頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>   作:もちもち物質@布団

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ゲームフェイズ3:『0』本当に、バカ!

「……どうする?えーと、これ、どういう挙動なのかな」

「俺も知らない。この部屋に最初に入った奴が思い浮かべた部屋になる、っていう仕組みを作っただけだし……」

「そうか……」

 デュオと燕は、顔を突き合わせてヒソヒソと相談している。バカがそんな2人に気付いてソワソワと様子を見に来たが、『ああ、なんでもないよ』と2人は曖昧に笑って誤魔化した。バカは『そっかぁ……?』と首を傾げつつ、『多分、これは俺が聞いたらよくないやつなんだな』と理解して、その場で大人しく体育座りした!

 ……が、体育座りのバカはさておき、カードが見つからないとなると、この部屋を攻略できない。燕の昇格試験の条件は満たせないから、今まで色々やってきた意味がなくなってしまう!

「片っ端から探してみる?」

「いや……望み薄だ。図書室も、ピアノの部屋も、義足の部屋も、チューリップの花畑も、食堂も、ベッドルームも、テラスも、運動場も、全部探した。これでどこかにあるとしたら、いよいよ、運動場に埋まってるとか……」

 頭脳派2人が頭を抱えて『カード、どうしよう』とやっていると……そこへ、ふと、海斗がやってきた。

「どうしたんだ、2人とも」

「え?あー……いや、カードが無いなあ、って……」

 海斗は『カード……ああ、そうか、そうだよな……』と、ちょっと考え……そして。

「樺島ぁ!ちょっと来い!」

「ん!?なんだー!?」

 バカを呼んだ。呼ばれたらすぐ来るバカは、体育座りの姿勢から一気に飛び立ち、そのままぱたぱたと飛んでやってきた。

 ……そして、海斗はしげしげと、バカの顔を見つめた。バカは、頭の上に『?』マークを浮かべて首をかしげていたが……海斗は、『まあ、そういうことだろう』と勝手に納得し……言った。

「お前、疲れてるだろ」

 

「えっ!?」

 バカはこれに大層驚いた!何せ、バカは元気なのである!まだまだ遊びたい!なんか、向こうの方では運動場で戦車が四郎を乗っけて走り回っており、非常に楽しそうなのである!混ざりたい!

「疲れてないぞ!まだ元気だぞ!」

 が、バカがそう反論すると、海斗はちょっと考えて……びし、と、ある一点を指し示した。

「だとしたら、この部屋にベッドがあるのはおかしい」

 ……そう。

 この部屋……何故か、ふかふかベッドがある場所があるのである!

 

「えっ……ええっ!?どういうことぉ!?」

「つまり、お前は疲れてて、眠いんだ!自分で気づいていないだけで!そして、この部屋はお前が……あー……」

「わ、わかんねえよお!どういうことだぁ!?」

 ……が、途中で海斗は『これ、説明すると面倒な奴か……』と何やら考え始め……そして。

「あー……いや、違う。僕が眠いんだ。それで、お前が昼寝するなら、お前の羽を借りようと思ったんだ。でもお前が眠くないなら、仕方がない。僕は諦めて少し肌寒い思いをしながら昼寝するとしよう……」

 ……海斗がちょっと『やれやれ』という顔でそう言うのを聞いて、バカはすぐに納得した!

「あ、なんだぁー!そういうことかぁ!分かった!それなら付き合うよぉ!そう言ってくれよぉ!」

 バカは、『そういうことなら!』とにこにこ笑顔である。

 ……そして、デュオと燕は何とも言えない顔で、この様子を見守っていた。それに海斗は、また何とも言えない顔で、告げた。

「……昼寝したら、カードが出てくると思う。まあ、つまり、樺島が満喫したら、というか……うん」

「……そうか。うん、なんというか……いや、まあ、そっか。樺島君がこの部屋に最初に入室すると、こうなるのか。あははは……」

 そうして、デュオと燕はそれぞれに『行ってらっしゃい』とバカと海斗を見送ってくれた。

 バカはるんるんと、『海斗のお昼寝は俺が守る!』と使命感に満ち溢れ、海斗と共にふかふかベッドへ向かうのであった!

