呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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デカグラマトン編最新まで読みました。

ネタバレしない程度に感想を言うと、自分の中の羂索がずーっと嫌悪感を示してきてて早よこいつぶん殴らせろ人間の力を思い知らせてやんよの精神でした。羂索が味方サイドに見える稀有な例だ……

とはいえイラつくのはあの神もどきの言い草ですけどね。話し合って分かり合えないので殴り合って分かり合いましょう。

本当に面白い。最高だな。ここまで感情が動いた物語は本当に久しぶりだ。

この小説でもデカグラマトン編やりたい……やれるのか? やったるわ。

理想へ近づくための第一歩。カルバノグ編一章スタートです。


カルバノグ編 1章
32. RABBIT小隊


 今日もキヴォトスは晴天。心地の良い日差しが俺たちを照らしてくれている。

 

 現在、俺は子ウサギ公園という場所の前に来ている。その理由は遊びに来たからとかそういうものではなく……何やら、公園を占拠している生徒がいるとのことで、しかもヴァルキューレを尽く返り討ちにしたらしい。

 

 報告によれば四人しかいないらしいのだが、よくそんなことが……いやでもいけるか? アビドスならいける。

 

 公園を占拠しているのは、SRT特殊学園という場所の生徒()()()子たち。過去形なのは、既にSRTは閉鎖されているからだ。そしてその閉鎖に納得できない一部の生徒がデモを起こしていると……

 

 まあとにかく、そんな報告がリンちゃんからお叱りを受けている時に入ってきたため、互いの利害も一致するしここは見逃してくださいよぉ……とリンちゃんを説得。そして件の生徒たちを鎮圧しにきた次第だ。

 

 現場にやってくれば、銃撃音に爆撃音。とても市内の公園から発されているとは思えない轟音のオンパレードだ。近隣住民の方はさぞ迷惑だろうな。

 

 さて。とりあえずどうしようかなー……と周りを見ていると、この場の責任を任されていそうな雰囲気のある子を見つけた。

 

 狼っぽい耳が生えてる金髪。それが片目を隠している。ちらりと見える口内には牙っぽいのが生えてて、どこか剣呑な雰囲気だ。

 

「ちょっといいかな?」

 

「……何だ貴様は。見て分からないのか、戦闘中だ。部外者はさっさと出ていけ」

 

「その前に、これを見てくれると助かるんだけど」

 

 と、リンちゃんが用意してくれた紹介状を渡す。

 それを受け取った目の前の生徒は、さっと目を通すと現状を把握したらしく、驚いた顔をする。

 

「……こ、これは大変失失礼いたしました。実際にお会いするのは初めてかと。今回の作戦において、現場の責任者を担当しています。ヴァルキューレ警察学校の公安局長、カンナです」

 

「初めまして、カンナ。知っているとは思うけどシャーレの先生です」

 

 お互い軽く挨拶を交わした後、現状について確認をする。

 

 まあ簡単に言えば、ヴァルキューレの惨敗だった。兵力はほぼ底をつき、士気も皆無。残っているのは「生活安全局」という、戦闘を専門にしない生徒たちのみ。

 

 公園を占拠している子たちは、SRT所属だった一年生チーム。「RABBIT小隊」

 先述した通り数こそ少ないが、最新鋭の装備を所持しており、それが強さの主な要因だと。

 

 近くにいたクロノスの報道ドローン。そこから中継されている映像を見てみると……三人しかいないな。後一人は多分狙撃手で、隠密行動をしてるんだろう。

 

 雪のように白い髪をした子に、ウサ耳付きヘルメットを被った紫っぽい髪の子、そんで眼鏡かけた茶髪の子。ちなみにヘルメットの子以外もウサ耳カチューシャを付けている。

 

 その子たちはわちゃわちゃと元気そうに喋っていた。めちゃくちゃ仲が良いというわけでもなさそうだが……作戦行動をするとなると、多分一丸となれるタイプだな。

 

 しばらくの談義ののち、中継用ドローンは汚い花火となった。一応クロノスのものなんだけど……そういうのは関係ないらしい。

 

 さて。必要な情報は揃ったかな。じゃあ俺一人で鎮圧……いや、だから人を頼ったほうがいいんだって。俺は馬鹿なのか?

