呪われ男の先生代行譚   作:一般人参

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9. 嵐の前

俺たちの目の前に、ゲヘナ風紀委員会の長。空崎ヒナが現れた。

どうやら今回の作戦、彼女は関わっていなかったらしくアコに説明を求めている。だが、彼女の性格がわからない以上油断はできないだろう。

 

空崎ヒナ。ゲヘナトップの戦闘力を持つ生徒。噂では、キヴォトス最強だとかなんだとか言われており、正直誇張だろと考えていたのだが……その考えは撤回しよう。この子は、かなり強い。

ホシノと比べても遜色ないレベルの神秘の量。恐らく質は劣るが……彼女なら、ホシノともいい勝負ができるだろう。俺が全力で吸収しようとしても、アレだと行動不能まで三十秒はかかるだろうな……

 

もし彼女が俺たちと敵対すれば、俺はどうにかなるが疲弊してるアビドスのみんなや便利屋が心配だ。頼むから敵対はやめてくれ……と祈りながらふとみんなの方を見やると、いつの間にか便利屋がいなくなっていた。どうやらヒナが来たので撤退したらしい。にしても早すぎないか?

 

向こうは話が終わったらしく、通信を切ってこちらを見てくる。

今の所敵対の意思は感じられないが……

 

「じゃあ、あらためてやろうか」

 

シロコさん!?なんでそんな戦う気満々なんですか!?

 

『ま、待ってください!ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強者中の強者ですよ!ここは下手に動かず、一旦交渉するのが吉です!どうしてそんなに戦うのが好きなんですかっ!』

 

「……ご、ごめん」

 

アヤネの必死の説得により、なんとか矛を収めてもらうことに成功した。本当に危ないって。

 

そういうわけで、アヤネが交渉を開始したのだが……なんか不穏な雰囲気だ。結論としてはゲヘナもアビドスも非があったよねになりそうなのだが……ちょっと味方の血の気が多すぎる。なんで疲れてるはずなのにそんな戦闘したがるの?

 

「ちょっと待ってくれ。さっきアヤネも言ってたけど、彼女はめちゃくちゃに強い。今ここで戦闘しても蹴散らされるだけだ」

 

「……わかってる。でも、向こうが私たちの邪魔をするなら、戦うのみ」

 

「それはぁ……うーん……まあ、はい」

 

『先生!?説得を諦めないでください!あうぅ、こういう時にホシノ先輩がいてくれたら……!』

 

「……ホシノ?」

 

アヤネの言葉に、ヒナが反応した。どうやらホシノのことを彼女は知っているらしい。

 

「アビドスのホシノって……もしかして──!?」

 

その瞬間、とんでもない量と質の神秘がこちらに高速で向かってきているのを俺でも感知できた。

ヒナも同様に感じ取ったらしく、俺と同じ、彼方を眺めている。

 

天空より、その小さな体が降り立った。

ドオンと大きな音が鳴り響き、着地地点にあったでかいトラックが一瞬にして鉄板と化す。

 

鋭い瞳が、俺たちを貫いた。

 

「……今、どういう状況?」

 

ピンクの長い髪が風に靡く。ゆっくりと歩いてくるその姿は隙だらけなのに、その威圧感が誰もを黙らせる。

ホシノの到着。待ち望んでいたことだが……まずいな。だいぶキレてるぞ、アレ。とりあえずは落ち着かせるのが先だな。

 

「ホシノ、落ち着いて聞いてくれ。ゲヘナの風紀委員会の一部が俺を拘束するためにここまで出張ってきたんだが、それを撃退して今は話し合いに突入している。こっちに目立った被害は無いし、全員無事だ」

 

「……なるほどね」

 

ホシノは一瞬俺に目を向けると、すぐにヒナの方を向き、手で俺たちを制してヒナと俺たちの間に入り込む。

 

「先生も大丈夫?」

 

「!……ああ、もちろん」

 

「そっか。よかった。……ゲヘナの風紀委員長か」

 

「……小鳥遊、ホシノ」

 

緊迫した空気。別に二人は睨んでるとかでもなく、見つめあっているだけなのにとても空気が重い。胃が痛くなってきたな……

 

「ホシノ。ヒナはこちらに敵対する意思はない。今は抑えてくれ」

 

「……うへ、そんなにおじさんのことが心配?そんな子供じゃないんだから、大丈夫だよぉ」

 

嘘つけめっちゃ頭にきてるじゃん!今すぐにでも風紀委員会を殲滅しそうじゃん!

