頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>   作:もちもち物質@布団

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おわり:ソフトクリームだ!

 そうしてバカ達は、キューティーラブリーエンジェル建設の最寄のミニストップへやってきた。

「えへへへ、今のソフトクリームは黒糖きなこ餅ソフトかぁ……」

「折角だから僕もそれにするかな……」

 ……バカと海斗は慣れたものなので、早速、ソフトクリームを選んで買ってきた。ついてきた陽とたまも『じゃあ黒糖きなこ餅……』とやり始めている。一方、天城は『じゃあ黒糖きなこ餅……』とやろうとしたところ、かにたまに止められてしまい、北海道ミルクソフトになった。……ご老体に餅は、危険なのだそうだ!

「ソフトクリーム!ソフトクリームなんて久しぶりで!とっても!とってもおいしいですね!」

「……そうね。私も久しぶりだわ、ソフトクリームだなんて……」

 タヌキは『おいしい!おいしい!』とにっこにこでソフトクリームを食べている。七香は、ちょっと懐かしいような、寂しいような、そんな目でソフトクリームを見つめながら、ゆっくり食べている。……それぞれソフトクリームに対する思いが微妙に違いそうだが、まあ、『久しぶりで、美味しい』というところは一緒のようである。

「あー……でも、いいのかな。四郎さんの奢り、っていうのは……」

 そう言いつつちゃっかり北海道ミルクソフトを食べているデュオは、ちら、と四郎を見て……『まあ、いいんだろうなあ……』という顔になった。

 というのも……四郎は今、世界一幸せそうな顔なのだ!

 ……四郎の周りでは、豊穣神と双子の乙女、そして戦車がにこにこしている。……双子の乙女も、始めこそ『パパ!?』『なんでママも!?』『あと戦車……!?』『戦車……!?』と驚いていたが、今やすっかり、にこにこソフトクリームを食べつつ、家族と戦車の時間を過ごしている。

 と、まあ、そういうことで、四郎は非常にご機嫌というか、『人生で最高の幸福!』とでも言わんばかりの状態であるため……『よし!ソフトクリームは俺の奢りだ!』と、気前よくやってくれちゃっているのであった!

「ホントは、アタシが出した方がいいと思うんだけど……うーん、アタシが出す時は、まだ先に取っときましょ。知り合いがやってる美味しいイタリアンのお店あるから、今度、そこで改めて打ち上げやりましょうね!」

「わ、楽しみ……ふふ」

 五右衛門は、『アタシが今回一番、お金貰っちゃってるのに……』と、四郎の奢りにちょっと申し訳なさそうだったのだが、まあ、『この先』がある方が楽しいし、よろしい。ヤエもにこにこ嬉しそうにソフトクリームを食べつつ、時々、意味も無く左脚を動かしてはまた、ふにゅ、と笑っている。大変よろしい!

「おいしい……おいしいですぅ……ソフトクリームって、こんなにおいしかったんですね……」

 一方、よよよ、と泣きながらソフトクリームを食べているのは女教皇である。

 ……それを横目に、女帝は『そんなに泣くほどか……?』と何とも言えない顔をしているが、骸骨の騎士は女教皇の隣で、うんうん、と頷いている。女教皇は今回、沢山怖い目に遭ったのでこれも仕方がないのだ!

 尚、骸骨の騎士はちゃっかり、黒糖きなこ餅ソフトと北海道ミルクソフトをそれぞれ右手と左手に持って、両方食べている!くいしんぼである!

「うーむ、しかし、先程の『親方』なる御仁……中々の強者と見た。一度、手合わせしてみたいものだ」

「うん!親方はすごく強いぞ!最強の生物ともいい線行くと思う!多分、楽しいぞ!俺、全然勝てねえけど!でも、楽しいもん!」

 テュポーンの分身は、ソフトクリームを食べつつ『あの強そうな天使、楽しそう……』とにっこにこである。バカとしても、最強のテュポーンの分身と、バカが知る限り最も強い親方との闘いには大いに興味がある。目を輝かせて、バカは『見たい!見たい!』と大喜びだ!

「ほほう……ならば、しばらく貴社に滞在させてもらうとするか……。おい皇帝。お前も残るか?」

「……あやつが心配なのでな、残る」

 一方、皇帝は渋い顔をしつつ、ソフトクリームをお行儀よくスプーンで食べつつ……ちら、ちら、と、ジャンガリアンハム悪魔の方を見ている。

 ……ジャンガリアンハム悪魔は、燕の胸ポケットに居る。相変わらず、ジャンガリアンハムスターサイズである。そんなこともあり、皇帝からしてみると、『心配……』ということなのだろう。皇帝は仲間思いの、いい人なのである。ちょっと偉そうではあるが……。

 

 ……そして、そんな心配を浴びているジャンガリアンハム悪魔はというと。

「我、君のことやっぱり好き……」

 なんと!真理奈から分け与えられたスプーン……ソフトクリームを一口分掬い取ったそれを両手に抱えて、うっとりと真理奈を見つめていた!

