領域展開「虚燈冥漠」
色彩の繰り出したその技に、呪力がほとんどない九条カケルが対抗する術は無かった。文字通りに目の前が真っ暗になり、その奥で色彩が笑う。
目の前に迫った死の予感に、彼の脳みそは今までに無いほど素早く思考をして打開策を探すが……出された結論は、現実は非常であるということだった。
領域に付与された術式が必中となり、九条カケルを襲う。
『先生──っ!!』
「!?」
その寸前、彼の周りに青色のバリアが展開された。一種の領域として顕現したそのバリアは、領域の必中効果を防ぎ、彼に猶予を与える。
「アロナ……!」
『うぐぐ……せ、先生! 早く逃げてください! あんまり長くは持ちませんから!』
その言葉を聞いてはっと正気に戻ったカケルは、即座に脱出に向かって行動を開始する。目の前の地点を領域の中心と仮定し、反対方向に向かって駆け出した。
そしてそれを呆然と見ていた色彩。
「今のは……そうか、先生の魂があるならそれの起動も可能か」
合点がいったというように呟くと、彼を領域から脱出させないために色彩もまた動き出す。ふっとその姿を消し、パッとカケルの正面に現れた。
「逃がさないよ」
「くっ!?」
咄嗟にブレーキをかけるが、既に色彩は攻撃準備に入っている。カケルに突きつけた指先から雷が迸り、だがそれもまたアロナのバリアによって防がれた。
(物理的な攻撃も防ぐのか……だけどその分、出力が落ちたように見える。バリア自体にHPがあって、それが時間経過と攻撃で減るってところかな?)
色彩がその仕組みを理解すると同時に、カケルもそのことを理解する。制限付きの無敵状態のようなもの……だとすれば時間をかけている暇などない。目の前にいる仇敵を気にもかけず、結界の縁を目指して突き進んだ。
(まずいな。彼の速さならいくら内積が実際より広いとはいえ、バリアが尽きる前に脱出される。おまけに私のことを無視してるし……意外と冷静じゃないか)
このままでは逃げられる。そう理解してなお、色彩の顔は笑っている。
「──私の術式は
(術式の開示……! バリアの削りを早めるつもりか!)
カケルにも聞こえるように、大きくはっきりとした声で話し始めた色彩。無論それに釣られるはずもなく、一目散に結界の縁を目指す。
「領域展開した際、必中術式として付与できるのは貯蓄しているうちの一つだけ。そして今回付与しているのは『死の術式』……分かりやすく言おうか。そのバリアが消え、必中効果が発動すると君は即死する」
「……だからなんだよ。このまま脱出すれば、そんなこと──」
「別の話になるんだけど、模倣するには当然条件があるんだ。無条件に他人の術式を模倣するのは呪術的に見てあり得ないことだからね。それで……その条件、君は何だと思う?」
何故だか、冷や汗が背筋を伝うのがカケルには分かった。逃げなきゃいけないのに、つい色彩の言葉を聞いてしまう。その方を確認した色彩はよりその笑いを濃くし、愉快そうに答えを出した。
「模倣対象の肉体の一部を食らうことだ。もちろん、ただ食べるだけじゃダメ。希少価値の高い部位を食べないと模倣しても回数制限が付く。まあ要するに、模倣した術式を完全に運用するには相手の最も希少価値が高い部位を食べなければダメなんだよ」
「……肉体を、食べる」
「私が君の目の前で使った術式、君も見たことがあるんじゃないか? 例えば、この前使った隕石。あれは聖園ミカの術式だし、瞬間移動は鷲見セリナの術式」
それが意味することは……そう考えた瞬間、頭が吹き飛ぶそうなほど血が昇るのを感じる。今にも理性を失い体を反転させようとしたその瞬間、アロナの声が響いた。
『先生、落ち着いてください! 皆さんが生きているのは、私が感じ取っています! 皆さんは死んでいません!』
「じゃあ、何であいつはみんなの術式を……」
『……もしかすると、色彩は別世界からやってきたのかもしれません。黒服さんも言っていましたよね、色彩なら別世界を渡り歩けるって……』
「別世界……」
その単語に、カケルは思い当たることがある。いつか先生が語ったことの一つに、ここは自分がいたところとは全然違うという旨のものがあった。
いわゆる、パラレルワールドからやって来たのが先生と色彩なのだ。
「なんだ、分かってたのか……それとも分かったのかな?」