 いやでも今回頼る必要あるか? 俺一人で解決できる問題だろ……下手に力借りて、怪我されても嫌だしな……でも……うーん……

 

「まあ、いいか。行ってくるよ」

 

「……正気ですか、と言いたいところですが……噂によればかなりの戦闘力があるとか」

 

「噂?」

 

「はい。エデン条約の一件で、先生に関しては様々な噂が飛び交っていまして。曰く一瞬でキヴォトスを滅ぼせるとか、曰く風紀委員や正義実現委員会の手柄は全て先生が取ったものだとか……まあどれも眉唾物ですが」

 

「えぇ……俺の方から声明とか出したほうがいいかなあ」

 

 必要以上に恐れられるのはあんま良くないからなぁ。これで生徒たちとの関係に支障が生じたらどうしよう。

 

「……実際のところ、どうなんでしょうか」

 

「そんな大したことないよ。俺は一人じゃ生きてけない弱い人間さ」

 

「そうですか……だというのに、一人で行かれるおつもりなのですか?」

 

「まあ、ね。精神的な話だと弱いってだけだから」

 

 さてさっさとやるか。カンナに手を振って別れ、公園内に歩いて入っていく。

 

 子ウサギ公園。市内にあるにしてはかなり緑が多い部類の公園だ。

木々は生い茂り、土と青草の匂いがある。ちょっと空気も湿っているし、到底ここが都市部だとは思えないな。

 

 ゆっくりと歩いていくと、そのうち大量に罠が仕掛けられている場所についた。多分ここから先が陣地なんだろうな。

 まあ俺なら地雷だろうが何だろうが、呪力操作を怠らなければ傷にはならないが……

 

 ……エデン条約の一件がフラッシュバックした。ちょっと怖いし、わざわざ踏み抜く気も起きないし、ちゃんと避けていくか……

 

 そういうわけで。地面や木に設置されている罠を避けつつ……避けつつ……避け……

 

 多くない?なんかかなりの量がある。例えば俺の視界内に映る木々は半分くらい罠が仕掛けられてるし、地面にいたってはぎっしり地雷が埋め込まれている。

 

 こんなことなら空から飛んで……でもそれだと潜んでるだろう狙撃手がなぁ。早めに狙ってくれると嬉しいんだけど……

 まあ、ここで止まっててもしょうがない。ひとまず迂回しよう……といったところで。

 

 空気が変わったのが分かった。即座に狙撃された方向を割り出し、まずは銃弾を手で受け止める。

 

 そして加速。どんな罠でも、音速並みの物体は捉えられない。一瞬で狙撃手との距離を詰めた。

 

「……え?」

 

「どうも。おやすみなさい」

 

 気弱そうな黒髪の少女。何かアクションを起こされる前に手で触れ、いつも通り気絶させる……はずが、ちょっとやり過ぎたかも。最近神秘の量がえげつない子たちとしか戦ってなかったからなあ。加減ミスった。

 

 この分だとしばらく起きないかも。ごめん……と思いつつ、少女を脇に抱える。これで狙撃手はやったし……後は中央部にいた三人だけか。

 

 最早公園を呑気に散歩する必要もないので、一気に飛び上がり……中央部に向かって突っ込む。

 

 俺の接近に気づいた子たちが俺の方を向くが、遅い。その場にいた二人をぱぱっと気絶させた。後一人。

 

「……あなたは……」

 

 どこいるかなーと思ってたら、少し離れた場所よりその子がやってきた。

 

「っ、サキとモエを──」

 

 銃口が向けられるけど、もうその先に俺はいない。誰もいない空間を見る彼女の肩に触れ、同様に気絶させた。

 

 これで全員。狙撃手の子以外はちゃんと加減もしたのでちょっとすれば目を覚ますだろう。その前にぱぱっと拘束して、ヴァルキューレの元に送り届ける。

 