「そう?えへへ、かわいいなー、こいつぅ。どう?おいしい?」

「おいし……ふふ、おいしいな、これ……」

 ジャンガリアンハム悪魔は、ジャンガリアンハムスターサイズである。よって、人間にとっては小ぶりなスプーンも、両手で抱えるサイズ!人間にとっての一口分のソフトクリームも、お腹いっぱい食べられる分量!なんだか幸せそうに、『おいしい……』と、ソフトクリームをちびちび食べているのである!

「……シャツに零すなよ」

 そんなジャンガリアンハム悪魔を見下ろして、燕はものすごーく、嫌そうな顔をしている!

 自分の胸ポケットから顔を出している奴が飲食しているのはなんとなく嫌なのだろうし、そいつが食べているのが真理奈から直々に分け与えられたソフトクリームだ、というのはもっともっと嫌なのであろう!

「ふ、ふん!零してやるものか!こんなにおいしいのだぞ!シャツなんかにくれてやる分は無い!」

「あ、そういう……それでいいのか、お前……」

 が、そんな燕も、ジャンガリアンハム悪魔が一生懸命ソフトクリームを死守しようとしているのを見て、一周回って『嫌』よりも『なんだこいつ変なやつ……』という気持ちの方が勝ってきてしまったらしい。何とも言えない顔でジャンガリアンハム悪魔を見下ろしつつ……。

「えへへ、かわいいなー、かわいいなー。つっつくとさ、むにっ、として、なんともいい手触りだよねえ、この子」

「……真理奈。一応、そいつ、悪魔」

 ……そのジャンガリアンハム悪魔を、真理奈が構い倒しているのでやっぱりちょっと複雑そうな燕なのであった!

「悪魔……えへへ、こっちも悪魔悪魔」

 しかし、その真理奈が燕のこともつつき始めたので、燕はもう、『どうにでもしてくれ』という顔になってきてしまった!

 ……上級の悪魔といえども、ただの人間の女の子に振り回されてしまうのは、最早仕方のないことなのである。

 そしてバカは、そんな2人の様子を見ながら……『俺も燕のことつっつこうかなあ……』と、余計なことを考えていた!尤も、それは声に出ていたので『やめておけ……』と海斗に止められたが!

 

 

 

 そうして、バカと海斗はなんとなく並んだまま、燕と真理奈とジャンガリアンハム悪魔を眺めていたのだが。

「なあ、樺島」

 ふと、海斗が問いかけてきた。

「その……デスゲーム中、燕が、言っていたことについて、だが……」

「ん?」

 バカが頭の上に『?』マークを浮かべつつ海斗に首を傾げている間、海斗はちょっと、迷っていた。『やっぱり言うのは止めておこうか』というかのように。……だが。

「……お前は、僕を連れて行くのは、不安か?」

 結局、海斗はそう、バカに尋ねてきたのであった。

 

 バカはバカだが、覚えている。『もしやり直しの異能が無かったら、海斗をデスゲームに連れて行こうと思ったか』というやつだ。

 ……それについて、海斗は、『樺島がやり直せないとしても、付いていきたい』と答えていた。

 そしてバカは……まだ、答えを出せていない。

 

 

 

「えっと……そのぉ……」

 バカは、『どう答えようかなあ』と考えて、悩む。バカだって悩むことはあるのだ。特に、大事な相棒のことであるならば、尚更。

「……返答を迷っている、ということは、まあ、多かれ少なかれ不安がある、ということだな?」

「あ、うん……」

 だが、バカな考え休むに似たり、ということなのかもしれない。あっさりと海斗に言い当てられて、バカはしょんぼりしてしまう。さながら、溶けかけのソフトクリームの先っぽのように……。

「……まあ、気持ちは分かる。お前から見たらそうだろうな、という自覚はあるさ」

 一方の海斗は、『やれやれ』と言いつつ、どこかさっぱりした顔でソフトクリームをスプーンで掬って、口に運んだ。概ねスプーンは最初に食べちゃうバカとは大違いである。

「そうだな……まあ、僕のフィジカルは、同年代の人間で考えても、平均より下だろう。多少鍛えたところで、お前に追いつけるとも思えないな」

 海斗はそんなことを言って、ふ、と笑った。

「それに加えて、頭脳についても打ち止めだろうと思う。知識を多少詰め込むことはできても、そこまでだろうな。僕は、燕や陽のようにはなれない。その点でも、頼りないだろうと思う。……情けないことだが」

「そ、そんなことないんだ。そんなんじゃなくって……」

 バカは、何か言おうと考えた。

 海斗が何かに劣ると思ったことは無い。そもそも、海斗を誰かと比べたことなど、無い。

 海斗は頭が良くて、気が良くて、話が上手くて、感覚が繊細で……バカにとっては、それだけなのだ。

 だが同時に、海斗を殺そうとする奴が居たら、海斗は簡単に死んでしまうのだということも、知っている。バカが守り切れないかもしれないことも、分かっている。だから、バカは何を言ったらいいのか、分からない。

