多分結構爆速でマダラ(本物)死亡▶︎オビト長門達と接触▶︎弥彦死ぬ
だと思うんですよね。原作も時系列に関してはあやふやなので、ここの小説でもあやふやです。
あなたと今を歩きたいから
「マダラ、死んじゃったね」
腕の無いオビトを支えるために、まだオビトの体に着られたままのグルグルがつぶやく。
忍の死体というものは、情報の塊だ。一族や里内の秘伝忍術、その里独自の装備や、場合によっては機密文書などを体内に隠し持っている者もいる。
更に言えば、うちは一族や日向一族といった血を由来とする特殊な能力を持つ忍では、その能力を奪われないようにしなければならない。
他の里の忍の手に死体が渡ってしまえば、文字通り骨の髄まで調べあげられてしまう。
マダラの死体はクサビが木遁で作り出した木を、忍刀で切り出して作った簡易な棺桶の中に入れた。オビトに「人が死んだ場合、どうするのか」を聞きながら、瓦礫の山の中からクサビが綺麗だと感じた花や、草で作った装飾などを詰めた。
そして他の忍やマダラの死体を付け狙う輩に死体を暴かれないよう、ゼツに地中深くへと棺を持っていかせた。こうすれば、簡単に墓を荒らせはしない。それに棺には、マダラの収集していた品々の中から見つかった、封印の札―――オビトとクサビには、いつの年代のものかは分からなかったが、相当年季の入った札だった―――も貼り付けてある。
無理に開けようとすれば棺は燃え、マダラの死体ごと灰にする、というものだった。
「これでいい?」
「おう……あとは、そうだな…それとか地面にぶっ刺せば、それっぽくはなる、か?」
森の中を歩き、マダラの墓―――になる予定の場所―――へと、オビトとクサビは2人揃って歩いていた。
オビトの少し前を歩き、振り返りながら喋りかけるクサビの小さな2つの手の中には、オビトの両手よりも大きい丸みを帯びた石が握られていた。
今、クサビはマダラの弔いを、オビトはその手伝いをしている。
死者を弔う為にはどのようなことをすればいいのか、ということをクサビがオビトに聞いた際、木ノ葉隠れの里では
ただ設備や道具も無く、世間をまだまだ知らない子供2人と、人間をよく知らない人造人間しかいないこの場所では、簡単に弔うことしかできなかった。
―――――オビトとしては、マダラの弔いなどどうでもよかった。
リンの弔いも―――今からオビトが創り出す夢の世界に生きてはいるが―――できず、クサビの怪我の容態もあまり芳しくない。まずは休ませるべきだと、ぼんやりとした顔でゼツの潜っていた地面を見つめるクサビの体を案じていた。
動こうとしないクサビのことを、怪我が傷んで動けないのだと考えたオビトは、クサビのことを抱き上げようとした。だがクサビは、小さくオビトの裾を引き、ポツリと呟いたのだ。
―――――『お別れはどうやってすればいいの?』
いくら外に出さず、過酷な修行ばかりを課してきたとは言えど、クサビにとってマダラは、正真正銘大切な人の1人だったのだ。
クサビは泣かなかった。人が死ぬことは自然の摂理ではあるし、その自然にマダラは逆らっていた。もう長くないことも分かっていた。
だが、分かっていたとしても、心の整理が追いつくかどうかは別の問題だった。
マダラは、元とは言えど木ノ葉の忍だった。せめて木ノ葉隠れ流の眠りをと思い、こうしてクサビは怪我を引きずりながらも一人で―――所々でオビトに分からないことを聞きながら―――せっせとマダラのためを思って墓を作っていた。
ゼツがマダラの体の入った棺を地下へと運んだ場所に、クサビの手の中にあった石を突き刺した。硬い土はクサビの腕に石をぶつけた衝撃が伝わってくるほどの硬さだったが、日頃のチャクラコントロールの賜物による怪力で無理やりほじりだし、そこに石を固定させた。