俺がもう少し上手く立ち回って、みんなの傷を減らせていたら……いや、そんなタラレバは後回しだ。今はとにかく戦闘が起こらないように頑張るのみ。

 

「……一年生の時とはずいぶん変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

 

ヒナがそう語る。一年のホシノも知ってるのか。あの頃のホシノ知ってると別人にしか見えないよな。すっごいわかる。妙な親近感を覚えるな。

 

「……あなたのことを忘れるはずがない。あの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど」

 

……なるほど、よくこちらの事情をご存知らしい。

 

あっヤバいホシノが神秘を操作し始めた待ってください!風紀委員長倒しちゃったとかマジでシャレにならないから!落ち着けぇ!

 

そしてその神秘をホシノが解き放つ……直前、ヒナが倒れている風紀委員会たちに撤収するよと声をかけた。そのおかげでホシノも警戒を少し緩め、銃に集中させていた神秘も放たれることなく留まっている。マジで助かった。今度会ったら何かしらお礼をしよう……

その後、俺たちの方に向き直り、頭を下げた。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する」

「今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する。どうか許してほしい」

 

この謝罪をもって、今回の件は幕を下ろした。

そうして謝罪したヒナは、風紀委員会をまとめて撤退しようと準備をしている。

 

俺たちも同様に帰還の準備をし始めていた。ホシノがみんなに近づいて安否確認をしている。

……ん?俺の方にヒナが近づいてきた。

 

「シャーレの先生」

 

「ん、どうかし……ちょっと待ってな」

 

ホシノがこちらを見ていることに気づいたので、一度ホシノに大丈夫だよと伝えてから、再びヒナの前に立った。

 

「悪い」

 

「いえ、大丈夫よ。彼女が警戒するのも当然だし……」

 

ちらっとホシノに目をやれば、まだこちらを見ている。俺が見たことに気づくと、ふいっと目を背けたけど……

 

「……ちなみに用件は?」

 

「伝えたいことがあるの。それも直接言っておきたいこと」

 

「なら、見られても問題ないか……本当に申し訳ないんだけど、あのままで大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫よ。それで、本題なんだけれど……」

 

それから、彼女は小さな声で話し始めた。

 

「……カイザーコーポレーションのこと、知ってる?」

 

「まあ、ざっくりとは」

 

「……そう……これはまだ『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)』も、ティーパーティーも知らない情報だけど。……あなたには知らせておいたほうが良いかもしれない」

 

「……つまりどういうこと?」

 

「……アビドスの捨てられた砂漠……あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでる」

 

「……なるほど」

 

……カイザーか。

あいつらは、子供では無い。

あいつらが、アビドスの邪魔をする悪い大人だというならば……

 

全力で叩き潰す

 

「っ、!?先生……!?」

 

「……悪い、少し気持ちが乱れた」

 

落ち着け。呪力操作を乱すな。

俺の悪い部分だ。感情が乱れると、呪力関係も全部乱れる。

落ち着け……

 

あっホシノがまたこっちをじっと……いや何でもないから!銃を構えようとするな!

