頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>   作:もちもち物質@布団

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おまけ:笑う門にはバカ来たる
終わった後:解体現場


「ではご安全に!」

「ご健康にィーッ!」

 ……野太い号令と共に、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の仕事が始まった。

 それは……この、やたらとでっかいデスゲーム会場の解体業務である!

 ……だが解体は、大変なのだ!

 

「えーと、樺島ぁ。すぐ解体できなさそうなのは、何番だったっけか?」

「えっと、えっと、『0』は駄目だって海斗が言ってた。『1』と『2』は大丈夫でぇ……『3』はえっちな部屋……」

「えっちな部屋!?」

「あ、うん……あの、俺、そんなによく知らないんだよぉ……海斗が、教えてくれなかったから……」

 ……まず、最初に行うのは、解体計画の確認だ。

 今回は、バカの他に四郎やデュオ、海斗、それに燕も協力してくれたので、ほぼ正確な『デスゲーム会場見取り図』を作成することができた。

 しかし、それのみならず……『どの部屋にどういう仕掛けがあるのか』を考えて、それに応じた解体が必要になるのだ。

「幻影系の部屋は先に幻影の処理から始めねえとなあ……」

 まず、部屋の大きさがとんでもなかった部屋については、それらのほとんどが、そういう幻影を投影してあった部屋である。なので、まずはその幻影を解体するところから始めなければならない。

 これをうっかり怠って、幻影が漏れてしまうと……始末書ものである!

「特に危ないのは、『17』だったよな!樺島!」

「そうだったな樺島!?何でも願い事がそのまま出てきちゃう部屋なんだろ!?怖いな!」

「よし!じゃあ『17』から解体すっかぁ!解体異能班、出動ーッ!」

 ……そうして、幻影を解体できる異能を持った先輩天使達……『幻影に限らず何でも食べちゃえる異能』や『実体のないものを固めてキュッとできる異能』、『嘘を鼻息で吹き飛ばす異能』などを持った天使達による『異能解体班』が、どやどやと『17』の部屋へ向かっていった。

 ……尚、彼らはエレベーターなど、使わない。

 実は、既に全てのエレベーターは解体済みである。なので、大広間にぽっかりと開けた穴から飛び込んでいって、見取り図を見ながら横穴に入り……そして、目的の部屋に辿り浮く、という方法を取って、全員で解体作業を行っている!

 これぞ、天使達にしかできない解体方法であろう!

 

 

 

 さて。

 異能の解体はそういう異能を持った先輩達に任せるしかない。

 一方、先に解体できる部屋もあるので、バカはそっちに回されることになる。

「えーっと、俺の担当は、『3』……」

「いや、樺島!お前は『えっちな部屋』はやめておけ!」

「そうだぞ樺島!俺達が代わりに行ってやるから、お前は『4』の部屋の解体してこい!」

「え?いいの……?先輩達、ありがとうございます!」

 ……先輩天使達は、『なぁに、いいってことよ!』『かわいい後輩に、えっちな部屋なんぞ任せてたら先輩の名が泣くぜ!』『えっちな部屋!うおおおおお!えっちな部屋!』……と笑顔で飛んでいった。なのでバカは、『じゃあ俺は4番の部屋……』と、皇帝が居た部屋目掛けて飛んでいくのであった。

 ……おお!キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部には、素敵な先輩達がいっぱいだ!

 

 

 

 そうしてバカが、『4』の部屋に自慢のタックルをお見舞いしまくっていると、やがて、『17番、異能の解体完了!』『0番も完了しました!』といった連絡が入るようになる。するとまた、先輩達がどやどやと動いて、次々に解体が進んでいくのだ。

 ……また、頑張っているのは、先輩だけではない。

「おい樺島ぁ。後はこっちでやるからテメエは出てけ」

「あっ!ヒバナぁ!」

 ……そう!社員の中で、バカよりも新入りのヒバナもまた、頑張って解体作業に従事している!

 すっかり作業着と安全靴、それに『安全第一』のヘルメットとファイヤーブルドーザーが似合う男になってしまったヒバナは、既に3つほど資格試験に合格しており、異能を使っての解体作業が可能となったのだ。

 そして、ヒバナの異能を使えば、炎のブルドーザーや炎のショベルカーを生み出すことができるため……引火の恐れが無さそうなところでは、ヒバナが大活躍なのである!