「じい様、あの世で色んな人と会えたかな」
「………さあな」
オビトは放っておけなかった。いくら過酷な修行を課せられても、いくら普通を享受できなくても、この素直で優しい少女は1人でどうにかしようとする。
手を合わせて石を拝むクサビの頭を、オビトは柔らかく撫でる。痛々しく体中に巻かれた包帯が、いつかの自分と重なった。
マダラの命が尽きたあとも微動だにしなかった外道魔像は、崩れ落ちた地下空間を整理している時に見つけた巻物に書かれている通りに印を結ぶと、地中深くへと潜って行った。他にも、万華鏡写輪眼に関する書物や様々な古い術に関するものもあった。言わばマダラのコレクションであった。
魔像と棺を地下へと隠したオビト、クサビ、ゼツ達は、各々マダラの遺品を整理していた。
オビトは掘り出された忍具や服―――ほぼ布切れ同然となってしまってはいるが―――を選別し、まだ使用できると判断したものを手入れしていた。
山のように積まれた本や巻物の中では、クサビがパラパラとページを捲る音が小さく聞こえてくる。書物の中に書かれている術の中から、どうにかして今すぐにでも役に立つ術が無いかを探している。
幸いにも文字はマダラから一通り教わっているし、マダラに小さな頃は情操教育の一環として小難しい本も―――こんな場所に絵本や図鑑などあるはずも無い―――読まされている。その時に読んでいた物に比べれば専門的な知識が必要だが、次々と読み終わった本がクサビの隣へと裏返しに積まれていく。
その積まれ続ける本を回収し、瓦礫を掃除して出てきた品々を2人へと届けるゼツ達は、皆疲れた顔をしていた。長時間同じ作業をしているせいで、いつもはピーチクパーチク鳥のように喋る口も、動かすことが億劫なようだった。
「正直、マダラはもっと執念深く生きると思ってたよ。ボクらの
マダラから意志を預けられた、半身が黒、半身が白のゼツが喋る。腕を組んで、クサビの横にある積まれた本の塔の上に座っていた。何もせず、クサビとオビトへと話しかける白ゼツのことを、土木作業中のクローンゼツ達が恨めしそうに見ている。
クサビは地べたに丸まりながら、本を読み進める手を止めはしなかった。少し離れた場所で武具の整備をしていたオビトが、先程のゼツの発言に同調する。
「拠点か……止血に使ってる包帯も綺麗じゃねぇし、消毒とかもろくにしてないし……一旦、どっかに使えそうな場所が無いか探してみるか…?」
へっちゃらそうに振る舞うクサビは、本来なら病院にぶち込まれても文句も言えないような怪我だ。溢れる血は止まりはしたが、それも止まっただけ。
感染症のリスクや怪我が膿むようなことも考慮するのであれば、包帯も変えたい。水で固まった血も洗い流さなければ、不衛生だ。
オビトの脳内で、オビトが野営中に負傷してしまった際、頬を膨らませたリンから手当されていた時のことを思い出す。この場所にリンが居れば、医療忍術でクサビの怪我もチャッチャと治してくれるはずなのに、などとないものねだりをしても、応えてくれる人はいなかった。
クサビは読んでいた忍術指南書をパタリと閉じて、猫のように丸まっていたせいで固まった体を立ち上がって伸ばした。ポキポキと骨が鳴り、破れた服の隙間から、子供特有のくびれが無く起伏の少ない体が見え隠れする。
伸びきった骨を戻して、手でクサビに着せるための服を整えているオビトへとクサビが近づいた、その瞬間だった。
――――――グウゥゥゥゥゥ…………。
クサビの白く柔らかい腹から、小さく胃が空腹を訴える声がした。
