調月リオは天才である。
ミレニアムの生徒会長に登り詰めるだけの能力、一人で何でもできてしまう圧倒的な才能。明星ヒマリをして優秀と言わしめるだけの力が彼女にはあった。
それが最も力を発揮したのは「アビ・エシュフ」制作。名もなき神の技術に最も接近している彼女はその身に宿した技術力全てを注ぎ込んで、この規格外の兵装を奇跡的に作り出す。
更に。彼女は独自に無名の司祭の調査をしていた際、ある術式を見つけていた。だがそれをアビ・エシュフに導入し、実用化できるほど洗練したのはまさに神業である。
術式発動の許可を得たトキが発動したのは未知の極の番。大きな神秘の起こりを検知したカケルが一瞬遅れて反応し、弾丸のように飛び出してトキに触れようとした。
それにギリギリで反応し、両腕でガードして
(今の隙ついても防がれんのか……本人に触れるのは難しいかな。というか、極の番は……不発? そんなわけなくないか?)
大技を発動したのにも関わらず何も変化がないのを見て、逆に警戒を強めるカケル。同様に今の様子を見ていたネルも、訝しげに眉を顰めていた。
「おいトキ。何で今攻撃を避けなかった?」
「……」
「ネル、それはどういう意味?」
「こいつは未来予知ができるらしい。だからあたしらの攻撃も全く当たらなかったんだけどよ……」
「質問に答えましょう」
トキの一声に、全員の顔がそちらに向く。視線を独り占めしたトキは軽く息を漏らすと、タネを話し始めた。
「この術式
「へえ……そんで俺たちにそれを話して情報開示、ちゃっかり術式の効果を上げたな」
「それだけでなく、未来予知を使えないと示すことで先生への牽制も兼ねています。リオ様によれば、これで先生は高火力攻撃を使いづらくなると」
「なるほど、流石に頭がいい……なっ!」
カケルの術式を用いた攻撃は大抵が高火力で遠距離攻撃。遠距離戦よりも近距離戦に持ち込んだ方が有利になると即座に判断した彼は、一気にトキとの間合いを詰める。
だがそれも読んでいたのだろう。トキは術式を発動、自身の周りに式神を召喚する──
エリドゥが魚の群れに埋め尽くされる。ケセドの軍隊が矮小に見えるほどの、超質量攻撃!
呼び出された無数の魚の式神は津波のように都市を覆い、カケルをトキから大きく離す役割を遂行した。さらには目隠しも兼ねているため、トキに当たる可能性を考慮して輝綫で薙ぎ払うことは不可能。
(やりづらい。生徒相手だとやっぱしんどいな)
一度は魚に吹き飛ばされたが、自身を喰らおうと接近したものだけを的確に対処することで地面に降り立つ。両足が地面に触れた今なら、あれが使える。
「明星」
自身が認識できる半径数mの明星。そこから徐々に範囲を広げ、知能もなく突撃してくるだけの式神を完全排除することに成功した。
焼き焦げた魚たちが都市の床に転がる。それらは少しすると、最初からなかったかのように消え失せた。
「お見事ですね」
声がした方を振り向けば、ビルの上からこちらを見下ろすトキ。わざわざアビ・エシュフを動かしてまで大きな拍手をする彼女にカケルがうざそうに眉を顰めた。
「おお、怖い怖い」
「あ、やべ。顔に出てたか……悪いな」
「お気になさらず。真剣勝負中に悪いも何もないでしょう」
「それもそうか」
足に力を入れ、トキの場所まで大ジャンプ! 同じ高度まで上がったカケルが蹴りを放つ。間一髪で避けたトキがカウンターのパンチ。それを受け止めたカケルはそのまま重力に引かれて落ち、掴まれているトキも共に落ちていく。
「酔うから目ぇ閉じてなよ?」
「何を……っ!」
落下しながらも腕を離さないカケルは、そのままぐるぐると機体ごとトキを回し始める。しばしぐるぐると回した後は、近くのビルに向かって投げ込んだ!