咄嗟に頭をブンブン振って何でもないよアピールをする。そしたら渋々と言った様子で銃を収めてくれた。危ない。

 

「……教えてくれてありがとな、ヒナ」

 

「……一応、ね。じゃあまた、先生」

 

そう言って、彼女は改めて風紀委員会を率いて立ち去っていった。

 

アヤネも、すごい速さで彼女たちが撤退していったと言っていたし、潜伏とかの可能性は考慮しなくていいだろう。これにて一件落着だ。

……はあ、さすがに疲れた。

 

みんなも疲れてるだろう、というわけで今日は一度解散となった。

シロコに、さっき風紀委員長から何を言われたのと聞かれたが……まあ、今はいいだろう。みんな疲れてるのに混乱させる必要はない。

 

「また明日、みんなの前で話すよ」

 

そういうわけで、その日はホテルに直帰して寝た。

 

 


 

 

新しい朝が来た。とても清々しい朝だ。

 

外に出れば、澄んだ空気が充満していて、大きく息を吸えばなんだか気分がいい。

朝日も相まって、世界が輝いているように見える。

 

俺は朝が好きだ。正確に言えば、もう少し早めの時間帯……暁というんだったか?が好きなんだけど。まあ朝も大好きだ。

まだ少し白んでいる空の下を散歩すると、新しい一日の始まりって感じでテンションも上がる。少し肌寒いのも、自分とこの世界を際立たせているようでなんだか好きになれる。

 

そういうわけで、朝の散歩は俺の日課みたいなものなんだが……歩いていると、何やらトラックの前でわちゃわちゃしている便利屋を発見する。

こっそり近づいて盗み聞きすると、どうやらこの場所から去ってしまうらしい。

 

せっかくだし見送って行くか。

 

「お前ら、気をつけろよ」

 

「!!」

 

「えっ……!?」

 

「シャーレの……!」

 

「えっ、あ、先生だ!来てくれたんだね!」

 

「たまたまだけどな」

 

後ろからこっそり声をかけたら、ハルカとアルとカヨコは驚き、ムツキは一応喜んでくれた。

 

「な、なんで来たのよ!アビドスのことを手伝っている身でしょう!?」

 

「ま、今はそうなんだけどさ。それでも俺が属してるのはあくまでシャーレなわけで……要するに、俺はみんなの先生ってわけ」

 

「つまり、私たちとも仲良くしてくれるってこと?」

 

「そういうことだね」

 

やったー、と俺の周りを走り回るムツキを見つつ、便利屋……というかアルに語りかける。

 

「どこに行くんだ?」

 

「具体的にどことかは……ただ、別の依頼を求めてちょっと移動するのよ!」

 

「そうか……寂しくなるな」

 

つい言葉に寂しさが滲み出てしまったが、当然引き止めるつもりはない。

少し俯いていた顔を上げて、改めてお別れの言葉を言う。

 

「元気でな。四人とも、また会おう」

 

「……ふふっ、うふふふっ!もちろんよ!先生、あなたとは事業のパートナーとして協業するのも悪くなさそうだし」

 

そんな笑うところか?と思いつつ「犯罪はよしてくれよー」と声をかける。

そしたら、「私たちはアウトローよ!」と返ってきた。

 

「またアビドスにも来てくれよ?ここはいいところだからな」

 

「まあ……それはそうだね」

 

「はい、本当に」

 

「絶対、また来るからね!」

 

「もちろん、また来るわ。ラーメンを食べに!」

「……本当に美味しかった、から」

 

照れながらそう言うアル。みんなもそう思ってくれてるらしく、笑ってくれている。本当に嬉しいな。

 

「……まあ、もう爆破はしないでくれよ?」

 

「ゔっ……アレは……そのぉ……」

 

「ま、弁償はしてるし、俺たちに協力してくれたから今回はチャラだけど……人を悲しませることは、あんまりしちゃダメだぞ」

 

「……ええ。でも、先生。私たちは……」

 

「わかってるよ。アウトロー、だろ?でもさ」

 

……少し、言い方が難しいけど……

頭を掻いた後、右手を差し出す。

 

「俺は君を信じるよ。陸八魔アル」

 

「……!……ふふっ、ええ。任せなさい!」

 

差し出した手に、アルの手が重ねられた。

 

