オビト、誕生日おめでとう。
オリ主はうちはクサビちゃんです。現在ごちゃい。
パッションとノリと情熱で書いてるので矛盾誤字脱字はご愛嬌で。見切り発車です。
陽のない日
少女の記憶は、3つの勾玉が浮かんだ、赤い瞳に見つめられているところから始まる。
裸足の足音が、岩壁に反響する。長いながらも、不器用に整えられた黒い髪を揺らして、その背中からは病的なほどにまで白い肌が見え隠れしていた。
小さな体を精一杯動かしながら、少女は手に持った端切れを素早く動かす。経年によるものなのか、ゴシゴシと拭いている汚れは中々落ちない。なぜ落ちないのかと首を傾げ、少女は更に力を込めた。
「クサビ」
暗がりから、抑えの効いた声が少女に向かって飛んできた。年齢を重ね、低くしわがれた声色は、少女にとっては日常の一コマに過ぎない。
「はい、じい様」
汚れのあった場所から、短い足を細々と動かし、少女は暗がりへと駆けていく。たどたどしい足取りと、おぼつかない口は、少女がまだこの世に生を受けて、時間が経っていないことの証明だ。
少女には――――うちはクサビには、生まれながらにして、体が足りなかった。
握るための腕は無く、歩むための足は無く。生まれてすぐに死んでしまいそうな赤ん坊には、死神から伸びる手を拒む術が無かった。
そうして死の淵から突き落とされた赤ん坊は、一人の老爺に拾い上げられることになる。加齢によりツヤを無くした白い髪。肉が弛み、痩けた頬。
そしてその身に宿す、赤きうちはの至宝―――写輪眼。
かつて、火の国の隠れ里である木ノ葉隠れの里を、森の千手一族と共に創設した、始まりの一人。
武勇に優れ、知略に優れ。数多の敵を屠ってきたその人。
うちはの大罪人―――里を抜け、大災害であるはずの九尾の妖狐を従え木ノ葉を襲い、初代火影・千手柱間によって討たれたはずの、うちはマダラその人だった。
死にかけていたただの赤ん坊だったクサビは、マダラによって何も無かった手足に、マダラが千手柱間との戦いの中、食い千切って手に入れた千手柱間の細胞を培養したもの――――柱間細胞でできた四肢を取り付けられた。
本来、柱間細胞は取り付けられた者の適合率が高くなければ、施術された者は柱間細胞に取り込まれて命を落とす。逆に細胞に適合することができれば、取り付けられた者は初代火影の力の欠片、木遁や圧倒的な治癒力を得ることができる。
――――クサビは、後者だった。
四肢を持たぬ者だったクサビは、生死の境を彷徨った時、命の賭けへと勝つことができた。無いはずの手足はあるものになり、動きを止めた心臓は新しく鼓動を始めた。
「武器の手入れは終わったのか」
「終わったよ。次は素振りをするの」
「む……」
クサビにとって、マダラはただのおじいさんである。
とはいっても、クサビがこの地下空間ーーーマダラが作った、地下深くにある一室から出たことはない。出られたとしても、せいぜい他の場所と地下空間を繋ぐ、長い長い石の廊下だけだ。そのせいで、クサビの知る普通の人間というものは、マダラ1人に限られる。
ただのおじいさん、というものは、クサビがうちはマダラという男だけしか、人間を知らないが故に言えるものだろう。
クサビは物心がついた時から毎日の日課として、いずれ自分が使うことになるであろう武器の手入れ、チャクラコントロールのための壁歩き、戦闘になった時、主力となる忍術修行、基礎である体力作りなど、戦うための準備をずっと行っている。
クサビは並の子供ではない。拾われたその時から今日まで、この狭い地下でできる修行はあらかた経験している。クサビほどの小さな子供なら、一般的な家庭であれば、まだおままごとや人形遊びをしていただろう。もしも忍の家庭であっても、ここまでの修行は幼児には課さない。
だが、そんな異常な量の修行をこなせるのも、また才能。ありとあらゆるものが合致した結果、クサビはメキメキと力を伸ばしている。
ペタペタと裸足の足音が、静まり返っている辺りに響く。地下空間から外へと続いている通路には、マダラが若く、戦いに明け暮れていた戦国の時に使っていた物品が陳列されていた。
うちは一族に伝わってきていた
その中からクサビは忍刀を手に取り、自分の背丈よりも随分大きい忍刀を引きづりながら歩く。デコボコとした地面に忍刀の切っ先が削られないよう、鞘に入れたまま持った。
軽いとはいっても、クサビの体はまだ小さい。チャクラコントロールによる身体能力の強化がなければ、クサビにとっての忍刀は、その身に合わないダンベルのようなものだった。