抵抗することもできず、窓ガラスを割って転がるトキ。即座に体勢を立て直した彼女が見たのは──
「輝綫」
「くっ!?」
青い光が飛んでくるのを、ギリギリで避けたトキ。当たった箇所がじゅう、と音を立てて溶解するのを見て思わず汗が垂れる。
「……当たったらどうするおつもりで?」
「当てないから安心しな。当てるのはそのパワードスーツだけだ。未来予知も、術式も、全部それの機能なんだろ?」
「だったらどうしますか?」
「君たちには悪いけど、それぶっ壊す」
そう言って獰猛に笑うカケルに、トキは悪魔を幻視した。リオから伝え聞いていたし、実際に戦っている映像も見た。だから心構えは十分……そのはずだったのに。
(まるで映像とは違う、圧倒的威圧感……油断をすれば、即敗北につながる)
目の前の敵が最強であることを認識したトキは、改めてリオに通信を繋いだ。
「リオ様」
『分かっているわ……全体の80%までなら、エリドゥを壊しても構わない』
「ありがとうございます」
これまでトキが術式を一つしか使っていなかったのは、エリドゥを破壊しすぎないため。その制限が消えた今、トキは残り
アビ・エシュフの足元から木の根が伸び始め、放出される熱でビルが溶け始めた。そして彼女の周りを水の防壁が回転し始める。明らかに本気を出し始めたトキに、カケルがまた笑った。
「いきます」
「来な」
「す、すごすぎる……」
「ゲームの中に来ちゃったみたい……」
カケルとトキによる明らかに一つ次元が違う戦闘。それを見ていた才羽姉妹が思わずと言った様子でぽつりと呟いたその感想に誰もが頷いていた。
「……けど今がチャンスだな。トキのやつを先生が相手してくれてる今なら、タワーにも侵入ができる」
「はっ、そ、そうじゃん! よし、今のうちにアリスを助けよう!」
「だけど、部長はそれでいいのか?」
「あぁ? 良いわけねえだろ。トキのやつはあたしがぶっ飛ばしたかったしな……けど、この任務の目的はチビを救出することだ。あたし個人の事情は後で回す」
カリンの質問に軽くキレながら答えたネルだったが、C&Cのリーダーとしてするべきことをしっかりと見据えている。他のみんなをまとめつつ、タワーに侵入しようとした。
そんな彼女の頬に、突然違和感が走った。
「……あ?」
反射的にその箇所を手で触ると、何かざらっとしているような気がする。少しの間触り続けると、それが小さな咬み傷だということが分かった。
「お前ら下がれ。何かいる」
「何かって、っ!?」
ネルの言葉に疑問を呈したユズもまた、唐突に肩を抑えた。モモイたちが近づいてみると、肩の布が少し抉れている。
「ユズ!?」
「ユズちゃん、大丈夫!?」
「だいっ、じょうぶ……ネル先輩」
「何──「魚、です」……何?」
ゲーム開発部の部長、花岡ユズは動体視力が異常なまでにいい。それに加えて圧倒的な反射神経もあり、格闘ゲーム界隈では有名な人である。
「見えました……小さい魚みたいなのが、数十匹くらいいます」
「魚……おいアスナ」
「ん? どうしたの部長?」
「適当に手を叩いてみろ」
意図の読めない指示にハテナマークを出すアスナだったが、部長が言うならと手を勢いよく叩いた。すぐに手を離すと、ネルから手のひらを見せろと言われ、言葉通りにみんなに見えるよう手を出す。
「……これだ。このちっせえ魚」
「うげ、気持ち悪……というか、アスナ先輩今ので一匹仕留めたの!?」
「あはは、運が良かったねー!」
「今はそれよりこいつだ。かなり小せえ……これがそこら中にいるんだな?」
「はい」
白目を剥いている、宙に舞うほこりと見間違えるほどの小ささの魚。それが数十匹いるというユズからの報告……だが見えないだけで、攻撃力はあまりにも貧弱だ。
(これがトキの代わりの門番……?)