「さっきお前、『16』に呼ばれてたぞ」

「えっ?」

 更に、ヒバナはそんなことをバカに教えてくれた。バカは、『俺、呼ばれるようなことあったかなあ……?』と首を傾げていたが、ヒバナが折角教えてくれたのだ。解体跡地の片付けはファイヤーブルドーザーにお任せするとして、バカは早速、『16』へ向かうのだった。

 

 

 

「……わあー!」

 そうしてバカは、『16』の有様を見て……びっくりした!

「おお、来たか、樺島!」

「こいつどうする!?お前の知り合いだったら困ると思って、解体ストップしといたぞ!」

 先輩天使達にやいのやいの言われつつ……バカは改めて、それを見上げて……叫ぶ。

「塔が!生きて!る!」

 ……そこには、『むにゃ……すぴ……』と気持ちよさそうにお昼寝する塔の姿があったのだった!大変だ!バカは、『そっかぁ……この塔、生きてるタイプだったのかぁ……気づかなかった……』と、ちょっぴりしょんぼりした。気づいてやれなかったのは、バカとしては実に不覚なのである!

「で、どうすんだ樺島ぁ」

「あの、俺、この塔とはまだあんま知り合いじゃねえけど……でも、生きてるタイプの塔だったら、解体しちゃ駄目だと思う!」

「だよなぁ……。でも、こんだけ気持ちよさそうにお昼寝してると、起こすのもかわいそうでよぉ……」

「じゃ、ここは後回しにして、起きたらすぐ地上に誘導すっかぁ……。自力で動けねえようなら、クレーンで吊るか……いや、これくらいならクレーン無くてもいけるか……」

 塔がむにゃむにゃとお昼寝している間にも、天使達の相談は続く。そんなことも露知らず、塔は気持ちよくお昼寝続行である。なんとも暢気な塔!

 

 そうして、バカは塔が起きるのをのんびり待つ係になった。『多分、この塔は樺島のこと覚えてるだろうし、そしたら樺島が居た方が話が通りやすいだろ』と、先輩の談であるが……実際のところは、昨日デスゲーム解体で頑張りに頑張ったバカに休憩時間をプレゼントしよう、という先輩方の粋な計らいである!

 バカは先輩方に大いに感謝しつつ、すぴ、すぴ、とやっている塔にもたれて、バカ自身ものんびりお昼寝することにしたのだった。

 ああ、なんとも平和なバカ!

 

 

 

 小一時間後。バカがすっかりお昼寝してしまった後……バカは、なんだかいい匂いがした気がして、目を覚ました。

「ん?なんか、いいにおい……」

 ぱっちり目を覚ました寝起きの良いバカは、きょろきょろ、と辺りを見回す。……すると、塔の遥か上空……つまるところ、地上に近いところから、いい匂いがしていることが分かった。

 更に、そのいい匂いにつられてか、塔もむにゃむにゃと目を覚まし、そして、バカの姿を見つけて、『あれ?またこの人戻ってきたの?』という顔をした。返す返すも、暢気な塔!

 ……ということで、バカは早速、塔に『デスゲームは終わったぞ!』『今は解体中なんだけど、お前まで解体しちゃうとダメだと思って、先輩が待ったかけてくれた!』と説明した。塔は、ふんふん、と頷きながら聞いていた。

「で……お前も一緒に来るか?だったら、うちの会社の敷地内、空き地いっぱいあるから、そこに移動してもいいって親方が言ってたぞ!」

 そうしてバカがそう、塔に尋ねると……塔は、ふにゅ、と首を傾げてから、ふんふん、と頷いた。

 どうやら、この塔、お引越しに賛成してくれるらしい!バカは、『友達が増えた!』とにこにこした!

 

 ……と、そうこうしていると、先輩達が『昼ご飯だぞー……』『塔は起きたか……?あ、起きてる。じゃあもうヒソヒソ話さなくていいな!』と、やってきた。

 どうやら、このいい匂いはお昼ご飯の匂いだったらしい。

 バカは、先輩に塔の意向を伝え……そして。

「じゃ、いくぞー!いっせーの!セッ!」

 ……バカ含む、天使20名。

 彼らが塔をぐるりと囲んで、『よっこいせ!』と持ち上げた結果……塔は無事、ふわっ、と持ち上げられ……そしてそのまま、天使達の羽ばたきによって、地上に向かってふわふわと、移動し始めたのであった!

 よっ!クレーン要らず!

