呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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ケイちゃんだ!!!!!


52. 傷

 その日のミレニアムはどこかざわついていた。それもそのはず、あの空崎ヒナがミレニアムにやってくるということで、何かやらかしたのではないかとそこら中で心配の声が上がっているのだ。

 

 そしてそんな中でも、いつもと変わらない部活が一つ……

 

「よっしゃあ! 私が一位だー!」

 

「お姉ちゃん、青甲羅来てるよ」

 

「はぁーーーっ!?」

 

「やりました! アリスが一位です!」

 

 いつも通りにゲームをする彼女たちは、ゲーム開発部。今日も今日とて新作ゲームのためのアイデア出しと称し、遊び三昧の毎日を送っていた。

 

「ちくしょー! 何で私が一位の時だけ青甲羅が来るのさ!」

 

「モモイは運のステータスがマイナスなんですね!」

 

「マイナスぅ!?」

 

「あはは、でも本当にお姉ちゃん運悪いよねー」

 

「ぐぬぬ……ふーんだ! もういいもん! 私別のゲーム遊んじゃうもんねー!」

 

 やっていたゲームを放り出し、携帯をいじり始めるモモイ。まさにぐぬぬと歪んでいた表情が画面を見た途端、疑問の色に変わり……そして面白いものを見つけた輝くものに変わる。

 

「ねえねえ二人とも! マキが世紀の大発見をしたんだって!」

 

「え?」

 

 言いながら携帯の画面を見せてくるモモイ。そこにはミレニアムのハッカー集団、ヴェリタスの一員である小塗マキからのメッセージ。

 

 内容は世紀の大発見になるかもしれないすごいものを見つけたから見に来て、というもの。

 

「世紀の大発見、って……あの人結構誇張してない?」

 

「わあ……! イベントの予感がして、面白そうです!」

 

「でしょ!? せっかくだしみんなで見にいこうよ、新しいアイデアのきっかけになるかもしれないしさ! ユズも!」

 

「えぇ……わ、私も……?」

 

 ロッカーからひょっこり出てきたユズも連れ、少女たちはヴェリタスの部室に向かっていった。

 

「やっほー! お邪魔しまーす!」

 

「パーティーでやってきました!」

 

「ちょうど間に合ったみたいだね」

 

「やっほ〜! 久しぶりだね」

 

 元気よく部室に飛び込んだ彼女たちを迎え入れたのは、小塗マキともう二人。どことなく大人っぽい雰囲気を醸し出す小鈎ハレと、挨拶をお辞儀だけで済ませた音瀬コタマ。

 

「それで、ハレ先輩。例のブツって?」

 

「ああ、それなら……これ」

 

 そう言って彼女が指差した方向を見てみれば、奇妙な形のロボット。球に足とワイヤーが生えたような……はっきり言ってしまえば気持ち悪い見た目をしている。

 部室の中を見回してみれば、同じロボットが合計五体。

 

「うわあ……これが例の発見ってやつ? なんか、思ってたのと全然違ってびっくりしちゃった!」

 

「何だか、深海魚みたいな見た目ですね……どこで見つけたんですか?」

 

「すべてミレニアム学区の郊外で発見されたものです」

 

 ミドリの質問にコタマが答える。さらにマキによれば、同じようなのがまだ二十体はあったという。

 

「これって、本当にミレニアムで作られたロボット……なのかな?」

 

「少なくとも私たちはこんな形状のロボットは知らないね。可能性としては、別の学園のものとか……」

 

「別の学園かぁ……私たちあんまりそういうの知らないもんね。あっそうだ、先生に聞いてみたらいいんじゃない!?」

 

「そう思って私たちも先生に連絡したんだけど……返事が返ってこないんだよね」

 

「先生が……?」

 

「私たちでもいろいろ調べてみたけど、そもそも継ぎ目が無いせいで物理的に解体が不可能で、その上電源ポートとかも無いから内側からも調べられない。お手上げ状態だからシャーレの力を借りたかったんだけどね……」

 

 何だか不穏な雰囲気が立ち込める。そんな空気を払拭しようと、マキが冗談っぽく「まあでも、最近ミレニアムに入り浸ってたらしいから飽きちゃったのかもね!」と言い、それに触発されるように雰囲気もまた明るいものになっていった。