「と、とりあえずタワーの中に入ろうよ! ここにいたら絶対に危ないって!」
「……それはそうだ。さっさと中入るぞ」
何か不穏な雰囲気を感じる。だがアリスを助けるまであと一歩、最悪の場合は自分が死ぬ気で頑張れなどうにかなる……そう考えたネルは深く考えることもなく、タワーの中へ足を踏み入れた。
正面の扉は頑丈に閉まっていたが、アカネの持っていた爆弾を使って強引に開く。破った扉を乗り越えて中に入ると、リオらしく装飾が何もない、機能だけが備わった簡素なロビーが出迎えた。少し奥にはエレベーターを思わしきものも見える。
「エレベーターじゃん! 早速使ってアリスのところに急ごう!」
「馬鹿かお前、間違いなくセキュリティに阻まれて使えないに決まってんだろ。階段使うぞ」
「えぇー!?」
がーん、とショックを受けた様子のモモイに誰かが微かに笑いを漏らした。その気の緩みは伝播し、あたりが柔らかい雰囲気に包まれる。
『ちょっと待って。今私がエレベーターのシステムをハッキングするから……すぐに終わる』
「おぉー! 流石チヒロ先輩!」
「……まあそういうことなら、それまで少し休憩にするぞ」
ネルの一声により、全員が思い思いの時間を過ごし始めた。いよいよアリス救出が目の前に迫ってきて緊張する者、任務を果たすだけだと静かに佇む者、あと少しで終わりだと笑う者……多種多様な時間が展開される中で、ネルは一人考えていた。
(タワーの周りにいた小魚……あたしたちに攻撃してきた以上、リオ側なのは間違いねえ。だがあいつがあんな役に立たないものを置くか? 何か、見落としている……?)
ふと頭によぎったのは、先生が来た直後のトキの行動。術式を許可された彼女はまずカケルを攻撃するでもなく、最初に何かをしていた。
(その何かが今になって……? いやおかしいだろ。発動したのはそれこそそれなりに前だぞ?)
『エレベーターのハッキングが完了した。最上階まで一気に登れるよ』
「おー、待ってました! みんな、行こう!」
釈然としない思いを抱えながらも、考えすぎかもしれないと自分を律し、眼前にまで迫った本懐に目を向ける。エレベーターの中に七人、ぎゅうぎゅうになって入るとゆっくりと上昇し始めた。
最後に入ったネルは、必然的に扉側に立つことになる。上昇することによって体に感じる負荷を感じつつ、ゆっくりと集中するため目を閉じた。
そのせいで、気づくのが遅れてしまう。
「……あれ……何か、聞こえないですか……?」
静かだったエレベーター内にユズの声が響いた。緊張しているからかその声はひどく震えている。まるでホラーゲームのような演出に空気が凍る中、モモイが努めて明るく言う。
「や、やだなあユズは。私たちのこと怖がらせようたってそうはいかないんだからね!」
「ち、違う……本当に何か、聞こえる気がする……」
「……い、いやいや……だってここエレベーターだよ? 上に上がってる途中の……誰も来れるわけないじゃん!」
不安で言葉が詰まりながらも、そんなわけないと、必死で否定をするモモイ。ユズも確かに聞き間違いだったかもしれないと、自分の言ったことを否定しようとした時。ネルが動いた。
「……ね、ネル先輩?」
「気のせいじゃねえ。確かになんか聞こえる……それもどんどん近づいてきてやがる。だからこのドア開けてあたしが確認してくる」
そう言うや否や、エレベーターのドアを二、三度蹴って壊した。バァン! と大きな音が鳴ってドアが外れた。そしてそこから下を覗き込むと……
どんどんと何かが迫り上がってきている。ぱっと見は黒い何かにしか見えないそれは、キシャァという鳴き声を上げながら、何か水音のようなものを鳴らして上がってくる。
よく見れば黒の中に白い部分がある。あれは白目だ。白目を剥いている瞳……正気を失ったゾンビのような、そんな瞳。
そして時折光に反射して、きらりと光るものもある。あれは牙だ。敵対者を食い散らかそうとする、鋭く尖った白い牙……そこまで考えて、ようやくその正体を察する。
それは魚の軍隊。エレベーターの通路いっぱいいっぱいに詰まっている、異常な量の魚……
同時に、エレベーターの動きが止まった。
「……え?」
「な、なんで……」
『……まさかこんなことになるとは思わなかったけど』
リオのホログラムが再び彼女たちの前に現れた。そして自身が何をしたのかを淡々と述べる。
『エレベーターのケーブルを切らせてもらった。これであなたたちは『海孵』に呑まれ、ここへ到達することはできない』
「てめっ、リオォッ!!」
『精々死なないように頑張りなさい……トキがその場にいない以上、『海孵』はあなた達を殺そうとするわよ』
エレベーターの動きが反転し、重力に引かれて落ち始める。おまけにそれによって少女達は一時的に無重力のような感覚を得ることになり、踏ん張りが効かなくなった。
「うわああぁぁぁっ!?」
「部長、エレベーターの下って結局どうなってたの!?」
「魚だ! でかい魚が餌を求めてあたし達を追ってきてた! このまま落ちたら攻撃されるぞ!」
「く、どうすれば……!」
「……仕方ねえ。アカネ、エレベーターごと爆破しろ!」
「了解しました!」
幾度も窮地を潜り抜けてきたネルは瞬時にその判断を行う。アカネも指示をされてから爆弾を取り出して着火するまで1秒足らず。一瞬にして用意された爆弾が大きく爆発する……!