 

 

 

「あっ、樺島さん!お帰りなさい!さあ、ご飯ですよー!」

 さて。そうしてバカ達が塔を『じゃあひとまずここで』と、デスゲーム跡地の地上部に移設したところで、ミナが声を掛けてくれた。

「さあ、どうぞ!豊穣神様から、お米とお野菜の差し入れをいっぱい頂いたんです!なので今日のご飯は、たっぷりの豚汁と!炊き立てご飯!それに、サクサクの揚げたてとんかつです!箸休めにお漬物もどうぞ!」

「わあああー!うまそー!」

 今日は大掛かりな仕事なので、現地で調理、現地でお昼ご飯!という贅沢仕様である。社食出張店、というわけだ。

 バカ達は早速、お行儀よく行列に並んでは、ミナがよそってくれる豚汁のどんぶりを受け取り、先輩がよそってくれる山盛りご飯のどんぶりを受け取り、双子の乙女が『はい』『はい』と渡してくれた漬物の小皿2つを受け取り、そして、とんかつの悪魔がひたすら揚げているとんかつを貰っていく!

 そうして、クソデカお盆にどんぶり2つ、更にでっかいとんかつのお皿と小鉢2つものっけたバカは、辺りをきょろきょろ見回しつつ、『どこ座ろっかなあ』と探す。

「よお、樺島。こっち来ねえか」

 すると、横から声が掛けられ……バカは、ぱやっ!と満面の笑みで、早速そちらへテケテケと駆けていく。

「四郎のおっさん!」

 そう。ここには、四郎が居る!……四郎は、本日付けでキューティーラブリーエンジェル建設に入社したのである!つまり!バカの後輩だ!……人生においては圧倒的に先輩だし、実力としても先輩なので、バカはすっかり四郎の後輩のつもりでいるのだが!

「さっき、とんでもねえモン出してなかったか?ありゃなんだ……?」

「ん?塔!なんか、生きてるタイプだったっぽい!」

「生きてる……へえ、珍しいな。もしかすると、悪魔が見つけてきたんじゃなく、元々ここら辺に生息してたのが捕まっちまってただけなのかもなあ……」

「この後、あの塔、お引越しするんだ!うちの空き地に!そしたら野良の戦車とかも遊びに来るかもしれねえ、って先輩が言ってた!」

 雑談などしつつ、バカも四郎も、ばくばくととんかつ定食を食べ進めていく。サクサクで、じゅわりと肉の旨味が溢れるとんかつは、やはり、定番の美味しさだ。四郎は『このとんかつうめえな』と目を瞠っている。それはそうだ。とんかつの悪魔は、とんかつを揚げるのが、上手!

「豚汁うめえ……えへへへへぇ……」

「おうおう、うめえだろ。何せ、あいつが拵えた野菜だからよぉ……へへへ」

 尚、四郎は美味しいとんかつもだが……それ以上に、お野菜たっぷりの豚汁と、つやつやほかほかのご飯、そして、漬物2種に相好を崩している!

 それもそのはず!ここのお野菜とお米は四郎の奥さんである豊穣神が作ったものだし、そのお野菜を双子の乙女が仕込んで作ったのがこのお漬物なのだ!

「この大根うめえ……」

「おう。塩もみした大根を煎り酒と鰹粉、塩昆布で漬けたやつだな。こいつは妻の得意料理だったんだ。昨日、あいつら、レシピを聞いたらしくてな……へへへ」「こっちのきゅうりもうめえ……」

「壺漬けもいいよなあ。こいつは、娘達がまだ、妻をただの『ご近所の豊穣神』だとしか聞いてなかった時に浸けたやつらしいぜ」

 四郎から色々と、幸せで美味しい話を聞きながら、バカは『おいしい……おいしい……四郎のおっさんが幸せそうでうれしい……』と、終始ニコニコしっぱなしであった。ああ、なんと贅沢なお昼ご飯であろうか!最高!

 

 

 

 そうしてお昼ご飯を食べたら、全員、お昼休みに突入する。……お食事の時間と休憩の時間が別で存在しているのが、キューティーラブリーエンジェル建設の特徴だ。また、これらとは別に、シエスタの時間が設けられることもある。その時は全員、強制的にお昼寝である!

 何はともあれ、休憩時間に入ったバカは、ぽてくて、とそこらへんを歩いて……そこで、不思議な光景を見つけてしまった!

「……このおっさん、見たことある!」

「お、樺島。丁度いいとこに来たなあ」

 ……その『不思議な光景』は、なんと……『教皇』が、親方と先輩天使達に囲まれて、しょんぼりしている光景である!バカは、『あっ!こいつ、五右衛門に嫌なこという奴だ!』とようやく思い出した!

