仮面ライダーになった   作:ユウタロス

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第十六話 誰がために

「外神翔一、何か見つかったか?」

 

『いや、特にこれと言った物は無いな……』

 

 ロードではない、謎の灰色の怪人と戦ってから暫く。怪人が爆発した場所を確かめたのだが、そこには怪人が身に着けていた黄金のバックルの破片以外には何も残っていなかった。爆発の勢いからして予想は出来ていたのだが、余りにも何一つ残っていなかった有様には何とも言えない呆気なさを感じた。落ちていたバックルはヴァーリ少年が回収したが、しばらく魔法陣にかざした後に自分に手渡して来た。曰く「勝者の証として持っておくといい、奴もそれを望むだろうさ」との事だ。戦闘狂同士何かしら通じ合う物があったのだろう。

 

 今現在はヴァーリ少年と共にリント族の遺跡を探索中である。この遺跡には最奥の、奴の居た棺の部屋の他にも複数の部屋が埋まっており、ヴァーリ少年と二手に別れてそれぞれ思い思いに調べている。

 

『……ふむ』

 

 土砂を操り遺跡の内壁を補強しながら墓漁りを続けていた所、何かしらの手応えがあった。掘り返して見れば、勾玉の様な物が付いている腕輪がゴロゴロと出て来た。

 

『……ヴァーリ少年!』

「どうした外神翔一、何か見つけたのか?」

 

 やって来たヴァーリ少年に見付けた腕輪を放り渡すと、彼はほうと呟きしげしげとソレを観察しだした。

 

「……グリゴリの資料で見た覚えがある。これはグロンギ族がゲゲルに用いる腕輪だな」

『……グロンギ族?』

 

 はて、どう言う事か。俺はヴァーリ少年にここに連れて来られる前に、ここはリント族と言う部族の遺跡だと聞いたのだが。

 

「ああ、俺もそう思っていたのだが、どうやら少し違うようだ。まあ、リント族の遺跡であるのは間違っていないが……来てくれ」

 

 ヴァーリ少年に連いて棺の部屋まで行くと、彼が部屋の壁に刻まれた象形文字を指差した。

 

「これはリント族が使っていた文字なんだが、ここには面白い事が書かれているんだ」

 

 曰く、この遺跡はリント族の英雄がグロンギ族を封じる為に作った施設である事。グロンギ族とはリント族と敵対していた悪辣な部族である事。リントの英雄であるクウガの事。そして、リント族の盟友である三人のアギトの事が記されているらしい。クウガという存在も気になるが、まずは三人のアギトとやらの事が知りたい。

 

「……ふむ、なるほど」

 

 ヴァーリ少年にアギトについて言及している文章を優先的に解読するように頼んだ所、魔法陣から取り出したリント語の辞書らしき手帳をペラペラとめくりながら解説を始めてくれた。

 

「正確な年代は分からんが、このアギト達はある日フラリとリント族の里を訪れ、そのままこの村に住み着いたらしいな。三人のアギトの内、二人が病を患っていたらしく、治療を求めてやって来たようだ」

『病気か……アギト達はなぜリント族を選んだんだ?』

「リントの民は錬金術に秀でていたらしいからな。医術の未熟だったこの時代、人外の者にとっての医療は金丹やポーションなどの霊薬が主だったらしいからな、どこかで噂を聞きつけたのだろう」

 

 霊薬か。……そう言えば、確かプリムも魔力の宿った液体を小瓶に入れて持ち歩いていたな。自分は再生能力があるから遠慮しておいたが、親父やお袋、姉さんにも渡していたから覚えている。

 

「ん? ……ほう、このアギト達、どうやら兄弟のようだぞ?」

『……三兄弟が、全員アギトなのか? 随分な低確率だな』

(聖魔人)が生まれる確率よりは高いさ……おっと、どうやら三人のアギトと言うのは訂正する必要があるな。描写から察するに、三人の内の一人はギルスだな。リントの民は実際にアギト達を見るのが初めてだったのだろう、全員一緒くたにアギトと呼称していた様だ」

 

 確かに、以前アザゼルに見せてもらったが、確かに通常のアギトとギルスは似ていると言えなくも……。

 

『ん……?』

 

 ヴァーリ少年の指につられて壁に刻まれた文字を追っていると、ふと、片隅に落ちていた、中央の棺の蓋が目についた。蓋にしてはやけに分厚いし、注意深く見ると蓋の縁が少しずれている。