「お見事です」

 

 帰ってくるなり、カンナに褒められた。

 

「荒唐無稽だと思っていた噂が真実に思えてきましたよ」

 

「よしてくれ」

 

 ロープでぐるぐる巻きにしたRABBIT小隊を手渡す……あれ、もう三人とも起きてるな。逆に出力弱めすぎたか。

 

 目覚めた子たちは、キョロキョロして現状を把握したのち、その元凶である俺を睨みつけてくる。

 

「……まあ、まずは謝罪か。手荒な真似をしてごめんね」

 

「……お前と話すことなんて一つもない!」

 

「私たちを攻撃しといて、ごめんも何もないよね」

 

 初手から嫌われてるなぁ。まあしょうがないけど。

 

「あなたがシャーレの先生、ですか」

 

「そうだね」

 

「噂では聞いています。多くの生徒たちの悩みを解決し、生徒たちから信頼されている、超法規的捜査権を持った大人……」

 

 大人、ねえ。

 

「……先生。私たちは、あなたのような大人が一番嫌いです」

 

「地獄に堕ちろ」

 

「もう二度と会わないだろうね」

 

 そう捨て台詞を吐いた彼女たちは、ヴァルキューレに連れられこの場を去っていった。

 

「……仕方ないことだけど、流石に心に来るな……」

 

「気にする必要はありません。負かされたことでイライラしてるんでしょう」

 

 結構精神的ダメージを負っていた俺を、カンナがフォローしてくれた。

 

「ちなみに、あの子たちはこれからどうなるの?」

 

「まずは取り調べをして、その後はヴァルキューレが処罰を決める流れですが……今回はある程度連邦生徒会が関わりましたので、処遇を決めるのは防衛室長になるかと。ご希望でしたら、取り調べの様子を見ることも可能かと思います」

 

「なるほどね……」

 

 放っておくこともできないし、後日向かってみるかな。

 

「では、ひとまずお疲れ様でした」

 

「うん、お疲れ様」

 

 そうしてカンナとは別れ、俺もシャーレに戻って書類作業を再び始めるのだった。

 

 


 

 

 あれから数日。現在、俺はRABBIT小隊の取り調べを見学していた。

 

 ヴァルキューレ警察学校の本館。その中にある冷たい雰囲気の取調室にてそれは行われている。取り調べを担当しているのはヴァルキューレ所属の生徒たち。

 

 SRTという居場所を消されてしまった子たち……どう相手取るか悩ましいが、ひとまず彼女たちの言い分を聞くところからだろう。

 ということで早速取り調べの内容を整理していく。

 

 最初は空井サキ。ヘルメットの子。彼女はSRTで筆記、実技共に優秀な成績で、校則違反もない優等生だった。そんな彼女がSRTが閉鎖された後、ヴァルキューレに編入しなかった理由は、謂わば誇りだった。

 

 SRTという厳しい環境下で、誇りを持って生きる。それを捨て、自由を与えられた駄犬に堕ちるぐらいならとことん抵抗する、ということらしい。

 

 二人目は風倉モエ。眼鏡茶髪の子。彼女は一言で言うと問題児だ。過去の記録によれば、色んな場所に無差別乱射を仕掛けては甚大な被害を出している。そんな彼女がヴァルキューレに行かなかった事情は、武器。

 

 要は彼女は火力お馬鹿(トリガーハッピー)だった。ヴァルキューレとSRTでは圧倒的に武器の質が違う。すごい武器をいっぱい振り回したい。それが彼女の欲求で、だからSRTを離れたくなかったと。

 

 三人目は霞沢ミユ。引っ込み思案で弱気な黒髪の少女。彼女の事情は、人間関係への恐れだった。

 

 新しい学園に入るということは、当然今までの人間関係もリセットされる。彼女はそれが怖かった。

 それに対して、取り調べを行っていたヴァルキューレの生徒……合歓垣フブキが、生活安全局なら人と会う機会も少ないと勧誘をかけたが……それでも怖いらしい。

 

 さて、最後。四人目は……え? 最後は先生が取り調べしてください? 何で?

