ヒマリ&リオ、150連現在未だGETならず。
違和感。
残り石、2万を切った。
違和感。
アリス&ケイに備え、残りは無料ガチャに託すか?
違和感。
いや、これでいい。続行だ。
全て、問題なし。
翌日。中尾さんとの決闘から一夜明け、今日で完成に漕ぎ着けようと、俺は目の前に鎮座する“ベルト”と対面する。
隣に並ぶお面の方は既に完成させ、後はベルトとの“繋がり”を確かなモノへと調整すれば完成する。
今日まで1ヶ月弱。長いようで短い工程を経て、漸く最初の作品が完成されようとしている。
時間はまだ朝の六時半、外でバカスカ殴り合う東島さん達の声をBGMに俺は作業に集中する。
とは言え、俺のやるべき事は単純だ。土台となっているベルトに両手を翳し、力を通し、ただ念じる。費やす工程はそれだけ。
脳裏に浮かぶ印象と、それに伴う
印象は既に完成され、
文章であれ、図形であれ、果ては机上の空論であれ、素人の妄想であれど、それがイメージ出来るモノであれば
元となる土台が在れば尚更、時間と余力を注ぎ込めば、理屈で言えばダグバに生み出せないモノはない。
それがモーフィングパワー。原子と分子を操り、万物を操る無法の力。
まぁ、頭の悪い俺が賢しい口振りで説明できるくらい、ダグバの力は無法過ぎるという事。理論上、その気になれば小型の原子力炉心だって片手間に造り出せるとか、世界のバランスブレイカー過ぎて笑えない。
……もしかしたら、この世界に存在し得ない物質とかも造り出すことも出来るのだろうか?
暗黒物質とか、何とかエネルギーとか、何とか超合金とか。
(っと、雑念はダメだな。集中集中)
俺のモノ造りの際のモーフィングパワーはイメージに依存しやすく、下手な雑念が混じればその物体に含まれる不純物も多くなり、物質として雑味が出る。
それはそれで使いようがあるかもしれないが、強度も脆くなる為、モーフィングパワーを使用する時はそれだけに集中する事を気を付けている。
構築しては崩し、構築しては崩す。刀を鍛造する職人みたいな作業を脳内で繰り返し行い、ベルトの中にある“ソレ”を補強する。
(よし、最終工程も終わりが見えた。後はここから……)
もう少しでベルトは完成……の所で、外の音が止んでいることに気付く。おかしい、この時間帯であればまだ東島さん達の殴り合いの音が聞こえてくる筈なんだが……。
(誰か来たのかな?)
一応一葉さんも人の生活をしている訳だし、回覧板でも届いたのかな? なんて事を考えていると……。
「大変だよ白銀くん! ショッカーが遂に動き出した!!」
酷く慌てた様子の三葉さんが、奥さんのユカリスさんと一緒に部屋に雪崩れ込んできた。
「あと東島さんの変身ベルトを造ってるって本当!?」
「おい、そっちが本音だろ」
明らかに声音に込めた力が違ぇだろ。
◇
「ショッカー戦闘員募集中ゥ~?」
三葉さんが急いで言うものだから何かと思えば、スマホの画面にデカデカと写し出される募集のチラシに俺は怪訝さを隠しもせずにつぶやく。
いやだって、これまで散々裏で画策してきた連中が何でいきなり表だって出てくるんだよ。胡散臭いにも程があるだろうが。
あとチラシに書かれた絵もパチモン臭いし、絶対炎上狙いの詐偽商法だろ。
「これ、先日まで話題になったショッカー強盗の方じゃないですか?」
「僕もその可能性は考えたさ。でも、だからこそおかしいんだ。これまで表舞台に出てこなかったショッカーが、どうしていきなり人間社会にでて来たんだって」
「…………」
理由、か。考えられるとしたらショッカー側に何らかの契機が起きた事だろうか。
ショッカーの最終目的は世界征服。その事を考慮すればこれ迄のショッカーは謂わば潜伏期間の筈、世界中の至る所にショッカーの息が掛かった戦闘員を忍ばせて、組織や機関を支配するのが奴等の主な行動指針の筈だ。
「或いは、怪人の一人が倒された事で奴等の計画が前倒しにされたか」
「一葉さん」
「え? 怪人を倒した? え、何それ初耳なんですけど!?」
既に愛用のライダースジャケットに身を包み、腕を組んで佇んでいる一葉さん。
三葉さんが怪人が倒されたと聞いて酷くパニクってるけど……ゴメンネ、今説明している場合じゃないんだ。
こう言う時もホウレンソウって必要になりそうね。