 

『……』

「なるほど、攻め込んできたグロンギとの戦いで……どうした?」

『いや、少し……』

 

 蓋に近付いて屈み込み、縁のずれに指をかけて力を籠めると少しずつ蓋の上部分が持ち上がっていく。壊さない様に注意深く上蓋を取り外すと、思わず息をのんだ。

 

『これは……』

「驚いたな、リントの英雄――クウガの亡骸(ミイラ)か」

 

 そこには、一人の男が居た。茶色く干からびた身体には一切の生気が感じられず、どう見ても生きてはいない。しかし、死してなお彼の身体からは静かな迫力が滲み出しており、間違ってもその身体を粗末に扱うような真似は出来ない。

 彼の眠る棺を中央に据え付けられている棺に被せて手を合わせる。恐らく、あの灰色のグロンギは彼によってこの棺に封じ込められていたのだろう。それをヴァーリ少年が何かしら仕出かして、あいつが蘇ったのだろう。

 

「見ろ、外神翔一」

 

 ヴァーリ少年が棺の中に転がっていた何かを拾い上げて手渡してきた。罰当たりなバカたれがと引っ叩いてやろうかと思いつつ、相手は基本裏世界で生きてきた子供なので仕方ないと抑えて差し出された物を受け取る。

 

「どうだ、似てるだろう(・・・・・・)?」

 

 ――渡された物は、一本の装飾具(ベルト)だった。中央に納まっている玉石はひび割れ、ベルト本体も風化してボロボロに朽ち果てているが……なるほど、多少の差異はあるが、確かにこれは俺のベルトによく似ている。

 

「実はな。この遺跡ではないのだが、以前禍の団(カオス・ブリゲート)の内部派閥の一つが、リント族の遺跡でこれと同じベルトを発掘したんだ」

 

 【禍の団】と言う単語に、弾かれる様にヴァーリ少年に向き直った。

 

『……何故俺をここに連れて来た?』

「純粋に遺跡の発掘に君の助けが必要だったのと、興味本位。それと、気に食わない連中がいてね。まあ、有り体に言ってしまえば嫌がらせさ。禍の団も一枚岩では無いんだ」

 

 ヴァーリ少年の目を見据えてみる。ギラギラとした闘志こそ溢れ出ているが、こちらを騙そうと言う悪意は感じられない……恐らく、彼の言っている事は真実なのだろう。話を交わした事はほとんど無いが、元々嘘を付くようなタイプでは無いのだろう。自己の興味を際限なく追及する事も含め、彼はどこまでも子供の様だ。本人は笑っていたが、際限なくエロを追及する兵藤とどっこいどっこいだな。あの赤龍帝にしてこの白龍皇あり。

 

「……なんだ、どうした外神翔一」

『いやいや、何でもないさ少年』

 

 生暖かい目で見ていた所怪訝そうな表情で問われた。フルフェイス(仮面)越しでも視線と言うのは分かるものらしい、気を付けるとしよう。

 

『……しかし、禍の団が狙っているならこの亡骸とベルトを放置していく訳にはいかないな……』

「そうだな、置いて行くのは賢い選択ではない。と言う訳で、そろそろアザゼルの所に行くとしようか。その二つは俺が転移で送ろう」

『……てっきり自分達で確保するつもりかと思ったが、譲るのか?』

「連中と違って、俺には死した戦士を愚弄する趣味はないさ……なにより、ソレ(ベルト)は人間にこそ相応しい物だ。俺の仲間にも人間はいるが、奴は自分の剣の腕以外に興味は無い」

 

 まあ、いらないというならば素直に受け取っておくとしよう。アザゼルに預ければ間違った事にはそうならないだろうし。リントの人達には申し訳ないが、禍の団に見つかると厄介な事になる。この遺跡は埋めてしまおう。

 

「さて、外神翔一。俺はもう満足したんだが、君はまだ何かあるか?」

『いや、いい。そろそろ帰らないとプリムが心配するんでな。悪いが送ってくれ』

「……曾祖母が、そんなに好きなのか?」

 

 困惑とも嫌悪とも取れる、なんとも形容しがたいヴァーリ少年の声音。

 

「以前、君は彼女の為なら関係の無い輩を犠牲にしても構わないと言っていたが、何故赤の他人にそこまで尽くせるんだ? 俺は力を求めて、最強(真なる白龍神皇)に至る為に戦っているが、君はそう言う訳では無いだろう。かと言ってアギト(リリスの剣)の使命に殉じているようにも思えん……」

