頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>   作:もちもち物質@布団

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ラストフェイズ:デスゲーム会場跡地

「ヒバナー!」

「んだよ!樺島テメエ、フツーに無事じゃねえか!」

 ファイアーブルドーザーのヒバナは、大きく手を振るバカを見つけて『はあ!?』という顔をした!だがバカは、ヒバナが来てくれた喜びでいっぱいなので全く気にしていない!

「なんだ、その、戦車……って言われてたけどよ、台車みてえのが1匹だけ来たから、俺はてっきり……」

「まあ、そうだろうな……。普通に考えれば、僕らに何かあった、と考えるのが妥当だろう。だがまあ、この通りだ。全員無事だ」

 ブルドーザーから降りてきたヒバナを、バカが出迎え、そして海斗も出迎える。ヒバナは何とも言えない顔で周囲を見回し、そして、『あ、どうも』『どうも』と皆からの挨拶を受けた。……ここに居る皆は、デスゲーム経験者である。突然のブルドーザーにも『うわあ』という顔をするくらいで、順応が早いのだ!

「じゃあなんだって、戦車1匹だけ出しやがったんだよ、おい」

「悪魔から毟れるだけ毟るためだな……」

「悪魔ァ?……どこだ、それ」

「えっ?あれっ?」

 が、ヒバナが状況を把握しようと、安全ヘルメットを外しつつきょろきょろするのを、バカ達も見守り……そして、悪魔が居ないことに気づいてしまった!

「あれ、悪魔、どこ行っちゃったんだ……?」

「随分小さくなっていたからな……。瓦礫に紛れたか……?」

 バカは、『さっきは鳩サブレぐらいの大きさだったもんなあ……』と思いながら、瓦礫をひっくり返してみたり、『おーい悪魔ぁー』と呼んでみたりしたのだが……。

「あっ!お、おい!樺島!ここだ!」

「あああっ!」

 ……海斗が見つけて指差したそれを、バカも、見つけた。

「……轢いてる……!」

 そう!ちっちゃな悪魔は……ファイアーブルドーザーに、轢かれていたのであった!

 

「労災か!?これ労災か!?」

「……労災だが、相手が悪魔だからな。まあ、いい、ということに……しておいてもいいんじゃないか」

「そっかぁ、よかったぁ……。あ、でも一応、出しといてやるかぁ……よっこいしょ」

 バカは、ブルドーザーをそっと持ち上げ、その下に居たちっちゃい悪魔を出してやった。ちっちゃい悪魔はもう、めそめそ泣きっぱなしで、今にも涙で溶けてしまいそうなほどである!かわいそうに!

「ヒバナ……うわ、本当にヒバナだ」

 が、そんな悪魔は放っておいて、デュオがなんだか嬉しそうな、気まずそうな顔でヒバナに近付いてきた。

「ああ!?誰だテメ……は!?」

 ヒバナは最初、『誰だコイツは』とばかり警戒していたのだが……まじまじとデュオを見つめ、そして眠っているたまを見つけて……気づいてしまった。

「お、おい、お前、陽か……?」

「まあ、そういうことになるのかな。俺は宇佐美光。多分……君が死んだ世界の、宇佐美光だよ」

 ヒバナは『どういうことだよ、おい……』と困惑しているが、バカは『分かんねえ!』と元気に応えるばかりだし、海斗は海斗で『まあ、こういうこともあるのが悪魔のデスゲーム、ということなんだろうな』と言うばかりなので、ヒバナは混乱したままなのであった!

 ……だが。

「……ま、お前が陽だっつうんなら……その、元気そうで何よりだ」

「えっ……あ、そういう反応になるんだ……参ったな、俺、本当にそっちでは上手くやってるんだね」

 ヒバナが割と穏便に挨拶したのを受けて、今度はデュオがちょっと戸惑っている!

 ……デュオは、かつての悪魔のデスゲームで唯一生き残った人だ。つまり、他の人は全員死んでしまった、ということなのだろうが……ヒバナも当然、死んでいるはずである。それが、デュオの望んだことにせよ、そうでないにせよ。

 だがいずれにせよ、デュオにはなんとなく、後ろめたさのようなものがあったのだろう。……だというのに、ヒバナが特に気にせずあっけらかん、としているものだから、デュオとしてはどうにも、妙な心地であるらしい。

「ああ?上手く?どういうこった」

「いや、別に……うん。いいんだ。よかったよ。俺、君達に会えて、本当によかった」

 ……デュオはそんなことを言って、ちょっと寂しそうに笑った。ヒバナは首を傾げつつ、『ま、いいけどよ……』と、気にしないことにしたらしい。……それでも、思うところはヒバナなりにあったのか、ばし、と、デュオの背を叩いてやっていた。デュオは、それにちょっと、嬉しそうな顔をしていた。

 

 

 

「酷い!酷い!どうしてこんなことができるんだ!」

 と、バカ達がやっている間に、ちっちゃい悪魔が叫び始めた。

 ちっちゃい悪魔は、ブルドーザーに轢かれたからか、今や、おミカンサイズになってしまっている!すっかり手乗り悪魔だ!