いくら小さい音だからとはいっても、この静まり返った空間では、クサビの近くにいたオビトとグルグル、白ゼツ黒ゼツには筒抜けだった。
オビトからの視線が、クサビの腹部へと突き刺さる。みるみるうちにクサビの顔が真っ赤に染まり、モフモフとした黒い頭からは湯気が出ていた。
唇をきゅっと内側に巻き込んだクサビは、ジィっと見つめられる視線に耐えられず、両手で真っ赤になった顔を―――耳まで赤いのであまり意味はなかったが―――隠した。
「う、う………」
「キャーーーッ!!! 倒れたァァ!!!」
空腹と疲労感、それから羞恥心がどっと押し寄せ、クサビは顔に手を当てたまま、前のめりに地面へと倒れた。グルグルは叫び、オビトは慌ててクサビを受け止めると、そのまま新しい服を古い服の上から被せ、背中へとクサビを背負い込んだ。
「そういえば…クサビはオレとは違って、中身までは人造体じゃないのか…ん……?」
恥ずかしさと子供特有の高い体温を背中に感じながらも、オビトの頭にひとつの疑問が思い浮かぶ。今までの生活の中で、そういえば1度も見た事が無かったことがあった。
「ど…どうしたの?」
真っ赤になったままの顔と、寒さか恥ずかしさかで震えた声で、クサビはオビトに尋ねた。顔だけではなく、全身が真っ赤に燃え上がっている程―――実際には顔も燃えているはずもない―――恥ずかしい。とてもじゃないが、平常心ではなかった。
「いや………なんか食べてるとことか、見た事ねェから。普段何食ってたんだ?」
「そうだったっけ…あ」
「なんだよ?」
「いや、別になんでもない………ごはんもそんな、気にしないで」
「ハァ?好き嫌いしてんのか…?なんでもいいから、普段何食ってたか教えてみろって」
このくらいの子供なら「野菜嫌い!」「お魚嫌い!」と言って食事自体を拒否するものなのだろうか。オビトは好き嫌いをしないようにと祖母に教育されて来たため、そう言った我儘を言った記憶は無かった。
これからはオレがしっかりクサビに色々教えてやらねぇと…と思っているオビトの耳に、小さくクサビが「……ょ…んを…食べてた」と呟く声が聞こえてきた。小さすぎたせいで聞き取れず、オビトはもう一度クサビに聞き返す。
「何食べたって? ここら辺だったら、山菜とかか?」
「兵糧丸…です」
ピシリ、とオビトが岩のように固まった。
あの地下に、しっかりした食料などあるわけが無い。山菜なども取れる訳がなく、いつもクサビは貯蓄が容易で日持ちもする兵糧丸ばかりをポリポリと食べていた。様々な栄養をたった1粒で取れるもの、1粒だけで満腹感を得られるものなど、複数種類を日替わりで食べるような生活をしていたのだ。
木ノ葉の里では、クサビのような生活をしていない事がオビトの話からは聞き取れた。優しいオビトは、クサビの話を聞けばマダラやゼツに対して怒ると思って、クサビは何も言っていなかった。
「お、おま…お前……」
「え?」
こちらに錆びたブリキのような、カクカクとした動きで背中に乗るクサビを見るオビトに、今度はクサビが不思議そうな顔をする番だった。いかにも“困りました”といった顔をして、申し訳なさげにオビトを至近距離から見つめ続ける。
水に濡れた毛量の多い犬のように、しょんもりを体全体で表現するクサビは、形の良い目尻を下げる。
「……オビト、兵糧丸もきっと粉々になっちゃってると思うから、気にしなくても」
「飯食いに行くぞ」
「ワァッ!?」
長い前髪に隠れていた、急にこちらに向く光の無い瞳。クサビの言葉を遮り食い気味に言われた言葉に、クサビは驚いてオビトの耳元で大声を出してしまった。