そして、彼女たちはトラックに乗って去っていった。

見えなくなるまで、そのトラックを見送ると、ちょうどその見えなくなったタイミングで連絡が入る。

セリカとアヤネから、大将のお見舞いに行かないかとのメール。当然、すぐに向かった。

 

大将が入院している病院に入れば、そこに大将はいた。軽い傷とは言え、至近距離で爆発を受けているので念のため入院する次第になってたのだ。

まあ、とはいえなかなか元気そうだが。

 

だが……そこで、とんでもない事実が発覚した。

 

「アビドスの土地と建物の所有権が、移っている……!?」

 

「そうか……君たちは知らなかったのか」

 

何年か前、その権利がいつのまにか移っていたらしい。

どこに権利が移っているのか?それは借金している会社を考えればすぐにわかるだろう。

 

「……カイザーコーポレーションか」

 

……それに加えて、昨日のヒナの忠言……砂漠でカイザーコーポレーションが何か狙っている。だったか。

奴ら、一体何を企んでいる?

 

その場はそこで解散することになったのだが、アヤネが何か確認したいことがあるらしく、セリカもそれについていったため、俺は一人で学校に向かうこととなった。

 

 


 

 

学校に着くと、ノノミが学校の外で掃除をしていた。

 

「おはよ。早いね」

 

「あれ、先生?そちらこそ、早かったですね」

 

「まあね」

 

それから、少し世間話をした。

大将のこと、俺が来てからのこと、これからのこと。

 

アビドスは、今大きな変革の時を迎えようとしている。

これからどうなっていくのかは、誰にもわからない。

 

「それでも私たちはアビドスのために進むしかありませんし……先生も、一緒にいてくださいますよね?」

 

「ああ、もちろんだよ」

 

……いつまでも、とはいかないけれども。

だが少なくとも、今目の前に立ちはだかる闇を祓うまでは……

 

自転車の音がした。見やれば、シロコが登校してきていた。

 

「シロコか。おはよ」

 

「おはようございます。シロコちゃん。シロコちゃんも早かったですね?」

 

「ノノミ、先生。おはよう。ホシノ先輩は?」

 

「ホシノ先輩は多分、また学校のどこかでお昼寝の最中かと……」

 

「……そっか」

 

それから、また少し話をした後、シロコは先に学校内に入っていったのだが……

 

「……ノノミ」

 

「はい。なんだか、シロコちゃん……変でした。不安そうと言いますか、焦っていると言いますか……」

 

「やっぱそう思う?……なんか怖いな。中に入ろう」

 

「は、はい!」

 

学校内に入り、どこかに行ってしまったシロコの捜索をする。

突然、物音が鳴った。誰かが押されて倒される音。

 

音がなった教室にノノミと入ると、地面に座り込むホシノと、その前で立つシロコ。

 

「ホシノ先輩!シロコちゃん!?どうしたんですか!?」

 

「二人とも、一度落ち着け」

 

咄嗟に二人の間に割って入る。

話を聞けば、シロコはホシノに用があると言う。だから、二人きりにしてくれと。

 

「うーん、それはダメです⭐︎」

 

当然ダメだ。明らかに不穏な雰囲気すぎる。

 

「対策委員会に、『二人だけの秘密♡』みたいなものは許されません。何といっても、運命共同体ですから」

 

そうなんだ……知らなかった……

 

そういうことらしく、言わない子にはお仕置きだぞー⭐︎とノノミがシロコに近づく。

が、そのタイミングでホシノからカバーが入った。

 

曰く、自分が最近怠けすぎたから叱られていたのだと。だから気にする必要はないと。シロコも頷いている。

そう言って、そろそろ集まる時間だということで、二人は教室から出ていった。

 

嘘つきめ。

 

「……ノノミ、大丈夫か?」

 

「はい、私は大丈夫です……何か、言いたくないことがあるみたいですね」

 

ノノミは一つため息を吐くと、少し俯いた表情で語り続ける。

 

