オビトはどうしてグルグルの性格で暁に潜入しようと思ったの?はっちゃけようと思って?
「ウオオオォォ!!!」
「イェーーーーイ!!!!」
「立った立った!!オビトが立った!!!!」
歓声が巻き起こる。外に派遣されていたはずのゼツ達も大半が戻ってきており、決して狭くはないこの地下室も、クサビには少し狭く感じた。そんな大勢のゼツ達が、固唾を呑んで見守っていた光景は、全員が歓喜するに相応しいものだった。
――――立っている。
今までは、壁に手を付きながらでなければ立つことのできなかったオビトが、震えながらも己の足のみで立っている。喜ばしいことだった。その傍には、クサビが心配そうに眉を寄せて控えている。
「どうだ、クサビ⋯!ヘヘッ、やれる、もんだろ?」
顔は青白く、額に汗をかくオビトはクサビへと笑いかける。無理をしているということが、誰にでもわかるような顔色で、自信満々に笑っている。
オビトは柱間細胞に適合し、足が生えてから、今までずっとリハビリに励んできた。
初めはグルグルやクサビが支えながら、右腕が生えてからは壁を支えとしながら、ずっと立つことを目的として、日々を過ごしていた。そんな努力が、今日実を結んだのだ。
「オビト、今日はもうここまでにしようよ。危ないよ」
「いや⋯まだいけるはずだ。オレは、早く帰らねぇと⋯⋯グッ⋯!!」
「オビト!」
子鹿のように震えていたオビトの足が、バランスを崩して地にぶつかりかける。咄嗟にクサビが体を支え、大事には至らなかった。
「もう今日は終わり。無理やり寝かせる」
「あ、オイ⋯⋯!」
クサビの腕の中にあるオビトの体を、そのまま抱え込む。腕の中にいるオビトはモゾモゾと動き回るが、クサビはそれを許さない。無理やり押さえ込んで、オビトを背に背負う。
(こんなチビッ子に、おんぶされるのか⋯オレ⋯⋯)
短い腕を太ももの下に回されても、身長差によって両足を引きずられながらベッドに連行される。目の前にある小さくもボリュームのある髪を揺らして、微塵も重そうにしていないクサビの頭に顎を乗せる。
体重はかけていないが、顎というものは面積が小さい。痛みは無くとも気になる刺激ではあるのか、クサビは「なに?どうしたの?」と質問を繰り返している。
「別に!クサビは心配性だよなぁ、仕方ねーから今日はもうやめるって」
「⋯⋯分かってくれたなら、いいけど」
硬いベッドにオビトを降ろす。そのままクサビはベッドの縁へと飛び乗った。いつも眠り続けているせいでまだ眠くは無いのか、オビトは面白おかしそうに話し始める。
縁へと座ったクサビは、楽しげに口を動かすオビトだけを見て、相槌を打つ。そこへグルグルやゼツが絡んできて、オビトの声はまた、一段と大きくなっていく。
―――――楽しかった、いつかの話だった。
クサビが修行や日課をこなす横で、少年が体を動かす姿が増えた。
魔像の側面をクサビが走る傍ら、オビトは歩く練習をする。
クサビが鎖を着けてゼツ達と組手をする傍ら、オビトは走る練習をする。
その結果としてオビトの体は、ほぼ万全の状態となっている。
人造体と生身の繋ぎをしている留め具も、徐々に外していっている。この調子なら、オビトは木ノ葉に帰っても忍としてやっていけるかも。
クサビは寂しく思いつつも、そろそろ別れの時が近づいていることに気がついていた。オビトがしっかりと任務をこなしていけるよう、クサビは最後までサポートするつもりだった。
「平衡感覚は問題無し。身体の方には違和感とかはない?」
「ああ!なんともねぇ、絶好調だぜ!」
親指を立てて白い歯を見せるオビトの髪は、随分伸びた。マダラやクサビの髪質と似ているのか、3人揃って後ろを向けば、大中小のマダラがいるようだった。