 何故か最後の取り調べは俺がやることになってしまったが……まあ、頼まれたならやってみよう。

 

 取調室の中に入る。そこにいたのは、RABBIT小隊最後の一人。月雪ミヤコ。

 名前の通り真っ白な髪を持つ彼女は驚いたようにこちらを見ている。

 

「……あの時の」

 

「どうも。改めて自己紹介すると、シャーレの先生……をやってる、九条カケルだ。君は確か、ミヤコだよね」

 

「つまり、取り調べの担当者が先生ということですよね」

 

「そうだね」

 

「まあ、誰だって構いません。相手が誰だろうと、答えは変わりませんから。何か聞きたいことがあればどうぞ」

 

 堂々としているなあ。ミヤコの正面の席に座り、向き合う。

 

「そうだな……」

 

 さて、俺はどうするべきだろうか。

 

 SRTへの執着は俺がどうこうできるものでもない気がする。そこは多分各々が向き合って答えを出すものだと思うし……となると、俺がするべきことは何だろうか。

 

 思い出すのは、先生。あの人は俺に何をしてくれたかな……

 

「……なんか欲しいものとかある?」

 

「……はい?」

 

 予想外だ、と言外に語る声色だった。

 

「ミヤコも多分SRTの復活を諦めるつもりはないんでしょ?」

 

「それとこれとに何の関係が?」

 

「今はまだ事情に詳しくないから、どうするとも言ってあげられないけどさ。せめて少しでもいい環境にいて、英気を養って欲しいなーって」

 

「……」

 

 ぽかん、とした顔でこちらを見てくるミヤコ。

 それがなんか恥ずかしくなってきて、話題を逸らす。

 

「あー、そういえばミヤコは何でヴァルキューレに編入しないの?」

 

「……それでしたら、お答えできます」

 

 ミヤコ曰く、SRTには正義があるのだと。

 

 正義、と一口に言ってもそれは難しい概念だ。自分のために、人のために、世界のために、ただ一人のために。正義には、人の数だけ色んな形がある。

 

 更には、立場や状況、関係など、他の要因でも正義というものは変わりうる。そんな流動的な正義を、ミヤコは正義とはいえないと考えていた。

 

 真の正義とは、いかなる時でも変わらない、一貫したもの。SRTはその正義を体現できていて、だからこそ憧れたのだと。

 

 だからヴァルキューレには行かない。それは自分の信じたものを捨てることに他ならないから。

 

「そっか。いい考えだな」

 

「……本当にそう思っているのですか?」

 

「思ってるよ。どんな時でもブレないって、きっとすごく強いから。個人的にも憧れるな」

 

 いつか俺も見つけられるのだろうか。自分なりの正義ってやつを。

 

「他に質問はないのですか?」

 

「んー……だからまあ、何か欲しいものとか……」

 

「ありません。あなたからの施しなど受けられるわけもないでしょう」

 

 冷たくてきっぱりとした声だ。怖いです。

 

「そっかあ……じゃあ逆にミヤコは何かある?」

 

「……強いて言うなら、SRTの閉鎖を撤回していただきたいですが」

 

「悪いけど、今はできないかな。さっきも言ったけど、まだ事情を完璧に把握しきれていないから」

 

「それは、事情を把握し切った暁には閉鎖の撤回に助力するということでしょうか?」

 

「場合によるけどね」

 

「でしたら私たちは戦い続けます、SRT特殊学園の復活のために。諦めない限り、SRTの名前はなくなりませんので」

 

「そっか。じゃあ健闘を祈っておこう」

 

 椅子から立ち上がる。そのまま背を向け去っていった。

 

 ……ふぅ、なんか疲れたな。これでよかったのだろうか。

 

 悩みが重石のように心にのしかかっている。そんな光景を思い浮かべつつ、ひとまずカンナと会って今回の取り調べの整理をする。

 

