頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>   作:もちもち物質@布団

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ラストフェイズ:ご近所の野原

「……え?」

「とてつもなく高性能な、義足、ということにしよう。……かにたまを連れて行けば、『これだけの技術があるなら、生身の脚と区別のつかない義足も作れるかもしれない』と思ってもらえる……かもしれない」

 海斗がそう提案すると、ヤエはぱちぱちと瞬きをし、五右衛門は『……成程ねえ』と手を打った。

「そう、よねえ。確かに、あの蟹さん……えーと、かにたまちゃん?どう見ても、すごいテクノロジーの塊だもの。説得力はある、わよね」

 五右衛門の声が聞こえたらしいかにたまは、さっきまで天使と一緒にジャンガリアンハム悪魔をつついて遊んでいたのだが、くるっ、と振り向いて、かにかに、と鋏をちょきちょきやってご挨拶してきた。……実に友好で気のいい、技術の塊かにかにボディ。……それがかにたまなのである!

「そ、その、少なくとも、言い訳はできる、と思う。後は……ええと、信用を得られそうな人を連れて行って、説明役にすれば……それこそ、天城さんとか、或いは口が上手いビーナスとか……いや、もうタヌキの方がいいか……?」

 そうして海斗がぶつぶつと、『誰を連れて行ったら普通の人の信用を普通に得られるだろうか……』と呟き始めたところで。

「あ、あの、海斗さんがいい」

 ……ヤエが、海斗のシャツの袖を、くい、と引っ張っていた。

 これに、海斗はきょとん、としていたが……。

「海斗さん、来て……くれますか?」

「……僕に務まるかは分からないが……分かった。勿論だ。最善を尽くすことを約束しよう」

 ヤエに見つめられたら、海斗も嫌とは言えない。それに、海斗は約束している。ヤエがこれから、よりよい人生を歩めるように……海斗はヤエのために協力する所存なのだ!

「あと……その、五右衛門さん、も、嫌じゃなかったら、一緒に……」

 更に、ヤエは五右衛門のシャツの裾も、むに、とつまんで引っ張る。

「えっ、アタシも!?……その、アタシはいいけど、いいの?ヤエちゃん……」

「……私、多分、親にキレると思うから……」

「えっ……えええっ!?ヤエちゃんが!?キレるの!?ご両親に!?」

「はい。だから、もう、全部まとめてキレようと思って……」

 五右衛門も海斗も、ぽかん、としていた。だが……ヤエは、むにゅ、と、ちょっともじもじした笑みを浮かべた。

「……一回、キレてみようと、思って。やったこと、なかったから」

「……そう」

 五右衛門は、ヤエを見つめて、ちょっと笑った。

 ……バカは、ヤエの両親がどういう人なのか、知らない。ヤエがなんとなく鬱屈としているのは分かるが、両親とはそこまで不仲、という訳でもないようだし……バカにはあんまり、想像がつかない。

 だが、五右衛門はヤエの両親と直接会ったことがある訳だし……何か、理解できるところがある、のだろう。きっと。

「分かったわ!じゃ、アタシ、多分、ご両親に怒られるから!そこでヤエちゃんがキレるのね!?じゃあアタシは程よいところで止めるから!そしたら、海斗君に脚の説明、引き継ぐわ!そういうことよね!?」

「はい。あの、ほんと、申し訳ないんですけど……」

「いいのいいの!そういう事ならアタシ、いっくらでも協力するわ!ついでにその時に賠償金、現ナマで全部お支払いしちゃいましょ!それでお互い、綺麗サッパリ、スッキリした関係になりましょうね!それでその後、お茶しましょ!ね!アタシ、いいお店知ってるのよぉ!」

 ……ということで。

 ヤエの脚についても、諸々が決まった。海斗は『緊張する……』と今からそわそわしていたし、五右衛門も、ちょっぴり無理をしている様子ではあったが。

 だが……ヤエが、嬉しそうににこにこしているので!それだけで、男2人の緊張だの気まずさだの、そんなものは吹き飛ぶのである!

