呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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作戦会議シーンキャラ多すぎてめちゃくちゃ分かりづらい……
ブルアカ知ってる人なら読めるだろうけど、あまり詳しくない人はウィキとか片手に読まないと誰が誰だか分かんないと思います……


53. 要塞都市エリドゥ

 アリスが連れて行かれた。その現実を前に、彼女と親しい者たちは動揺していた。

 

 目の前でアリスが行ってしまうのを見ていることしかできなかったと悔やむネル。リオの話に混乱して、どうしたらいいのか分からなくなってしまったミドリとユズ。

 

 誰もが悲しみや後悔をする陰鬱な空気の中で……彼女は戻って来た。

 

「モモイ………………降臨!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 意識を取り戻したモモイは、アリスが連れて行かれたこととその事情を知る。アリスが魔王だということ、ヘイローが壊されてしまうかもということ、どうしたらいいのか分からないということ……

 

「このおバカさんが!!」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「正直、難しいことはよく分かんないけど……! みんなの話を聞いてたら胸がぎゅっとしちゃって……あんまり言葉がまとまらないんだけどさ……でも1つだけ確かなことはあるよ!」

 

「……確かなこと?」

 

「私たちがこの事態に納得できてないってこと!」

 

 意味が分からないままアリスを連れて行かれて、まともなお別れすらできていない。そんなことが納得できるのかと、彼女は熱く語る。

 

 もっといっぱい話して、もっといっぱい遊んで、もっと一緒にいたい。だからアリスを連れ戻したくて、連れ戻しに行く。そんな単純で、何よりも強い感情という理論を彼女は主張した。

 

 そんな彼女に触発されて、みんなの顔に笑みが浮かぶ。その通りだと肯定の言葉を添えて、目に光が戻っていく。

 

「みんなでアリスを取り戻そう!」

 

 その言葉に力強い返事が返ってくる。もう誰も涙を浮かべず、下を向くことはなかった。

 

 

 

「でも……そもそもアリスちゃんがどこに連れて行かれたのかも分からないんじゃ……」

 

「作戦会議が必要だな。一度協力してくれそうな奴らを集めて、それから考えなきゃなんねえ」

 

「ね、ネル先輩が作戦って言った!?」

 

「てめえ……いや今はいい。とにかく今は何もかもが足りねえんだ、使えそうな奴や物は何でも引っ張り出すぞ」

 

 それから少しの話し合い……そして連絡を入れたりしてヴェリタス、エンジニア部、そしてC&Cの協力を得られることになった。またモモイがユウカに連絡を入れ、リオの居場所を調べてもらった結果どこにいるかも判明する。

 

「要塞都市エリドゥ……そこにアリスがいるんだね」

 

『ええ、まず間違いないはずよ。会長が意図的に改竄してたデータだし……その上横領されてた資金額から見ても間違いない』

 

 要塞都市エリドゥ。

 リオが秘密裏にミレニアムの生徒会「セミナー」の資金を横領し、作り上げていた曰く「終焉に備えるための要塞都市」

 

 アリスがいると思われるのは、その中心部に建てられたタワー。

 

「問題はそこにどうやって行くのか……そしてどう攻略するか」

 

「要塞都市なんて仰々しい名前がついているくらいだ、無策に突っ込めば悲惨な目に遭うだろうね」

 

 この場に集まったメンバーの二人、カリンとウタハが深刻そうに呟いた。問題点は以下の通りだ。

 

①侵入方法

②用意してあるだろう防衛設備への対抗策

③ネルをも打ち倒した「飛鳥馬トキ」への対応

 

「まずは侵入方法だけど……」

 

「それなら私にいい案がある」

 

 手を挙げたウタハに視線が集まる。彼女が語る策とは、つまり物資輸送用の線路を使うということだった。

 

 都市を建設する人手はドローンなどでカバーができるが、資材はそうも行かない。どこかに輸送用のルートがあるはず……それを使ってこっそり侵入するというのが、彼女の提案した方法。

 

「肝心の路線探しはエンジニア部が担当しよう」

 

「ありがとうございます……! それじゃあ次に考えるべきなのは、防衛設備への対応……」

 

「それは私たちがやるよ」

 

 次に手を挙げたのは、ヴェリタス所属小鈎ハレ。

 

