Q.最も優れた魔法とはなにか。 作:高田鷹VT
年明けまでは20時に1話更新します
『勝手にフィールドワークに出た馬鹿弟子へ
この文が届いているなら、儂の遺書魔法は無事に発動したようじゃ。
儂、魔導卿キリエスト=ルーラ・パンドラは老齢により死んだ。馬鹿弟子があまりにも研究成果を見せに来ないもじゃから、最後に嫌がらせじゃ。
儂の遺産は本来なら適任者にそれぞれ分け与えるところじゃが、心が弱かったり、政治が下手だったり、攻撃性ばかり強かったりで適任者がまったくおらん!失望した!だから全てを一人に継がせることにしたぞ。
資格はただ一つ──儂の薫陶を受けた弟子であること。
そして条件はただ一つ──魔導血戦を制し、魔導卿となること。
魔導血戦を知っておろう。優勝すれば魔導士、二連覇で魔導師、三連覇で魔導卿。儂以外に魔導卿となった者は未だ居らん。だからこそ、次にその座に辿り着いた者に儂の全てを相続させる。全てじゃよ?
そこには儂の派閥や、土地や金や権利もそうじゃし、魔眼を含む儂の生涯で知り得た全ての魔を含んでおる。
魔導卿にまでなっておれば適任者にもなっておるだろうしの、儂天才じゃな。
お主の名前は既に参加者リストに記してある。逃げ場はないぞ。
ウチの馬鹿国王もさっさと相続者を決めて国務につかせたいじゃろうから、これを読み終わる頃には国からのお迎えが来るじゃろう。逃げたら逃亡罪からの国賊コースじゃな。
マキナ、お主が積み上げた成果を儂は見物させてもらう。直近にお主と違って素直でお主同様に面白い弟子も取ったから、どちらが優れておるか比べるのも楽しみじゃ。
それでは我が愛しの馬鹿弟子よ──良き受難を。』
「貴方がキリエスト卿の弟子、マキナ=エンジ様ですね」
クソジジイからの遺書魔法を読み終えた直後、空から
「そうだよ。王都に強制招集ってやつだろ?」
「話が早くて助かります。鷲獅子隊第一部隊士官、ライカと申します。王都までは距離がありますので私がお送りしますが、荷造りなどは必要ですか?」
「いらない。全部鞄の空間に詰めてある」
「……異界生成術理の応用ですか。便利なものですね」
「たしかに便利だけど、やっかみも多いぞ。理論は公開してるんだから練習すればいいのにな。ライカさんの腰包にもかけてやろうか?重量軽減は抜きだが、針や食料くらいなら入るぞ」
鷲獅子が地に降り、俺が乗りやすいように脚を折る。よく躾けられた誇り高い個体だ。頭を下げて返礼を受けてから背に跨る。
「私から返礼できるものはありませんが……それでも良ければお願いします」
「気にすんな。俺が困ってる時に気が向いたら助けてくれりゃいい」
「……エンジ様は噂と違いますね。万能の傲慢という噂を聞いていましたが、理知的で礼節もある」
「若気の至りってやつだ。それに噂は尾ひれがつくもんだろ」
軽く笑いながら肩を叩くと、ライカは驚きつつも笑みを返す。鷲獅子が大気を踏みしめ、王都めがけて空へと駆け上がった。
疾走の速さはかなりのものだが、翼の魔方で空気抵抗のようなものは感じない。精々そよ風位だ。細かい調整が出来るのは鷲獅子がすごいのか、はたまたライカさんがすごいのか判断に迷うが、いずれにしても優れた技術だ。
「この空を走る感覚は久々だけど、いつだって心地いいな。優秀なコンビだね」
「そう言っていただけるとは、ますます自慢の相棒です!」
声に喜色が混じる。なるほど、この明朗快活さは鷲獅子が懐くのも納得の人間性だな。
俺は背で魔法を編み、ライカの腰包に異界化を施す。
そういえば王国には贈答品に対する価値の制限みたいなのがあった気がするが、まあこんな便利なモノ売らないだろうし気にしなくていいか。
十数分程大気にある魔力の
手を腰包に突っ込んで空間の拡張具合を確認して……問題なさそうだな。
「よーし、完成。これでいわゆるアイテムポーチってやつだ。取りたい物を自動で手に収めてくれる機能も付けた。王都で売ればそこらの家一軒くらいは買えるぞ」
「ハイ!?……そんな凄いものを!」
