組であった。

 

「なるほどねー。ラーメン屋さんでのことも、私たちを探るためだったってわけ?」

 

「あははは、それがね、アルちゃんったら全然気づかないで会話してたんだよ!」

 

「だ、だって!まさかターゲットとばったり出くわすなんて思わなかったもの!」

 

そういう彼女たちは嘘をついているという感じでは無い。本当に偶然だったのかと多少驚きつつも、なら和解も可能かとホシノが交渉を試みる。

 

「ふーん。じゃあさ、私たちの学校を襲おうとするのをやめてくれないかなー。せっかく仲良くなったんだし」

 

「それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」

 

「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 

しかし、白髪の元気な女の子……ムツキと、白黒の髪を持った少女、カヨコがそれぞれ拒否してくる。

 

「退かないなら、痛い目に遭っちゃうよー?」

 

「……それは、こっちのセリフよ?」

 

いつのまにか風格を取り戻していた赤い髪の少女……アルが、警告をした。

 

「アビドスは強いと聞いてはいるけれど、一人でこの軍勢を相手にすればただじゃ済まないわ。ここで退かないと、あなたの方こそ痛い目に遭う……というか、他の人たちはどこに行ったのかしら?」

 

「さあ、どこだろうね?」

 

ホシノが自身のショットガンを構える。

それと同時に、ゲヘナの四人組……「便利屋68」も、それぞれ銃を構えた。

 

「じゃ、始めようか?」

 

「……本当に、怪我しても知らないわよ?……総員!攻撃!」

 

そして、大量の銃弾がホシノに飛来した。

数の暴力による、圧倒的弾幕。それらが全てホシノに直撃する。

 

「……だ、大丈夫かしら?」

 

思わずアルが心配してしまうほどには、かなりの量の弾が打ち込まれていた。

ホシノは一向に動く気配がなく、ただ弾丸を受け続けるだけ。流石にヤバいかもと思い、アルが掃射をやめさせようとした、その時だった。

ホシノが平然と歩いて近寄ってきた。

 

「……この程度か。なら、警戒する必要もないかな」

 

「え!?」

 

「うっそー!?」

 

「……どうなってんの?」

 

「わ、わわ、む、無傷!?」

 

便利屋たちがそれぞれ驚きを見せる。あれだけの銃弾を受けたのにも関わらず、ホシノには傷一つついていない。

 

「さて、それじゃ今度はこっちからいくよー?」

 

気の抜けるような声が響いた。

その時、アルの中の直感とでもいうべき何かが、咄嗟に体を動かした。

視認不可能な速度で接近したホシノが、()()()()アルのことを殴る……それにアルは、ギリギリ腕を割り込ませた。

 

腕部に骨が折れるような痛みが走ったかと思うと、一気に吹っ飛んでいく。後方に吹っ飛ばされたせいで、傭兵たちに当たり、十人ほどがクッションとなってしまったところで彼女の空中飛行は終わった。

 

「アルちゃん!?」

 

「よそ見厳禁だよ」

 

咄嗟に顔をアルの方に向けてしまったムツキが、ホシノの右裏拳で同様に吹っ飛ばされた。違いはクッションが傭兵ではなく、塀になったことだろうか。

それを見て即座に自身の銃をホシノに撃つカヨコとハルカ。だが通常より神秘がこもっており、攻撃力が高いはずのそれも一切ダメージになった様子はない。

 

ホシノは一歩踏み込むと、一瞬にしてカヨコとの距離を縮め、左に持っていたショットガンをさながら槍のように突き出し、カヨコを吹っ飛ばす。

ハルカも、再び銃を撃つ前に近づかれ、同じ末路を辿った。

 

ホシノが動き出して三十秒足らず。便利屋全員が倒れる。

 

傭兵たちは理解した。この人には勝てないと……そして恐怖した。誰もがゆっくりと後退り、中には腰が抜けている子もいる。

ホシノが、傭兵たちをゆっくりと見やった。

 

「今、手を引くなら見逃してあげるけど?」

 

もはや、立ち向かうとするものはいなかった。蜘蛛の子を散らすように、全員が逃げ出した。

その光景を見て、ホシノがため息を一つつく。

 

それから、未だ倒れている便利屋たちを、一度捕縛しようかと動き始めたところで、彼女は見た。

 

「うへ、まだ立つんだ?」

 

「当然……よ。仲間たちがやられているのに、倒れっぱなしなんてできないもの」

 

アルが、立っていた。

 