「いずれにせよ、現地に行って真相を確かめる必要があるな。皆、行くぞ」
「待ってくれ!!」
この広告が嘘であれ本物であれ、相手がショッカーなら動かなくてはならんと語り、全員に呼び掛けるなか、東島さんが待ったを掛ける。
「白銀くん、ベルトの完成まであとどれくらい掛かる?」
東島さんのベルト、正直ほぼ完成と言えなくもないが……。
「最終動作チェックとか、最後に色々とやっておきたいから………あと一時間って所かな」
「よし、なら俺達は一時間後にそちらに向かう。だから皆は先に行っててくれ!!」
「そんなの通るかァッ!!」
予定しているショッカー募集の開催まであと四時間程しか時間がない。俺達のいる田舎は都会から電車で三時間程、ベルトの完成まではどう頑張っても間に合わない。
「どこの世界にショッカーの目論見を潰さないライダーがいる!? 行くぞ!!」
「い、イヤだー! 俺のベルトが、俺のベルトがあと少しで完成するのにィーッ!!」
「そんなに慌てなくてもベルトは逃げやしねぇって」
「イヤだー!」
駄々を捏ねる東島さんを一葉さんと中尾さんが引っ張っていく。自分のベルトの完成を今か今かと待ち望んだいたのだ、それはもう無念な事だろう。
「あ、でもマスクの方は完成したので、持っていって大丈夫ですよ?」
同調確認は終えているし、ベルトの方だけあれば問題ない。パッと見てごく普通のライダーのお面を手渡された三葉さんは、未だ駄々を捏ね続けている東島さんに渡す。
「後で俺も合流しますので、位置情報だけ送って下さい」
「分かった。白銀君も気を付けてね」
「俺が倒した怪人云々の話は一葉さんから聞いて下さい。多分、色々と脚色しているかもですが……」
「うん、そうするよ」
そういって手を振り、出発する東島さん達を見送った俺は、直ぐ様部屋へと戻り作業を再開する。
ベルトの完成まであと少し、気合いを入れて挑まねば。
◇
「っし、完成!」
東島さん達を見送ってキッカリ一時間。遂にベルトは完成した。動作も仕込みも全てチェック済み、後はこれを本人に渡してベルトそのものに使用者の情報を植え付けるだけ。
怪人が仮面ライダーのベルトを創るなんて、色々とツッコミ所はあるだろうがそこは敢えてスルー。東島さんの泣きながら変身する様を想像しながら、急いで俺は荷物をまとめて家を出る。
「っと、戸締まりもしとかないとな」
玄関の戸締まりを入念に行い、鍵を指定の位置に戻す。この数日ですっかり馴れた操作をして、改めて俺は予め創っておいたアタッシュケースにベルトをしまい、荷物共々愛車であるパンペーラへくくりつける。
エンジンを回し、島村邸を後にする。三葉さんから送られてきた位置情報を元に愛車を加速させる。
この分ならギリギリ東島さん達に追い付けるか? 人気のない一本道を走っていると、視界の端に何かが光るのが
咄嗟にブレーキし、車体を操りながら体を斜めへ泳がせる。刹那、自分の眉間の合ったところに鋭い何かが通過し、バゴンッと音と共に地面を深々と抉った。
(やっべ、ついAK○RAみたいになっちまった!)
そんなアホな事を考えながらハンドルとブレーキを操作し、ジャリジャリと音を立てながらの一時停止。光った方角へ視線を向ければ、空を飛ぶ異形の姿があった。
「こんにちは。いえ、もうすぐこんばんはかしら? そしてはじめましてイレギュラーの怪人さん」
「………ショッカーか」
「イエス。私は“蜂女”、あなたが殺した蝙蝠男と同じ、ショッカーの怪人よ」
ブブブと、虫の羽音を立てて宙に浮かぶ蜂の怪人。蜘蛛と蝙蝠と続く第三の怪人、それが濃密な殺意を携えながら俺を見下ろしていた。
「………蝙蝠男の仇討か?」
「さぁね。私はただショッカーの為に任務を完遂するだけよ。近々試合も控えている訳だし、ここいらで適当に死んで頂戴」
そういって向けてくるのは一丁の狙撃銃。ただの銃じゃない、やたらと銃口が大きいそれは………
「そうら、死になァ!!」
「っ、針ッ!?」
大砲の様な大きな針を打ち出してくる。咄嗟にハンドルを操り、車体を翻しながら回避。俺の居た場所を深々と抉るその威力は、どこぞの戦車砲を想起させる。
(こ、コイツ! まだ田舎とはいえこんな威力のモノをバカスカ射つつもりか!?)
