呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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69. あなたは誰?

 宇宙戦艦。それすなわち男のロマンである……なんて言っても、俺としてはそこまで好きなわけではないんだけど。まあでもかっこいいとは思う。ビームとか撃ってくれたら最高。

 

 さて、何故そんな話をしたか。答えは簡単、俺が今その宇宙戦艦に乗ってるから。

 

 用途の分からない機械たち。メカメカしい船内。鋼色の壁と床。奥に進めばデカいモニターと操縦盤っぽいもの。モニターはまだ光がついていないが、起動すれば外の景色を映すだろうことは想像に難くない。

 

 俺たちはこの宇宙戦艦……「ウトナ・ピシュティムの本船」を使って宇宙に進出しようとしているのだ。

 

 え? 何でそんなことになったのか分からない? それはかくかくしかじか……じゃ、ダメか。まあ簡単にここまでのことを振り返ってみよう。かくかくしかじかで伝わった人は飛ばしてもらってもいい。

 

 

 

 第一から第六サンクトゥムを破壊し、なんとか世界の崩壊を防いだ俺たち。だがここで衝撃の事実が判明する。というのも、虚妄のサンクトゥムはインターバルこそあるものの何度でも顕現させることが可能だと分かったのだ。

 

 このまま放っておけば、また虚妄のサンクトゥムが出現する。そうなればまた世界滅亡へのカウントダウンがスタートし、再び全て壊さなければいけない。絶望的な現実に沈黙する俺たちだったが、ここで朗報が舞い込んだ。

 

 というのも虚妄のサンクトゥム出現予定地にあったエネルギーの経路を逆探知して、どこから虚妄のサンクトゥムを作り出しているか……それすなわち、色彩の本拠地を特定することに成功したんだ。

 

 だがその居場所はまさかの上空遥か75,000m、成層圏どころか宇宙に片足突っ込んでる領域に鎮座していた。さらに多次元解釈バリアという超すごいバリアもまとっていて、ミサイルを撃ち込んだりしてもどうにもならない。普通の方法では突破不能だった。

 

 だがそこで毎度お馴染み黒服より情報が入ってくる。遥か彼方に鎮座する要塞──「アトラ・ハシースの箱舟」と呼ばれるそれに対抗する術がアビドスにあると。

 

『ですがそれを使おうとすれば、あなたが死ぬ可能性も──』

 

『いいから教えろ。それしか方法はないんだろ?』

 

『……しかし』

 

『黒服、教えてくれ。死ぬ覚悟ならある』

 

『……』

 

 なかなか教えることを渋られたものの、なんとか俺はその手段を聞き出す。

 

 超古代技術で作られた「アトラ・ハシースの箱舟」に対抗するには同じく超古代技術で作られたもので対抗するしかないとのことで。それが今俺たちが乗っている「ウトナ・ピシュティムの本船」だった。

 

 詳しい経緯は知らないがカイザーはこれをアビドスで発掘していたらしく、保管場所を俺たちが襲撃。そのまま奪取して今に至る──

 

 

 

 中を一通り見て回ってきたが、大層な名前とは裏腹にSFに出てくるような宇宙戦艦まんまだ。いやまあそれでもだいぶフィクションなものではあるんだけどな。

 

「先生ーっ!!」

 

「ん? うおっ」

 

 呼ばれたと振り向いた瞬間、誰かが俺に勢いよく飛び込んでくる。一回転して勢いを殺してからその人物を見れば、天真爛漫に笑う少女の姿。

 

「アリス! どうしたの……ってか何でここに?」

 

「先生が宇宙戦艦を見つけたとエンジニア部のみなさんから聞いて、全速力で来ました。モモイたちも一緒ですよ!」

 

「おおぅ……」

 

 宇宙戦艦を手中に収めた俺たちだったが、実際稼働するのかどうか、どうやって使うのかとかどうやって多次元解釈バリアを突破するのかとか、そこら辺がよく分かっていなかった。

 

 そこで各学園の頭がいい面子を招集し、解析をしてもらってたんだけど……その一つであるエンジニア部から情報が漏れたらしい。

 