「死にかけだったのを無理矢理治したから、オビトにくっつけた柱間のじい様細胞は純度が高いの。よっぽどの無茶じゃなきゃ私みたいに溶けないと思うけど、注意してね」
「おう!」
オビトの寝転ぶベッドに、クサビも寝転んだ。ほんの少し前はクサビ専用の寝床だったが、今ではオビトとクサビ、2人で眠っていた。
オビトがこの地下に来た当初は、クサビは床で寝ていた。素性の分からない人間が眠るベッドに上がる気にもなれなかったし、クサビの中でベッドというものは、1人用の物であるという認識があったからだった。
しかし、オビトが起きる時間が長くなるにつれ、床で眠っているところが見つかってしまった。
それからクサビはオビトに、やれ健康に悪いだの、やれ床は冷たく寒いだのと説教をされ、最終的には「オレが寒いから!」の一言でクサビとオビトは同じベッドで眠るようになった。
オビトが来てから、ジメジメとしていた地下は変わった。マダラとの修行の時間は減ってしまったが、会話が生まれ、笑い声がよく響くようになった。
こんな時間も、オビトが木の葉に帰ってしまえば終わってしまう。
もっとここにいて欲しい、もっと話して欲しい、もっとオビトのことを知りたい。
―――――クサビもまた、変わった。
よく笑うようになった。よく喋るようになった。能面のように、変わらない表情を貼り付けた顔が、コロコロと変わるようになった。
キラキラとした、希望のような灯火を、心に宿すようになった。
揺らめく暖かな火は、人の形をしている。黒髪の、
その炎を、木ノ葉という大きな炎へと返すため――――いつか己で火を消してしまうとしても、つかの間の、本当の世界での幸せを掴んで欲しいと、心からそう思うようになった。
そしてその為に、見返りも要らないと、心のおもむくままに支えてきた。
だがクサビには、ひとつの懸念があった。
クサビがマダラの命令によって仕込んでしまった、
木の葉へとオビトを返す前に、どうにかして取り除かなければ。クサビは
問題は、その取り除く方法だった。ずっと考えても、良い考えは浮かばない。
「…?」
突如、にょきり。
石壁から、ゼツの持つ白い棘が生え出てきた。今この場には、クサビとオビト、そして眠りこけているマダラしかいなかった。オビトのリハビリも順調に進んでいるお陰で、ゼツ達は偵察に出されていたはずだ。
いつもなら、もっと長い時間情報収集をしている。グルグルの姿が見えないことだけが気がかりだったが、クサビはゼツを見上げた。
「さっき外行ってきたんだけど!!キミの言ってたリンとバカカシってのがヤバいよ!!」
声を荒らげるゼツの言うリンと、バカカシ…カカシについては、クサビは前にオビトに教えてもらっていた。カカシはいけすかないけどオビトの眼をあげた、同じ班のメンバー。背を預けあって、隣で共に戦う、そんな関係の人。
そして、リン。
この人のことを話すオビトは、1番楽しそうだった。クサビはそう思っている。きっとこの人のことが、オビトにとって
直接は言われていない。だけど、声色や、表情。
オビトは分かりやすかった。会ったことは無かったが、オビトが1番守りたいと願う人を、クサビはとても素敵な人だと考えている。
「何があった!?」
「2人きりで霧隠れの忍達に囲まれてる!」
ゼツの話を聞いた途端に、オビトがベッドから飛び跳ね、出口を塞ぐ大岩へと殴りかかった。
―――――だが、まだ無理だ。
ある程度は、強い衝撃を受けても壊れにくくなった、というだけだった。普通の腕でも、身に余る力を込めれば、細胞は簡単に壊れる。
柱間細胞の腕という、外付けのパーツのせいで経絡系の馴染みが甘い。更に腕は壊れやすいはずだ。
