管理者より狂ってるレイヴン   作:音慈 英

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ドキドキメッセージ

 手続きも終わり、一息ついたところで二件のメッセージが入っていることに気づいた。

それぞれ別の送り主からのようだ。タイミングからして、仕事に関わる話に違いない。

(手続きだけでクタクタなのに、あんな難解な事務文章を読んでいたらまた吐いちまう……)

そこで俺は、『脳内で相手を萌えキャラに変換することで、メールチェックを楽しくパパっと終わらせちゃおう作戦』を実行することにした。

精神を集中し、心の瞳に「萌えキャラ化の色眼鏡」を装着する。

一件目は管理者から。

 

 『0824-FK3203号をレイヴンとして承認。

以降、グローバルコーテックス登録下での活動に限り、ACの使用を許可します。

今後は、自己の有する影響力に十分配慮し、レイヤードの一員として遵守すべき規範を逸することなく、行動することを希望します。

なお、著しい逸脱行為があった場合、実力をもってこれを排除することを、あらかじめ警告しておきます。 

では、今後の活躍に期待します。』

 

……長いので要約すると、『ACを使ってもいいけど、悪いことしちゃめっ! だからね!』と書かれていた(気がする)。

多少可愛く脳内変換したが、大筋は間違っていないはずだ。管理者は俺たちの母親みたいなもんだし、多少の甘えは許されるだろう。どうせ返信しても返ってこないだろうから、これは既読スルーでいい。

二件目はレイン・マイヤーズ。エンブレムがグローバルコーテックスなところを見るに、おそらく俺の専属オペレーターになる人物だろう。

『はじめまして、レイヴン。

 私は、あなたの補佐担当者として任命されました、レインマイヤーズと申します。ご存知の通り、我がグローバルコーテックスはこの地下世界「レイヤード」で発生する様々なトラブルを、依頼によって解決し、利益を得ている団体です。

 あなた方レイヴンには、依頼の提供はもちろんのこと、機体および弾薬の販売・修理、僚機の斡旋など、任務遂行に必要な事項に関して、可能な限りの協力をお約束します。

 存分にご活躍ください』 

……これまた長いので要約すると、

『はじめまして♥ オペレーターのレイン・マイヤーズです♥ グローバルコーテックスはトラブルを解決して儲けてるので、粉骨砕身働いてくれるあなたに親身になって協力しちゃいます! プライベートでも、親身なお付き合いがしたいなぁ♥ 頑張ってね♥』

……という話だった(と確信した)。

 原文を見れば分かる通り、語尾に♥は絶対ついている。

これはもう、愛のメッセージと言っても過言ではない。

この熱烈なラブコールに応えるべく、俺はさっそく返信を打ち込んだ。

FROM:リューク

TITLE:愛しのオペレーターへ♥

『君からの愛のメッセージ、確認したよ。でも俺たちはまだお互いのことを何も知らないわけだし、いきなり付き合うのは難しいかな。まずは友達から始めよう』

これでよし。

十分後、すぐに(当社比)返信が返ってきた。

『何の話ですか? 全く心当たりがありません。仕事に戻ってください』

どうやら色眼鏡の度が強すぎて、話のピントが全く合っていなかったようだ。

 しまった。これから仕事を共にするというのに、初手で悪い印象を持たれてしまったかも知れない。

なんとかして挽回しなければ……とフォローを考えていると、一件の新着メッセージが届いた。

アップルボーイからだ。

『お疲れ様です。いろいろありましたが、お互い無事試験を突破できて良かったです。これも何かの縁ですので、仕事以外でも仲良くしてくれたら嬉しいです。

あと、乗り物酔いがまだ続くようでしたら、トラベルミンをお勧めします』

俺の介護をさせられたというのに、わざわざこんなメッセージを送ってくるとは……。

リンゴくんはやはり礼儀正しい、出来すぎた人間だ。

あまりにも紳士すぎて逆にムカついてきたので、レイン・マイヤーズへの失態は「リンゴくんが勝手に送った」ということにしよう。

『レインちゃん。先程の気持ち悪い勘違いメッセージは、同じく試験を受けたアップルボーイという悪戯好きのクソガキが、俺の端末を奪って勝手に送ったものです。

二度とこんな悪ふざけをしないよう、俺から厳しく叱っておくので、どうか許してやってください。

俺からも謝ります。ごめんなさいでした』

即座に返信が来た。

『了解しました。アップルボーイ氏のオペレーターにも本件を共有しておきます』

うむ、完璧だ。

作戦の成功に安堵していると、間髪入れずにリンゴくんからメッセージが届いた。

TITLE:理由を説明してください

『急に専属オペレーターから「紳士ぶるのを辞めろこのクソガキ」と罵倒され、理由を聞いたら、あなたが「僕が勝手にあなたのオペレーターへ偽メールを送った」と吹聴しているそうですが、一体どういうことですか!?』

『……そもそも、レイヴン試験で乗り物酔いって何なんですか。最悪の事態を考慮して酔い止めくらい常備しておいてください!』

あー、バレたか。

その後もリンゴくんからの恨みつらみが綴られたメッセージが届き続ける。

出会って間もないのによくもこれだけ書くことが……。

さすがに無視するのは可哀想なので、もう一度色眼鏡をかけ直してメッセージを読み解いてみる。

(脳内変換後)

『グローバルコーテックスでの手続きだって、ほとんど私がやってあげたんだからね! もっと私に感謝しなさいよ! 別にアンタのためにやったんじゃなくて、ただ放っておけなかっただけなんだから!』

おお、可愛い。リンゴくん……いや、リンゴちゃんはツンデレ属性だったのか。

こんなに可愛い娘を怒らせたままなのは寝覚めが悪い。適当にご機嫌取りをしておこう。

「ごめんよ、リンゴちゃん。埋め合わせに何でも奢ってあげるから許しておくれ、マイハニー」

(脳内変換後の返信)

『ちゃん? マイハニー……? よく分かんないけど、反省してるなら許してあげるわ。次はないんだからね!』

ははは、なんて可愛い子猫ちゃんだ。こんなに可愛かったら、食べてしまいたくなるじゃないか。

知ってるか?死神はリンゴしか食べないんだよ。

俺はさっそく、彼女を口説き落とすための追撃メッセージを打ち込んだ。

「愛しのマイハニー。君の寛大さと、母親のような包容力に惚れ直してしまったよ。もう僕の目には君しか映らない。今すぐ君を食べてしまいたいよ」

意気揚々と送信ボタンを押した直後、俺は過ちに気付いた。

「あ、やべ」

リンゴくんに送ったつもりが、宛先を「管理者」にしてしまっていた。

……まぁいいか。管理者は事務連絡しかしてこない。どうせ返信なんて来やしないだろう。

ピコン!

通知音と共に、管理者から即レスが返ってきた。

『 (〃∇〃)テレテレ 』

 

管理者は、狂っているのだろうか

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