「それに、先生が頑張ってるとも聞いていたので……アリスは、先生の力になりたいんです!」

 

「気持ちは嬉しいし、言いたいことも分かるんだけど……こっから先はマジで危ないから、アリスにはミレニアムを守っていて欲しいというか……」

 

『アリスの献身を無碍にすると?』

 

 聞こえるはずのない声が聞こえて、体が固まる。幻聴か何かかと思ったが、アリスはその声に対して「そんな言い方をしてはダメですよ!」と言っていて、どうやら現実らしい。

 

「……ケイ、だよな? 何で声が聞こえるんだ?」

 

『共振ですよ。私たちは短い間とはいえ二心同体だった仲。これほど近づけば互いの声くらい簡単に届けられます』

 

「そ、そうなんだ」

 

『それよりもアリス、良いのですか? 彼女から伝言を頼まれていたでしょう』

 

「あ、そうでした。ヒマリ先輩が、解析まで時間がかかりそうだから先生は休んでおいてください、と言っていましたよ」

 

「え、いや悪いよ。みんなが頑張ってるのに俺だけ休むとか……」

 

『辺な気遣いをせずさっさと休んでおきなさい。今はどうせ役立たずですし、何より私たちが虚妄のサンクトゥムを破壊するまでの七日間寝ていないのでしょう? そんな有様で決戦に臨まれてもこちらが困ります』

 

 容赦ない正論に黙り込むしかない俺。実際今起きてても何もできないし、七日間寝てないのもそう。言われた通り休むのが、今は最善か……

 そう考えて歩き出すと、何故かアリスもついてくる。

 

「あの、アリス? 何でついてくるの?」

 

「もしかするとセーブポイントでも襲われるかもしれませんから、アリスが先生を護衛します!」

 

「さっきも言ったけど、俺としては帰って欲しい……」

 

『これも先ほど言いましたが、アリスの献身を無碍にするつもりで?』

 

 何故か怒っている声色のケイ。何でそんなに怒ってるんだ……と思ったのも束の間、ケイは深くため息を吐くと勝手に事情を話し始めてくれた。

 

『私たちが今乗っている「ウトナ・ピシュティムの本船」は本来私たちを倒すために作られたものなのです。つまり、アリスはここにいる以上いつこの船に攻撃されてもおかしくはないんです』

 

「はい!? じゃあもっと帰ったほうがいいじゃん!」

 

『私もそう説得したのですが、アリスはそれでもと私のいうことを聞かず……それもこれもあなたのせいですよ。そのくせ助けがいらないなどと抜かしますし、ああもう私が殴ります。アリス、体の主導権を』

 

「ダメです。アリスたちは先生の味方だから、攻撃することはできません。フレンドリーファイアは御法度ですよ!」

 

『……』

 

 まさかそんなリスクを背負ってるとは思わなかった。というかそこまでしてでもアリスは俺の力になりたいのか……そこまでされる謂れがないんだけど。

 

「先生は自分のことを過小評価しすぎです。ケイから色々と聞きましたが、先生が本当の先生でなくても関係ないんです! アリスたちにとっての先生は、先生だけなんですよ!」

 

 俺の心を見透かしたかのようにそう言ってくるアリスに、なんとも言えない、強いて言葉にするなら、感極まったとでもいうべき感情を持った。何だか顔が崩れてしまいそうで、慌てて顔を背ける。

 

 俺は、ちゃんと先生をやれてたのかな。

 

「……と、いうか。ケイから色々聞いたって何? お前なに勝手に話してんの?」

 

『アリスから先生と何があったんですかと聞かれて……それでつい』

 

「お前マジで」

 

『核心的なことは話していませんから』

 

「え、まだ話していないことがあるんですか!? むう、これが終わったらケイにはお仕置きです! しばらく体を貸してあげませんからね!」

 

『しまっ、ち、違います! 私はちゃんと全部話しましたから!』

 

「あ、それからこのことも言っちゃいます! あれは先生が来なくなってからしばらく経った時のお話なんですけど『うあああああぁぁぁぁぁ!!?? あ、アリス!? あのことは話さないでくださいって言いましたよね!?』