「仕方ありませんね。誰しも言いたくない秘密の一つや二つくらい、持っているものでしょうし……」

「……私たちも行きましょうか、先生。そろそろみんな帰ってきているかもしれません」

 

少し遅れて、俺たちもいつもの教室に向かう。

だが、ホシノたちもそこに向かっていたのだから、当然そこに二人もいるわけで……

アヤネたちもいないため、ものすごく気まずい空気が完成した。

 

頼む二人とも。早めに来てくれ。

 

祈りが通じたのか、廊下を走る音が聞こえたかと思うと、勢いよく扉が開かれて二人が登場した。

何か急いで伝えたいことがあるようだが、教室に満ちる微妙な空気を感じて、二人も固まってしまった。

 

「……とりあえず、二人ともお帰り。一度席に着こうか?」

 

「……うん、ただいま?い、いやそれよりも!とんでもないことが分かったの!」

 

「はい、衝撃の事実です……!皆さん、まずはこれを見てください!」

 

誰も席には座らず、一枚の紙が机の上にダン!と置かれる。

地籍図と呼ばれるものらしく、要するに土地の所有者を確認できる書類らしい。

 

それによれば、このアビドス自治区のほとんどがアビドス高等学校の所有……()()()()()()

 

現在の所有者は……カイザーコンストラクション。

名前からわかるように、カイザーコーポレーションの系列だ。

 

つまりは……アビドスの土地を所有しているのは、アビドスではなくカイザーコーポレーション。そういうことだ。

 

所有権が渡っていないのは、現在本館として使っている、俺たちが今いる校舎と、その周辺の一部地域のみ。

それ以外は砂漠や、荒地。砂漠化が進んでいない市内の建物や土地まで全てカイザーのもの。

柴関ラーメンの大将によれば、退去命令も出ていたらしい。

 

その原因は……過去のアビドス生徒会が、土地を売ったこと。

だが、現在その生徒会は解散となっている。そのため、現在は取引が行われていない。

 

そんなことはどうでもいい。問題は、こんな大事に今まで気づかなかったことだ。過去というのは当然二年以上前だ。二年前の生徒会長……ユメ先輩は、俺たちに黙ってそんなことをする人じゃない。

何故、気がつかなかった。もっと早く気がついていれば、もしかしたら何か手を打てたかもしれないのに……!

 

……後悔しても仕方がない。今考えるべきは、今のことだ。

 

「私が、もう少し早く気づいていたら……」

 

アヤネが後悔を口にするが、それを背負うべき人間はお前じゃない。

ホシノも、同意見だったようで気にすることじゃないとアヤネに声をかけた。

 

「これはアヤネちゃんが入学するよりも前の……いや、対策委員会ができるよりも前のことなんだから」

 

何か知っている風なホシノに質問が殺到する。

ホシノは、最後の生徒会において副会長をしていた。だから何か知っているんじゃないかと、そう問いかけられるホシノ。

そして、ホシノは話し始めた。

 

自分が生徒会に入った時は、ほとんど生徒がいなくなっていたこと。

生徒会には、新任の生徒会長と一年生二人しかいなかったこと。

生徒会長は学校随一のバカだったこと。

ホシノは嫌な性格の新入生だったこと。

もう一人の新入生も……

 

「もう一人の一年生は、まだまともだったんだけどね。アイツがいなかったら、きっと生徒会はすぐに解散になっていたよ……それでも、ちょっと変ではあったけどさ」

 

……嘘つけ。あの頃の俺がどんな性格していたと思ってる。

とんでもない捻くれ者だったよ。

 

あの頃は、本当にとんでもなかった。

三人で、アビドスをどうにかするためにあっちこっち行って、よくわからない、意味がないようなこともして。

あそこには、バカしかいなかった。ユメ先輩はお人好しで、頭も良くなくて。ホシノだって、結構ユメ先輩に同調してて、それに俺に声をかけるような真似をして。俺だってそうだった。頭もそんな良くなかったし、ただ二人に同調していただけだった。