「いーよ、かの鷲獅子隊の騎士様だ。恩の一つくらい売っといて損はないだろ。最近の税だの法だのには疎いから鑑定所に持っていかないようにな」
ライカの声が裏返るのを聞いて、俺はケタケタ笑った。
「えぇ……では私に出来ることであれば可能な限り協力しますので、何時でも手紙を書いてください。さあ、もう着きますよ」
「おーう、やっぱり速いね。ありがとう」
鷲獅子の背に乗ってざっと1時間と少し程だが、もう国の辺境に居た俺は王都に着いた。
これがただの馬だったら数週間はかかっただろうが、地形や関所なんて言うものを全部無視した空路というのがあっても流石は鷲獅子といったところか。細かい検証をした記録はないが、最高速度は砲より速いと言われているんだったか。
鷲獅子は緩やかに減速しつつ、目的地の王都中心部である王城の正門前へと宙を滑降。
些細な振動もなく快適に着陸した。空の旅をしている時も心地いい位の風は有れど、息苦しさみたいなものも感じなかったし、人の輸送というものに慣れているいい子だな。
「では、私はここまでです。ここからは城の近衛騎士にお願い致します。腰包もありがとうございました。大切に使わせてもらいますね」
「あーい。ありがとな。せいぜい俺の名前と一緒に自慢して回ってくれよ」
乗せてくれた鷲獅子の背を一撫でしてライカさんにも別れを告げる。
人好きするような好青年の笑みを見せながらも綺麗な王国式の敬礼を見せてくれるライカさんを見送った。
若い軍人を乗せた鷲獅子はあっという間に点になり、俺の視界から消えていった。
王城の正門を再び視界にとらえると、煌びやかな装飾が目に痛む。大理石をベースにされていたにもかかわらず、金や宝石で下品な装飾が多い。
王国に仕える貴族様の盛大なお気持ち寄付が溢れたばかりにここまで絢爛になったようだが、これ誰か止めてやれなかったのか?一周回ってダサいだろ。
「ふーん、お上様の趣味は相変わらず豪華絢爛であらせられるな。もう少し足元の民草の税を下げれそうなものだけど」
「滅多なことを言うな魔方使い。ここは王城の管轄だぞ」
「おーう、そら悪かったな。ここ数年僻地で細々と暮らしてたんでな。ここまで豊かな生活されてるんだ。庶子の多少悪言位聞き流してくれよ。そのどデカい器でな」
正門前にて門番の近衛騎士に苦言を呈されながら、堂々と胸を張る。上に立つっていうならこれくらいは飲み干してもらいたいね。まあ注意で済ましてくれるこの騎士はいい奴なんだろうし、まっとうな仕事をしてるんだろうなってのが分かるけど。
ただでさえ難しそうで不景気な顔をしてるのに、さらに顔をしかめながら手元の紙束をばさばさと掲げてくる。
「名乗れ魔法使い、リストと照合する」
「マキナ=エンジ、魔導卿キリエスト下で5年前まで学んでいた。
あのジジイ主催のイカれた相続ゲームのせいで国に国賊扱いされるのが嫌でしょうがなく来てやった。
一般的にいう『魔』は奇蹟以外がそこそこに扱える。専門は強いて言えば、『術理』だ。
この辺までのセリフがジジイが用意したリストに記載があるか?」
「……魔導卿のリストの内容を予測するところまで本当に当たっている。本物らしいな、ここから先は失言でお前の嫌いな国賊扱いだ。心して通れ」
門番が槍の石突で地面に数度叩くと、重々しい音と共に正門が開いたので門番に手を振りながら、王城に入る。
俺がジジイの元を離れた時点で弟子は90人位居たはずだが、果たして最後にはどんだけ増えたんだろうな。
マキナ=エンジの研究手記
世界に存在している魔力を外魔力『マナ』、人体に存在している魔力を内魔力『オド』と呼ぶ。
マナは魔法使いであれば大体の人間が干渉できるが、同時に干渉する場合練度が高い方が干渉権を得る。
オドは練度に影響なく本人の操作が最優先されるが、対象の合意の上であれば他人のオドを操作することも可能。
作者X: https://x.com/takadatak4
こうやって退路を断つのも大事だから。