頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ> 作:もちもち物質@布団
バカは、首を傾げる。
『→0』が、分からない。なんで矢印ついてるのぉ!?となってしまう!
また、なんでここで『21』が出てくるのかも分からない。バカは『21番の部屋って何があるのぉ!?』と頭を抱える。尚、バカは既に一度、21番アルカナルームに入ったことがあり、そこで『コングラッチュレーション』のくす玉とケーキとシャンパンと料理諸々が並んだテーブルを見ている!忘れているが!
「この操作盤、壁に隠れていたみたいだね。ほら。ここに壁材、落ちてる」
「この壁材、取り外し可能なようにできていたみたいだな……。元々、時間経過で外れるようになっていたのか……」
一方、デュオと海斗は流石、頭脳派である。操作盤とその周辺の床を見て、何やら考察している。
……床には、剥がれた壁材が一枚、落っこちていた。そして、操作盤は、ちょっとくぼんだ壁の中にある。どうやらこの操作盤を隠していた壁材が剥がれて落ちているようだ。海斗の考察通り、時間経過で外れて、操作盤が出てくるようになっているのだろう。
恐らくは、ゲーム開始時点からこの部屋に侵入してしまう奴がこの操作盤を使わないようにするための仕掛けなのだろうが……ややこしい!
そして、問題は操作盤自体である。
「こっちはまあ、分かる。多分、『0』のアルカナルームに続いてるんだろう。数字の横の矢印が気にはなるところだが……」
海斗は、じっ、とボタンを見つめて、首を傾げていた。
「だが、『21』にも繋がっている理由が分からないな……」
「俺もわかんねえ!」
「そうだな。もし僕に分からずお前に分かるようだったら、僕は自分自身の価値に疑問を抱くところだ……」
海斗がちょっと安心したような、呆れたような顔をするので、バカは『なんだよぉそれぇ』と海斗をつっつく。海斗は『こら。やめろ。くすぐったい』とバカから離れた。
「どうする?とりあえず、押してみる?」
「危険じゃないか?」
「でも、危険を冒さないと何も知ることができないよね。……うん。いいや。押すよ」
「お、おい、デュオ」
……そして、なんと、デュオがさっさと、ボタンを押してしまった!ぽちっ!
「……あ、動いた」
そして、デュオがボタンを押した直後、エレベーターが動き出す!
「いいのか?これは押して問題無かったものか……?」
「えっ、押したら駄目なボタンとかあるのか!?」
「あるだろう、普通に、あるだろう!」
海斗は慌てていたが、バカは『ほええ』とやっているばかりだし、むつはむつで、『わあ』とやっているだけだし、デュオは落ち着いたものである。……海斗だけ、ちょっと仲間外れだ!
そうしてエレベーターが動いて、バカ達は……上昇していた!
「お、おい。上昇するのか?下降じゃなく?」
「そうみたいだね。……どうやら、天井裏だと思っていた空間の上に、更に部屋があるみたいだ」
「出口……じゃ、ないだろうな」
バカはもちろん、デュオも海斗もむつも、固唾を呑んでエレベーターの駆動音を聞いていた。
……やがて、エレベーターが止まると。
「ああー……やっぱりね。むつさんの予想通りだ」
デュオが、『へえ』と言って笑った。
……エレベーターが開いた先にあったものは、電子レンジほどの大きさの機械だった。機械の横にはピクトグラムで描かれた看板があって、概ね、『腕輪が付いている方の腕を差し入れてスイッチオンしてね!』といった説明になっているものと思われる。
が、ここで『じゃあ試してみるかぁ!』とはならない。
何せ……バカも海斗もデュオも、腕輪は破壊済みである!やんぬるかな!
「……やってみる?樺島君。俺の腕に腕輪、もう一回付けることって、可能?」
「えっ!?破壊するのはやったことあるけど、もっかいつけるのはやったことない!」
「そうか。えーと……こう、むぎゅ、ってやったら、なんとかならないかな」
「デュオぉ、お前、結構無茶言うなあ……」
「樺島。お前が言うな。いや、お前『は』言うなと言うべきか……」
バカとデュオと海斗で『ああでもない、こうでもない』とやっていたところ……むつが、ちょっと遠慮がちに手を挙げた。
「あのぉー……私、やってみてもいい?」
……なので、バカ達は顔を見合わせてから……『どうぞどうぞ』とむつに場所を譲ることになったのであった!
むつが、機械に腕を差し入れる。バカはそれを見て、『血圧測るやつみたいだなあ』と思った。バカも血圧は年に一回、健康診断で測るので血圧計は知っている。尚、毎年のキューティーラブリーエンジェル建設健康診断の日には、筋肉パワーに負けた血圧計が破損することがある。血圧計にとって過酷な職場である。
「えーと……こう、かな」
そして、むつは機械のスイッチを、ぽち、と押した。……すると。
「わっ」
……むつの驚きの声と同時、『ぱきん!』と音がして、腕輪が外れたのだった!