「ハッキングして無力化を試みる。それ以外にも、遠隔でのサポートは任せて」

 

「完璧にやり遂げてみせます」

 

「実際に現地には向かえないけど、そこはみんなに任せたよ!」

 

 続いてコタマ、マキも意気込みを述べる。遠隔でしか役に立てない分、たくさん仕事をしてみせると頼もしい事を述べる彼女たちに、モモイたちがありがとうと頭を下げた。

 

「それじゃあ最後は……飛鳥馬トキさん、ですね……」

 

「コールサインゼロフォー、とか言ってたなあいつ。アカネ、知ってるか?」

 

「存在は、知っておりました。C&C所属でありながらリオ会長専属のメンバー……いわば、リオ会長のボディーガードですね……しかし、まさか部長を圧倒するほど強いとは……」

 

 アリスを連れ去られた件の時、リオが連れて来ていたロボットだけならばネル単独で圧倒することができていた。形勢が覆ったのは、最後に出てきた彼女のせい。

 

「なんか『武装』っつーのを使ってたよな。あれ使い始めた途端、急にあたしでも捉えらんなくなった」

 

「あの時の動きは……まるで『チートプレイヤー』、みたいでした」

 

 ネルとユズがそれぞれ彼女についての所見を述べる。

 

 トキも、最初からネルと互角だったわけではない。むしろ最初はネルの方が優勢気味だった……だが「武装」というものを使い始めた途端、彼女はネルを翻弄し始め、遂には勝利してしまったのだ。

 

「……正直、勝てる未来が見えないです」

 

「そ、そんなになの? 私たちは実際に見てないから分かんないけどさ……」

 

「実際に対峙したあたしから言わせてもらえば、あの感覚は……まるで先生と戦った時みてえだった」

 

 軽く放たれたその言葉には、とてつもない重さが秘められていた。

 先生、もとい九条カケル。彼が異常なまでに強いのはキヴォトスにおいては周知の事実……それと同レベルだという、あまりに重い現実。

 

「……その肝心の先生とは、まだ連絡がつかないのかい?」

 

「うん……というか、私が寝込み始めちゃった日から連絡がつかないんだよね? やっぱり、先生にも何かあったんじゃ……」

 

「……先生なら今、リオのやつに幽閉されてる」

 

「!?」

 

 その言葉にネル以外の全員が驚いた。

 

「ど、どういうことですか!? というか、ネル先輩は何でそれを黙って……!」

 

「落ち着け。事情なら今話す」

 

 アリスが暴走したあの日の後、空崎ヒナから伝え聞いた事情を話す。そして真実を話してしまえば混乱を生むだけだから、あえて話さなかったこと……

 

「だけどリオが全部話した今、もう隠す意味はないからな」

 

「そんな……先生が会長に捕まってるなんて……」

 

「今ゲヘナの風紀委員会が探してるはずだから、自由になるのも時間の問題だろうが……チビのヘイローが破壊されるのに間に合うかは怪しい。あたしたちだけでチビ救出に望む覚悟はしないといけねえ」

 

「っ……」

 

 最強の不在……それだけではない。先生は危ない時はいつも、生徒のそばにいた……だが今回はその限りではなく、まるで突然谷に突き落とされたような、そんな不安感が心の底から込み上げてきた。

 

「けどよ……こっちだって、元々あたしの力だけであいつにお礼参りするつもりだったんだ。先生がいなくても、あたし達ならできる」

 

 それを笑って吹き飛ばすのは、ミレニアム最強。先生がいないならば、自分が支柱になる……そう言わんばかりのカリスマを持って、不安な表情をするみんなを安心させた。

 

「部長がいるなら大丈夫だよ!」

 

「私たちの部長は、いつだって最強だからな」

 

「その通りです……部長を怒らせて、生きていた人はいませんから」

 

「最後のは殺してない!? え、てことは私も殺される!?」

 

「話逸らしてんじゃねえよ! っていうかお前らも、あんまあたしの事誇張して話すんじゃねえ!」

 

 はーい、と返事をしつつも彼女達……C&Cの三人がネルに向ける目線は変わらない。

 自分たちの中でいつでも最強で、どんな任務も達成してくる、信頼と尊敬の対象……それこそが、彼女たちにとっての「美甘ネル」なのだ。

 