「あら、意外と器用なのね」
いや、奴等の所業を真面目に考えた所で意味はない。既に人間社会へ根深く浸透しているショッカーだ。今日起こる騒動もどうせその力で揉み消すつもりだろう。
今の俺は大事な荷物も背負ってる身だ。ここでバイクから降りて戦えば、最悪戦闘に巻き込んでしまい1ヶ月弱の成果が無駄になってしまう。
それだけは絶対に避けねばならない。
(なら、今の俺がやるべき事は…!)
俺はアクセルを踏み、ハンドルを回してタイヤを回転させてパンペーラ250のギアを上げる。
「あら?」
そしてブレーキを離し………一気に加速。一瞬だけ前輪が浮かぶウイリー走行から直ぐ様体勢を整え、俺は蜂女を撒く為に来た道を引き返していく。
「あらあら、引き返すなんて……お友達の約束は良いのかい!?」
予想通り、蜂女は特殊加工された銃を抱えながら俺を追ってくる。
しかしやはりというべきか、俺達の存在は既にショッカーに知られていた様だ。なら、尚更捕まる訳にはいかない。
俺はアクセルをさらに回転させてパンペーラを加速させる。日頃から自分なりに手を加えてきたパンペーラ、この程度の速度に音を上げる事はなく、俺の乱暴な運転に付いてきてくれている。
だが、それでも空を飛ぶ蜂からは逃れるのは難しい。今も第六感とも呼べる感覚で背後から迫る砲弾の様な針を掻い潜ってはいるが、このままではいつか直撃を受けてしまう。
ならば、仕方ない。
「!」
バイクから腰を上げ、ハンドルから手を離し、膝を伸ばす。掟破りの立ち乗り、ブレはしない。ダグバとなり、異常なまでの肉体の頑強さと体幹を手にした俺は、この程度でバランスを崩す事はない。
でも、良い子は危険だから真似すんなよ。
「変身ッ!!」
両手を引き絞り、例のポーズを決める。全身に叩き付けられるような風を感じながら、自身の肉体の変化を受け入れる。
(まさか、
クウガ本編にはなかったバイクに跨がるダグバの姿。筋骨隆々で白と金に彩られたダグバがバイクを走らせるなんて、当時の俺は想像すら出来なかっただろう。
………所で、クウガファン的にバイクに乗るダグバはどう思うんだろうか? 解釈一致? それとも不一致? いや、今考える事ではないな。
「それが噂のダグバね! 思ってたより良い顔じゃない!!」
背後から聞こえてくる声と一緒にダグバが捉える空気を切る音、すかさずハンドルを操作すれば、地面を穿つ音が耳朶を叩く。
変身したことで身の安全を確保したが、戦いの優位性は依然として向こうが有利。このままでは埒が明かないと、俺は意を決して公道から外れ、
道なき道を往くその最中も、上空からの蜂女による攻撃は続く。地面を穿たれ、土や木の枝で汚れ、傷付いていくパンペーラ。
自分の愛車を乱暴に扱ってしまう自分と、容赦なく砲弾の針をぶちこんでくる蜂女に憤りながら、俺は息を潜め、エンジンを切る。
イメージをしろ。今の俺なら、ダグバでなら、
さぁ始めよう、俺達の【疾走】を。
◇
「───静かになったわね」
眼下に広がる山々と聳え立つ針葉樹林、辺りはすっかり夜の帳に包まれていた。
月明かりを背に辺りを見渡す蜂女だが、あの異様な怪人の姿は見えない。全身が白いからすぐに見付かりそうなモノなのに、案外あの怪人は隠れるのに特技を持っていたのかもしれない。
長年ショッカーが確認できなかった怪人、ショッカーとは異なる怪人。蝙蝠男を倒しショッカーに危機感を抱かせた要注意人物。
「蝙蝠男は奴と肉弾戦を挑んだから負けた。だから私はこの距離を維持を徹底し、一方的に蹂躙してやるよ」
懐になんて間違っても入れさせはしない。蜂女は自らの能力を総動員させてダグバの探索に集中する。
と、そんな時だ。
“ヴォンッ”
「そこッ!」
聞こえてきたエンジン音、その瞬間相手の位置を割り出した蜂女はすかさずその場所に向けて引き金を引く。
瞬間、音のした方角に針が着弾し、土煙が舞い上がりドゴンッという鈍い音が辺りに響き渡る。当たった? いや、あの様子では恐らく……。
“ヴォンッヴォヴォンッ”