 その最中、今後のRABBIT小隊の処遇を聞いてみたが、連邦生徒会が割とお怒りらしく、そっちの方で重めの処罰が下されそうとのこと。

 

 それから、SRTの復活に関しても聞いてみたのだが、こっちは連邦生徒会の決定らしいので、カンナからはどうこう言えないとのこと。となると、仮に復活を嘆願する場合連邦生徒会の誰かに接触しなければいけないよなぁ……と考えていると、突然声をかけられた。

 

「では、私が代わりにお答えしましょうか」

 

 声の方を見やれば、桃色のショートヘアにアホ毛。そしてあの白い制服は……連邦生徒会か。

 

「初めまして……ですね、先生。キヴォトス連邦生徒会所属、防衛室のカヤと申します」

 

「防衛室……というと、安全保障に携わってるところか」

 

 連邦生徒会はいくつかの組織からなる大きな組織だ。11個に区分けされた「行政委員会」と、唯一の例外である「統括室」。この二つが合わさった合計12の小さな組織が連邦生徒会という大きな組織なのだ。

 

 そして防衛室は、行政委員会が一つ。簡単に言えば警察の役割を務めている組織だ。

 

「おお、よくご存知で」

 

「結構勉強はしているからね。さて、それでどうしたのかな?」

 

「色々ありはしますが……まずは感謝から、ですね」

 

 そう言ってカヤは恭しく頭を下げる。

 

「連邦生徒会長の失踪で、私たちの仕事も大幅に増えると予想されていたのですが、シャーレが大部分を負担してくださっているおかげであまり負担が増えていないのです。この場を借りて、あらためてお礼をさせてください」

 

「どういたしまして。ところで、SRTについて聞きたいんだけど」

 

「では、私が知っている限り話しましょう」

 

 まず、SRTとは謂わばヴァルキューレの上位にある機関だ。

 本来、何かしらの違法行為が起きた際、それを対処するのはその自治区の治安を守っている部隊……例えば、ゲヘナで起きた問題はゲヘナの風紀委員会が解決する、といった感じだ。

 

 では誰も管理していない自治区で起きた問題はどうするのか。その対処をするのがヴァルキューレなのだが、時にその犯罪者が他の自治区に逃げたり、他の生徒会と結託するなど面倒な事態になる時があった。こうなると、ヴァルキューレでは対処が難しくなる。

 

 そこでSRTの出番だ。SRTは連邦生徒会長からの許可により、いつどこでも犯罪への即時対応が可能。これにより面倒な手続きその他etcをすることなく、犯罪の鎮圧ができる。そんな組織だった。

 

 だがこの強権が許されていたのは連邦生徒会長がいたからこそ。彼女が失踪して以来、SRTの責任の所在は宙に浮いた。

 これではSRTはいつ爆発するともしれない火薬庫と同じ……責任を取ろうとするものも現れず、SRTは身動きが取れなくなった。

 

 これだけなら、ギリ閉鎖には至らなかっただろうが……一月前、事件が起きる。SRTの中でも特に優れた部隊である「FOX小隊」が、SRTを排除する動きに勘付いたのか連邦生徒会を襲撃してしまった。

 

 これによりSRTはより危険視されるようになり、加えて先の「RABBIT小隊」の件もある。ここからSRT存続の方へ意見を傾けるのは難しいだろうとのこと。

 

「……先生。キヴォトス各地における先生の活躍は、耳に入っております。RABBIT小隊はこのままですと学籍データが抹消され、どこの学園にも所属できないまま、当てもなく彷徨うことになってしまうかもしれません」

 

 深刻そうな顔でそう言うカヤ。

 

「彼女たちはSRT特殊学園の過酷な入学試験を通過した、紛れもないエリートたち。その能力が無為に捨てられてしまうのは、かなりの損失……よろしければ是非、彼女たちを説得し、ヴァルキューレ警察学校編入するように勧めていただけませんでしょうか?」

 

「ごめん、無理」

 

「そこで前向きな……なんて言いました?」

 

「無理」

 