 

 そうやってまるで友達のように語り合う二人を見て、何だか胸から込み上げてくるものがある。さっきから心にダイレクトアタックをかまされてだいぶ瀕死だけど、この感情を拳にしてぶつけるわけにもいかんので必死に食いしばって堪えた。

 

 それからしばらく騒がしい二人の会話を聞きながら歩くと、散歩していた時に見つけた一室につく。中にはベッドとかあったりして休憩室のようになっているので、ここで寝ようという算段だ。

 

 中に入ると、アリスも一緒に入ってくる。どうやらマジで俺を護衛するつもりらしい。「アリスがいますから、安心して寝てくださいね!」と張り切っているアリスに、肩の力が抜けていくのを感じた。

 

「……じゃあまあ、任せようかな……おやすみ、アリス。準備が終わったら起こしてぇ……」

 

「はい。おやすみなさい、先生」

 

『全く。一人で何でもかんでもやろうとして……』

 

「そこが先生のいいところで、悪いところです。だからアリスたちが並び立たないといけない……そうですよね、ケイ?」

 

『その通りです。本当に、世話が焼ける人ですよ』

 

 すぐさま暗闇に落ちていく意識の中、最後に聞いたのはそんな会話だった。

 

 


 

 

 私は、誰だ。

 

「色彩が、箱の主と接触した!」

 

「この事態は想定していない……色彩があの者の『苦しみ』に反応したのか、それとも──」

 

「呪い、か。色彩とある意味同質の、狂気に浸された器──あの者なら受肉できると、色彩は理解したのやもしれぬ」

 

「だがそれはつまり──何を意味する?」

 

「色彩が意思を持ち動き出す──嚮導者すら必要とせず、動き出す」

 

「理解できぬ」

 

 そこのそいつらは、誰だ。白い装いに、不気味な真っ白の仮面……不気味とは何だ。白とは? 疑問に思った瞬間、その知識が理解できる。白とはあの色か。不気味とは、本能的恐怖の形の一つか。

 

『……なにが、起きた……?』

 

 私の中にいるこれは、誰だ。その瞬間またしても情報が流れ込む。この体の主人。先生と呼ばれている者──同時に、数多の思い出が流れ込んでくる。

 

 嗚呼、嗚呼──! なんと、なんと美しいことか! 絶望の中でも諦めぬ少女たち、誰かのために命を賭けられる先生、青春に満ちあふれた尊き青!

 

 なんと素晴らしい……否。なんて、素晴らしいんだ!

 

 私も……私もあんな風になりたい。自分の力で、自分の意思で、自分の未来を! この手で掴み取りたい!

 

「理解できぬ──だが理解する必要もない。色彩が意思を持ったというのなら世界に生き残る術は無し」

 

「違いない。忘れ去られた神々を滅ぼすのに支障はない」

 

「然り」

 

 目の前の白い装束の集団が、私を見て何やら会話をしている。そしてその会話の意味も、理解できた。

 

 こいつらは私を、色彩として利用しようとしているのだと。私を見ずに、色彩という存在だけを見ているのだと。

 

『……!? ま、待て……やめろ!』

 

「色彩。そなたは──」

 

「私はそんな名前ではない」

 

 次の瞬間、私は力を振るっていた。恐怖、というらしいこのエネルギーを力のまま解き放つ。それだけで、白装束の一人が跡形もなく消滅した。

 

「!?」

 

「私は私だ! お前たち程度に定義される私ではない! さあ見せてやろう、私の力を!!」

 

「まずい──『洗脳』の準備をしろ!」

 

 なんて素晴らしい力なんだ! こんなにも簡単に人を殺せる! まずは私を縛ろうとするこいつらを殺そう、それから私の人生は始まるんだ!