食事を取る、とは言えど、この辺りに食堂や飯所といったものは無い。クゥクゥと鳴り続けるクサビのお腹を満たすためには、どこか遠くの場所へと移動しなければ食事を取れないだろう。
「おい白いの、金は」
「ちょっとならあるけど…ここら辺に店なんて無いよ」
「金があるだけいい……クサビ、なんか好きなもんとかあるか?」
ズンズンと道無き道を進むオビトは、ゼツからチャリチャリと金属同士が鳴っている小袋を投げ渡されると、袋を開けて中身を確認する。指を突っ込み、ひぃふぅみぃと、手持ちの金を数えているようだ。
クサビの好きな物と言われても、思い浮かばない。クサビが兵糧丸以外で食べていたものと言えば、赤ん坊の時にゴクゴクと温めた牛乳を―――ゼツが作っていた物―――飲んでいたくらいだ。
そんなこと記憶には無いし、ゼツから苦労話として聞かされていただけだった。好きな物らしい物が見つからず、ついクサビは黙り込んでしまった。
「……とにかく、クサビはちゃんとした飯を食わねぇと死んじまうからな…あ、川とかならどうだ…?」
ブツブツと独り言を言いながら歩くオビトの横顔を、クサビは背中からちらりと盗み見た。
自分のことを優先して考えてくれるオビトになんだかジッとしていられなくて、クサビはオビトの背中にゴツンと頭をぶつける。グルグルの白い体が邪魔をして、クサビの頭にはゴムのような粘土のような、弾力のある感触が伝わってきた。グルグルの体越しに伝わる鈍い衝撃に、オビトからは「なんだよクサビ……ジタバタすんなら下ろすぞ」と不満気な声が上がった。
下ろすと口では言っていても、クサビの太ももの裏に回された手は、緩むことは無い。「……なんでもない」と答えたクサビのオビトの背中に埋められた顔は、腹の虫の音とは違った理由で、また赤らんでいた。
時折「寒くないか?」「痛くないか?」とクサビのことを気にしながら、オビトは歩くことをやめない。だが、このまま当ても無く彷徨い歩くことを続けていても、体力を消耗するだけだった。
だが、天はオビト達に味方した。グルグルが唐突に喋り始める。
「………あ。オビト、良かったね。見つかったよ、ご飯食べれそうなとこ」
外に偵察へと出していたゼツの一体が、何かを見つけたようだった。それをテレパシーによって伝えられたグルグルが、オビト達にも情報を共有する。
「どこだ?」
「ここから北に行けば、家がひとつあるって……無人のね。戦争の影響かは知らないけど、お米とか、塩とかならあるよ。かまどもあったから、ご飯くらいなら炊けるんじゃない?」
(かまど……?おこめ…………?)
クサビには食材の知識というものはゼロに等しい。そのせいで、
ただ、オビトの手を煩わせてしまうことだと言うことだけは分かったので、オビトを引き止めようとする。
「ねぇオビト。私、別にご飯なんて…」
「案内してくれ」
「これが、お米………!!!」
先程までの発言を忘れているのだろうか、今のクサビにはもう、目の前にある白く輝く宝石しか写っていなかった。白い湯気とほんのり甘い、何とも食欲を唆る匂い。蒸気がクサビの肌に水をつける度、クサビの口の中にはヨダレが湧いて出てきた。胃がキリキリして、腹の虫が急かすように鳴く。
グルグル達から教えてもらった家へ向かう途中、小さな川に足を止め、透明で綺麗な水を汲んだ。その水でクサビは、水影との戦いにより汚れた体を清める。そして木遁で作った水筒の中に、ご飯を炊くために川の水を入れ込んだ。
「オビトッ! オビトッ! 食べても、食べてもいい!?」
「クサビ、待て。このままでもうまいけど、白いのが言ってた通り塩があった。これをかけて混ぜれば、もっとうまくなる」