「ん?そりゃうち、建設会社だからぁ!あっ、でも解体も得意でな!俺、解体の方が得意なんだけど……」

「そういう話ではない!そういう話ではないのだ!」

 バカの親切かつバカな返答にぷんぷん怒りつつ、本当にちっちゃくなってしまった悪魔は、また泣き出した!怒りながら泣いている!

「大損害だ!宇佐美光と駒井燕の殺し合いだったから!絶対に儲かるはずだったのに!」

「これで分かっただろう。樺島剛がそこに入ると全てが台無しになるんだ。やれやれ……」

「台無し!?俺が入ると台無しなのぉ!?」

「悪魔にとっては、な。僕達にとっては大成功だろう」

 バカは、意味を理解しないままではあったが、『そっかぁ!』とにこにこした。大成功なら、ヨシ!

 

「まあ、解体はできたみたいだな……。やれやれ、これで僕らの仕事も終わりか」

 何はともあれ、バカは仕事をやり遂げたことになる。長かった解体作業も、これでおしまいだ。

「おう。もうちょっと上の方は今、かにたまがかにたまビームで焼き払ってるぜ」

「ああ、あれ、実用されるようになったのか……」

「ちょっと待って。かにたまって何?ビーム?え?」

 デュオは困惑していたが、『後で分かるよぉ』とバカはにこにこするばかりである。デュオは『たま、って……いや、そんなわけ無いよな……え、もしかして、本当に……?』とおろおろしていたが、その腕の中では、すやすやすぴすぴ、眠るつぐみが居るのである。そう!彼女の未来は……かにたま!

 

 

 

「いや、まだ終わりじゃない」

 が、すっかり終業ムードだったバカ達に、燕がそう、声をかけてきた。バカは慌てて『ちゃんと号令するまでが仕事!』と姿勢を正すと……燕は、ポケットの中から、カードを5枚出した。

「じゃあ、残り5枚についてだけど」

「ま、まだやるのか!?この期に及んで?」

「当然だろ」

 すっかりちっちゃくなっちゃった悪魔は慄いたが、燕は、しれっ、としている。実に冷静で、いっそ冷徹である。悪魔だ。実に悪魔!

「じゃあまず1枚目。今後お前は人間に危害を加えてはいけない。ただし、俺の許可があった場合は除く。また、不意に人間に危害を加えてしまった場合には俺への報告の後、原状復帰と補填を行うことで対処することを原則とする」

「えっ!じゃ、じゃあ、我、人間の絶望は……」

「少なくとも自力ではほぼ手に入れられない。そういうことになる」

 更に、実に真っ当なことを悪魔に命令したわけだが……悪魔からしてみれば、実に残酷な命令である!実に悪魔!

「ひ、酷いぞ!そんなの、カード1枚で聞いてたまるか!」

「いや、聞けよ。そういうルールだろ。脱出に7枚必要だとはあったが、それ以外にカードの枚数を定める規定は無かった。ルールは守れよ。悪魔だろ」

 燕がじろりと悪魔を睨むと、悪魔は何か言いたげだったが、すごすごしょんぼり、と縮んでしまった!やっぱり、燕はとっても悪魔!

 

「次。2枚目。お前はお前が現在持っている、また今後入手する一切の情報について、全て俺に開示する義務を負え。俺は開示請求を都度行うが、お前が持っていない情報の開示を請求した場合は速やかに情報を取得してこい」

「酷い!」

 更に、燕は容赦が無い。なんだかよく分からないがすごそうなことを言っている!バカには全く意味が分からないが!

「次。3枚目。お前は今後、あらゆる状況において悪魔のデスゲームの開催を止めるために動け」

「無茶を言うな!」

「次。4枚目。今後、俺の許可なく他の悪魔と接触することを禁じる」

「なんだと!?」

 燕はぽんぽんとどんどん条件を追加していき……そして。

「5枚目」

 遂に……最後の1枚のカードをちっちゃな悪魔に投げつけて、言った。

「お前は今日から、俺の部下になって俺のために働け」

 

 

 

 ……ということで。

 めそめそ泣いている悪魔に、真理奈が『元気出しなよぉ……燕が上司だったら、悪いようにはなんないからさ……』と慰めの言葉をかけ、タヌキは『そうですよぉ、多分、ただ人間の魂を奪ってるよりも有意義に過ごせますよぉ』とにこにこ励まし、そしてヤエは、『ちっちゃい……かわいい……』と、悪魔をつついている!

 そう!ちっちゃい悪魔は、更に更にちっちゃくなってしまい……今や、ジャンガリアンハムスターサイズなのである!トイレットペーパーの芯を余裕で寝床にできるサイズになってしまったこの悪魔には、最早、力も尊厳もあんまり無いのであった!