「さっき、『5』の部屋から救助されたんだが……お前が連れてこなかった以上、ま、根性ねじ曲がった悪魔なんだろうからよ。ここで事情聴取してたんだが……こいつ、どういう奴だ?」

「いじわるな奴!」

 聞かれたバカは、バカ正直に答えた。バカなので。教皇が『なんてことを言うんだ!』という顔をしていたが、バカからしてみると、やっぱり教皇は五右衛門に意地悪なことを言った奴なのである!

「そうか。成程な。ま、そうだろうな……よし。じゃ、そういうことなら特に情状酌量の余地もねえ。遠慮なく絞れるモン絞ってから帰してやるからよ、精々働いてくれや」

「おのれ……!」

 教皇は、親方を一瞬睨んだ。が、親方に睨み返されたら、しゅん、としてしまった。それはそうである。親方に勝てる奴なんて、そうはいないのだ!

 

 そうして、教皇は、『じゃ、情報出せるだけ出してくれよな!』『あっ!あと、燕がさっき、絶望絞りたいって言ってたから、そっちも協力よろしくな!多分、木星さんのメンテ後になるから、1時間後ぐらいだと思うぞ!』『ま、元気出せよ!かつ丼食うか?』と先輩達に好き勝手囲まれて、困ってしまった。

 とはいえ、困っても助けてくれる人は誰も居ない状況であるので……教皇はこれからしばらく、困りっぱなし待ったなしなのであった!

 

 

 

 さて。

 そうして教皇がしょんぼりとかつ丼を食べ始めたところで。

「あ!燕!陽達ー!たま達ー!木星さんのメンテ、終わったー!?」

 バカは、友達が集まっているところへ突撃していった。……彼らは、本日丁度、天城が掛けた『無敵時間』の効果が切れる予定であった木星さんの『メンテ』をしてくれているのである。ついでに……。

「あ、樺島君。終わったよ。燕が絞りに絞ってた」

「人間の絶望は手軽な悪魔のエネルギーになるからな」

 ……たまと燕が、にこにこほくほくしていた。

 それもそのはず……木星さんは、今、とても悲痛な顔で『無敵時間』にかかって固まっている!間違いなく、しっかり絶望を搾り取られた顔である!

「同一人物が3人ずつ2セット居たら、まずそこで混乱するからね。後は、『恨んでいるぞ』っていう話をしてやったら……まあ、すぐに音を上げたよ」

「こいつに聞かせる恨みについては、我々が最も多く持っているからな」

 デュオと天城がちょっと満足気な顔をしているのを、デュオのたま……今回救出され、そして、本日の朝ようやく眠りから目覚めたばかりのたまが、なんだか新鮮そうな顔で眺めている。

 ……このたまは、あんまり事情を知らないたまだ。ただ、『これが井出享太だよ』と教えられたら、一発殴ったらしい。流石は、たまである!

「……でも、一番こいつを絶望させたのは多分、かにたま」

「流石、蟹の私」

 一方、ここで一番強かったのは……なんと、デュオでも天城でもなく、かにたまだったらしい!

 かにたまは、かにかにかに、と誇らしげに鋏をチョキチョキやって、かにっ!と胸を張った。これを見て天城はなんとも嬉しそうである。可愛い恋人が自慢げにしているのだから、それはそれはもう、嬉しいことであろう!

 

「あっ、そいつも来てたんだな!」

「ああ。デスゲーム会場の解体が行われるなら、連れてこなきゃと思って」

 ……それから、燕の胸ポケットには、昨日同様にジャンガリアンハム悪魔が収まっている。彼は、『ああ……会場が……!一生懸命、人間の魂を集めて作ったのに!』と嘆いている!その度に、燕が『儲かる』とでも言うかのような顔をするので……多分、ジャンガリアンハム悪魔の絶望が美味しいのであろう。多分。

「ところで……樺島さん」

「ん?どしたんだ?」

 が、そんな燕が、ふと、ごそごそ、と、ズボンのポッケから小瓶を出して渡してきたので、バカはそれを受け取ってから、しげしげと眺める。

「……石油!?」

「いや、この悪魔の絶望。液状化して瓶詰にした」

 なんと。燕から渡されたのは……ジャンガリアンハム悪魔を絞って得られた絶望だったらしい!バカは『絶望って石油みてえ!』と驚いた!

「これ、くれんの!?えっ、これ、飲んだら美味い!?」

「いや、悪魔以外が飲んでも気分が沈むだけだと思う」

 ……が、早速、ジャンガリアンハム悪魔の絶望を飲もうとしたバカは、『やめて』と燕に止められた!バカ!