「……ともかく、あいつの相手はC&C(あたし達)が請け負う。そしてその隙にゲーム開発部(お前ら)があのチビを救うんだ。ま、要は陽動だな」

 

「そっか……別に倒さなくても、アリスさえ助けられればこっちの勝ちだもんね!」

 

「そういうこと……ま、当然あたしらは勝つつもりでやるけどな。あん時の借りは百倍にして返してやる……お前らもそれでいいな?」

 

「分かった、従おう」

 

「うんうん! 私たちに任せて♪」

 

「ふふっ、精一杯頑張りますね」

 

 かくして、アリス奪還作戦が決まった。

 

 先んじてC&Cが侵入し、敵戦力を減らすとともにトキを相手する。そうしたらゲーム開発部とエンジニア部が侵入し、アリスを救い出す。ヴェリタスはそのサポートだ。

 

「よし、それじゃあ……勝手に家出したアリスを! 私たちの手で連れ戻すんだよ!」

 

 モモイの号令に、再び全員が勇ましく返事する。

 そして作戦が始まった。

 

 


 

 

『先生、聞こえているかしら』

 

「……ああ、聞こえてるよ」

 

 どこか遠く離れた場所。熱気と砂に包まれた中にある、快適な空間。椅子に座ってぼーっとしていたカケルは、聞こえてきたリオの声に応える。

 

『……いよいよ、アリスのヘイローの破壊を開始するわ。ただ正直時間はかかりそうで……といっても、後一日もしないうちに終わるはずよ』

 

「一日……」

 

『ええ……それに短ければ、数時間もしないうちに。そうなればようやくこの騒動も終わる』

 

「……やっぱどうしても、考えは変えないのか」

 

『無論よ……私は必ずアリスのヘイローを破壊してみせる。恐らく妨害も来るでしょうけど、それすら跳ね除け、私は私の考えを貫き通す』

 

 断固たる口調で宣言するリオ。スピーカー越しでも分かるほどの熱意を前に、カケルの眉がピクリと動いた。

 

「……俺だって、譲れないものはあるさ。それに俺だけじゃなくて、みんなにも」

 

『ゲーム開発部たちのことを言っているのかしら?』

 

「ああ。きっと今頃、アリスを救いに動き出してる頃だろ」

 

『奇遇ね。私もそう考えていたところよ……彼女たちは99%以上の確率で助けに来る』

 

「……こっからはもう、互いのエゴだ。俺たちと君、どっちが考えを貫ける強さがあるか」

 

 カケルが立ち上がり、スピーカーを見つめた。まるでその先にいるリオを見透かすかのように、強い視線を持って。

 

『勝つのは私よ』

 

「勝つのは俺ら……って、どうせどっちも譲らないんだ。不毛な争いはやめよう」

 

『……そうね。どれだけ言葉を交わそうと、実際の状況には何も影響しない』

 

「あーいや、それは違うと思うけど」

 

『……?』

 

 困惑したような声がスピーカー越しに聞こえてくるのを認識したカケルが、困ったように頭を掻く。いくらか目を泳がせて考えた後、言葉を絞り出した。

 

「リオ。これが終わったら、改めて話し合おう」

 

『……何を言っているの。話し合いなら散々したはずよ。それで結局、私たちは相容れないと結論づいた』

 

「それは俺たちがまだ渦中にいるからだ。譲れないものを主張し合う時、人はどうにも頭が硬くなる……俺も、君も」

 

『だから終わってから話すと?』

 

「ああ」

 

 努めて冷静な口調と声色で話すカケルだが、その心にはマグマのように煮えたぎる感情がある。

 アリスを解放しろと叫びたい、今すぐこんなことはやめろと言いたい、俺をここから出せと怒りたい。それら全てを、抑え込む。

 

 だって自分は生徒のための先生で、先生が頭ごなしに生徒を否定するなんてあってはいけないから。

 

「泣いても笑っても、後一日しないで終わりなんだ。先のことは考えておかないとな」

 

『……分かったわ。全てが終わったその時には、話し合うことを約束する』

 

「ああ……それじゃあ、そろそろ俺は寝るよ」

 