案の定、大岩は割れずにヒビだけが入り、オビトの右腕はいつかのクサビのように溶けてしまっていた。
「ぐあっ…!!」
「オビト…腕が…!!」
オビトの仲間に、危険が迫っている。今のオビトでは、岩は壊せない。やっぱり私が岩を壊すしか――――。
ベッドから飛び降りて、クサビはオビトに駆け寄った。溶けきった腕が液状となり、痛々しくポタポタと垂れる。
「待って、私が今…」
――――肩を引かれる。グルグルだ。
グルグルがクサビの前に立ち、オビトに喋りかける。
「まだその身体じゃ岩は壊せやしないよ」
「リンとカカシを…助けに行かなきゃ…!」
「グルグル、なにしようと…!!」
話も聞かず、オビトは残った生身の腕で強く壁を叩く。壁に着くオビトの腕はそのままに、ズズ…と音を立て、グルグルの身体がオビトに巻きついていく。白い体に染まっていくオビトを、クサビは引き留めようと手を伸ばした。
ふと、我に返った。オビトにとって、これはいい事のはずだ。仲間たちを助けて、木の葉に帰る。オビトは外に出た方がいい。
伸ばそうとした手は、空気を掴んだだけだった。
「ボクの身体を着るといいよ」
「お前ら…マダラの部下だろ…いいのか?」
「その子は…いい子だ」
「リンとカカシを助けたいんでしょ?」
「……」
「ありがとう、お前ら!!」
―――――オビトが行ってしまう。ああ、いい事、とてもいい事だ。オビトが仲間と一緒に、忍を続けることができる。
いい事なのに、心のどこかでは残念に思っているクサビがいる。どうして残念に思うのかが分からないけど、この気持ちは、今は不必要なものだ。感情を押し殺して、強く唇を噛んだ。
グルグルを着たオビトが力を溜め、大岩を殴りつける。轟音が響き渡り、大きな岩が粉々に砕け落ちていく。
風が吹き荒れた。久々に感じる、新鮮な空気。髪が風によって乱れ、視界が黒に覆われる。クサビの噛んだ唇に、赤い一筋が垂れた。
「根を繋げたまま、魔像の力を借りたのね…やるじゃん…」
「…ボクってやるもんでしょ?」
「よし…!」
オビトがクサビに向かって、左手を差し伸べる。朗らかなオビトに、暗い地下空間に慣れきった視界が、明るくなった気がした。
「行くぞ、クサビ!」
「………でも」
「でももだってもあるかよ!」
血を流した唇をオビトに見られないよう、そっと拭いた。
そのまま差し出された左手に向かって右手を出そうとした。けれど、本当に私はこのままここから出てもいいのか。私が、オビトと一緒に陽に当たっても。暗い思考が頭を回る。そんなクサビに痺れを切らしたオビトが、無理やり手を取った。
「行こう!」
「⋯⋯…うん!」
グルグルが魔像からのチャクラ供給を受けている根を引きちぎったオビトは、背面に佇むマダラに一瞥もせず、目指すべき前を見据える。クサビは右手をオビトの左手と繋いだまま、バツが悪そうに横目でマダラのことを盗み見た。
「助けてくれたことには感謝する…けど、オレ達は行く!行かなきゃならねーから!」
「お前は焦りすぎる…感謝はまだ、早いかもしれんぞ」
いつから目覚めていたのか、低い声が木霊した。身動きひとつせず、マダラは静かに言葉を告げるのみ。
「…たぶんここへは二度と来ねぇ⋯⋯クサビもな。一応礼は言った…もう行く!」
「お前達は…ここへ帰ってくる。その時こそ、本当の礼をもらおう」
「じい様…」
グッと、クサビの右手が引かれる。グルグルの身体に包まれたオビトの手は、クサビの手と比べれば、とても大きかった。人造人間に体温が無いせいか、触れている手からは何も感じなかった。
「白いの!リンとカカシの場所はどこだ!?すぐ案内してくれ!!」