 

ああ、本当に……でも、最高の日々だったんだ。

 

その日常の下で、どんなことが起こっているのかも知らずに、ただ一瞬を楽しんでいた。

本当に、どうしようもないバカだ。

 

ホシノも、同じように悔いていた。

どうして気づけなかったんだろう。どうして知ろうとしなかったんだろう。

 

でもお前は、ユメ先輩を失っても、頑張ってきただろう。そうやって、誰よりも前に立って、このアビドスを守ってきてくれたんだろう。

戦闘でも、そうだ。みんなを守るために、先を行って守り続ける。

 

ホシノだって気に病む必要はないんだよ。

 

伝えたいけれど、伝えるわけにはいかない。

せっかく、俺に囚われず幸せな道を歩くホシノを、縛るわけにはいかない。

 

だから、ホシノを隣で支えるのは俺じゃなくて……後輩たちだ。

 

「昔の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散になった後……アビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ」

「……ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる」

「ホシノ先輩は色々とダメなところもあるけど、尊敬はしてる」

 

シロコが、そう言ってくれた。

……いい後輩を持ったな。

 

「ど、どうしたのシロコちゃん!?急にそんな青春っぽい台詞を……!おじさんこういう雰囲気、ちょっと苦手なんだけど!?」

 

「……や、なんとなく、言っておこうかなって思って」

 

この子たちなら、ホシノを幸せにしてくれる。

そう確信が持てて……嬉しくなった。

 

俺にそんな資格はないのにな。

 

……だいぶ話が逸れていたので、本題に戻る。

何故、過去の生徒会はカイザーに土地を売ったのか?

 

その原因は借金だろう。

膨れ上がった借金を返済するため……または、利子を返済するためだったのかは知らないが、そのために土地を売った。

だが、それで借金が返し切れるはずもなく、繰り返し土地を売る負の循環に陥った結果……ほとんどの土地を売却した。こんなところだろう。

 

しかしそうなるとおかしい部分がある。二年前、俺たちは毎月利子を払えていた。たった三人でもできていたことが、昔の人数が多い生徒会にできないはずはない。

となると、土地を売ったのは火急に迫られたわけではない。

恐らく、カイザーが何かしら言ったのだろう。いらない土地を売れば、借金が軽くなりますよと。

 

砂漠化した土地を売ったところでデメリットなどない。だから、最初はそこから売っていって……次第に、いろんな土地を売るようになってしまった。

つまりは、罠にかけられたと言ってもいい。恐らくは、最初からカイザーの掌の上だったのだろう。

 

みんなも同じ結論に達したらしく、その話をする。

 

「……なにそれ!?ただただカイザーコーポレーションのやつらに弄ばれてるだけじゃん!生徒会のやつら、どんだけ無能なわけ!?こんな詐欺みたいなやり方に、騙されてさえいなければ……!」

 

「セリカ。少し落ち着け」

 

「先生……でも」

 

「気持ちはわかるよ。何してるんだよってね……でも、本当に悪いのは騙される方より騙す方だよ」

 

みんな黙り込んでしまう。

 

「……わ、私も分かってるわよ!た、たまにゲルマニウムのブレスレットとか買ったりするし、下手したらここの誰よりも分かってる!悪いのは騙した方だってことは!」

「でも……悔しい、どうして……ただでさえ苦しんでるアビドスに、どうしてこんなひどいことを……」

 

……セリカは、本当にいい子だな。

 

「……大人ってのは、そういうもんさ。基本的にな」

 

「先生?」

 

「どいつもこいつも、自分のことしか考えていない。だから平気で人を傷つけられる……それだけのことだよ」

 

だから大人は嫌いだ。

 

「……それに、切羽詰まってる人はなんでもやっちゃうものなんだよ」

「ま、よくある話だけどね。ただそれだけだと思うよ、セリカちゃん」

 

ホシノも、そう語った。

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