「……」
「ともかく、この世界の彼女たちはまだ殺していない。殺して食べたのは前の世界……この身体を手に入れた世界の彼女たちさ。まあそのうち同じことをするつもりではあるけど……君は想像できるかな?」
心底愉快という風に、色彩は嗤う。
「血を啜られ、肉を千切られ、骨を砕かれ……果てに、脳みそと心臓を貪られた彼女たちの無惨な骸の姿を……!」
『先生、挑発にのってはいけません! 色彩はそうやって先生を止めて殺す気なんですよ!』
「………………ああ、分かってる……!」
ぎりっと歯が砕けるほど歯噛みしながら、足を止めようとした体を動かして逃げていく。いつか必ず報いを受けさせると、そう心に決めて……
「逃げるのか? 私は数多の生徒たちを食い殺したというのに、それを見逃すのか?」
「……」
「ああそういえば……君の敬愛する先生も、私の共犯者なんだよ」
「……!」
『先生!』
背中が大きく震える。
「先生の魂がまだこの体にある時にも、同じことをしたからさ。アレはもしかしたら自分のせいだなんて思ってたのかな?」
「……」
「まあでも実際その通り。想像してみなよ……私が生徒たちを食べるのを、やめてほしいと惨めったらしく泣きながら懇願して! そのくせ何もできない木偶の坊で!! 自分勝手に心を折っては息絶えて、生徒たちを見殺しにした無様で無能なゴミの、あの顔をさ!!!」
──初めてだった、明確に殺意を抱いたのも、理性で抑えきれないまま行動を起こしたのも。
魂ごと殺す最凶の光が顕現する。無数に輝く死兆星は、色彩を何度も何度も何度も何度も呑み込んだ……だが光の中から出てきたのは、無傷の色彩。
(……今の呪力、どこから捻出したんだ?)
『先生!! 落ち着いてください!』
「落ち着いていられるか!! 全部、全部お前のせいじゃないか!! お前がいなければ、先生は……先生の世界は……!!」
今までの言葉がまるで嘘のように、どろどろに絡みつく憎悪と純粋に研ぎ澄まされた殺意が溢れ出てくる。そうこうしている間にもバリアはその輝きを失っているのに……それでも、止められない。
「お前は必ず、俺の手で殺してやる……!!!」
「寝言は寝てから──」
色彩が台詞を言う前に殴りかかる。今まで逃げていた方向から真反対だというのに、その速度は今までで一番速く、研ぎ澄まされた一撃だった。
それでも、色彩には効かない。
「挑発に乗ってくれて助かったよ。おかげで君を殺せる」
突き付けた指先から出現したのは、嵐。高速回転する空気の渦がカケルの肌に触れようとし、そしてバリアによって弾かれる。アロナがううっ、と苦悶の声を上げた。
「この距離まで来たならもう逃さない。無念のまま死ね」
「死ぬのはお前だ」
どす黒い感情しか含まない血走った眼光は、色彩以外を捉えない。声を風景も何もかもが遠くなって、殺意に身を浸し、全てを投げ打とうとする。未来も心も体も捧げて、ただ目の前の敵を消し去ろうとした。
その瞬間、色彩が領域内の異常を感知する。まるで身体に異物が混ざったような違和感。その原因へ、目を向けた。
「……小鳥遊ホシノ?」
「……!?」
領域の上部より、彼女が降ってきている。その互い違いの双眸が二人の姿を捉え、色彩の目と合った。
(何故今ここに……? まあいい、入ってきたなら殺すまで)
領域に付与された「死の術式」。それを即座に彼女に発動させ、色彩は再び視線を目の前の彼に向けた。だがその視線は既に自分を見ておらず、奥の彼女に釘付けになっている。
強烈な、違和感。それが色彩に走ると同時に、後方からたんっと着地する音が聞こえた。
振り向けば、彼女が冷たい鋭さをもって自分を見ている。
(何故、死んでいない……?)
一歩踏み込み、懐に潜り込んだホシノ。武器を持たない彼女は右の拳を強く握り締め、色彩を狙う。それだけのことで、色彩にダメージが入るわけがない……そのはずだというのに。
「カケルから離れろ……!!」
直感に導かれるまま防御姿勢を取る。クロスさせた腕に、ホシノの拳が直撃し
「なにっ……!?」
ホシノの最大出力、その2.5乗が爆ぜる。その一撃は色彩を領域の端まで大きく吹っ飛ばした。結界にぶつかり倒れそうになるが、何とか体勢を立て直して眼前の彼女を見る。
(痛い……痛い、だと?)