 

 ……まあ、傍から見れば頭がどうかしている様に見えるのだろう。治るとは言え、身体を使い潰しながら率先して怪物と戦うなんて馬鹿な真似をしているのだから当然だ……でも、まあ。俺は最初に変身した時に誓ったのだ、この娘を絶対に助けてみせると。

 この外神翔一、生まれてこの方他人に嘘を吐いた事はあっても、自分に嘘を吐いた事だけは一度も無い。自分を誤魔化すと言う事は、外神翔一と言う人間を構成する全てに対しての最低の裏切りだ。不正も認めるし必要悪も許容する、自分が絶対に正しいなんて口が裂けても言えやしない。それでも、自分の誓いを曲げる事だけは絶対に認められない。

 やりたい事をやるなら、何が何でも成し遂げる。痛みや苦しみ如きで諦めはしない。だから俺は、どんなにボロボロになろうと戦うのだ――とまあ、色々と自分語りが入ったが、一言で言うとだ。

 

『――愛故に、かな』

「愛……?」

『そう、愛。いいか、ヴァーリ少年。誰かを大切に想う気持ちは、どんな不条理にも打ち負けない強さをくれるんだ』

「そんな不確かな物が、それ程の力を与えるだと? そんな事が信じられる訳無いだろう」

『馬鹿言え、お前もう一辺愛の力に負けてるじゃないか』

「な、俺が何時誰に負けたと……」

『駒王学園での会談の時、グレモリー達の胸のサイズを半分にすると言われて激昂した兵藤に痛い目にあわされていただろう。あれだってアレだが愛の力の結果だぞ』

「ぬ、ぐぅ……」

 

 指摘してやった所、ヴァーリ少年は眉間に皺を寄せながら唸っている。負けてないとは言わせんぞ、あの時あの場所での二人のぶつかり合いは間違い無くヴァーリ少年の敗北だ。若干アレだったが、あれだって歴とした情愛と親愛だ。

 

《ククク、一本取られたようだな、ヴァーリ?》

「ふん……愛が力を与えると言うなら、俺はそれすら超える力を身につけるまでさ。もう二度と奴に遅れは取らん」

 

 ヴァーリ少年の背中に現れた光の翼、それに据え付けられている青い宝玉が点滅し、愉快そうな声が聞こえてきた。以前ヴァーリ少年と兵藤が戦った時にも聞こえたが、アレが【白龍皇の光翼(ディヴァイディング・ギア)】に封じられていると言う、【白龍皇アルビオン】の声なのだろう。

 

《こうして話すのは初めてだな、聖魔人よ。我が名は白龍皇アルビオン、忌まわしき神に封じられし二天龍が一体よ》

『初めまして、アルビオン。俺は外神翔一。聖魔人等と呼ばれているが、何処にでも居る唯の高校生だ』

「いや、何処にでもは……まあいい、一先ず今日は終わりだ。外神翔一、今からアザゼルの下に送る」

 

 そう言ってヴァーリ少年が何かしらの呪文を唱えると、ここに来る時にも使った魔法陣が足元に現れた。便利で羨ましいので、出来れば自分も何かしらの魔法や神器が使ってみたいのだが、移動系の能力を手に入れたらトルネがへそを曲げそうなのがなぁ……。

 等と考えていた所でヴァーリ少年の詠唱が終わり、魔法陣が強く発光を始めた。

 

『ヴァーリ少年、最後にもう一度言っておこう。ヒトは守りたいものがあれば、どんな不条理が相手だろうと絶対に屈しないんだ。君も、何でもいいから何か一つ、そう言う存在を見つけるといい。誰かの為の努力は、とてもやり甲斐があるぞ?』

 

 忘れない様にベルトと亡骸を魔法陣の中に引き寄せ、転移魔法によって飛ばされる直前にヴァーリ少年に意見すると、彼が口を開くよりも先に飛んだ。

 

 本来なら時間を取ってしっかりと根気良く教えるべきだが、自分は誰かに講釈垂れられる程の人生経験を積んでる訳ではない為、反論する暇も無い様に転移ギリギリに矢継ぎ早に伝えておいた。

 

 悪趣味かもしれないが、言いたい事を好き放題言って反論は受け付けないという行為は実に愉快だった。

 

 

 






大変長らくお待たせ致しました


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