『ええ……おやすみなさい、先生』

 

 そして通信が切れた。

 

 


 

 

 アリス救出作戦。それは今のところ順調に進んでいた。エリドゥへの侵入は滞りなく進み、今はC&Cが派手に大暴れして注意を引こうとしている。

 ヴェリタスがハッキングで都市を守るロボット達を無力化し、やりきれなかった個体は先に侵入したC&Cが片付ける。そうして遂に……

 

「お待ちしておりました、先輩方。C&C所属、コールサインゼロフォー。飛鳥馬トキ、ご挨拶申し上げます」

 

 現れたのは金髪青眼のメイド。幻のC&C五人目にして、今回の作戦において最たる障害と予測される、リオ直属のボディーガード。飛鳥馬トキ。

 

 作戦通り彼女を誘き出すことに成功したC&Cは、いよいよ戦闘を開始する。

 

「リオ様の命令により、先輩方を排除します」

 

「やれるもんならやってみろよ、後輩」

 

 

 

 時を同じくして、敵対するドローンやロボットを排除しきったゲーム開発部&エンジニア部は、エリドゥへの侵入を始めていた。C&Cが最大の脅威を相手してくれている間に、中央タワーへ赴きアリスを救出する。

 

 だがリオもまた、それくらいのことは予想していた。

 

『え!? ちょ、ちょっと待って! 今、通信の状態が……!』

 

『これは……』

 

「! ヴェリタスの通信が……途絶えた……?」

 

 遠隔からサポートをしてくれていたヴェリタスとの接続が突如切れる。明らかな異常事態を前に動揺する六人。そんな彼女たちの前に通信を繋げてきたのは。

 

『予想はしていたけれど……本当にここまでくるなんて』

 

「あなたが会長!? アリスを返して!」

 

『あなたは……ゲーム開発部の才羽モモイ。『名もなき神々の王女』に攻撃されたあなたなら、アレの危険性を理解してるかと思っていたのだけれど……』

 

「そんなの、私には分かんない! 私はただ会長からアリスを取り返したいだけ!」

 

 その言葉にリオは少しだけ残念がるような顔を見せる。だがすぐに普段の感情の読めない真顔に変わり、冷酷な声で話し始めた。

 

『そう……だけれど、あなたたちにそれができるのかしら? 先生不在のあなたたちに』

 

「はっ、そうだ! 先生も返してもらうからね!」

 

「お姉ちゃん、その言い方だとついでみたいだよ……それにそっちの方はゲヘナの人たちが探してるって言われてたでしょ?」

 

『……引く気はない、ということかしら?』

 

「当然! 私たちはアリスを取り返すまで絶対に引かない!」

 

『……やっぱり、そうなってしまうのね。それなら仕方ない──アバンギャルド君、発進』

 

 リオがそう言うと、どこからともなくキャタピラの音が聞こえてくる。断続的に地面が揺れ、何か大きなものが来る……そう予感した直後に、それは現れた。

 

 大きなキャタピラの上にロボットの上半身が乗っているような形状。右手に大盾、左手にアサルトライフル、右肩にロケットランチャー、左肩にガトリング銃。そしてどことなく本能的な嫌悪感が出てくる顔。

 

 リオらしい機能性重視の、秘蔵のロボット。百人が見れば百人がダサいと言う美的センス。付けられた名はフランス語で「前衛的」を意味するアバンギャルド。

 

「うわぁっ!? ダサ……」

 

「たしかに、あんまり可愛いデザインじゃないけど……」

 

『……見た目は関係ないわ』

 

 彼女に深く関わっている人なら一発で落ち込んでいると分かる声色。美的センスが先を行きすぎて世界線を間違えた故の孤独。

 

『理解されないのなら、もういいわ。そのままで構わない。やりなさい、アバンギャルド君』

 

 そしてここでもまた戦闘が勃発した。

 

 

 

 意外なことに、アバンギャルド君はかなり強かった。右手の盾で銃弾を防ぎつつ、両肩の武装で攻撃。好きができれば左手のアサルトライフルでさらに弾幕密度が濃くなる。本体もそれなりにカチカチで、銃弾でダメージがほとんど通らない。

 

 おまけに図体に見合わないスピードをしており、対峙する少女たちの心境はこいつ無敵か……!? であった。

 