 

「いやー先生が来ないとなると、部長とか副部長とか頼るべきなのかなー?」

 

「でもあの人たち最近忙しそうでしょ。こんなガラクタかもしれないものに時間を使っている暇なんかなさそう」

 

「いやいや部長なんかはオカルト好きだし、意外と協力してくれるかもよ?」

 

「今ここにいない人の話をしても仕方ないですよ」

 

 ヴェリタスの三人がやんややんやと話し合いを始める中、アリスはロボットに近づいていくと……不意にあ、と声を漏らす。

 

「どしたの? 何かあった?」

 

「アリス…………見たことあります」

 

「アリスちゃん……?」

 

「これ、は……」

 

 まるで導かれるように、アリスがロボットに触れた。そして……突然、ロボットが光を放つ。

 

「え!? 何!? 電源入った!?」

 

「えっ!?」

 

「え? なになに!?」

 

 困惑と驚きが渦巻く中、ミドリの耳が何か電子音のようなものを捉える。音の出所を探ると、モモイのポケットの中から出ているようだ。そしてその電子音をミドリは知っている。

 

「お姉ちゃん、ゲーム機の音出てるよ?」

 

「え? ……あ、本当だ。今まで起動しなかったのに……どうしてだろ」

 

「ま、待って……アリスちゃんの様子が……おかしい」

 

「……アリス……?」

 

 ロボットに触れたアリスは目を閉じて、まるで何かの声に耳を傾けるよう、静寂を保っていた。ぴくりとも動かないアリスにみんなが心配の声をかける中、目を開けたアリスは静かに、一言。

 

 

 

「…………起動開始」

 

「……アリス?」

 

 次の瞬間、連動するように部室内にあったロボットたちが次々と動き出し、アリスを守るように彼女の周囲に集まる。明らかに様子がおかしいそれらを前に、ようやく誰もが警戒を抱く中で、アリスの瞳が赤く光った。

 

「……コードネーム『AL-1S』起動完了。プロトコルATRAHASISを実行します」

 

 次の瞬間、アリスの見た目をした誰かが光の剣:スーパーノヴァを構え──

 

「! みんな、避けて!!」

 

 部室が青白い光に包まれる。

 

 アリスの持つ光の剣。それはエンジニア部の開発した超巨大レールガン。キヴォトスでも屈指の威力を誇るそれが至近距離で放たれるということ。

 即ち、あたり一体の崩壊。

 

 原型がないほど崩れ落ちた部室。一瞬にして瓦礫まみれの荒野とかしたそこで、誰もが咳き込んでいる。一番最初に再起を果たしたハレが状況を確認するため、視線を上げた……

 

「有機体の生存を確認。失敗を確認しました」

 

「あ、アリスちゃん!?」

 

「プロトコルを再実行します。武装のリロード開始」

 

 ユズが悲痛に叫んでも、アリスの様子が戻ることはない。両手に構えたレールガンが再びチャージを始め、それを守るようにロボットたちが現れた。それも部室にいた五体だけではなく、蜘蛛のようなものも含めた数十体。

 

「と、止めないと……」

 

「アリスちゃん!! ごめん!!」

 

 明確な敵意を前に、選択の余地はなかった。マキが走りだし、アリスにタックルをする。

 

「……妨害を確認、充電失敗」

 

「よし! 止まった!」

 

「……妨害要素を排除します」

 

「……え?」

 

 次の瞬間、レールガンをバットのように振るアリス。その一撃はマキに直撃し、ボールのように彼女が吹っ飛ぶ。

 

「マキ!!」

 

「プロトコルを再実行します。武装のリロード開始」

 

 三度、充電が始まる。だが今度は誰も動けない。ユズやミドリは体がすくんでしまい、ハレやコタマはそもそもダメージで動けない。万事休す……そう思われた時だった。

 

「おい、チビ。そこまでだ」

 

「!」

 

 アリスが後ろからの蹴りを、レールガンを使って防御する。

 

「へえ、やるじゃねえか」

 

「敵対勢力の増援を確認」

 