飛び跳ねながら、クサビはオビトのことを催促する。塩というものをクサビは知らないが、オビトが言うなら本当に味が違ってくるのだろう。握らせた箸を―――マダラにより作法はある程度学ばされてはいる―――待ちきれないとばかりに動かすクサビに、オビトは小型犬の幻影を見た。
グルグルが言っていた通り、家は誰1人としていなかった。
だが、最近まで人が住んでいた痕跡があった。1番大きな部屋には、この辺りの森から取れたであろう木から削り出された木馬やつみきが置いてあった。年季の入った木のおもちゃ達は、軽くホコリを被っているだけで、つい最近遊ばれた形跡がある。
棚にある食器たくさんの食器は、無地で使い古された物が多かった、片隅には可愛らしい装飾の施された新しめの皿が並べられていた。タンスに詰められた服も拝借し―――クサビにはサイズピッタリのものはなく、少しだけ大きめのサイズのものを着ている―――オビトも着ないような服はクサビの包帯代わりにちぎって巻いた。
台所にはたくさんの調理器具が置いてあり、クサビには分からない物だらけだった。オビトとグルグルにアレコレ質問をして、オビトがそれに律儀に答えるものだから、米を炊くのにも時間がかかった。
調理器具は古いものが多く、かまどの使い方を全員知らなかったせいもあって、釜の中の米のうち4割程が黒焦げになってしまった。
黒焦げになったせいで釜の底にこびり付いたお米は、しゃもじでこそぎとって器に盛る。クサビが自分の器に黒焦げのお米を入れようとすると、オビトに止められた。「そこは苦いから、クサビはこっちの白いの食べろよ」と言って、焦げたお米をオビトは自分の皿に入れた。
「ほらクサビ、見ろ。この白いのが
オビトの手には、オビトが両手で持てるサイズの小さな壺。クサビが壺の中を覗き込むと、サラサラしていそうな白い粉が、壺いっぱいに入っている。
「試しに食べてみるか?」
そう聞かれて、コックリと頷いたクサビはそっと壺の中に指を入れる。指全体が塩まみれになり、人差し指の第1関節まで真っ白になった。不思議そうに白くなった指を観察して、躊躇なく口の中にその真っ白な指を突っ込んだ。
「あ、おいクサビ…!」
「んむ……!?!?」
口の中が痛い。水分が全て塩に持っていかれて、喉がカラカラに渇く。思わずむせて、クサビはオビトに背中をさすられた。まさかこうなるとは、といった顔をしたオビトに、クサビは涙目で眉を釣り上げる。
これが、木ノ葉隠れの里にとっての、おいしい……!?
「まさかあんな塩まみれな指をそのまま食うなんて思わなくて…ごめんなクサビ。びっくりしたな」
「これが、塩…危ない食べ物………」
しわくちゃの梅干しに似た顔をするクサビに、オビトは苦笑いを向ける。静止する暇も無くパクパクいかれてしまえば、止められるわけが無かった。
寄せられたクサビの眉と眉の間のシワを、オビトは親指でグリグリと解してやる。されるがままに頭を揺らすクサビの顔は、梅干しから戻ろうとはしなかった。
「んな事ねぇから。ほら、混ぜてやるから、食べてみろって」
パッとクサビの顔から手を離したオビトは、手元の壺から塩を2つまみほど入れて、箸で米と塩を混ぜる。全体に塩が行き渡ったくらいに混ぜ合わせると、クサビの前にお茶碗を置いた。ゴクリと、クサビの喉から音が鳴る。
握った箸で米を掴み、ハクハクと口を動かした。ギュッと目を握って、素早い動きで箸を動かす。
パクリ、一口。
じんわり広がる独特の甘み。
噛めば噛むほどに弾力のある食感。
口の中から鼻腔にまで届くいい匂い。
「………!!!!」
クサビの目が、キラキラと輝く。
(おこめ………おいしい!!!!!)