「見た目はすっごいダサいのに、めっちゃ強いよ!? どうしよう!?」

 

 実質的に物理的な突破は不可能。内部から突破しようにも、肝心のヴェリタスは阻害されて介入不可能。絶望的状況を前に、勝ち筋を見出せず途方に暮れる少女たち……

 

「うわぁーん! こ、今度はこっちを狙ってるよ!?」

 

「モモイちゃん、危ない……!」

 

 その時だった。突如としてアバンギャルド君のスピードが遅くなる。何事だとざわめく少女たちに、通信が届いた。

 

『ふう……なんとか間に合ったかな。みんな、大丈夫?』

 

「ち、チヒロ先輩!?」

 

 青っぽい黒髪にうさぎのヘアピンを付けた眼鏡をかけた少女。彼女はヴェリタスの副部長、各務チヒロ。

 部長が特異現象捜査部にいる今、実質的なヴェリタスの部長で、やんちゃな後輩や同級生をまとめる常識人である。

 

 「鏡」を使ってエリドゥのネットワークをハッキングした彼女は、そのままアバンギャルド君もハッキング。同時にヴェリタスとの回線も復旧させ、手詰まりだったこの状況を覆してみせた。

 

 弱体化したアバンギャルド君。この好機を逃す手はなく、畳み掛けの攻撃が行われる。

 

 六人からしこたま銃弾を撃ち込まれてなお、アバンギャルド君は動いていた。だがそこに止めを刺そうと、エンジニア部が秘密兵器を取り出す。

 

「自動追跡機能に加え、防水設備も完備」

 

「さらに、絶対零度や3,000度を超える高温化でも安定性を誇る超超超超安全認証を保証した……!」

 

「半年分の予算をつぎ込んで作った最強の──」

 

「「「最新式遠隔スピーカー!」」」

 

 そこにあったのはどう見てもスピーカーではない代物。上下左右どう見ても誰が見ても口を揃えて「ミサイル」と言うであろうものが、そこに用意されていた。

 

「……す、スピーカー……?」

 

「ああ、スピーカーだとも。それも超高性能なね。その真価を、今見せてあげよう……!」

 

 ウタハなんらかのボタンをポチッと押すと、ミサイルが動き出す。凄まじい勢いで飛び出したミサイルは、自動追跡機能付きの名に恥じぬ追尾を見せ、アバンギャルド君に激突、大爆発を起こした。

 

 その一撃をくらい、沈黙するアバンギャルド君。どうなったのかと誰もが固唾を飲んで見守る中……アバンギャルド君は倒れ伏し、爆発を起こして散った。

 

「……どうかな? とても響きがいいスピーカーだっただろう?」

 

「そういう意味のスピーカーだったの!?」

 

 なんだかよく分からなかったが、強敵を倒したことには違いない。ばんざーいと喜ぶモモイたちだが、本番はこれからだというチヒロの声を聞き、改めて気を引き締める。

 

 さらに、アバンギャルド君との戦いで限界が来ていたエンジニア部も離脱。最後にモモイはあるものを託され、一行は先に進むのだった。

 

 

 

 アリスがいると思われる中央タワー。その前に、C&C含む現時点で動ける全員が集合していた。

 

 C&Cとトキとの戦いは、終始連携などで優れるC&C優勢で進み、最終的にトキは一時撤退をしたとのこと。

 

「あとちょっとでぶちのめせたのによ!」

 

「まあまあ……全員でここに集まれたんですし、良しとしましょう? それに……」

 

 アカネがネルを宥めつつ、タワーの前に鎮座する彼女を見た。

 

「向こうもまだやる気のようですよ」

 

 ゆっくりと奥の方から歩いてきたのは、トキ。追い詰められているのは向こうであるはずなのに、余裕があるような表情をしている。

 

「お待ちしておりました、先輩方」

 

「あぁん? んだよ、さっきは尻尾巻いて逃げ出したくせに……一体どのツラ下げてあたしらの前に現れてんだ?」

 

『作戦を変更したのよ』

 

 リオがホログラムとして現れる。

 

『あなたたちの力は正直想定以上だったわ。先生がいなくともここまでやるなんて……だけれど、私には切り札がある。例えあなた達全員を相手にしようと、絶対に負けることのない切り札が』