 

 

 

 海斗は今までも時々、バカの羽をお布団代わりに昼寝することがあった。

 最初は事故みたいなものだったのだが、その内、『どうも、天使の羽には安眠効果があるらしい』と分かってからは、『明日、授業で発表があってな……緊張して眠れないことが見込まれる。昼寝していっていいか』だとか、『眠りが浅いせいか疲れが取れない。昼寝させてくれ』だとか、そういう風にバカの羽は度々利用されている。

 ということで、今回もバカは、特段、迷うことは無かった。ただ、でっかいふっかふかのベッドの端っこにちょこんと寝っ転がり、海斗が羽を被って眠れるようにしておくだけである。

「……いつものことながら、ふかふかだな」

「うん!」

 バカの羽はふわふわの真っ白けで、なんかちょっとかわいい羽である。バカとしては若干のコンプレックスでもある羽だが、皆が『触り心地がいい』と言ってくれるので、まあ悪くない気がしてきた羽である。

 そんな風にして、海斗がバカの羽とベッドの間に潜り込んで、『丁度いい』ともそもそやっているのをバカはにこにこと見守り……。

「……なあ、樺島」

「うん?」

 そんな折、バカの羽の下から、海斗がもそ、と顔を出して、ちょっと笑った。

「ここを出るの、楽しみだな」

「……うん?」

 バカは、ちょっと考える。

 ……まあ、楽しみ、ではある。

 当然、楽しみだ。燕を連れて帰ってやったら、きっとたまが喜ぶ。四郎を連れて行ったら、双子の乙女もものすごく喜ぶだろう。親方にも褒めてもらえるかもしれない。

 それに何より……友達が増えたのだ!皆でまた、ミニストップに行って、ソフトクリームを食べるのだ!それは紛れもなく、楽しみ!

「……ここを出ても、楽しいことが山のようにある訳だ」

「うん!そうだなあ!」

「だから、ずっとここに居る訳には、いかないな」

 海斗の言葉に、バカはちょっと首を傾げる。それは当然、ずっとここに居る訳にはいかないので。

「……大丈夫だ。多分、全部上手くいくさ」

「……うん。そうだなあ。俺もそう思う!」

 バカは、ちょっと思った。『もしかして海斗、ちょっと心配なのかなあ』と。

 ……そう思いつつ、バカは、また、ちょっとだけ思った。

『俺もやっぱり、ちょっと心配だったのかもなあ』と。

 

「まあ、いいや。もう眠くなってきた。僕は寝るが、お前も寝るだろ?」

「うん……あ、なんかアラームとか……」

「そんなものはない。まあ……必要になったら、皆、起こしてくれるだろう」

「うん、そうだよなあ。じゃあいいやあ、思いっきり寝よ!おやすみ!」

 そうしてバカは『寝る!』と意識を切り替えて、寝た。寝ようと思ったら割とすぐ眠れてしまうのがバカのすごいところである。とはいえ、いつものバカよりも入眠が更に早かったのは、やはり、疲れてきたからなのだろうが。

 ……すぐに寝付いてしまったバカをちょっと見て、海斗は『やっぱりこいつ、疲れてたんじゃないか……』とぼやいて、『まあ、仕方がないか……』と、バカに付き合って目を閉じるのだった。

 つまり……お昼寝である!おやすみ!

 

 

 

 ……そうして。

 リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴ったような気がして、バカは、ぱち、と目を開ける。

「ふあ……ん!よく寝た!」

 バカは元気に目覚めた。すると海斗が隣で『んー……』と身じろぎして、目をこすりながらのっそり起き上がる。寝起きは海斗の方が悪いのだ。というよりは、バカの寝起きが良すぎるのだ!

「……おはよ」

「おはよう!海斗、寒くなかったか!?」

「ああ、うん……いい羽だよな」

「うん!ありがとなあ!」

 海斗は寝起きでちょっとぽやぽやしていたが、バカは早速しゃっきりと目覚め、元気に社歌を歌いかけ……そこでふと見れば、お隣のベッドでヤエと真理奈が一緒にすやすや寝ているのを見つけてしまった!

 バカが『女の子が!寝てるよお!』と混乱しながら静かに慌てふためいていると、海斗もそれをちらっと見てすぐさま眠気が吹っ飛んだような顔になってしまった。

 2人揃って、『どうしよう!どうしよう!』『仮にも男が寝てる横のベッドで寝るか!?』と混乱してばたばたしていると……やがて、むにゅむにゅ、もそもそ、と、ヤエと真理奈が動き始め……。

「あ、ヤエちゃん、そろそろ起きた方がいいかも……」

「うん……このベッド、ふわふわだったね……」

「ね。ずっと寝てたいぐらいだなあ……えへへ」

 ……2人揃って、仲良く暢気に目覚めた。おはよう!