「マダラももう歳だからね……」
「そうそう、老人は労らないと」
「クサビが来てから五年だから、もうマダラって…」
真っ白な肌をした人造人間―――ゼツ達が、姦しくささやきあっている。
マダラが座する、禍々しく重厚な佇まいで置かれている、見上げることしかできないほど巨大な木造――――外道魔像から産み出された、柱間細胞の培養により生まれるクローン体である。
クサビは冷ややかにゼツ達を見た。またじい様にゼツ達が怒られる。今のように。
「黙れ、捻り潰されたいのか」
低い鶴の一声が地下空間に響く。ぎゅむぎゅむひそひそと話すゼツ達が、各々の心情を喋りながら散っていく。心情とは言っても、満場一致で不満ばかりだった。
クサビは蜘蛛の子を散らすように逃げるゼツ達を横目に見ながら、鞘から刀を取り出した。日頃の手入れにより、自分の顔が反射して鏡のように見えるほどには、切れ味が良い事が伺える。
そのまま慣れたように抜き身の忍刀を両手で持ち、軽く振り続ける。そんなクサビに、マダラから新しく声がかかった。
「今日は調子がいい。幻術を使って修行をする。準備しておけ。」
「はい、じい様」
クサビはただ、マダラの言葉に従うだけだった。
世界を平和にするために、マダラは自分の代わりに
クサビは、毎日を言われるがままに過ごし、強者となり、クサビを拾って育ててくれた恩を返すために、自分の人生を歩いている。
クサビは、自分のじい様のことが好きだ。私の面倒を見てくれている。私のことを強くしてくれる。外はまだ危ないと言って、出しては貰えないことだけがクサビにとっては不満だった。
私には何にもない。友達だっていないし、ゼツ達の言う
私には、信念が無いとじい様は言う。からっぽだって、そんなからっぽの私に、大義を与えてやれるって。だから私は、じい様のために今日も修行をする。
無心で刀を振る。忍刀が空気を斬り、思考を新しく塗り替える。
クサビにとってマダラの夢とは、
今、クサビががここに生きているのだって、ただの偶然だと言っていた。たまたま拾われたから、私は生きている。
無心で振っていた刀を、クサビはゆっくりと下ろした。たらりと頬に、汗が垂れる。汗を手で拭ったクサビは、鞘へと刀を戻し、元にあった場所へと忍刀を立てかけた。
忍刀を片付けたあと、クサビはまだ、自分の身長が足りなくてよじ登るしかないベッドへと戻った。硬い石の床で寝るより何倍もマシなベッドは、クサビが唯一この薄暗い場所で、自分のモノだと主張できる物だ。
ベッドに腰を下ろすと、年季が入っているせいか、ギシリと音を立てた。するとゼツが1体近づいてきた。トゲトゲが付いたゼツなので、クローン達の大元のゼツだ。
「毎日毎日、修行して修行して修行して……飽きないの?」
「飽きるとか、別に…。平和のため、だから」
「フーン…。ま、クサビには友達なんてボクらしかいないし、箱入り娘だから、こんな子に育っちゃっても仕方ないか…」
「ゼツは人間じゃないから、友達じゃないんじゃないの?」
「え?」
「ちょっと待ってクサビ、そんなこと思ってたの?」とか言っているゼツをフル無視して、クサビは座禅を組んだ。心を落ち着けて、身体に流れるチャクラを感じ取る。
幻術にかかるというのは、チャクラの流れを他人に乱されている状態のことを言う。その乱されている状態を発見しやすいように自分のチャクラの流れを確認してから、マダラに幻術を掛けて貰う事が、クサビの毎日のルーティンだった。
「準備はできたか」
「うん、今日もお願いします」
クサビはマダラの赤く勾玉が浮かんだ瞳を見る。片目しかない不完全な写輪眼でも、うちはマダラの瞳力は健在だった。
外道魔像に繋がる、ケーブルのようなものに繋がれたマダラは、満足には動けない。ベッドから降りて、クサビはマダラへと足を進めた。
自分のチャクラが乱されているのがわかる。クサビの瞼が重くなり、深い眠りにつくような、そんな感覚に身を委ねる。瞳を閉じて、もう一度目を開ければ、クサビは白しかない空間にいた。
真っ白な空間。上か下かも分からないような世界。
マダラの幻術世界だった。いつもここでは、見取り稽古のような、実践演習のようなものをしている。
「今日は木遁だ。分かっているとは思うが、身体で覚えろ。木遁以外の忍術を使うことは許さん。体術は使ってもいいが、頼りすぎるな。木遁でオレに一撃を与えることができれば、終わりにしてやる」