 キッパリと言うと、困惑した顔になるカヤ。

 

「……説得が難しいのは百も承知ですが……」

 

「そういうのじゃなくて。あの子たちが望んでないことを強制はしたくないんだよね」

 

 RABBIT小隊はみな、思いの差はあれどSRTへの思いを捨てられずにいる。それを無理やり……っていうのはなんか個人的に嫌だ。

 人は自分で進む道を決めるべき……なんて、使命に囚われてた俺が言えることじゃないけどね。

 

 その旨を説明すれば、カヤは少し考え込んだ後納得したような様子を見せた。

 

「本来であれば原則通りに、連邦生徒会の名誉にかけて重い処罰をという話があったのですが……まあ、原則なんて知ったことではありませんね!」

 

 なんて言ってるけど……

 

 その後、カヤは防衛室ごとシャーレに協力するという意思を示し、またRABBIT小隊の処遇の決定権も俺に委ねてくれた。

 その後も、なんかいい感じのことを色々と言って、そして帰っていった。

 

 ……表面的には間違いなく友好的なんだけど……なーんか胡散臭いんだよなあ。うーん、気のせいかなあ。

 

 まあ、ひとまずはいいか。今はRABBIT小隊の処遇だろう。どうしようかなー……

 

 


 

 

 さて。彼女たちの処分が決まりました。

 

 その内容を伝えるため、今はヴァルキューレのロビーに集まっているであろうRABBIT小隊の元に顔を出しに行く。

 

 無機質な廊下を歩いて扉を開いて……それを何回か繰り返せば、ロビーだった。そしてちゃんとRABBIT小隊も集まっている。

 

「お勤めご苦労様」

 

 声をかけると、みんなが一斉に顔を向け……各自怯えたり、嫌悪を表に出した顔になる。

 

「あ、あんたは……」「しゃ、シャーレの……?」「ひっ……!?」

 

「……俺が悪いのは百も承知だけど、流石に傷つくな……」

 

 仮面つけときゃよかった。多分今だいぶ情けない顔してるから。

 

「まだいたんですね、先生」

 

 そう声をかけてくるのはミヤコ。

 

「ヴァルキューレに何か用事ですか?……それとも、まさかとは思いますが、私たちに用事が?」

 

「そのまさかってやつだね。行政委員会から、今回の処分について」

 

 一瞬で緊迫した空気が流れる。怯えてる子、もう何でもいいやって感じの子。色々いるが、誰もがこちらを鋭く見つめてきている。そんな期待されてもな。

 

「まあ、率直に言えば全員釈放。もう自由にしていいよ」

 

「……はい?」

 

 呆気に取られるRABBIT小隊。さっきからずっと感情が一致してるな。見ててちょっと面白い。

 

「待て、つまり私たちはSRTに戻れるのか?」

 

「悪いけどそれは無理だね。まだSRTの存続に関しては議論されてる真っ最中だからさ」

 

「何だ、喜んで損した」

 

 とりあえず事情を説明して欲しそうな顔してたので、俺が主に処分を決めることになったこと。俺としては迷惑かけた人に謝れば後は何してもいいと考えてること。

 

「迷惑をかけた人に謝る……と言っても、私たちは少なくともお前たちに謝るつもりはないぞ」

 

「まあ、それは仕方ない。こっちの関係者は俺がどうにかしとくよ。君たちが謝るのは戦いに無関係だったのに巻き込んだ人たち……具体的に言えばクロノスとか、公園の近隣の方々とかだね」

 

「……近隣の方々はともかく、クロノスに関して言えば彼女たちがドローンを突っ込ませたのが悪いと思います」

 

「それはぁ……そうかも」

 

 流石にあれはクロノスが悪いか? 戦場に自分から突っ込んだわけだし……自己責任かもなあ。

 

「……それで、謝罪については理解しましたが、他に先生は何をさせたいのですか?」

 

「俺としては特にないよ。君たちがやりたいことをやればいい」

 

「それだと、またデモをするけど?」

 

「……子ウサギ公園で?」

 