「そうだよなぁ、そんな簡単に終わるわけ───」
聞こえてくるエンジンを噴かす音、その音にダグバの存在を認識する蜂女は続いて引き金を引き絞ろうとするが………針が射出する間際、蜂女はふと違和感を覚えた。
「音が………変わった?」
奴の愛車であるパンペーラのエンジン音はもっと軽く、もっとしなやかな音だった。間違っても、こんな大地を震わせるような重低音な音ではなかった筈。
どういう事だと不思議に思った次の瞬間、針葉樹林………その一角の木々が“ヴォンッ”というエンジン音と共に吹き飛ぶのが蜂女の目に写った。
なんだこれは? 不思議に思うのも束の間、木々は次々と吹き飛び、舞い上がる土煙と埃は間違いなく蜂女の近くへと迫って来ている。
ゾクリと、蜂女の背に悪寒が走り、蜂としての本能がこの場からの撤退を進言している。
このままではヤバイと、その場から翻した瞬間───奴と目があった。
吹き飛ぶ木々、その木々を足場に迫る白き怪物ダグバ。奴の跨がるバイクのパンペーラには重厚なクワガタを模した白い鎧が取り付けられていた……。
“ゴウラム”
それは嘗て、クウガと共にグロンギと戦ったリントの技術で造られた超古代科学の結晶体───を模倣した急造の鎧である。
「────退け」
「ヒッ───フゲェッ!?」
怯える蜂女の顔面を、バイクのタイヤが踏み締める。一瞬の悲鳴が豚の断末魔に搔き消され、その声を耳にする事はなく、
背後から聞こえる蜂女の断末魔を聞き流しながら、公道へと戻り……。
「無駄な時間を食っちまった。間に合ってくれよ!」
ダグバは白銀の姿へと戻り、しかしバイクはゴウラムの鎧を着用したまま、合流地点へ急ぐのだった。
Episode11 【疾走】
Q.このゴウラム白いの?
A.白ですね。あと本家みたいに自我はありません。
あくまでその場凌ぎの鎧ですので、じきに瓦解します。
Q.蜂女、死んだの?
A.この程度で音を上げる怪人ではありません。
次回、【変身】
オマケ
勝利の女神編 その2
それから、色々とあった。
スピキとドロ犬と一緒に繰り出した旅は、険しくはあっても辛くはなく、寧ろ充実とした日々となっていた。
時折ラプチャーなる機械の群れが襲ってきたり、ヘレティックなる女達に襲われたりしたけど、ダグバと化した俺がいつも追い返していた。
以前、俺ではなくドロ犬とスピキを狙った攻撃をしてきやがったのでその時はマジ切れし、超発火能力で周囲一帯まるごと焼け野原にしてやった。
向こうも相当痛手を負ったみたいだし、当分は余計な茶々を入れられる事はないだろう。
「しっかし、時折見かける女の子達といい、ヘレティックとかいう連中といい、この世界の女性は皆、あんな痴女みたいな格好してんのか?」
「ニャワン……」
「エーウ……」
「だよなぁ、流石にそれはないよなぁ」
長らく一緒にいる為、すっかりこの二匹の言いたい事が分かる気がする。
特にドロは知能が高いっぽく、良くスピキの面倒をみてくれたりしている。
「そろそろ愛車の点検もしたいし、どっかに整備できる場所とかねぇかなぁ」
でないと、そろそろやってくるだろう奴等とまたかち合う事に……。
「いた! 見付けたぞ! 我が第二の心友、スーパーヴィランよ!!」
「うわきた」
「待ってくれ! もう一度、もう一度君の変身を! 私に見せてくれ!!」
「待つのだドレイク! 彼はスーパーヒーローになり得る逸材! シンデレラと一緒に悪と戦うのだ!!」
「ドロ! スピキ! 逃げるぞ!!」
「ニャワン!」
「アーウ!」
背後から駆け寄ってくる二人の少女、あの二人の前で変身してしまったのが運の尽き。
俺は二匹の愛犬を懐にしまい、パンペーラで荒野を駆けて行くのだった。
「指揮官、宜しいのですか? 彼を───未確認生命体第0号を放っておいて」
「いや、うん。そうなんだけど………なんだか気の毒に思えて」
「気持ちは分かるけどね」
願わくば、彼等が人類の脅威になり得ない事を。
勝利の女神を導く指揮官は去り往く青年にそう願うのだった。