 アリスの赤い目がきらりと輝き、同時に周囲に蔓延っていたロボットたちが彼女を攻撃しようとする……が、銃声が鳴り響きそれらが倒れる。

 

「部長! 私たちがこいつら相手しておくから、よろしくねー!」

 

「おう任せとけ。さっさと終わらせてやるからよ」

 

 そう言って勇ましくアリスに詰め寄っていく彼女は、その獰猛な性格を表すような赤い髪を靡かせ、猛獣の如き顔をする。

 

 “コールサインダブルオー” 彼女を表すこの二つ名は、約束された勝利の象徴であり、ミレニアム最強の証でもある。

 C&C所属 美甘ネル

 

「排除を開始します」

 

「やれるもんならやってみろよ、チビ」

 

 敵は大振りの獲物を持っている。前回戦った時とは違い、足場を崩されるようなこともない。

 接近戦による短期決戦……そう結論づけたネルは、愛用のサブマシンガン二丁を構え……突撃!

 

 キヴォトス全土を見回しても反応できるのはほんの一握りであろうその突進を、アリスはジャンプすることで躱した。同時に銃口を下に向け、ネルを撃とうとするが……

 

「そいつは舐めすぎだろ」

 

「っ!」

 

 ネルが体を一回転させ、ムーンサルトキック。アリスの腕に直撃した蹴りが彼女を吹っ飛ばし、落ちた場所に煙が生じた。

 そのまま華麗に着地すると吹っ飛ばしたアリスの方を見やり、銃弾を放つ。圧倒的な弾幕が打ち込まれ、さらに煙が立ち込めた。

 

 煙が晴れると、レールガンを盾にして弾幕を凌いだアリスの姿が見える。弾幕が止んだことを確認した彼女はレールガンを構えようとするが、その時には既にネルが懐に潜り込んでいた。

 

「ほらほらどうしたぁ!? 前よりずいぶん弱くなったな!!」

 

「くっ、っ……」

 

 銃撃を交えた肉弾戦。高速で移動し続ける彼女を捉える術はアリスに存在せず、防戦一方となる。このままでは押し切られる……そう判断した彼女が選んだ次なる選択とは。

 

 

 

「──術式解放」

 

 

 

「あ? ……っ!?」

 

 強烈な嫌な予感がネルを襲う。その本能に従うままアリスの間合いから離れ、様子を伺い始めた。

 

「何だ……?」

 

「神秘を消費。物質の生成を開始」

 

「ちっ、ぶつぶつ言いやがって……」

 

 アリスの手がネルにかざされる。明らかに届かない間合い、だが何かある……幾重もの戦場を潜り抜けたネルの勘が警鐘を鳴らし、そして。

 

「排除」

 

 その先からコンクリートのような物が襲いかかって来た。正方形の面が凄まじい速度で自身に迫るのを、ネルが跳んで避ける。

 

(あいつの手からアレが出てんのか……物質の生成、とか言ってたよな。つまりそういうことか?)

 

 再びアリスの手がネルに向けられ、鈍色の柱が彼女を襲った。咄嗟に銃を地面に向けて乱射し、その反作用で浮いた体を柱の上部に乗せる。そのまま柱の上をスライディングし、アリスに向かって飛び出し、銃を叩きつけようとした。

 

「おらぁっ!」

 

「……!」

 

 アリスの腕に叩きつけられようとした一撃が、彼女の肌から飛び出した硬いものに防がれる。ガキィン! と金属音が発生し、そして火花が散ったのを見てネルはそれが何かを察した。

 

(鉄!? さっきのやつ以外も作れる……っつーか手のひら以外からも出せるのか!)