 

「……その、食事を作っていた天使が」

「あ、先輩かぁ?うん、先輩がどした?」

 バカが首を傾げていると、燕はちょっとばかり気まずそうに口ごもり……ため息と共に、言った。

「『発酵させて味を確かめてみたいから絶望の現物をくれ』と言っていたから……」

「あ!先輩が昨日言ってたやつだー!」

 バカは、小瓶を握りしめて大いに納得した!

 ……社食を作り上げた偉大なるバカとミナの先輩は、その飽くなき食への探求心から、『悪魔が美味いと言う絶望……味が気になる!気になるぞ!』と、ものすごーく、絶望を欲していたのである。

 また、彼は……言っていた。

『絶望が液体にできると聞いたんだが、ということは、醤油か何かのように使えないだろうか』と。

 そして、『美味い調味料を作ることができたら、悪魔がもっと喜んでくれる美味しいごはんを作ることができる!』とも。

 ……バカは、悪魔がどういうものなのか、まだ、よく分かっていないところも多々ある。だが、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部に来た悪魔達は、皆、いい奴である。ジャンガリアンハム悪魔はちょっと保留とするにしても。

 だから……牡牛の悪魔や双子の乙女、女教皇や女帝や皇帝、それから、どうやら悪魔の一種であるらしい骸骨の騎士とその馬……そして何より、駒井燕。彼らにとって美味しいごはんができたら、それは、バカにとって、とても嬉しいことなのである。

 そして当然、先輩にとってもそれは嬉しいことなので……彼は、燕に絶望をおねだりしていた、ということなのだろう!

「燕!楽しみに待ってろよ!先輩がきっと、美味い醤油作ってくれるから!」

「醤油……?」

 ……ということで、バカは絶望の小瓶を大事に握りしめて、『休憩終わる前に先輩に届けてこよっと!』と、早速駆け出していくのであった!

 

 

 

 さて。

 そうしてバカは、先輩にジャンガリアンハム悪魔の絶望をお届けして、『ふふふ……樺島。俺はこいつを用いて、魚醤のようなものを作ってみたい……』と壮大な野望を聞かせてもらった。

 それから、先輩達が『確かに3番の部屋は樺島にはまだ早かったぜ!』『ま、タックル一発だったけどな!』『あの説明を読ませなかったんだから、海斗はいい奴だな!よかったなあ樺島ぁ!』などと話していくのに笑顔で頷いて、『やっぱり海斗はすごい奴!』と嬉しくなった。

 更にそれから、四郎と戦車が『じゃあ、こっちはもうかにたまビームで焼き払われたから耕してもいいんだよな……?』などと確認しているのを見て、『仲良くやっててよかったなあ!』とまたにこにこした。

 そうして……。

 

「ってことで、まあ、『無敵時間』はまた1か月分掛けておいたから、好きに使っていいよ」

「ヨシ!じゃあ早速、借りてくー!」

 さて。

 そうして、3人の『宇佐美光』と3人の『駒井つぐみ』、そして1人の『駒井燕』が楽しく座談会を始めるのを横目に、バカは木星さんバットを片手に、元気に仕事へ戻るのだった!昼休憩、終わり!

 

 

 

「うおおおおおお!」

 ということで、午後のバカも元気に解体に勤しんだ。

「おお、樺島ぁ!気合い入ってんなあ!」

「気合い入れ過ぎて木星さん吹っ飛ばして失くさないようになぁ!」

 先輩達ににこにこと見守られ、温かく声を掛けられながら、バカは自慢のタックルで、或いは木星さんフルスイングによって、どんどんとデスゲーム会場を解体していく。

 そうして地下部分がどんどん解体されていくと、そこがどんどん埋め立てられていき……最後は、地上部がかにたまビームによって焼き払われ、耕運機代わりの鋤を装備した戦車が四郎と共に駆け回って、綺麗に耕していく。

 そう。『耕している』のだ。

 

 今回のデスゲーム解体。……解体した後をどうするかについては、親方がデザインしてくれた。

 四郎と豊穣神、そして双子の乙女の再会を祝して。このデスゲーム会場は……。

 ……畑になる!