「君の体に付いたのは、いわばボクの分身。ボクらはある程度の距離ならテレパシーで会話ができるし、他の分身体もあちこちの地下に点在してて、情報をやり取りしてる」
「それを使って君達を誘導するよ」
クサビの額に、温度無い何かが触れた。グルグルの、頭…というか、頭部の部分だった。それがウネウネと動き、触覚のようにしてクサビに触れている。くすぐるように動くそれに、鬱陶しさを感じて払い除けた。
「頼む!!」
「オビト!外には、敵がいるんでしょ!隠れられるように、羽織っておいた方がいい!」
岩の外には、マダラが保管している武器と、外に出ていくための―――流石に素っ裸では目立つにも程があるので―――服がある。オビトはそれを2着、乱暴に手繰り寄せ、クサビにも手渡した。時間があれば武器も欲しかったが、今は時間が足りない。
私とオビトーーそれにグルグルーーなら大丈夫だろう。クサビは頭から、大きなコートを羽織って、走るオビトの横へと並び立った。
ダボダボな―――最早脱げかけている―――服を引きずりながら、オビトに手を引かれ、クサビはオビトの仲間たちの元へと向かう。
初めて見る外には、クサビの知らないものがたくさんあった。名前も知らない物が、たくさん。だが、今のクサビにはじっくり見ている暇など無かった。
「今のリンとカカシの状況は!?」
「……仲間からの情報だと、かなりヤバいみたいだよ!霧隠れの実験体がどうこうとか言ってるけど…僕はよくわかんない」
木々の間をオビトとクサビは飛び跳ねながら、ゼツたちの報告を聞く。状況はあまり、良くは無い様子だった。
―――――霧隠れの里。
または、血霧の里とも言われる場所。クサビがゼツたちから聞いた話では、ただただ血なまぐさい、秘密に包まれた里だという話だ。
そして、その血霧の里の実験体⋯…禁術や新しく強い忍術の実験をカカシとリンは受けさせられたのかもしれない。予想だが、自里の忍を使わず、他里の忍を使うような忍術⋯自爆させるような、危険なもの?
敵の忍を使えば、壊滅を促せるようなもの⋯⋯思い浮かばなかった。クサビでは、経験が少なすぎる。
「オビト、気をつけた方がいいよ。オビトも木ノ葉の忍なら知ってるかもしれないけど…霧隠れには秘密が多いって言うから」
「とにかく、リンもカカシも数十人に囲まれてるみたい!…それも皆、凄腕の上忍や暗部みたいなのばっかだって」
「ミナト先生は何してる!?」
「誰?」
「黄色い閃光は何してるって聞いてんだ!」
木の葉の黄色い閃光、波風ミナト。この人もよく、クサビはオビトから話を聞く。
じい様が嫌いな二代目火影、千手扉間が作った飛雷神の術を扱うオビトの先生だ。確かに、飛雷神の術があるなら助けに入るくらい簡単そうだけど。
「ん〜、なにか別の任務中みたいだね」
「こんな時に…!」
オビトが岩に潰れた時も、黄色い閃光は居なかった。黄色い閃光は、間が悪いんだろう。
遠くから、血の匂いがクサビの元に届く。きっと、匂いの元ではオビトの仲間が戦っているはずだ。オビトを木の葉に送り届けるためにも、まだ耐えていて欲しい。誰に祈るわけでもないが、音も無く口を動かした。
「クサビ、オビト…多分これから戦闘になる…。その前に少し言っときたいんだけど…」
「なんだ!?」
「オビトの戦闘力はクサビより⋯⋯ううん、ボクより低い。さらに今は、オビトの傷付いた小さな身体に、大きなボクの身体が被って保護してるって感じだから」
「だから何だよ!?」
リハビリ明けの怪我人のオビトより、常日頃から修行を行い、体を動かし続けているクサビの方が、よっぽど動ける。身体は小さい。だが、この3人の中でなら、今はクサビが最も強い実力者だと言えるだろう。
――――つまりは。