腕を見れば、黒閃を受けた箇所から血が流れ出ていた。それは先生の肉体に受肉してから初めて、色彩が明確に受けた傷。
「ホシノ……お前……」
「カケル、ポケッとしてないで早くここ出るよ!」
「わ、分かってる……」
目の前で受けた光景が信じられず呆然としていたカケルも、その腕を引かれて動き始めようとしたその時、結界にヒビが入る。パキパキと音を奏でた黒い球体は、やがてバラバラに崩壊した。
「私の体に傷をつける者が現れ、加えてそれを成したのが何でもないただの生徒だとは……やってくれるじゃないか」
苛立たしげな声を発する色彩を見やれば、傷を受けた箇所が黒ずみ始め、腕が既に崩壊しかかっている。色彩はそれを憎々しげに見つめていた、
「多少無理をした反動か、それともこの脆弱な体ゆえか……まさか傷をつけられると崩壊が始まるとはね……」
「……」
「今回は一度引かせてもらおう……だが忘れるなよ。私はいつでも、君の命を狙っている……!」
黒いモヤが色彩の背後に出現し、色彩を飲み込んでいく。そうして消えるまでの僅かな間、カケルは色彩を睨み続け……消えると同時に、ふっと目線を外した。
外した目線で追うのは、隣に立つホシノの姿。
「……えーっと……それで、何でここに?」
「? カケルが送ってきたんじゃん。『先ほどはあのような……』」
「もういい分かった」
やれやれという感じにため息を漏らすカケルだが、シッテムの箱から聞こえてくる『全部私のおかげですね!』という声には柔らかく微笑む。
その様子を疑問の目で見つめながらも、ホシノは彼に詰め寄っていった。
「で、カケル。今のは私がいなかったら死んでたわけだけどさ……まさかまだ、自分一人でやるとか言わないよね?」
「……」
「今のが色彩ってやつだよね? 私、あいつにダメージを与えたけど……それに私たち、カケルが知らない情報もいっぱい持ってるんだけど……?」
「だーもう、分かったよ! 俺が悪かった! 意地張って全部自分でやろうとしてごめんなさい!」
ヤケクソ気味に叫ぶカケル。その珍しい様子にほんの少しホシノは目を見開きながらも、次の瞬間には柔らかく細めていた。
「じゃ、みんなをシャーレに呼ぶね。色々相談しないといけないこともあるから」
「分かったよ……あーもう、どこで間違えたんだ。みんなずいぶん強かになっちゃってさ……」
「何も間違えてなんかないよ。だって私は今、すごく嬉しいし」
そう言って笑うホシノに、カケルは深くため息を吐くことしかできなかった。
そして連絡を開始するホシノだが、次第にその顔が曇っていく。何やらただならぬ様子に、カケルは怪訝そうに眉をひそめた。
「……ありゃ、ちょっとまずいかも」
「何が?」
「各地でみんなを攻撃する異形の怪物たちが出現……機械の兵隊に、幽霊みたいなやつに……とにかく色んな奴らが今各地を攻撃しているみたい。まずはそこから救援に行かないとだ」
「各地って、具体的には?」
「……一応まだここら一帯、D.U.地区だけみたい」
「なるほど……じゃあ赴くまでもないな。ホシノは一旦ここで待っといて」
「え?」
不安そうな顔をするホシノに「大丈夫だから」と言って一度この場を離れるカケル。彼はそのまま外に出てシャーレの屋上まで飛ぶと、眼下の街とそこにはびこる敵たちを見渡した。
「……ギリギリ射程範囲内だな。よし」
満足そうに一度頷くと、その右手を掲げる。その先に輝く青い球体が出現し、それが徐々に圧を強めていき……そして空中へ放たれた。
──人々は見た。流れ星の如く、だが流れ星とは正反対に、空へと昇っていく青き流星を。誰もがその輝きに見惚れそれを見上げたその瞬間、青が爆ぜる。
雨よりも細やかに、花火よりも鮮やかに、そして流星群よりも遙か近くで、各地にはびこる敵対者に向かって降り注ぐ。その光の雨は一瞬にして各地の敵を殲滅していき……
「アロナ、どうかな?」
『……す、すごいです……生徒さんたちに攻撃していた敵が、みんないなくなっちゃいました……』
「よし。これでみんな来れるな」
再び彼は満足そうに頷くと、その身を翻してホシノの元に戻ろうとした……その時、突然何処からか拍手の音が聞こえてくる。音の出所を探ると、すぐそこだった。
「お見事です。カケルさん」
「黒服……酷い怪我だな」
そこに立っていたのは、スーツの至る所が破け、黒い肌には白い亀裂が走り、顔などは今にも壊れてしまいそうなほど傷ついている。
「色彩にやられたのか?」
「はい……すぐに逃亡したのですが、僅か一瞬で瀕死にまで追い込まれましたよ」