 

 

 

 夕方。業務終了時刻には、そこはすっかり、畑になっていた。

「お、おお、なんということをしてくれたのだ……あんなに壮大だったデスゲーム会場が、見るも無残な……ジャガイモ畑に……!」

「うん!いいよなあ、ジャガイモ畑!ジャガイモ、いっぱいとれるといいなあ!」

 ……豊穣神がやってくれたので、季節外れのジャガイモがすっかり元気に育っている。明日には収穫予定だそうだ。つまり、明日は芋ほり大会!

「何故、何故ジャガイモ……!」

 ジャンガリアンハム悪魔からしてみると、『ジャガイモ畑は嫌!』ということらしい。だが……そこに、たまがそっと近づいていって、つん、とジャンガリアンハム悪魔をつつきつつ、言った。

「あなたが『ジャンガリアンハム悪魔』だからだよ」

 

「……え?何?何と言った?」

「ジャンガリアンハム悪魔」

「……えっ!?」

 ……ジャンガリアンハム悪魔自身は、『何か、不名誉なことを言われた気がする!』というような顔をして戸惑っていた。が、たまは全く動じない。

「あなたの名前は、ジャンガリアンハム悪魔。昨夜決まったの。ジャンガリアンハムスターサイズだから」

 そう。この度、ジャンガリアンハム悪魔は……正式に、『ジャンガリアンハム悪魔』という呼称になることが、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部内で決定したのである!

 尚、ネーミングの主は、真理奈である。『ジャンガリアンハムスターぐらいの大きさだよね!』と彼女が言っちゃったがために、ジャンガリアンハム悪魔はジャンガリアンハム悪魔になってしまった!

 なのでバカも、今や『ジャガハムの悪魔』と呼んでいる!

「な、なんだと!?なんだと!?あ、ああ、我にそんな、尊厳も何もない名前を付けるとは……!」

「かわいいからいいよね。ジャンガリアンハム悪魔で」

「ひぃん……」

 ……ジャンガリアンハム悪魔からしてみると、この呼称は極めて不服であるらしい。

 だが、仕方がない。たまが名付けてしまったのだ。宇佐美光が一気に3人分、賛成票を入れてしまうし、駒井つぐみも3人いるので、結局ここで6票入ってしまう。

 更に、かにたまは脚がいっぱいあることから、いっぱい票を入れることが可能!よって多数決は大体全部、たまチームの勝ち!ずるいぞかにたま!

 

「……で、あなたのことを樺島君が『ジャガハムの悪魔』って呼ぶようになったから」

「なったのか……!?」

「うん!ジャガハム!」

「ひぃん……」

 バカが笑顔で呼んでやったら、ジャガハムの悪魔はめそめそ泣きだして、またその涙を燕に採取されることになった。哀れである。

「えへへ……ジャガイモとハムって、おいしい組み合わせだよなあ……」

「な、なんだと!?ジャガイモと、ハム……!?ふ、不名誉に……更なる不名誉を!?」

 ……更に、バカが食いしん坊のバカであったために、ジャガハムの悪魔は益々、泣くことになってしまった。哀れである!

 

 

 

 ……だが、泣いても笑っても、ここはもう、芋畑。

『いい仕事をした!』『やり切った!』と天使達が爽やかな笑顔でいることだし、『おいしいお芋楽しみだね』『楽しみだね』と双子の悪魔が豊穣神に笑いかけていることだし、四郎は今日よく働いた戦車を磨いてやって、喜ばれていることだし、塔も片づけを手伝っているし……実に、平和なのだ。

 最早、この土地は希望に満ち溢れていると言っても過言ではない。

 人間の絶望を餌とする悪魔達が未来永劫、デスゲーム会場を建設できないほどの、圧倒的な希望の力。それが今、この土地を満たし、ジャガイモ畑を吹き渡る風となっているのだ。

 

「さあ、終業だ!お前ら、帰社までが仕事だぞ!気ィ抜くんじゃねえぞ!」

 親方の号令に『おー!』と野太い返事を返し、天使達がそれぞれに道具や仲間やその他色々を抱えて、飛び立っていく。

 バカも、塔を運ぶお手伝いをしながら、にこにこと笑顔で空を飛んで、帰社するのだった。

 よく働いた後は、風呂が気持ちいいし、ご飯が美味い!それが只々楽しみな、希望に満ち溢れたバカなのであった!

 

 

 

 ……尚、翌日、ここで芋ほり大会が行われ、その後には『ガーリック風味ジャガバター炒め、厚切りハムステーキと共に』が振る舞われることになり、ジャンガリアンハム悪魔はまた泣くことになるのだった。

 おお、キューティーラブリーエンジェル建設。ああ、キューティーラブリーエンジェル建設……。

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