 

 

 

「ところで、なんだって俺は戦車に乗せられてんだ、おい」

「あ、四郎のおっさん、いいなー!いいなー!」

 一方、四郎は何故か、戦車に乗せられていた。

 というより、四郎はデスゲーム会場を脱出して、先に出ていた戦車と合流してからというものの、ずっと、戦車の上に乗っけられているのである。

 戦車は、それはそれは嬉しそうに四郎を乗っけているので、バカとしてはちょっぴりやきもちを焼きそうである。……バカだって、やきもちを焼くことはあるのだ!

「あー……なんだろうなあ、こいつは……。ソフトクリームがよっぽど楽しみなのか?」

 まあ……戦車の意図するところは分からないが、ひとまず、戦車がご機嫌であることは間違いない。

 そして、戦車は『ソフトクリーム!』とにこにこしているので、多分、ソフトクリームが楽しみであることも間違いないのだ。

「あっ!そうだった!ミニストップ!皆ー!ミニストップ行こうぜ!ソフトクリーム!ソフトクリーム食べようぜー!」

 ということで……何はともあれ。バカ達は皆で、ミニストップへ向かうことにした!

 

 ……だが!

「ん?おいおい、この戦車、飛ぶのかよ……」

 突如として、戦車がふんわりと空へ浮かび上がり、四郎を乗っけたまま、飛んでいってしまった!

「わ、わあ……戦車ちゃんが飛んでる……」

「飛んでるね……」

 戦車はるんるんと空を飛んでいき、四郎を連れて行ってしまう。だが、慌てる必要はないだろう。何せ……バカには、戦車の行先が分かっている!

「あっ、親方の羽使ったんだな!」

「……つまり、樺島の職場に移動した、ということか。一体、何のために……?」

 ……どうやら、あの戦車は親方に羽をおねだりしていたようである。親方の羽は、ふりふりやるとキューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部に飛んでいける素敵なアイテムなのだが……。

「うーん……まあいいやあ!じゃ、皆一旦、うち行こうぜ!そしたらミニストップな!」

 まあ、何はともあれ、最終的な目的地は変わらない。バカは元気に、皆を抱えてぱたぱた飛び始めた!

 

 

 

 さて。

「ここが樺島さんの職場なんですね!なんか想像してたのと大分違いました!」

 そうして、バカが皆を抱えて飛んだり、『流石に定員オーバーじゃないかな……』という人についてはかにたまに乗ったりして、全員で帰社した。

 到着したのは、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部中央広場である。正面には2階建ての事務所があり、そっちには社員寮があり、こっちには社食があり、向こうには倉庫がいっぱいあり……といった場所だ。

 そこでタヌキは、『うわー』と辺りを見回して……。

「なんか!想像以上に!ムキムキでした!」

 慄いた!それはそうである!見渡す限りのムキムキがここにはあるのだから!

「うん!先輩達、俺よりつええもん!当然、ムキムキいっぱいいるぞ!」

 バカは、先輩を褒められたような気分になっており、大変ご機嫌である。

 ……実のところ、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の先輩天使達は、バカの言う『ムキムキ』ばかりでもない。頭脳で戦うタイプの天使も、この職場にはちゃんと居る。そういう天使は、ムキムキという程ではないことが多く、精々『むき!』ぐらいである。

「しかし、四郎さんはどこへ……?」

「な。どこだろうなあ……四郎の娘さん、会わせたいんだけどなあ……」

 バカは、社食の方をちらちら見ながらそわそわしている。恐らく、四郎の娘であろう双子の乙女は今日も社食でバイトをしているはずだが……肝心の四郎が、戦車に乗っけられてどこかへ行ってしまっているのだからどうしようもない!

 

 ……と、そこへぱからぱからとやってきたのは、骸骨の騎士とその黒馬である。

 両者は何やら、バカ達にはよく分からない方法でお喋りし……そして、ちら、ちら、とバカ達の方を見ながら、ぱか、ぱか、と進んでいく。

「ん?そっちか?ってことは、あの戦車、他の野生の戦車のところに四郎のおっさんを連れてったのかなあ……」

 バカは『そういうことなら納得だなあ』と思いつつ、てくてく、と骸骨の騎士についていく。バカがそっちに行っちゃうので、全員、なんとなく、ぞろぞろとついてきちゃうのだが……。

「野生の戦車……あの、樺島君。俺、未だによく分からないんだけど、戦車が野生……って、どういうことかな……」

「ん?戦車がいっぱいいる野原があるんだ!」

「うん、ごめん。駄目だ。俺には難しすぎる世界だ」

 デュオは途中で理解を放棄してしまったらしい。バカは、『デュオが難しいって思うこと、あるんだなあ……』となんとなく感慨深い気分になりつつ、のんびりと進んでいき……。

 

「ウワァアアアア!本当に野生の戦車ァアアアア!イヤァアアアアア!」

「タヌキさん、落ち着いて」

 ……タヌキが『キョワアアアアアアア!』と悲鳴とも奇声ともつかない声を上げる中、バカ達の目の前に広がっていたのは……キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の裏手に広がる、広大な野原!