 

 ネルの一撃を防いだ鉄は一気に膨張し、彼女を弾き飛ばす。吹っ飛ばされながらも空中で回転、体勢を整え銃を乱射するが……今度はレールガンに防がれた。銃弾が弾かれる様子を見て舌打ちしながらも、華麗に着地を決める。

 

(物質の創造……けど制限はありそうだな。無制限ならもっと目眩しとかに使って来そうだもんな……)

 

 未知の力を使い始めた彼女に警戒を抱きつつ、間合いを詰めるためじわじわと接近し始める。攻撃が認識される限り鉄で防がれる現状、彼女を倒すための必要条件とは。

 

(認識できねえ攻撃で、一撃でぶっ倒すしかねえな)

 

「……武装のリロード開始」

 

 じわじわ近づいてくるネルから逃れるため同じ速度で後退していたアリス。だがこのままでは埒があかないと悟ったか……レールガンを両手で構え、チャージを始めた。

 

「はっ、バカだな。それ構えるってことはよ……今あたしに攻撃できねえってことだろ!」

 

 レールガンはその圧倒的な重さゆえにアリスが両手で持ち上げてようやく構えられる。そしてその間物質創造による攻撃は実質不可能。

 

 好機と見たネルが飛び出した。一気にアリスの懐まで潜り込む……瞬間、アリスもレールガンを動かし始めた。その銃口には青い光が集まり続けていながらも、それがレールガンの動きと共に人魂の如く揺れる。

 

(チャージしながらあたしを近接で迎え撃つ気か)

 

 一つ間違えればチャージが霧散してしまう危険な賭け。そのギャンブルの必要性があると、彼女は判断した。

 

「上等だ! いくぞ!」

 

 レールガンの間合いにネルが入る。同時に、アリスが全力でレールガンを振りかぶった。

 ごお、と空気が裂ける音がするも……打撃音が聞こえない。当たる直前跳ねたネルが、空中で体を捻りアリスの顔面を踏みつける。

 

 そしてそのまま地面に彼女を叩きつけ、二つの銃口を顔に突きつけた。一瞬の迷いもなく、引き金を引く……しかし寸秒遅い。

 

 顔から飛び出た鉄の塊が、ネルのでこに直撃する。予想外の攻撃に動揺しながらも、意識を飛ばさなかったのはミレニアム最強の意地。だが一瞬怯んだ隙に、アリスがネルを蹴り上げた。

 

「ぐっ……!」

 

「武装のリロード開始」

 

 ネルが吹っ飛んでいった箇所を煙で見失わないよう確認しながら、レールガンのチャージを始める。重々しい駆動音と共に青白い光が集まり始めた。

 

 一方ネルも瓦礫の中から起き上がる。そこに大したダメージは見えず、チャージを続けるアリスをじっと見つめていた。

 

(この距離だと止めるのが間に合わねえけど、躱せるな……そしたら煙に紛れて近づいて気絶させる)

 

 その判断は決して間違いではない。

 

 

 不意にレールガンの銃口がネルから外れた。予想外の行動を前に、無意識的にネルの視線が銃口の先を追う。

 そこには、この場から退散しようとゆっくり動いているハレとコタマの姿。気絶しているマキを背負っているため、速度がかなり遅い。

 

「! てめえ!」

 

「発射」

 

 そこに向かって、レールガンが発射された。青い彗星の如く煌めくそれは、逃げるヴェリタスの背中を的確に追い、そしてそのことに二人が気づいたが既に遅い。

 青い光が二人を飲み込む……前に、ネルが割って入った。そして手のひらをかざす。

 

「先生技借りるぞ! 輝綫!」

 

 先生との修行で習得した神秘の放出。あれからも修行を続けていた彼女にとって、一撃で限界を迎えることは無くなったものの……未だその燃費の悪さは健在。

 

 光と光が衝突し、大きな爆発が起こる。爆風が吹き荒れ、ネルもアリスも風を堪えるように手で顔を守っていた。

 

 爆発が収まり、双方の様子がはっきりと見えるようになる。ぜえぜえと荒い呼吸をするネルは明らかに消耗しており、先ほどの技が相当な負担だったことが伺える。

 対するアリスは無傷。何度かネルが入れた攻撃も、時間が経てば彼女の持つ自動修復機能によって治されてしまう。

 

「お前らさっさと逃げろ。もたついてんじゃねえ」

 

 荒々しい口調ながらも自分を案じる言葉に、二人は再び逃げ始める。だがアリスが再びレールガンの矛先を彼女たちに向け、チャージを始めた。

 

「ざけんな。あいつら攻撃すんならあたしを倒してからにするんだな」

 

 当然ネルがそれを見過ごすわけもなく、再び懐に潜り込んで接近戦を始めるも……先ほどより動きにキレがない。アリスに攻撃を入れても回復され、徐々に形成が逆転していく。

 

 遂には振られたレールガンが思いっきり体に当たり、咳き込むネル。そんな彼女に銃口が突きつけられ、重々しい機械音と共に、レールガンがチャージを始めた。

 

(くそ、この程度で動けなくなってんじゃねえ! まだ動けるだろ!)