「うおおー!ちゃんと腕輪が外れたところ、初めて見た!」
「そうだな。お前は破壊したことはあれども、『ちゃんと外した』わけではないからな……」
バカは『この腕輪、ここが切れるようになってたのかあ!すげえ!継ぎ目、見えねえのに!』と大興奮である。こういう技術の塊みたいなものを見るのは、とても楽しい!
……だが。
「むつさん、中々度胸、あるね」
デュオがそう言って、にっこり笑う。……その笑みを見て、バカは『あっ、これ、怖いやつだ』とすぐ気づいた。
陽は、怒った時にこういう笑い方をする。木星さん相手にもこういう笑い方をしていたことがあった。笑っているのに、目が笑っていないやつだ。このかんじは怖くて、それでいてなんだか不思議なかんじがあるので、バカはよく覚えている。
「この機械で、手首を切り落とされるかも、とは思わなかった?」
「うん」
……だが、そんなデュオに、むつは堂々としていた。
「そういう不条理なことはしないと思う。だって、それだったらナイフを一本置いておけば済む話だから」
むつは、デュオをじっと見つめている。……その目が、やっぱりなんとなく、鋭い。人を見透かすような目だ。
「このゲームは、考えれば無傷で突破できるようにできてるんじゃないかな」
「……へえ。そう思うんだ」
デュオは、ちょっと目を細めて、片眉を上げた。……今の表情は、陽というよりは、天城のそれに近かった。バカは、『なんだかふしぎなかんじ……』と、ちょっと感心した。
「成程ね。まあ、俺もそう思うけれど」
「でしょ?……デュオさん、結構いじわるだね」
「ははは。まあね。そういう君は、中々頭が切れるし度胸があるみたいだ」
デュオの言葉に、むつはちょっと、じとっ、とした目をした。デュオは今度こそ楽しそうににこにこしていたが海斗は、『やれやれ』というような顔で、ほっとしている。バカも『喧嘩はよくない!』とにこにこである!
「じゃあ、21番の方も行ってみようか」
さて。そうして『→0』の部屋も探索し終えたところで、デュオが先陣を切って操作盤へ向かう。
「あれ?でも、私達の数字の合計、『21』じゃ、ないけれど……」
「ああ、うん。多分、そこはもう関係ないんじゃないかな。ここに来られた時点で、『最後の方』なんだろうし……ボーナスステージ、ってことじゃないかと思うよ」
デュオはむつの疑問にもさらりと答えて、そして、操作盤の『21』のボタンをぽちっと押した。
「……動き出したな」
「動き出しちゃった、ねえ……」
……エレベーターは、動いた。デュオの予想はあったものの、実際に動くとなると、『おお、動いた……』という気分になっちゃうものである。
「今度は下降してるね。……ということは、大広間を突っ切ることになるのかな」
「後でタヌキに聞いてみよう」
海斗とデュオは何やらそんな話をしているが、バカの頭の中ではタヌキが『わあ!見知らぬ個室が天井から!』とびっくりしている様子が浮かんでいた。タヌキをあんまり驚かせちゃ可哀想である。バカは、心の中で、『ごめんなぁ、タヌキ……』と、ちょっとしょんぼりしていた……。
さて。
そうして、バカ達の乗ったエレベーターはどんどん下降していって……そうして、動かなくなる。
「到着、か……」
ふぃーん、と開いたドアの向こうを覗くと、そこには、『21』と書かれたドアがある。……どうやら本当に、『21』の部屋に繋がっているらしい。
「えーと、じゃあ開けるぞ。えい」
バカは、『まあ、ケーキと酒と飯とくす玉の部屋だもんなあ』と思いながら、躊躇なくドアを開けた。一応、ちゃんとデュオと海斗とむつを背後に庇いながら。
……すると。
「……うーん、ケーキとスパークリングワイン、か。それに、ローストチキンにミートローフ、サラダ……料理1つ1つに何か意味がある、って訳じゃなさそうだね」
「くす玉、か……。うわ、なんだ、いきなり割れた」
「おめでとう、かあー……。うーん、『謎解き成功!』みたいな意味、なのかなあ……」
……やっぱり、部屋の中にはケーキとお酒と料理とくす玉があったし、くす玉が割れて『コングラッチュレーション!』が出てきたし、カードも落ちてきた。
つまりやっぱり、この部屋は、平和なお部屋なのである!
……だが。
「まあ……多分、ここに繋がってる以上、ここが『終点』なんだろうな」
デュオはそう言って……ケーキや料理が載ったテーブルの横を進んでいき、部屋の奥の、何も無い壁へと向かう。
「……よし」
その壁の一部をちょっと触ると、そこに、セフィロトの模様が浮かび上がる。バカは、『おお!』と歓声を上げた。やっぱりデュオは、すごい!
更にデュオはそこで何やら色々と、試行錯誤し始めて……そして。
がこん、と、壁が動く。
ごうん、ごうん、と何か、壁の奥でも動き出し……そして。
「多分、ここが出口なんだと思うよ」
……壁は消え失せ、そこに、門ができていた。