「あ、樺島さんと海斗さんも起きたんだね。おはよー」

「ああ……おはよう……」

 海斗はもうどこから何を言ったらいいのか分からないような顔をしていたが、バカは元気に『おはよう!』とご挨拶した。挨拶は大事である。社訓にもそう書いてある。

「私達、お昼寝しよー、って思ってここ来たら……その、2人とも同じベッドで寝てたからさ。私達も対抗して一緒に寝た!」

「ああ、そうか……うん、その、僕と樺島が同じベッドで寝ていたことについては、その、誤解はしないで貰いたい。断じて、僕らはそういう仲ではなくてだな……」

 そして、海斗は、真理奈にもヤエにも特に何も言われていないのに、勝手に何やらぶつぶつと言い訳を始め……そして。

「……樺島の羽は寝心地がいいんだ」

 何やら、いきなりバカの羽を褒め始めた!なのでバカは、『褒められた!』と嬉しくなって胸を張った!

「へえー!やっぱり天使の羽ってすごいんだあ!」

「いいなあ……」

 更に、元々特に何も気にしていなかったらしい女子2人は特に何も思わず、『天使の羽のお布団、いいなあー!』としか言わない。

 なので。

 

「ちょっと寝てみるか!?いいぞ!俺、お布団やるぞ!」

「えっ、いいの!?じゃあちょっとだけ!」

「あ、私も……」

 ……海斗が頭の痛そうな顔をしている横で、バカの羽体験会が開かれてしまった!

 女子2人は『すごいふわふわ!』『いいお布団……』と目を輝かせていたし、バカは羽を褒められてにこにこであった!

 そして海斗は只々、『いいのか……?これは、僕は、止めるべきだったのでは……?いや、しかし僕自身がやってしまっていることで……いや、しかし女性がこれをやるのは……だがそれを言い始めると、僕がやっていたのも妙な具合に……』と悩んでいた。

 ……頭がいいと、悩みが増える。バカだと減る。そういうことである。

 

 

 

 そうしていたところ、タヌキが『みなさーん!そろそろおやつの時間ですよー!』と元気にやってきたため、天使の生羽毛布団の体験会は終了した。

 そして。

「ん?なんか枕の下にある……?」

「ああ……うん、丁度よかったな」

 バカは、ふかふか枕の下にカードがあるのを発見した。『0』のカードだ。つまり……これで、コンプリートである!

「おお!カード見つかったんですね!よかったー!じゃあおやつ食べたら出ましょうかー!」

「うん!おやつ!やったー!」

 ……そうして、海斗が『やれやれ……』とやる中、バカは元気に『おやつ!おやつ!』と駆けていくのであった。

 まあ、つまり……しっかり、このデスゲームを満喫し終えた、ということである。

 

 だが、まだデスゲームは終わらない。

 そう……お家に帰るまでが、デスゲームだ!

 

 

 

 そうしてバカ達は、おやつを食べた。おやつは、七香が淹れてくれた緑茶と共に頂く羊羹であった!大層美味であった!

 とやっている内に、リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴り……バカが『発表フェイズ入っちゃったか!?』と焦っていたら、燕が『いや、これ発表フェイズが終わったところ』と教えてくれた。……まあつまり、バカは良く寝たということである。

 

 ということで、そんなに焦ることもなく、全員がのんびりゆったりおやつを楽しんでから、まったりとエレベーターで大広間へ戻り……さて。

「じゃ、行こうか。……燕。君の昇格試験の結果は皆で見守るってことで、いいのかな?」

「うん」

 いよいよ、この時がやってきた。

「じゃあ……行こうか。『ダァト』の部屋へ」

 さあ、ゴールの時間だ。

 

 

 

「……ところで、どうやって行くんです?」

「あっ!そっかぁ!エレベーターの上に乗っからないといけないんだよなぁ!?」

 が、ここで若干の問題が発生した。

 そう。『どうやって行くの?』問題である。

 だが……。

「ああ。そうなるとエレベーターを操作する人はゴールにたどり着けない、ということになるが……いや、大丈夫だな」

 海斗は落ち着いて、バカに向き直った。

「樺島。僕らを乗せたエレベーターを操作した後、お前は飛んで来い」

「うん!分かったぁ!じゃ、準備してくるから皆、よろしくなぁー!」

 ……そう。筋肉があれば、大体なんでもできる。

 問題など、些末なことであった。

 

 

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