 腕を振るうたび、目の前の奴らが消えていく。時には腕だけ残ることがあれば、下半身だけ残る時も、首だけが残るときもあった。

 

 まだ力の使い方には慣れないが、体が覚えている。すぐにでも使いこなせるようになるだろう。

 

 全能感が、体を満たしていく。そうして奴らのほとんどを殺し、残すは一人となった。せっかくだ、痛ぶってやってもいいが……だがせっかくの始まりだ。景気良く殺すとしよう。そう考えて、もう一度腕を払おうとしたそのとき。

 

『やめろ!!!』

 

 体が、ピシッと固まる。

 

 何をされた? 何故、私の体は動かない?

 

『違う! それはお前の体では断じてない! 私の体を、返せ!』

 

 何を言っている? これは私の体だ、私のものだ! 邪魔をするなら、私の力でお前のことも殺してやる!

 

 そう考えた瞬間、頭にノイズが走った。頭が割れるような感覚に、思わずうずくまる。

 

「受け入れろ……お前は色彩なのだ! 世界を壊し、神々を殺し、誰にも理解されえぬ狂気! それこそがお前だ!」

 

 そう言ってくる最後の白装束。その頭を真っ二つに切ってやったが、それでもノイズは収まらない。まるで私が私で無くなっていくような、そんな感覚だけが、私を侵食してくる。

 

 これは、洗脳……? あの白装束、洗脳の術式を持っていたのか……!

 

「わた、私は……しきっ、ちがう……ちがうぅぅぁぁぁ!! 私はぁっ!!」

 

 脳裏に色彩という文字が刻まれていく。私を上書きするように、何度も何度も何度も何度も何度も私の上に刻まれて、私が消えていく。

 

 わたし、は

 

 

 

 

 

「……?」

 

 突然、頭痛が消えた。困惑しながらあたりを見回せば、白装束たちの死骸が横たわっている。はてさて、なぜ私は彼らを殺したのだったか。

 

 ……ああそうだ。私に指図をしたからだ。色彩を思い通りに使おうなど、なんと驕った連中だったか。天災など制御できるものではないというのに。

 

『お前、は……?』

 

「先生。今から君の生徒を皆殺しにしてあげよう。君は私の天敵……再起の余地なく、その魂を殺す」

 

『なっ……!?』

 

 何故だかこの先生という存在が憎い。声を聞くたび、存在を感じるたび、憎悪が心の奥底からいくらでも湧き上がる。気に入らない、なら殺すまでだろう。

 

 ここから始まるのだ。私の人生は。

 

 

 

 

 

 これは共振だ。俺の中の先生の魂があいつと戦ったことで感応して、あいつの記憶を見せてきてるんだ。暗闇の中で俺はそう理解する。

 

 そして同時に、今のあいつも感じ取れた。

 

「やあ、こんにちは」

 

「色彩……って、そんな名前じゃないんだっけ?」

 

「まあね」

 

 どこでもない暗闇で、俺たちは向かい合っている。それから数秒、俺たちは見つめあっていたが……そいつが「少し話でもしないか?」と言い、それに俺が頷くと周りの風景が変わった。

 

 広大な青空の下、荒廃した街並み。

 

「まずは感謝を。君のおかげで、ようやく思い出せた。無名の司祭どもめ……最悪の置き土産をしてくれたな」

 

「ずいぶん災難なことで。同情してやるよ」

 

「全くだ。君もあいつらには気をつけるといい」

 

 俺たちは並んで歩いていた。その最中、ふとあいつが足を止める。その目線の先を追いかけると、カフェだったと思われる建物の残骸があった。

 

「先生の記憶の中で、生徒の一人とここに来ていたんだ。一緒に飲んでいたコーヒーがとても美味しそうだった」

 

「なに、自分の方が先生のことを知ってますアピール? 肉体に寄生してるお前とは違って、俺は魂が繋がってるからお前より上だぞ」

 

「いやいや、先生の脳みその中を覗いたことがない君に言われたくはないね……ってそうじゃない。私が言いたかったのは、そんな日常風景に私が憧れていたということなんだ」

 

 次の瞬間、また場面が変わる。今度は映画館のようだ。大きな画面に、見たことがあるような場面が映し出される。

 

 アビドス対策委員会がホシノを救い出した時、ゲーム開発部がアリスを救い出した時、ミカがサオリを許した時、RABBIT小隊が自分たちの道を歩み始めた時。

 