「木遁……」
クサビは木遁は嫌いだ。木が変な方向に曲がって、中々上手くいかない。一番戦闘にも使うことができる練度である挿し木の術も、たまに暴発して、移植した柱間細胞の腕や足が移植し直しになる。
嫌な気持ちが顔に溢れ出しているのか、クサビに稽古を付けやすくするために幻術を使い、若々しい体となったマダラがクサビの額を軽く小突く。
「何が不満だ。柱間の術を、このオレから学べるんだ。これ以上強くなることへの近道は無い。小砂利、さっさと構えろ」
「はぁい……」
小突かれて少し赤くなった額を撫でながら、クサビは組手の構えを取る。このマダラの幻術空間での修行も、老齢であるマダラの体調が良ければ、毎日している事のひとつだ。
1日を幻術内の時間で何日も伸ばして修行をする。この幻術の空間の中で1日を過ごしたとしても、現実ではほんの10秒しか経っていない。それに、幻術世界では睡眠も食事も不必要で、疲れも感じないようにされている。
唯一現実と同じようにされているのが痛覚で、組手をしている時の痛みだけが現実と同じように設定されている。
じい様に殴られると痛い。これでも手加減していると言っていたけど、本当に本当なのか。クサビは訝しんだ。
「木遁・挿し木の術!」
印を結ばずとも発動することができる、クサビの得意な術だ。マダラに殴りかかったクサビの左腕から、マダラの顔に向かって先の尖った木が伸びる。ニョキニョキと伸びる棘に似た木は、マダラの身体には掠らなかった。
「まだその術ばかり使っているのか。オレに教えを乞うているんだ。木龍くらいは出してみせろ」
軽く腕を避けられて、クサビの左腕が掴まれる。腕が使えないのなら、足を使うだけだ。そう思ったクサビは身体をひねり、右足で蹴りを放った。
「ぐえっ!」
「そのザマじゃいつまで経ってもオレに一撃なんて与えられんぞ。立て。無様な真似をする者はうちは一族の恥だ」
結局右足も軽くいなされて、クサビは投げ飛ばされる。地面に叩きつけられた衝撃と痛みで、変な声が出た。
マダラとクサビの組手では、いつもクサビはマダラには遠く及ばない。そもそものリーチが違うのだ。180センチメートルに近い体躯のマダラと、まだ成長期も来ていない幼児のクサビでは、射程範囲が違う。クサビが体術をマダラに挑んだとしても、伝説の忍に勝てるはずもない。
それにマダラの体術は、忍界でも一、二を争うような腕前だ。いつも体術を組み込んだ修行だと、クサビにとっては体感1年とかかかっている気がする。
顔から地面に叩きつけられたのか、クサビの鼻からは鼻血が出ている。現実には影響が無いとはいえ、幼子相手にマダラは容赦が無かった。口元まで垂れてきた血を舐め、手の甲で鼻を拭う。
マダラのの望み通りにクサビは印を結ぶ。随分と前、同じように幻術の世界でクサビがマダラに覚えろと言われて必死に練習した、木龍の術の印だ。マダラのライバル…と言うか、クサビが常に話を聞かされているマダラのじい様の好きな人な、千手柱間が、尾獣を捕まえたりする時に使う技だったとクサビは聞かされている。
なお、クサビにとって柱間とは、「マダラのじい様が震えながら笑い、不気味な笑みを浮かべるレベルで好きな―――この場合の好き、の名前をクサビは知らない―――人」というものである。はっきり言って、理解できないものだった。
「木遁・木龍の…あれ?」
木龍の術を発動しようとしたけれど、白い地面から生えたのは小さな苗木が1本。おかしい。小首を傾げ、クサビは苗木の隣へとしゃがみ込んだ。
白い地面から生えた苗木は、とても小さな青々とした若葉を揺らし、クサビの目線には答えなかった。
「印を間違えるなと、何度も言っているだろう!もう一度印を結んでやる、じっくり見ていろ!」
ごちん、とクサビの頭から大きな音がして、脳みそに衝撃が走った。星が見えているみたいな、派手な痛みが脳天を直撃する。
「痛い……」
「痛みが無ければ身体は覚えん。それに、ここが戦場でオレが敵なら、お前はもう10回以上は死んでいる。いいか、木龍の術の印はこうしろ」
クサビには、まだ写輪眼が開眼していない。仮に写輪眼を開眼していたとしても、見切れきれないであろうレベルで早く印を結ぶマダラには、手心というものがない。クサビは決して口には出さないが、不満げに口を曲げた。
伝説レベルの忍の印を結ぶスピードなんて、普通の人にとってはありえないくらい早い一瞬の出来事のはずなのに。