 そしてそこに生息している!

 大量の!野生の!戦車やクレーン車やブルドーザー達!

 ……そう!人間にはちょっと珍しい光景だったのである!

 

 

 

「おお、こんなにも野生の重機が集まるとはな!こいつは相撲の取り甲斐がありそうではないか!」

「うん!この辺り、いっぱい野生の重機来るんだあ!夜になると集会してるぞ!」

「そんな、猫じゃあるまいし、集会って……あーもう駄目、アタシもう考えるの止めるわ……」

 テュポーンの化身は『相撲取り放題!』とにこにこだし、バカも『重機の集会、俺も混ざったことあるけど楽しいぞ!』とにこにこである。が、まあ、人間達には難しすぎる世界の話であるので、大体皆、考えるのを止めた。

「まあ……その、戦車や重機はさておき、綺麗なところだな。以前、ピクニックに来た時は夏だったが……冬の景色もいいものだ」

 重機や戦車について考えるのを止めたならば、目をやる場所は決まっている。風景だ。この野原の向こうには里山とでも言うべき風景が広がっており、田んぼが大量にある。あの田んぼは豊穣神のお力によって、大体毎日のように米が実り、毎日のように収穫作業が繰り広げられている田んぼである。

 よって、今も田んぼには黄金色が揺れている。季節外れもいいところだが、これがここでの常識なのだ!

 

「……四郎さんはどこだ?」

「えーと……あっ!あそこに居る!」

 さて。問題の、戦車に攫われてしまった四郎であるが……バカが異様によろしい視力で確認したところ、1㎞程先で、野原に佇む四郎の姿が確認できた。なのでバカはそこまで『どどどどどどど』と走って向かう。飛んでもいいのだが、なんとなく走りたい気分なのだ!

「四郎ー!」

「ん?ああ、樺島か……いやお前はええな」

 さて。そうしてバカが『どどどどどどど』と走っていくと、四郎は『うわあ』という顔をしつつも、あっけらかん、と出迎えてくれた。……だが。

「あれ?戦車が居ない……?」

 バカは、きょろきょろ、と辺りを見回してみるのだが、ここへ四郎を連れてきたはずの戦車が居ないのだ。

 代わりに、例の戦車と似たタイプの戦車が2台ほど、四郎の周りをくるくる回っている。『ここから動かないでね!』とでもいうかのような2台の様子に、バカも四郎も、首を傾げるしかない。

「あー……どうもな、この2台は、俺をここに連れてきた戦車のダチらしいんだけどよ。まー、こいつらが何言ってんだかは分かんねえし、つっても、俺が動こうとすると威嚇してくるしで、もうどうしようもねえんだわ」

「そっかぁ。じゃあ俺もここに居るよぉ……」

「お、おう……」

 バカは『四郎が退屈するとかわいそうだ』と、四郎の傍に体育座りした。バカはバカだが、話し相手くらいにはなれることだろう。

 ……無論、このまま四郎が動けないままだと、バカの『皆でミニストップに行く』が達成できなくなってしまうので、それは困ってしまうのだが……。

 

 

 

 ……と、そのまま、バカと四郎が待っていると。

「ん?戦車か?」

「うん……うん!戦車だぁ!戻ってきたんだなあ!」

 向こうの方から、からからと頑張って戦車が走ってくるではないか!バカはこれを大いに喜び……同時に、首を傾げる。

「……ん?誰か、上に乗っかってるぞ」

「は?誘拐か?」

 ……誘拐かどうかは分からないが、何はともあれ、戦車の上には誰かがいる。バカはそれを、目を凝らして見つめて……理解して、叫んだ。

 

「ご近所の豊穣の神様ぁあああああああああ!」

「ご近所の豊穣の神様だぁああああ!?」

 ……なんと!あの戦車……割とやんごとないお人を誘拐してきたようである!