 

「武装のリロード開始」

 

 頭上に集まる青い光を見ていることしかできないネル。動こうとしても、体が言うことを聞かない。それでも気合いで体を動かそうと、何度も何度も試みた。

 

(動け……動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け……!)

 

「発──」

 

 その時、アリスの後方よりバガァ! と地面を割る音が聞こえた。それに加え相当な神秘を彼女は検知する。チャージを終えていたレールガンをその方に向け、躊躇なく発射した。

 

 光が煙を突き抜けるが、何もいない。同時にアリスに影がかかり、襲撃者がどこに行ったのかをアリスは察知した。

 

「あなたが敵ね」

 

 頭上を見るまでもなく、頭部に銃口が突きつけられたのを理解した。レールガンを振って攻撃するが、避けられてしまう。

 そのまま彼女は翼を用いてふわりと着地した。

 

「てめえは……空崎ヒナ」

 

 ネルと同じような身長……そしてネルと同じように、このキヴォトス最強の一角。

 ゲヘナ最強の少女がこの地に降り立った。

 

「ええ。それで、彼女を戦闘不能にしたらいい?」

 

「ああ……レールガンはバカ火力だけど溜めがいる。それから色んな物質を肌から作り出すよく分からねえ力も」

 

「分かった。あなたは休んでて」

 

 必要な情報を端的に伝え、戦闘がヒナに引き継がれる。構えたのは彼女の身長ほどもある巨大なマシンガン。

 

 ネルに匹敵するほどの猛者がもう一人現れたことにアリスは警戒を深め、レールガンを近接で扱えるように構える。

 

 ──静寂が場を満たした。

 

 

 最初に動いたのはヒナ。銃口より紫の弾丸を何百と発射する。異常な量による弾幕と、それら一つ一つに込められた相当な量の神秘……アリスは本能的にレールガンを盾にして凌いだ。

 

 ガガガガガガ、と銃弾が衝突する音が聞こえ続け……その音が止んだと見るや否や、レールガンを振りかぶってヒナに突撃するアリス。しかし彼女は見落としていた、地面に落ちた弾丸一つ一つに宿る神秘を。

 

 未だ紫に発光するそれを踏んだ瞬間、爆発が起きた。予想外の攻撃、対応することもできずにアリスの体が宙に浮く。その大きすぎる隙を、彼女は見逃さない。

 

「終わりよ」

 

 大きすぎる愛銃をさながら槍のように突き出し、アリスの顔面に突き当てた。同時に銃口が紫色に光り……まるでビームのような弾幕が、アリスの頭部に直撃した。

 

 ネルには無かった、高火力攻撃。それを受けてとうとうアリスの意識が飛んだ。ヘイローにノイズが走り、消え去る。

 

「……ちっ、あたしが苦戦したのを簡単に倒しやがって」

 

「初見殺しが刺さったおかげ。それにあなたが消耗させてくれていたし……私とあなたにそこまで実力差はないと思う」

 

「気ぃ使われてんのも腹立つ……!」

 

「………………」

 

 こうして事件はようやくの収束を見せた。

 

 


 

 

 事件から一日後。

 

 アリスの暴走によって起きたあの事件。多少の怪我人は出たものの、重傷を負った人物はいなかった……一人を除いて。

 

 才羽モモイ。最初のアリスの銃撃の時、至近距離にいた彼女は未だ目を覚まさない。生きていることは確かだが……それ以外は不明瞭だった。

 

 一連の事件を確認したヒナは、アロナというAIが送って来たメッセージを真実だと認識。先生捜索に動き出す。その際、ミレニアム生にも協力を求めようか思案したものの……結局、風紀委員会だけで捜索をすることになった。

 