「生きてるだけマシだろ……治してやるよ」
そう言って近づこうとするカケルを、黒服が手で制した。疑問の目で彼を見やるカケルだが、黒服は顔を俯かせてその色を見せようとしない。
「大丈夫です。あなた、まだ呪力が枯渇気味でしょう」
「でも、お前……」
「この程度ではまだ死にませんよ。それよりも、私は色彩について忠告をしに来たのです」
そして黒服は淡々と話し始める。ゲマトリアが崩壊したこと、色彩がゲマトリアの所持していた諸々を奪ったこと、そのせいで各地に色彩の手足となる兵士が出現していること。キヴォトスの六箇所に、反転したサンクトゥムタワー……虚妄のサンクトゥムとでも呼ぶべきものが出現したこと、それらは世界を滅ぼすこと。
「何よりも、色彩……いえ、厳密に言えば違うのですが」
「どういう意味だ?」
「気にしないでください。アレが色彩であることには変わりありません。ただ、アレの呼称を色彩とするのは正しくないというだけのことです」
相変わらずの要領を得ない発言にため息をつくほかないカケルだが、こういう時の黒服は意地でもその真意を言わないと理解しているため追求はしない。
「模倣術式……アレは恐らく、前の世界でキヴォトス中を貪ったのでしょう。色彩が言及した生徒の術式もそうですし、名もなき神々の複製された術式や、恐らくは各地の顕現している崇高たちの術式も……例えば雷や嵐はセトの憤怒の術式でしょうね」
「あいつが使っていた『死の術式』は……」
「恐らくは死の神……かのアビドスにいる狼の神の術式です。他にも、まだ見ぬ術式を所持している可能性もありますね」
アビドスの狼。それがシロコのことを指していると理解するのにさして時間はかからなかった。生徒が殺されているということに、改めてあからさまに不機嫌になるカケル。
「加えてあの呪力量……あれでも本来の色彩からすればかなり抑えられていますが、それでも個人で立ち向かえるようなものではありません。それでも、あなたは向かっていくのですか」
「ああ、行くよ。放っておいたら世界が滅ぶらしいし……それに、こんな俺に着いてこようとする奴らもいるからな」
はっきりとそう言い切った彼に、意外そうな顔をする黒服。そしてすぐにクックックと笑い始める。
「変わりましたね、カケルさん」
「うるせえよ。それより、お前にも協力してもらうからな」
「それは嬉しい申し出ですが……申し訳ありませんが辞退させていただきます。まだやるべきことがありまして……ただ、何か用件があればお呼びいただければ駆けつけますよ」
言い切るや否や、息をつかせぬまま「それでは失礼します」とモヤの奥へ消えていってしまう黒服。それをカケルは、最後まで見つめるだけだった。
「──結論から申し上げますと、あの塔……虚妄のサンクトゥムを二週間以内に破壊しなくてはなりません」
シャーレの施設の一つである、会議室。その場所にて、各学園の頭脳担当とでも言うべき面々が集まり、カケルに現状を説明していた。
司会をするのは、七神リン。
できうる限り簡潔にその内容をまとめると、キヴォトス各地に出現した六つの虚妄のサンクトゥム。それらを二週間以内に破壊せねば、世界が滅びる。さらにはその六つの塔には強力な守護者がおり、破壊するにも一朝一夕にはいかない。
各自地区を襲っている敵対者達は、それぞれの自治区の生徒達がある程度対応してくれているので心配はいらないが……虚妄のサンクトゥムを攻略し始めると敵の増援が来ることも予想される。
さらには六つ目、D.U.地区に刺さっているサンクトゥムタワーは他よりもエネルギー密度が高く、他五つのサンクトゥムタワーを破壊した後に攻略しなければいけない。
これらの状況、そして色彩のこと……話を聞いている間悩ましそうな顔をしていたカケルが、ようやく面を上げる。その顔は苦々しいものの、決意が秘められていた。
「……俺の作戦、聞いてくれるか?」
その言葉に全員が大きく頷いた。それを確認すると、カケルはおもむろに話し始める。
「簡単に言えば、虚妄のサンクトゥムの対応はみんなに任せて……その間、俺
「その意図は?」
「大きく分けて二つ。一つ目は、色彩は瞬間移動ができること……ただし、多分俺だけに」
先の戦闘で、カケルは違和感を感じていた。色彩は生徒を殺すつもりだと言った……だが、何故今すぐにそれをしないのか? 瞬間移動ができるなら、各地の生徒を殺していくことなど容易いはず。
それができないのは、色彩の瞬間移動は九条カケルにしか瞬間移動できないからではないか?