「戦う時は私とグルグルで動いた方がいい、ってことだよね」
「は!?ダメだ!クサビは隠れてろ!!」
オビトの写輪眼とクサビの瞳が眼がかち合った。
ふたつしか巴紋の無い、未熟な写輪眼。対してクサビは、ただの真っ黒な瞳。写輪眼という面で見れば、オビトが戦った方がいい。だが、素の実力がオビトは足りなさすぎる。
オビトはクサビが、命のやり取りをする中で戦っているところを見た事がない。それ故に、クサビのことを庇うようにしようとする。
ここで私の腕前を見せて、白馬の王子さながらにオビトの仲間を助けることができれば、オビトがこれからも頼ってくれるかもしれない。少し邪な考えを巡らせ、クサビは次の木へ飛ぶために足にチャクラを込めた。
「それに、マダラも言ってただろ!写輪眼は左右揃って本来の力を発揮するって!戦場には、俺と対になる写輪眼のカカシがいる!奴とのコンビネーションはオレのが上だ!クサビは待っててくれ、一緒に、木の葉に帰るぞ!」
クサビの握られた右手に、強い力がかかる。横顔を盗み見ると、前だけを真っ直ぐ見据えた力強い写輪眼が目に入った。
――――そんな顔されたら、嫌だなんて言えないよ。
「オレとカカシでリンを守る!!」
「確かに君には柱間の人造体がくっついてる…千手とうちは、両方の力が合わされば、クサビみたいに今までとは違う強さが表れるかもしれないけど…」
――――――ドォォォォン!!!
突然、けたたましい轟音が辺りに鳴り響いた。耳の奥が、先程の音のせいか、劈くような痛みを訴えている。そして、轟音が轟いてすぐ、空からバケツをひっくり返したかのような、大量の水が降ってきた。空へと手を伸ばしてみれば、クサビの手のひらに水が溜まる。これがゼツから聞いていた
木の上に登って、周囲を確認する。音が鳴り響いた方面から、とても大きなものが水に叩きつけられたような音がした。なにかがあったのかは確認できなかったが、湖からは今も、大量の水が飛び散っている。
「雨だと思ったらアレか……クサビ、帽子かぶっとけよ」
「爆発、かな」
「仲間から連絡有り…どうやら、あそこみたいだね」
オビトに、服についているフードを被せられる。水柱は立て続けに増え、あの場所で起こっている戦闘の激しさを物語っているようだった。
(水のある場所とは言え、あんな量の水柱なんて⋯⋯)
「………行くぞ!!」
爆発音のなり続ける、広い湖の方へと向かって足を進める。その間も絶えず、爆発音以外の燃えるような音や、争いの喧騒が聞こえてくることから、まだ戦いは終わっていない。
だが、この大規模な戦場だ。ただでさえそこらかしこで術が発動し合われているのだから、オビトの探しているカカシとリンの消耗も相当なもののはず。間に合うかどうかは、五分五分と言ったところだろうか。
「ぐッ!!」
「オビト…ッ!?」
突然、オビトが無いはずの左眼を抑えて苦しげに呻いた。こんな時に身体の不調なんて。自分の頭よりも少し上にあるオビトの顔を、クサビは驚きと心配により、勢いよく見上げた。
「いや…なんでもねェ!」
左眼から手を離し、ブンブンと左右に首を振るオビト。本人が何でもないと言っているなら、今は急ぐべき時。そう思い、言葉少なに口を閉じ、次の木に飛び移ろうとした。だが、進もうとした一歩は踏み出せず、クサビはオビトに突然首根っこを掴まれる。
「何、オビト…ッ!急がないと、オビトの仲間が⋯⋯⋯!!オビトは私のことを小さくて何にもできない奴だと思ってるかもしれないけど、私はオビトよりも…」
「そういうんじゃねぇ!!」
「だったら何!!この中じゃ、私がいちばん強い!!グルグルは弱いし、オビトは寝たきりだった!!私はずっと修行をして生きてきたんだから、私のことを使った方が」