 ミレニアムに特に関係がなく、ヒナの言うことを信じてくれる風紀委員会と違い、ミレニアム生に協力を求めるなら事情を話さなくてはならない。そしてその過程でアリスの正体を話すことは避けて通れないことであり……それはあまりに酷だと、彼女は認識した。

 

 数多の人を傷つけてしまい、モモイを眠らせてしまったアリスは意識が戻った後、一度も部室から出て来ていない。

 

 

 

 ミレニアムに近い、とある廃墟地帯……そこで最強二人が話をしていた。

 

「悔しいがあのチビと戦った時……正直、あたしだけだと怪しかった。助けてくれたことには感謝してる」

 

「……別に無理に感謝する必要はない。私が気に入らないなら、はっきりそう言ってくれて構わないわ」

 

「うっせえ、あたしはそこまで器が小さくねえんだよ」

 

 荒っぽい口調ではあるが、声色は大人しめのネル。そんな彼女と話をしているヒナ。

 ヒナはネルにだけは話をしておくことにした。ミレニアム最強と謳われる、その実力と精神性を信じて。

 

「先生が……それも、うちの会長にか」

 

「ええ。私としても半信半疑だったけれど……今回の件を踏まえて、恐らく真実だと思う」

 

「しかもあのチビが世界を滅ぼすと来たか……普段なら笑い飛ばしてやったが、あれを見るとそうも言えねえな」

 

 真剣な顔でアリスに思いを馳せるネル。自分を倒しかけた異常な戦闘力と、付き従えたロボットたち……そしてそのことを悔やんで、閉じこもってしまっている今のアリス。

 

「……いや、やっぱ笑い飛ばせるわ。あのチビにそんなことできるわけねえ」

 

「私としては何とも言えないけれど……でも先生が信じたのなら、きっとそうなんだと思う」

 

「ああ、あいつのこと少しでも知ってんなら誰でもそう思うだろうよ」

 

 ふーっと、ネルが深く息を吐いた。同時に近くにあった瓦礫に寄りかかり、ヒナの目を見据える。

 

「それで、話ってのは」

 

「私たちは今から先生捜索を行う。あの人さえ戻れば、全て解決すると思うから……でも何日かかるか分からない。その間に彼女が、アリスが殺されてしまったら先生の負け」

 

「……つまりあいつを守れってことだな」

 

「ええ。恐らく近々そちらの生徒会長さんが接触してくるはず。どんな手札を持ってるかは分からないけど……」

 

「わーってるよ。どのみちあたしたちもやる気ではあったんだ……任せとけ」

 

「お願いね」

 

 そうして二人はそれぞれのすべき事を心に据え、動き始める。

 

 

 

 

 

 それから更に一日後。ゲーム開発部に調月リオが襲来。

 真実を話し、アリスを連れ去ろうとする彼女にゲーム開発部の二人や美甘ネルが反発するも、リオが連れてきていた幻のC&C五人目、コールサインゼロフォー「飛鳥馬トキ」に敗北。

 

 自分がいるせいで人が傷つくと理解したアリスは、自分の意思でリオに同行した。

 

 

 

 

 

『先生。今日、アリスを捕えたわ。数日もしないうちに彼女のヘイロー破壊を試みるつもりよ』

 

「……」

 

『その際、ゲーム開発部の……ミドリとユズ、だったかしら。それにネルにも反発された……ここまで反発されるということは、きっと私の方に問題があるのでしょうね』

 

「それでも、止まらないのか」

 

『ええ。例え誰にも理解されなくても、このキヴォトスのために私は私の信じる道を行く。だからどうか全て終わったその時には…………いえ、何でもない』

 

「……」

 

『……今日はもう通信をやめるわね。おやすみなさい、先生』

 

 

 

「……アリス……」




オリ要素が増えていくねえ

小話:ネルとヒナの実力差
神秘を意図的に操作できる、というだけで生徒としては上澄みではあるがそれはそれとしてネルとヒナの間には差がある。
まだネルは神秘操作が未熟なので効率がかなり悪かったり、単純な放出しかまだできない。ヒナはそこがある程度熟達してるので弾丸を地雷にする運用ができたりする。

ちなみに生徒最強は言うまでもなくホシノ。次点はヒナだがそれなりに大きい壁があったり。
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