だが、本来これこそが正常なのだ。キヴォトスの住民は、銃弾程度ではかすり傷しか負わない耐久力である。

だというのに、一撃で戦闘不能間近まで追い込む、小鳥遊ホシノの方が真の異常なのである。

 

アルが、そのスナイパーライフル……「ワインレッド・アドマイアー」を構えた。

 

「……攻撃してこないのかしら?」

 

「もう攻撃する必要もないかなーって。傭兵たちはみんな退散したし、後はあなたたちだけなんだけど」

 

「そう……どっちにしろ、負けられないわね。みんなは、私が守るんだから……!」

 

込められた銃弾に、神秘が集中していく。

このままいけば、便利屋の仲間はヴァルキューレに引き渡されるだろう。だけれど、そんなことはさせない。

みんなを守るという、その思いはアルの才能の一部を花開かせた。

 

「喰らいなさい……!私の、全力!」

 

トリガーを引いた。

輝きが、ホシノ目掛けて直進していく。

そして、ホシノはそれを──

 

平然と、手でキャッチした。

 

「……なっ、」

 

「……まあ、これなら大丈夫かな。仮にセリカちゃんに直撃しても、致命傷にはならない……」

 

思わず唖然とした表情をするアル。対してホシノは、取った銃弾を手のひらの上でコロコロと転がし、先ほどの攻撃を分析している。

 

「……あなた、本当にどうなってるのよ……?」

 

「別に、大したことじゃないよー。ただ神秘を操作しているだけ……あなたも、少しはできるみたいだけど、まだまだお粗末だねえ」

 

何、神秘を操作するって?というかそもそも神秘って何よ!?

内心白目を剥いているアル。だがそれとは別に冷静に考えている部分もあった。

このままだと、自分たちは全員捕縛される。せめて、仲間たちだけでも逃がさないと……

 

そんな思いも知らず、ホシノがアルの方を見た。

 

「教えてあげようか?本当の、神秘の操作の仕方」

 

アルは瞠目した。

彼女には、神秘が何かわからない。だけれど、ホシノの右手に集まる異常な力は、ハッキリと感じ取れた。

仮にあれがみんなや自分に当たったら……そう考えて、既に疲れ切った体を動かす。

 

そして、仲間を助けるために動き始める……直前。

 

「ホシノ先輩!」

 

ホシノの背後から、呼びかける声がした。

振り返れば、セリカに、シロコに、ノノミ。

 

「……あれ、みんな?待っててって言ったのに」

 

「待てるわけない」

 

「あんまり、一人で突っ走らないでください!」

 

「そうよ!ホシノ先輩は確かに強いけど、でも一人だと危ないって!」

 

「うへー、ごめんごめん」

 

『ごめんごめん……じゃないですよ、もう!』

 

アヤネも通信でホシノに話しかける。

ホシノからは、先ほどまでの恐ろしい雰囲気はとうに消え失せ、代わりにいつも通りのほんわかした雰囲気が漂っていた。

 

『無事だったからよかったですけど……次、同じことしたら、本当に怒りますからね!』

 

「もうだいぶ怒ってると思うけど……」

 

『怒ってません!』

 

ホシノは口々に怒られつつ、アルのいた方を見やる。すると、彼女は既にいなくなっていた。

 

「ありゃ、逃げちゃったか」

 

「そういえば、結局襲ってきたのって誰だったの?」

 

「ラーメン屋さんで会った子達だったよー」

 

「え!?」

 

「あの子たちが……?」

 

「向こうも、偶然だったみたいだけどねー」

 

逃げたのならしょうがないと、ホシノが学校への道を歩き始めた。

そして、それに三人も急いでついていくのだった。

 

 


 

 

「まさか、あの子たちが主犯だったなんて……驚きですね、先生……先生?」

 

「……ん、何だ?」

 

「いえ、今回の主犯がラーメン屋さんで会った四人だったなんて、何だかすごい偶然だなあって」

 

「ま、そういうこともたまにはあるわな」

 

「たまにの頻度でこんなこと起こって欲しくないんですけどね……」

 

アビドス高校、いつもの一室にて。俺たちはサポートをするつもりだった……のだが、ホシノが単独で鎮圧をしたせいで、特に出番はなかった。

だが、それよりはホシノのことか。あの右手に収束していたえげつない量の神秘を見て確信したが、ホシノは二年前より強くなっている。あのレベルだとワンチャン俺の防御も貫かれるかもな……

 

かつて、()()()()()()()()()()も、ハイレベルで行えているし、神秘の量も増したように見える。

強くなったなあと感慨深くなると共に、強くならなければいけなかった要因を考えて、心が苦しくなった。




なんかホシノさんも魔改造されてる……
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