「そりゃあ、あそこに私物とか全部置いてるしな」

 

「何だかんだ、あそこ快適でしたし……」

 

 ふーむ。なるほどねえ。うーん。

 

「どうしても子ウサギ公園じゃないとダメかな……?」

 

「既に罠もそれなりに設置していますし、あそこから離れるつもりはありません」

 

「なる、ほど、ね……ちょっといいかな?」

 

「?」

 

 一回四人から離れて、リンちゃんに電話する。数コールの後出てくれた。

 

『はい。こちら連邦生徒会首席行政官の七神リンです』

 

「もしもし。先生ですけど……あの、リンちゃんさんにお願いがあるんですが……」

 

『リンちゃんさんは最早何なんですか……はあ。それで、お願いとは?』

 

「子ウサギ公園って買えますか……?」

 

『は?』

 

 事情を説明する。SRTの子が子ウサギ公園をまた占拠しようとしてること。だけど公園は公共の場なのでそれはダメだろと理性が言ってること。でもあの子たちの判断も尊重したいこと……

 

「ということで、俺が買うことで私有地にしてそれを貸し出すという形で……って思ったんですけど……」

 

『まあ、確かに子ウサギ公園は連邦生徒会の管轄ではありますが……厳密に言えば行政委員会の方なので、私に連絡するのは筋違いですね』

 

「じゃあ、公園を管理してる行政委員会の室長を教えて欲しいんですけど……」

 

『……正直なところ、どう考えても面倒ごとになりそうなので却下したいのですが?』

 

「そこを何とか……」

 

 だいぶ情けない声を出す俺に、呆れたようなため息を吐く音が聞こえた。お腹痛くなってきたな。

 

『はあ……実を言えば、子ウサギ公園はほとんど人が来ない寂れた公園です。SRTの生徒が数ヶ月占拠しても影響は出ないでしょう』

 

「……えっそうなの?」

 

『そういうわけですので。公に認めることはできませんが黙認しますのでこれで終わりにしてください。本当にどうしてあなたは毎回毎回面倒ごとを持ち込もうと……』

 

「……今度お土産を持っていかせていただきます……」

 

『よろしくお願いします。それではそろそろ失礼します』

 

 そう言い残して電話が切れた。本当に頭が上がらない……

 

 とはいえこれで公園の問題は解決……でいいのかな。まあ何か起きたら俺が奔走するだけだし……一旦解決としておこう。

 ということで四人の元に戻る。

 

「戻ったよ」

 

「何をしていたのですか?」

 

「まあまあまあ。ちょっとね。とにかく、君たちは子ウサギ公園に戻ってまたデモをするってことね」

 

「だったら何? 今ここで私たちを再逮捕しちゃう?」

 

「まさか。さっきも言ったけど何するも自由だよ。自由の先にある責任は取れないけど、君たちの選択を俺は尊重する」

 

 こんなところかなと思いパンっ、と手を叩く。

 

「そういうことだから、この話はこれでお終い。自由に動いていいよ」

 

 それから、彼女たちは困惑した様子を見せつつも動き始める……と、ミヤコがこちらを向いた。

 

「どうした?」

 

「……今回の件に関しては感謝をしておきます。ですが、だからといってあなたを信用したわけではありませんので」

 

「そうか。じゃあ元気でな」

 

「……では、失礼します」

 

 そうしてRABBIT小隊は去っていった。




羂索は平気で人を踏み躙ることを除けばめちゃくちゃ好きです。いやまあ人を踏み躙ることもこいつの魅力の一つだけれど。

結構自分の行動原理もこいつに影響されていて。小説書いてるのも「面白そう」だからってのが理由の一つ。
例え自分の小説が一人にしか見られなかったとしても、そのたった一人の人生に影響を与えているかも……そう考えるとワクワクしてくるよね。

本当に楽しいな。



今週の呪術。
シンプルにいい回だった。ある意味理想的なアニメ化。
脳筋虎杖は何回見てもこいつ……ってなるんだよな。まあ虎杖らしいけど。
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