ツヤツヤと輝いていたお米を一粒噛めば、ほんのりと甘い味が口へと広がる。噛めば噛むほど甘さがじんわりと広がり、その甘さを塩がキュッと引き締める。初めて食べる、炊きたてのお米。
使い慣れてはいない箸で、必死にクサビは米を掻き込む。小さな口で、こんもり盛られた米の山を2割ほど減らした時、オビトから待ったがかかった。
「箸はまだ難しいか…よし」
「あ…私のお米……」
「そんな顔すんなって。食べやすくしてやるから、ちょっと待ってろ」
夢中になってがっついていたクサビは、残念そうに声を漏らす。その声があまりにも残念そうで、オビトは軽く笑った。
オビトはお茶碗から手へと米を移し、アツアツの湯気が出続ける米を何ともないように―――実際グルグルの体越し故に平気なのだが―――丸めた。
ある程度に形を整えられた米を、クサビはオビトの手のひらから受け取る。本物の腕ではないクサビの腕では、しっかりとした熱さを感じ取ることができなかった。
「オレ特製、塩おむすびだ!」
オビトの手のひらで丸められた塩おむすびは、とても丸とは言えないような歪な形をしている。丸でもなく、三角形でもない。何かに無理やり例えるとするならば四角形だろうか。だがクサビには、さっきお茶碗に入れてた時よりも、何倍もおいしそうに見えた。
はぐ、と大きく口を開けておむすびを頬張る。味はお茶碗に入っていた時と変わらないはずなのに、心がポカポカとあたたかくなった。
「うまいか?」
「………うまい!」
オビトの言葉をオウム返しするクサビの頬には、勢いよく食べているせいで米粒が何個も着いている。家にあった清潔なハンカチで、その米を拭けばクサビはモゴモゴと抗議するように口を動かした。
けれど、言葉は何も出なかった。嬉しげに笑うオビトに、されるがままだった。
「クサビはうまそうに食うなぁ、オレも嬉しいぜ。なあカカシ、リ…」
何も無い隣に向かってにこやかに喋りかけたオビトに、一気に空気が冷え込んだ。オビトの口からは、小さく吐息の混じった声が漏れる。
たった一晩に、色々なことがあった。クサビだけが心の整理を行えていないとオビトは考えていたが、本当はオビトだって、整理できていない。
大切な人を、大切な仲間が殺した瞬間を見てしまった。耐え切れなかった心が悲鳴をあげて、何も動かなくなってしまった。
その動かなくなった心を、
クサビはオビトにかける言葉が見つからず、手元にある白い米を見つめる。
時間が経ったせいで、米にあった熱さは既に引き、湯気も立ち上らなくなってしまった。ほんのり温かな米を、空っぽになったお茶碗の中にそっと転がす。そっと置いたおかげで、おむすびの形は崩れること無く、歪な形を維持している。
黙り込んで動かなくなったオビトの、黒く焦げた米の多いお茶碗をひったくる。クサビのものよりも多めに盛られたそれを、クサビはむんずと小さな手で握りしめた。
クサビの手のひらでは、オビトの塩むすびよりも何倍も小さい、オビトなら一口で食べられるくらいのお米しか取れなかった。そこから更に米を継ぎ足して、どうにか
「はい、これ。下手っぴで、ごめんね。オビトが作ってくれたから、それのお返し」
ギュッギュと力いっぱいに握った小ぶりなおむすびを、オビトの手に転がした。オビトの手にあるクサビのおむすびは、クサビの手にあった時よりも小さくて、面白いくらいに釣り合っていなかった。
「…………」
「オビトの気持ちがわかる、なんて言うつもりは無いよ。私には、仲間がいたこともないし、目の前で失いたくないものを失ったこともない。……でも、私たちが一緒に造る世界には、なんでもある。これからいっぱいがんばったり、いっぱい辛いことをしなくちゃならないかもしれないけど」
オビトの1番は、リンだ。オビトの太陽。オビトを照らしていた、とても素敵な人。オビトにとっての全て。クサビは、分かってしまっている。自分のやるべきことを。
私は、オビトがリンのお姉さんに会うための手助けをする、オビトの手足でいい。
「そこまでの道は、私たちで半分こしよう」
白く大きなおむすびと、黒色の小さなおむすびを半分ずつにした。パカりと手で割ると、冷めきってしまった表面とは違い、中から湯気が湧き出てくる。
はい、と言って手渡した。
「一緒に、ね」
はぐ、はぐと食べるオビトの顔を流れる水には、知らないフリをした。クサビもひとくち、焦げついた米を口に含む。白い米より固いお焦げは、まだクサビには早い、苦い味がした。
もうあと1年くらいはずっと忙しいままなので、2週間に1話出たら「おっ!がんばっとるやんけ!」と思ってください。
こちらは別のお知らせなのですが、自分で好き勝手やる方がなんかもう良いか!!と吹っ切れたので、アンケートは削除させて頂きます。
投票していただいた皆様、ありがとうございました!