ドォン! という大きな音と共に、エレベーター……否、エレベーターを囲っていた壁ごと爆発で吹っ飛んだ! 閉鎖空間から夜空の下へ案内された七人は、自分たちを追っていたそれが何かを知る。
黒い津波の如く迫り来る、魚の群れ。それは死累累湧群に似ているが、サイズが違う。死累累湧群で召喚される式神よりも僅かに小さい。それが何百……何千と連なって獲物を食らおうと追ってきていたのだ。
さらには外にも同じような単独の魚が何十匹もいる。自由自在に空を泳ぐ魚たち……それはまるで、海の中に放り込まれたかのよう。
(くそ、脱出したのはいいがこのままだと落下する!)
「うわあ!? わ、私の方追ってきてるよ!?」
まるで一つの生命のように動く魚の群れは、一番近かったモモイに襲いかかる。大口を開けた何十匹の捕食者に死を覚悟するモモイ。死にたくない、と目を瞑って祈り……
そしてその祈りが届いた。黄色に輝く弾幕が、モモイに迫っていた魚群を薙ぎ払う。
「大丈夫?」
「え、あ、えっ誰!?」
「お前は……空崎ヒナ! なんでここにお前が……」
「話は後。今は私がみんなを助けるから、あの魚たちを迎撃することに集中して。見た目に気圧されそうだけど、そこまで硬くはない」
ヒナには腰の辺りから生える一対の翼がある。自由自在に空を飛ぶ、とまではいかないがこの翼はヒナの空中での動きをサポートし、滑空することすら可能としていた。
まずはモモイの手を取った彼女は、そのまま近くのビルの屋上に降り立つ。モモイが着地したことを確認すると、銃口を地面に突き当ててビームのような紫の弾幕を発射。勢いを生かし、再び空へ舞い上がった。
「わ、すっご……!」
「なんだそりゃ……っつーか、何でわざわざ銃から出してんだよ」
「銃を使った方が神秘の操作がしやすくなるのは常識だと思うけど?」
「は?」
「え?」
何とも言えない微妙な空気が流れる中でも、ヒナは動くことをやめない。新たに一人、二人、三人……と救出し、とうとう七人全員を着地させることに成功した。
「全員無事?」
ヒナがそう呼びかけると、七人とも一斉に頷いた。それを確認したヒナは、すぐさま魚群の方に目を向ける。
「それで、今の状況は?」
「先生が最高戦力と戦りあってる。あたしらはあのタワーの中入りたいんだが、あの雑魚どもが邪魔してきた」
「分かった。あれを倒せばいいのね」
獲物を奪われ、魚群は目的を見失ったかのように同じ場所をぐるぐると回っていた。さながら新しい黒色の天体の如くなったそれは、ゆっくりとそのサイズを大きくしていた。
「そんで、お前は何でここにいんだ?」
「……先生を助けた後、お礼を言ったあの人はすぐに飛んでいってしまった。だけど私も何か力になりたくて、ここまで来たの」
「ほーーーん……? 何でここが分かったんだ?」
「先生が飛んでいった方向について行っただけよ。一度方向転換をして撒かれそうになったけど……それよりも、あれへの対処を考えるべきじゃないかしら?」
少しぶっきらぼうなその発言にむ、と眉を顰めたネルだったが、実際言うことはその通りだと魚群に目を向ける。
「……なんか、さっきよりデカくなってねえか?」
「ね、ネル先輩」
「おう、おでこか。どうかしたか?」
「おでっ……!? い、いや、あの魚のことなんですけど……」
おでこ、などというよく分からない呼び方をされたユズは一瞬体をびくっと跳ねさせたが、勇気を出して自分の見解を述べた。
「あれって、タワーに入る前にネル先輩や私が噛まれた魚に似てませんか?」
「あ? そうか?」
「ほら……その、白目とか。ヒレとか」
言われてみれば、どことなく似ている気がする。しかしサイズ感はまるで違う、手のひらに収まったアレと、人1人食べれそうなアレでは似ても似つかないだろうとネルは考える。