根拠は先ほどのものと、瞬間移動の術式が鷲見セリナのものと明言されたこと。彼女の術式は座標を確認しなければ移動できない……色彩はもしかすると、カケルの中の先生の魂を感じ取ることでしか瞬間移動できないのではないか。
「俺が下手に虚妄のサンクトゥム破壊に動いて、そこを守ってる奴との戦いの中で色彩が来てみろ。今度こそ死にかねないし、生徒がいたらそっちに矛が向くかもしれない。だから俺は色彩を止めることに集中する」
「二つ目は?」
「色彩にある程度勝算があること」
今までの二回の戦い。色彩は体が黒ずんだことで撤退をしていた。そしてカケルはあの現象に見覚えがある。
ベアトリーチェが色彩から力を与えられた時、その体は黒く染まって崩壊した。恐らくはそれと同じことなのだろう。
つまり、時間が経つと先生の体は色彩の力に耐えられず自壊してしまうのだ。おまけに色彩は反転術式を使えないようなので、撤退して何かしらをする必要がある。
要するに、時間を稼げば色彩は勝手に撤退していくということ。
それで実際、色彩の体が自壊するまで耐えられるかと聞かれれば、カケルは頷ける。屋外であれば逃げられるスペースが多く、色彩はカケルより遅い。使ってくる術式も物理的なものが多く、カケルの呪力が回復すれば凌げるだろう。
唯一不安なのは「死の術式」だが……流石に無条件で敵を殺すことは不可能、何かしらのタメか縛りがあるはずとカケルは踏んでいた。
そして領域展開。これはアロナである程度凌ぎ、脱出をする方向で動く。加えて色彩の領域が通用しないホシノもカケルと共に動き、領域脱出の手助けをする。
「そういえば、何で私には色彩の領域が効かなかったんだろ……」
「多分、エネルギーの問題。色彩は
「へえー……」
「本当に分かってんのか? ……まあいいか、大事なのはお前が領域内で自由に動けることだし」
カケルは一瞬呆れたような顔をしながらも、次の瞬間には真剣な顔に戻ってリンの方を見つめた。
「それで、戦う場所なんだけど……リン。ここら一帯、D.U.地区を戦場にしてもいいか?」
「……非常時、すぐに駆けつけられるようにするためですね? ここは各地のサンクトゥムのほぼ中心、各虚妄のサンクトゥムとは等距離ですから」
「それと、D.U.に刺さってるサンクトゥムの破壊のためだね。みんなが五つ壊したら、即座に第六サンクトゥムの破壊を俺たちがする……でも、そうなるとここら辺のほとんどが壊れることになる」
「それでも、それが安全策だというなら仕方ありません」
「ありがとう。修復作業には俺も付き合うよ」
「当然です」
リンからの了承も得た彼は、今一度その場の全員を見回す。
「そういうわけで、俺たち二人が色彩を相手するから、みんなは虚妄のサンクトゥムを頼む……が、無理はするなよ。連絡してくれたら、色彩と戦ってようが絶対駆けつけにいくから」
「カケルは過保護すぎるよ」
「うるっさい。正直言えば誰も行かせたくないし、全部俺だけで終わらせたいんだよ……でも、俺だけじゃダメだともわかったから……みんな、協力してくれ」
その言葉に全員が力強く頷いた。その様子を見て彼はほんの少し頬を緩めた後、力強く言う。
「ありがとう。それじゃあ、改めて──誰も欠けないで、全員で勝つぞ」
小話1:黒閃
なんとこの小説では神秘で殴っても出る。というか恐怖でも出る。つまり生徒でも色彩でも黒閃を出せる可能性があるってこと。
小話2:虚妄のサンクトゥム
原作と違うのはトリニティにないこと。何でかっていうとカケルくんがヒエロムニスを概念ごと破壊しちゃったせいで反転させられるボスがいないから。なので代わりに遊園地に二本刺さってる。対応ボスはゴズ。
以下今後の予定についてのお話。
最終編終わるまではできるだけノンストップでいこうと思ってたんですけど、リアルが結構忙しいので隔日投稿もちょっと厳しくなりそうです。一週間に二本は出すので許してください。
そして最終編が終わったら、リアルのゴタゴタが終わるまではしばらくお休みするつもりです。ただ止めるのはあくまで本編で、せっかくの機会だし週一くらいのペースでif話でも投稿しようかと考えています。(文字数は控えめだとは思うけど)
そーいうわけなので、とりあえず最終編終わるまでは頑張っていきます。