 そして、力も尊厳もあんまり無くなってしまった悪魔は……泣きながら、燕の『お願い』を全て聞くことにしたらしい。そう。燕の部下になる、というところも含めて、である。

 というのも……この悪魔、もし燕の部下にならなかったら、降格処分の後、今の状態より酷い環境で使い潰されることがほぼ確定していたらしいのだ。

 つまり、燕はこの悪魔を助けてやった、ということになる……のかもしれない。

「酷い……酷い奴だ……駒井燕は、本当に、酷い奴……!」

「その分優秀なんじゃなーい?いいじゃないのぉ、優秀な上司の下で働くんだからぁ」

「まあ、それはそうなんだがぁ!ひぃーん!」

 ……尤も、この悪魔を助けたのが燕なら、この悪魔を追い詰めに追い詰めたのも燕なので……燕が善行をしたかどうかというと、まあ、プラマイゼロなのであろう。多分……。

 

 

 

 そうしてジャンガリアンハム悪魔が『じゃあ当面、お前の定位置はここ』と燕の胸ポケットに入れられてしまったところで……。

「さて……じゃあ、その……」

 燕は、ちょっと気まずそうに、バカのことを見つめた。

 ……そして。

「樺島さん。真理奈を、よろしく」

「……えっ?」

 燕はそう言って、真理奈の肩をそっと押したのだった。

 

 

 

「燕……?」

「……俺は、行けない。これからも悪魔として、やっていくから……このまま、悪魔の居所に諸々の手続きに行く」

 真理奈の目が見開かれた。燕を見つめて、何か言おうと、その口が動きかけるが……。

「いや、燕も一旦はこっち来るだろ?」

「え?」

 バカは、そんな燕を『ひょいっ』と担ぎ上げてしまった。

「だって、打ち上げだぞ?仕事終わりだぞ?明日からまた仕事でも……打ち上げは、来てもいいよな……?」

「……いや、ちょっと」

 燕はバカに担がれた状態で、『待て待て待て』とやっていたが……バカは、にっこりにこにこである!

「それに、燕は一旦、家帰った方がいいぞ!」

「いやだって俺、死亡届出てるし……!」

「出てても帰った方がいいぞ!」

 バカはバカなので、『死亡届が出てる』ということがどういうことなのか、よく分かっていない。『まあ、死んだことになってても生きてるならちゃんと生きてるって教えてあげないとなあ』というくらいしか、思っていない!

「ねっ、そうしようよ燕!説明が大変そうだったら、私も手伝うよ!燕!」

「真理奈が説明に入ったら余計に訳分かんなくなるだろ!」

「いいんじゃないですかねえ、こう、今もう既に、割とわけわかんない状態ですからぁ……ここから更に、わけわかんなくして、結論としては、『わけわかんない』ということにすれば……いいんじゃないですかね!」

「より面倒なことになりそうね」

 タヌキもやってきて『素敵!』とやっているが、七香は流石に冷静である。『死亡届が出ている人が帰ってくる』という状況に思いを馳せているのか、ちょっと頭の痛そうな顔をしている!

 だが……。

「……まあ、つぐみが、君に会いたがってると思うから」

 デュオが、そう言って笑った。

「彼女には、会ってほしいな」

「……姉さん、が……ああ、うん……」

 燕は、デュオの腕の中に居るつぐみの姿を、ちら、と見て、それから、きゅ、と唇を引き結んだ。……彼としても、自身の姉のことについては、思うところが沢山あるのだろう。

「ね!燕!そういうことで、行こ!」

 そして、迷うような顔をした燕の服の裾を引っ張って、真理奈がにこにこ笑顔を向ける。

「いいじゃん!年末年始とゴールデンウィークとお盆ぐらいは、帰ってくるってことで!」

「そんな、帰省じゃないんだから……」

「いいじゃんいいじゃん!帰省しなよ!ね!そうしたらその度に私、出汁巻き焼いてあげるから!」

 真理奈は、『コレで!』と、その手に握った銅の卵焼き用フライパンを見せた。燕は、『本当にそれ使うのか……』と何とも言えない顔をしていたが……。

「その……燕。僕が言うのも妙な話だが……」

 ……そこへ、そっと、海斗がやってきて、ぼそぼそ、と、言った。

「樺島の職場に居たらどうだろう。あそこは天使だらけだし……悪魔も、普通に、居るぞ」

 

 

 

 ……ということで。

「おおー!キューティーラブリーエンジェル建設ぅー!ああー!キューティーラブリーエンジェル建設ぅー!ああぁぁぁああぁああぁああああ!」

「煩いぞ樺島ぁ!黙って歩け!」

 バカ達は、ヒバナのブルドーザーの先導によって、元気に歩き始めた!

 当然、燕は一緒である!更に、バカ達の後ろには、『折角だからの……』『主催者が連れていかれちゃいましたし……』『あいつが心配だ』『面白そうだ!ソフトクリームとやらにも興味がある!死神もそう言っておるぞ!』などと言いながら、女帝も女教皇も皇帝も、そして骸骨の騎士も、一緒についてくる!

 ……そう!

 目指しているのは、デスゲーム会場からの脱出であり……同時に!

「楽しみだなあー!ミニストップでソフトクリーム!」

 ……ミニストップである!

 

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