「クサビ!!!」
今までオビトとクサビが一緒に過ごしてきた中で、初めて聞くような声量で名前を呼ばれた。マダラは声を荒らげることは少ないし、ゼツ達も声は大きいことはあれど、鋭さは無い。クサビの人生で、初めての体験だった。
ビクリと肩を跳ね、動きを止める。そしてオビトはクサビの肩を優しくつかみ、軽く背を押す。
「自分を道具扱いするんじゃねぇ。いいか、この木の中にいてくれ。後で迎えに来る」
「でも…ッ!」
「安心しろ!リンもカカシも、オレが助けてくる!皆で木ノ葉に帰るんだ!!」
偶然あった、大きな木の洞へとクサビは入れられる。クサビが不安になっていると思ったのか、オビトは安心させるように笑いかけた。こうなってしまっては、きっと聞き届けてはくれないだろう。
――――細かい水で少し濡れた髪の毛に光が反射して、キラキラと綺麗だな、なんて場違いに思った。
「……死んじゃダメだよ」
「死ぬわけねーだろ!!」
去る前に、オビトはクサビの柔らかい髪をワシャワシャと撫でる。
暗い洞から、走り去っていくオビトを見送ったクサビは耳を澄ませた。爆風によって木々は揺れ、動物たちは逃げ惑っている。少し遠いが、金属と金属がぶつかり合う音も小さいが聞こえてくる。戦場が近い。
―――――もしかしたら、霧隠れの忍が私のことに気がつくかもしれない。ネガティブな考えばかりが頭に浮かぶが、頭を振って吹き飛ばした。
ふと思い出したのは、オビトが地下へ落ちてきた日のこと。
私はあの時、じい様に言われたからと言って、やってはいけないことをオビトにしてしまった。あの、心地は良いが気持ちの悪い、歪な温もりを思い出す。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
嗚咽が漏れた。今更後悔したってもう遅いのに。
はじめての外で、はじめて誰もいない空間に心が暗くなる。このままオビトと一緒に里に行けば、私はきっと後悔しているような気がしてならない。じい様も置いてきてしまった。私がいないと、じい様は満足に理想を叶えられない。命を助けてもらったのに。でも、オビトのことだって捨てきれない。
―――――――ウォオオォォォォォォ!!!!
遠くから、誰かの叫び声が聞こえる。
オビトに何かあったのかもしれない。確認するために、クサビは洞から這い出て、キョロキョロと周りを見渡した。
静かな森には、霧が立ち込めていた。蛍が舞い、肌寒く、肺から空気を出した時に白い息が漏れ出る。身震いをして、手に生暖かい息を吐きつけた。
「こんな小さな子供が何故、このような場所にいる」
「⋯⋯!?」
背後から、聞き慣れない声がした。クサビは振り返り、反射的に距離を取る。
視線を合わせると、そこにいたのは目を閉じた黒髪の男。マダラよりかは若そうだが、顔には細かくシワがある。頭には丸く囲むようにして、なんの用途かは分からない玉を付け、首にかけられているのは、霧隠れの額当て。
「ハァ⋯⋯全く、どうしてこうも問題ばかりが起きる。里は七人衆に任せてきたとはいえ⋯悩みの種は尽きんな。⋯尾獣を逃さぬために、水影たるオレまで導入させたのだ。姿を見た以上、子供であろうとも、今ここで始末させてもらおう」
霧隠れ、水影。このワードから導き出されるのは、現在の霧隠れ、最強の一人。ゼツ達から聞かされている情報の中で、現状1番強いとされる五影の一角。
「三代目水影、雪一族の蛍雪⋯⋯!?」
三代目水影はバリゴリの捏造です。雪一族なのは何となく。迫害されるなら理由ありきでは?という安直な発想から。口調も何もわからん。
名前は多分出てなかったはず⋯⋯?