 

 

 

 ということで。

 バカも四郎も、『どうしようどうしよう』という気分で戦車の到着を待った。だが、戦車はとにかく元気よく、からからと走ってこちらへ向かってきており……そして。

「……ん!?」

 いい加減、戦車とその上の豊穣神がはっきりと見える距離になって……四郎が、素っ頓狂な声を上げた。

「四郎のおっさん、どうしたんだ!?」

 更に、四郎は一歩、二歩、と戦車が来る方へと向かって進んでいき……そして。

「あなたーっ!」

 豊穣神が、そんなことを言いながら、戦車からダイブしたのだった!

 

「う……嘘じゃないよなあ!?なあ!」

「ああ……夢みたいだけど、夢じゃないのね!?」

 四郎は豊穣神をキャッチして……そのまま、豊穣神を強く抱きしめてしまった!豊穣神もまた、四郎にぎゅっと抱き着いている!

 バカは、混乱した!戦車は、嬉しそうにくるくる回っている!

 

 

 

 ……さて。

「あ、こちら、ご近所の豊穣の神様……あの、うちの社食に、お米卸してくれてる……それで、こっちは四郎のおっさん……あの、俺とデスゲームで一緒になってぇ……」

 バカがしどろもどろになりながら、『で、でも、俺が紹介しなきゃ……俺がやらなきゃ……』と2人を互いに紹介すると、豊穣神も四郎も、きょとん、として、それから……笑い出した!

「いや、悪いな樺島!実は、紹介されるまでもなく、知ってんだ!」

 四郎は涙の浮かぶ顔で笑うと……豊穣神を抱き上げて、言った。

「改めて紹介するが……俺の妻だ!」

「えええええええええええ!?なんでぇええええええ!?」

 バカが頭の上に『?』マークを大量に浮かべている一方、四郎も、四郎の奥さんであるらしい豊穣神も、幸せそうに笑っていた!戦車はやっぱり嬉しそうに、くるくる回っていた!

 ……つまり、どうやら戦車はここに住んでいた戦車で、ご近所の豊穣神と知り合いだったらしい。そこで、豊穣神経由で四郎のこともきっと、色々と聞いていて……それで、今回、四郎を豊穣神のところへ連れて行くことにしたようなのだ!

 そして、ご近所の豊穣神が四郎の奥さんだったことについては……結局のところ、『世間って、狭い』ということなのであろう。バカはまた1つ、賢くなった!

 

 

 

 そうしてバカと四郎と豊穣神、そして戦車とで皆のところへ戻ると……案の定、皆を驚かせてしまった。

「お、おい、樺島。こちらは……その、ご近所の豊穣神……!?」

「ご近所の豊穣神!?エッ!?ご近所に豊穣神が!?確かにここ、天使さんの居所ですもんね!?豊穣神くらい居てもおかしくな……ああーん!私、もう何もわかんない!」

 慄く海斗に、慄くタヌキに。あの七香ですら『豊穣神……!?』とびっくりしている中、四郎と豊穣神のご夫妻はにこにこと幸せそうにしており……そして。

「ところで樺島君。双子の乙女、連れてきておいたけど……これでよかったのかな」

 陽とたまが、社食から双子の乙女を連れてきてくれていたため……そこで、四郎と豊穣神、そして双子の乙女の4者は顔を合わせることになり……。

 

「よがっだなあ、よがっだなあ……」

「樺島。鼻水はなんとかしてくれ。ほら、ティッシュやるから……」

 ……そうして抱き合って再会を喜ぶ一家の姿に、バカは涙を禁じ得ない。だって、だって、感動の再会なのだ!バカはこういうのに弱いのだ!

「しっかしよお……双子の乙女の母ちゃんが、ご近所の豊穣神だったわけだろ?互いに気づかなかったのかよ」

「まあ、豊穣神が田んぼから出てくること、無いらしいから」

「あ、そういうものなんだ……」

 ……何はともあれ、これで面子は揃った。

 となれば、後は1つしかない。

 

「じゃあ皆ー!ミニストップ行こうぜー!」

 バカは元気に皆を先導して歩いていく!

 さあ……ソフトクリームだ!

 

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