 

 自信満々にそう言い切ったリオは、トキに向かって指示を出した。

 

『トキ。現時刻をもって『アビ・エシュフ(Abi-Eshuh)』の使用を許可するわ』

 

「……リオ様、それは」

 

『ええ、本来は『名もなき神々の王女』との戦闘用だけど……仕方ないわ。ここでこの子達を阻止できなければ、全てが無に帰してしまうのだから』

 

「……イエス、マム。パワードスーツ『アビ・エシュフ』へ移行します」

 

 そう言うとトキは服を脱ぐ。レオタード状のインナーだけになった彼女は、何かを呼び出した。

 同時にどこからかジェット噴射の音が聞こえ、誰もが上を見上げる。空中を何か大きなものが泳いできていた。

 

 それはトキのすぐ近くに着陸し、トキがそれを身に纏う。両手にガトリングを装備した大きなパワードスーツ……それを装着したトキが、構えた。

 

「……! 来るぞ!」

 

「戦闘、開始します」

 

 驚異的な速度で突撃してきた彼女。ネルの号令に反応したことでなんとか全員が避けることができた。避けた後は即座に全員が攻撃態勢に移る。

 

 銃弾、グレネード、その他ありとあらゆる攻撃がトキにされるも──

 

「……え? だ、ダメージがない!?」

 

「……どういう理屈だ?」

 

 かすり傷一つすらつかず、その事実に何人かが怯む。

 

 その後も何度も何度も攻撃を試みるが、その全てが無効化されるように見え、ただただ体力ばかりが減っていく。そうして何分かが過ぎた頃、チヒロがそのメカニズムを解明した。

 

『ありえない……! エリドゥ全域の電力と演算機能が、すべてあの機体に集中している……!?』

 

『そう──そして、最新鋭の演算機能で強化されたその性能は……未来を予知し確定することさえ可能とするわ』

 

 未来予知による攻撃の実質的な無効化……傷一つつけることすらままならない相手に、再び絶望感が場を満たす。

 このままでは間違いなく負ける……そう考えた彼女たちは一時撤退しようとするが。

 

「逃しません」

 

『そうすることも当然予測されてるわ。あなたたちは今ここで終わらせる……必ずね』

 

 逃げられない。

 

 どれだけ囲んで撃っても、ネルがどれだけ大立ち回りを見せようと。変わらず傷はつかない。もうダメかと、ほとんどがそう思った中で……彼女だけは、笑っていた。

 

「どうしたよ、リオ。何でそんなに焦ってんだ?」

 

『……!』

 

「お前らは結局のところ、チビのヘイローを破壊するまで防衛戦してりゃいいはずだ。ならあたしたちを無理に追ってくる必要はねえ……でも追ってくるってことは、何かそうしなきゃいけねえ非常事態が起こってるっつーことだよなあ……!」

 

『トキ! 今すぐ彼女たちを戦闘不能にしなさい!』

 

 リオの声が初めて焦燥で震える。命令を受けたトキが両手の銃を構え、そして即座に銃弾を放つ──

 

 

 

 

 

「本当に、俺には勿体無いくらいの生徒たちだよ」

 

 空から降ってきた彼を避けることができたのは、アビ・エシュフの未来予知あったからこそ。切り札を切っていなければ、この時点で決着がついていただろう。

 

「おっせーんだよ。何リオにしてやられてんだ」

 

「悪かったよ……さて、遅れて出てきたからな。こっからは出張らせてもらうぞ?」

 

 現在時刻より10分ほど前。彼が捕縛されていた施設をゲヘナの風紀委員会が見つけ、彼を解放した。そこから彼はシッテムの箱を回収したのち、今の状況を知る。

 そこから一切の寄り道をせず、ここに一直線。今、ここに現れた。

 

 悠々と空を飛び、敵対者は蹴散らされ、何人もの生徒を救った、キヴォトスで知らない人はいない男。彼を知るものは彼についていろんなことを語るが、誰もが共通して語ることがある。

 

 

 

「最強」

 

 

 

「それじゃ、さっさと始めようか」

 

『──トキ、術式の使用を許可するわ』

 

「イエス、マム」




オリ要素が増えていく……!
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