シュババババッという効果音が着きそうなくらい早く印を結んだマダラは、クサビにやってみろと言わんばかりの視線を向けた。クサビに自信はなかったが、やるしかない。
「木遁・木遁の」
「違う!」
また、クサビの視界に星が生まれた。クサビにある知識は、ゼツかマダラの言うことだけだ。
ゼツ達が言っていたけど、人の頭をゴスゴス殴っていると、殴られた人の頭はバカになっていくらしい。現実に影響しないとは言っても、ちょっとくらいはマダラのじい様のせいでバカになっているかも。
クサビは痛む自分の頭をさすると、またマダラへと襲いかかった。
「ありがとうございました……」
「お前は体力が足りていない。…体術も基礎からやり直せ。木遁も、できる術を増やしていくことだ」
「はい…………」
「オレはしばらく眠る。何かあったらゼツに言え」
クサビが現実世界に戻れたのは、幻術世界でどれだけの時間が経ってからだろうか。3ヶ月は余裕ですぎていると思う。半年くらいだろうか。精神的な疲れが身体に広がって、眠くなってきた。
「あ、おかえり〜。眠そうだね、ベッドなら空いてるよ」
「最近シーツも替えたから寝心地いいよ」
「おねしょしちゃったからね」
「大陸みたいだったよねぇあれ」
好き勝手に喋り倒すゼツ達に、クサビの額に青筋が1本立つ。ゼツたちは基本的に、「クサビは女の子だから」といって放任主義だ。だけど、ひとつでも揶揄えるようなネタがあり、ちょっとでも調子に乗るとすぐ
「うるさい。もう寝るから黙って」
まだ3歳なんだから、おねしょくらい仕方がない。ゼツ達はやっぱり私の友達じゃない。余計なことばっかりだ。クサビにとっては知らぬ事だが、これもゼツ達にとってはスキンシップのようなものだった。
ただのダル絡みでしかない。
「あーあ、ご機嫌ななめだ」
「女の子にこの話はまずかったかな」
「どうやってご機嫌取りしようか」
「新しい服は?最近ちょっとサイズが小さくなってきてるし、いい頃合いじゃない?」
「もう!うるさい!黙って!」
井戸端会議をしているゼツ達を散らさせて、クサビ1人しか眠らないベッドに横たわった。石で囲まれた部屋にポツンとあるベッドは、少しひんやりしていて、クサビの背筋に寒気が走った。
天井に向かって、腕を伸ばす。ところどころはゼツ達と同じ、真っ白すぎる色をした細い腕。握りしめてみると、関節の動く感触が伝わってくる。赤ちゃんの頃から付けられている柱間細胞に、私は適合できた。
裸足で歩いていても、傷はすぐ治る。細かい生傷が絶えないけど、クサビの場合では寝て起きれば全て回復している。文字通り、跡形もなく。
柱間細胞には、人間の治癒能力を高める。異常なほどまでに傷が治り、クサビにとって普通の人間の治癒力は、自分が基準だった。
マダラは、本当にたまに、クサビに昔の話をしてくれる。ポツリ、ポツリと呟くように話す姿は、どこかクサビより少しだけ年上な、お兄さんのような雰囲気を持っていたとクサビは思う。
若かった時、柱間のじい様と出会って、平和を目指したこと。戦いに明け暮れて、私たちのうちはの同胞がたくさん死んでしまったこと。その時、じい様の弟であるイズナのじい様も死んでしまったこと。
じい様は、世の中の汚いところを見すぎてしまったんじゃないのだろうか。私を外に出そうとしないのも、外には綺麗なものと汚いものがあるけど、私が今から歩む道は深い闇の道だと言っていた。
私はじい様に報いるためにも、じい様の計画を完遂させなければならない。
「じい様」
「…なんだ」
ベッドの上から、マダラに声をかける。よかった、まだ起きてくれていた。
クサビは、自分がマダラにとっての駒でしかないということを、理解していた。
この体はじい様によって拾われ、使いようのいいようにするために、鍛えさせられている。将棋で言うところの、歩であった。
今はまだ1歩しか進めない歩であっても、時が進み、クサビが成ることができれば、マダラの計画は円滑に進められる。捨て駒であっても、マダラにとっては替えはきく。
クサビは、道具でしかなかった。
ポツリと、暗闇に溶けるような小さな声で、呟いた。
「おやすみなさい」
返事は無かった。だが、クサビはそれでもよかった。
意識の底へと沈んでいく。
じい様はすり減ってしまっているから、それなら私が。
じい様の代わりにならなきゃ。
10話くらい一人称視点で作ってたんですけど、三人称に変えてる都合で違和感があるかもしれないです。