「だからその、あくまで仮説なんですけど……もしかしてあの魚、成長してるんじゃないかって」
「成長……」
「……確かに、今もよく見れば徐々に大きくなっているみたい。時間をかければかけるほど、強靭になっていく……?」
「じゃあさっさと倒さなきゃやべーじゃねえか!」
「倒す、とは簡単に言うけれど量が桁違いよ。全部殲滅させるのは難しいと思う。ここはある程度の量を倒してタワーに侵入を……」
「多分、それじゃダメなんです!」
ユズの大声に、最強二人が少し驚いた。ユズは二人から……それ以外にも後ろから視線を感じて緊張にあまり体が震えるも、真っ直ぐな目で二人を見つめ返す。
「あの魚たちが時間経過で変化させるのは、大きさだけじゃないんです。最初見た時は何十匹かいる程度だったけど、今はとんでもない数がいる……つまりアレはきっと、時間経過で増えていくんです」
「……なるほど。一部を放っておけば、その一部がまた増殖する上、更に強くなってしまうと」
「はい。もし、成長や増殖に制限がないとしたら……先生でも止められなくなるかもしれません。だから今ここで、全部倒さないとダメだと思います」
ユズの理論は完璧というわけではなかったが、妙な説得力があった。ネルが感じていたその説得力は、すなわちユズへの信頼であり……彼女が心を許している証明でもある。
「……いいぜ、やってやろうじゃねえか」
「! ネル先輩……!」
「別にあいつらはめちゃくちゃ硬えってわけでもねえんだ。殲滅くらい、あたしらが本気でやれば数分で終わるだろ。数分でケアできるリスクがあんなら、そうするべきだ」
渦巻く黒を眺めつつ、両手に銃を構えた。二つを繋ぐ鎖がぶつかり合い、金属音を奏でる。それを見たヒナも同じように両手で銃を構えた。
「お前らも、それでいいか?」
「部長の判断であれば、従いますよ」
「私も同じ意見だ」
「部長の言うことは大体あってるもんねー」
「大体ってのはどういう意味だアスナ……?」
C&Cの三人も反対することなく各々の武器を構え。
「二人も、大丈夫?」
「ユズが言うならきっとその方がいいよ!」
「ユズちゃん、ここ一番での判断はすごいからね」
「あう、そ、そこまで期待されるとちょっと怖い、かも」
ゲーム開発部の二人も同様に、笑顔で武器を構えた。
それぞれが戦闘体制に入り、浮かぶ黒渦を狙う。アサルトライフル、マシンガン、サブマシンガン、スナイパーライフル……それ以外にも多種多様な重厚で狙われる魚群。
緊迫の一瞬、誰かがごくりと唾を飲み込んで、引き金に指をかけた。
「いくぞ、お前ら!」
ネルの合図とともに、一斉に弾丸が射出される。銃撃の光で魚群は照らされ、その無数の白目がぎょろりと八人を捉えた。
バトル回を分割するの初めてだ……
小話:アビ・エシュフ
とんでも魔改造を施されたヤバいやつ。おまけにある種の呪具化しかけてるので術式に使うエネルギーもある程度補完してくれるガチでヤバい代物。お手軽特級製造機。「名もなき神々の王女」と戦っても本当に勝てそう。正直盛り過ぎた。
未来予知できる代わりに出力がカスになる防御モードと未来予知できない代わりに術式を十全に使える攻撃モードの二種類がある。本来は切り替えながら使うこと想定だが、今回は海孵を発動させてるので攻撃モードオンリーで戦わなきゃいけなくなってる。
小話2:生徒たちの神秘操作
今回ヒナが銃を使うと操作がしやすくなると明言したが、これはキヴォトス人にとって銃が体の一部のようになっているため。銃を使って訓練するのは、自転車の訓練を補助輪つけてやる感じ。
ちなみにカケルはそのことを全く知らなかった。ボンクラ教師。