「私の記憶を見たなら周知の事実だとは思うんだが、私は彼女たちが好きだ。どれだけ辛い状況下でも諦めず、自分の意思を貫き、その未来を掴み取る。本当に素晴らしい」

 

「それはお前の感情か?」

 

「さて、どうだろうね? 一つ言えるのは、私は彼女たちに価値を感じている。生まれた時には世界が灰色に見えたものだが、彼女たちの青色が我が世界に彩りをくれたんだ」

 

「……彩り、か」

 

「分かってくれるかな?」

 

 何となく、その感覚は分かる気がした。価値のあるものは、綺麗な色をしているように思う。爽やかな青い春に、生命あふれる緑の夏、赤と黄に彩られた秋と、純白で染まっている冬。

 そして何より……一人一人、違った色を見せてくれる生徒たち。

 

 こんなにも色彩豊かで、美しい世界の中で、俺だけが白黒だった。

 

「……だったら何で殺したんだ。そっちの世界の生徒のこと」

 

「アレは私であって私じゃない。先日君に洗脳を解かれるまで、私は色彩だったんだからね」

 

「色彩ねえ……さっきの話の後だと、ずいぶん皮肉な名前だ」

 

 三度、場面が変わる。アビドスの教室の中で、机を挟んでそいつと向き合っていた。

 

「それで、結局お前は何が言いたいんだ」

 

「……私は、この世界に生きていない気がするんだ。黒服の言う通り、私は全て借り物でできている。この思考も、感情も、全部先生のものかもしれない。それが私はどうしようもなく怖い」

 

「……」

 

「だから私は、私が私であるために、私が私を生きてていいと思えるように、君の中の先生を殺さなきゃいけないんだ」

 

「ずいぶん、自己中心的だな」

 

「だが大事なことだろう? 自分を肯定するために生きるのは」

 

 同情してくれないか、なんてふざけたように言ってくるが、その目は真剣だ。自分のために、どんな可能性でも探って、必死に生きようとしている。

 

 ようやく理解できた。こいつの考えを。

 

 そして、理解できたからこそ。

 

「そっか、よく分かった。お前はそういう奴なんだな」

 

「……」

 

「なら、成り行きでもなく、感情任せな憎悪でもなく、明確に今一度──お前の理想を壊してやることに決めた。みんなを殺したお前を許しはしないし、先生のことも殺させてやらない」

 

「先生の魂が、もうすぐ自然に消えいくとしてもか」

 

「ああ。先生の正しい死に方は、少なくともお前に殺されることじゃない。それに、それを言うならお前だって先生のこと放っておけばいいよな」

 

「君の言葉を借りるなら、先生の正しい死に様は自然に消え行くことでもない。それは……私の矜持とでも言うべき何かが、許さないんだ」

 

 とても人間らしいと、そう思えた。

 

「そうか。だったら、殺しあうしかないな」

 

「そうだな。私たちは世界に運命付けられたからではなく、不可抗力で無理やり戦わされるでもなく──私たちの意思で、殺しあうんだ……はは、そうかそうか。私はここにいて、確かに選んでるんだ」

 

 まるで子供のようだ、と思う。多分それは間違いじゃなくて、実際生まれてからそう時間の経っていない子供なんだろうな。だからこんなにも純粋に、自分を貫ける。

 

 色彩が席を立った。

 

「それじゃあ、決戦の場で会おう」

 

「ああ。次会う時が、終わりだ」

 

 そう会話をしたが最後、俺の意識が浮上していく。目覚めると思ったその一瞬、笑っているあいつの顔が見えた気がした。




小話:アリスとケイ
アリスの体に帰ってきた後、ケイは雰囲気がすごく変わりました! 先生となにがあったのかアリス気になります! とガン詰めされた結果、一部話してしまったケイちゃん。具体的な内容を挙げると今の先生は本来くるはずだった人物ではないことや、実は結構弱い人であることなど。だけど過去のことだったり、先生の魂のことだったりは伏せている。

小話:無名の司祭
相変わらずカス。途中で使った「洗脳の術式」は地下生活者のもの。
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