 ……そう。バカは、分からなかった。だが。

「そうだな……ヒバナじゃあないが、僕も何か、資格試験の勉強でもするかな」

「へ?」

 海斗はそんなことを言って……にや、と笑うのだ。

「或いは、僕も燕よろしく、悪魔にでもなってみるか……いや、まあ、流石にこれは冗談だが」

「えっ?ええっ……?」

 バカは、海斗を見つめて、ぱち、と目を瞬かせつつ混乱していたが……海斗はそんなバカを見て、ちょっと声を上げて笑うと、ばし、とバカの背を叩いた。

「まあ、そういう訳だ。お前がちょっとでも不安じゃなくなるように、やってみるよ。その……『相棒』の危機には、立ち会いたいからな」

 

 海斗の言葉を聞いて、『相棒』と呼ばれたことをじわじわと噛みしめて……バカの胸に、ちらり、と、希望と野望の火が灯る。

「……俺も」

 そうだ。海斗が、バカの隣に立つために何か頑張るのだ、というのであれば。

 海斗が、そう望んでくれるのであれば……バカだって、同じことなのである!

「俺も……海斗連れてっても不安にならなくていいぐらい……強くなる!世界最強目指す!」

「そうか。フィジカルか」

「うん!ふぃじかる!ムキムキになる!俺、もっとムキムキになるからな!世界一のムキムキになる!」

「ムキムキ……うん、まあ、何も言うまい」

 海斗は『これ以上ムキムキになったら人型を保てなくなるのでは……?』などとぼやいていたが……バカは、にまっ、と笑って、海斗の手を握った。

「じゃ、そういうことだから!頑張ろうな!相棒!」

 すると海斗もバカの手を握り返して、笑った。

「ああ。よろしく、相棒!」

 

 ……そういうわけで。

 もし、『次』がまた、あったとしても。その時はきっと、バカと海斗は2人揃って挑むことになるのだろう。

 だが、その時は……きっと、今回感じたような不安は、無くなっているはずだ。

 だって、バカは鍛えるし、海斗も何やら、バカにはよく分からない部分を鍛えるらしいので。

 つまり……2人は最強なのだ!最強になるのだ!最強であれば、怖がるものなど何も無いのである!バカは満面の笑みで、『がんばるぞー!』と、天にソフトクリームを掲げるのであった!

 

 

 

 ところで。

 全員、ソフトクリームを食べ終わり、『じゃあ、ぼちぼち解散するか』となったところで……。

「あー、明日からも仕事だぁ……」

 バカは、ちょっとだけ『ほふ』とため息を吐いた。

 そう。明日は……平日!まだ、お休みはできないのだ!

「その、有休をとるわけにはいかないのか?流石に、お前も今回は働き通しだったわけだし、休んだ方が……」

「あ、ううん。駄目なんだぁ。明日は業務、詰まってるからぁ……」

「そ、そんなに大事な業務が……?」

 海斗は心配してくれたが、バカは休めない。休むわけにはいかないのである。同時に、『休みたくない!休んでる場合じゃねえ!』とも思っている。

 ……何せ。

「ん?デスゲーム会場の解体の続き、やるんだ!」

 ……まだ、解体は終わらないからである!

 

「……は?」

「え?だって、まだ、地上部ともうちょっとしか、解体できてねえしぃ……地下の部分も、キッチリ解体しとかないと、ほら、事故で迷子になった人が落っこちちゃったりしたら、大変だろ……?だから、ちゃんと解体して、埋め戻しておかねえと……」

 バカが『ああして、こうして……』と色々、勉強したてほやほやの諸々を説明すると、海斗は次第に頭の痛そうな顔になり……そして、向こうの方では燕の胸ポケットで、ジャンガリアンハム悪魔が『ひぃん!』とまた泣き出した!

「やっぱりさあ、号令かけて解散するまでが仕事だしぃ……ちゃんと更地にするまでがデスゲーム解体だしぃ……」

 悪魔が人間を陥れ、絶望させるために作ったデスゲーム会場は……明日以降の解体作業を経て、キッチリ更地になるのだ。そして、更地になった後は、適当に野原にするか、山にするか……畑にしてもいいのかもしれない。バカは、『おいしい野菜とか育ててもいいよなあ……』と、にっこりした!

「そ、そうか……うん。そうだな。よし。明日も仕事、頑張れよ……」

「うん!頑張る!それで、週末はごろごろしようぜ!」

 ……こうして、悪魔のデスゲームは明日以降も、順調に、安全に、解体されていく。

 いつの日か、この世から悪魔のデスゲームが完全に消え去る日も、そう遠くはないのかもしれない。

 そんな日を夢見て……バカは元気に社歌を歌うのであった!

 おお、キューティーラブリーエンジェル建設!ああ、キューティーラブリーエンジェル建設!

 




完結しました。
また、明日1本おまけが増えます。よしなに。
また、本日より『出発信仰!』を連載開始しております。よしなに。
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