今年最後の投稿になります。
皆様、良いお年を。
そんな訳で初投稿です。
今日は尻餅さん────島村一葉さんが定めた10日後の日、半ば強制的に特訓へ参加する事になった俺は、あの日連絡先を交換した三葉さんが送ってくれた住所を目指してバイクを走らせていた。
やってきたのは都心から離れた田舎町、掛かった時間は約三時間、普通の人なら移動だけで疲れそうな距離だ。
そんな距離を自転車で往復しているという島村さん………競輪選手とか目指せば良いんじゃね?
「確か、三葉さんが送ってくれた住所だとこの辺りの筈………」
「来たな、ダグバ」
アプリの地図に従って進むと、島村さんが仁王立ちして待ち構えていた。家も昔ながらの趣のある所で、ザ・田舎という感じだ。
て言うかダグバ呼びかよ。この間普通に自己紹介したでしょうが、まぁ実際ダグバに変身できるから仕方ないけど。
「良いところに住んでるッスね」
「あぁ、特訓に最適だ」
バイクを停め、島村さんに着いていく。
「ダグバ、貴様はこの10日間何をしていた?」
「え? えーっと、筋トレだったり……後は能力の確認だったり」
「ほう! 能力の確認!」
なんか急に食い付いてきた。そうだよね、ダグバの能力どんなもんか知りたいもんね。
「アレか、噂に聞くダグバの能力か! どうだった、出来たのか!?」
スッゴいキラキラした目で食い付いてくる。圧が、圧が凄い!!
「コラコラ兄さん、あまり突っ込んじゃダメだよ、白銀君が戸惑っているじゃないか。今日は特訓の日なんだろ」
「ムッ、そうだったな」
弟の三葉さんの一言で我に返った島村さんが俺から離れていく。た、助かった。
「ごめんね白銀君、兄さんは自分の欲求に素直な人だから……」
「アハハ、この間会った時点で何となく察してはいました。でも大丈夫です、悪い人ではないというのは分かっているつもりなんで」
欲求というか欲望というか………自重という言葉を捨て去った様な言動してるけどね。悪人ではないけど。
どうか悪人ではないだけで、と注釈が付かないようにしてくれ。
「理解してくれてありがとう。それで………モーフィングパワーは使える様になったのかい?」
「お前もかよ」
この兄弟、毛色が違うかも知れないけど根っ子の部分は大体同じだ。
「揃ったな」
そうして島村さん
東島丹三郎さん、岡田ユリ子さん、ユカリスさん、それぞれが此方へ視線を向けると、東島さんと岡田さんが冷や汗流しながらも不敵に笑い、ユカリスさんは怯えた表情で岡田さんの後ろに隠れている。
「だ、ダグバ様……本当に来たんだ」
「白銀です。というか何で敬語? 昨日普通に話してくれたじゃん」
「ヒッ! だ、だって、ダグバ様って3万人の人間を虐殺してるじゃないですか! 15話も34話も怖かったですけど、規模で言うならダグバさんがダントツですよ!? あ、あんな一方的な虐殺、ショッカーだってやりませんよ!!」
ははーん、どうやら三葉さんユカリスさんに色々と補足説明したな? テレビだけでは伝わりきれなかった所を、小説やら公式サイトとかを駆使して紹介して、事細かにありのまま伝えちゃったな?
良い仕事した感出して笑顔でグッとサムズアップしてんじゃねぇーよ! その親指へし折んぞ!?
「い、いやあのねユカリスさん。それは、あくまでテレビのダグバさんの話ね? グロンギってヤバイ連中の長だから」
「でも、白銀さんもダグバですよね?」
「それは………はい」
否定出来ない事実なので頷くと、ユカリスさんは涙目となり、今度は三葉さんの後ろに隠れる。
気持ちは分かるけど、女の子にこうも怯えられると……ちょっとヘコむ。いや、怪人としては正しい事かもしれんが。
「さぁ、くじ引きを用意したぞ」
そうしていると、家の中から木の枝っぽいモノを数本握り締めた島村さんがやって来た。言われるがままに1本引き抜くと、そこに数字の1が描かれていた。
この数字で何を割り振るのか、考えていると東島さんは後ろの地面に何かが描かれている。
「と、トーナメント表?」
描かれていたのは1~6まで割り振ってあったトーナメント表だった。先日の話し合いからそうだが、本気でこの人達仲間内で戦おうとしているのか。
俺とユカリスさんを除いた全員が何の疑問を抱くことなくそれぞれ割り振られた数字の下に名前を書いていく。実名ではない、それぞれの魂に刻まれた真名で。
いや魂に刻まれた真名って何? アレか、この人達戦いというか戦いごっこがしたいだけなのか?
しかも島村さん────一葉さんが言うには俺が優勝して何度でも挑戦受け、誰にも文句言えなくなった奴が一番強いとか言い出した。
いやルール無用かよ、そんで東島さん達は当然のように受け入れているし……これ、俺がおかしいの? ユカリスさんも引いてるし、俺達の感性が可笑しいと言うことではない筈。
そんなこんなで割り振られた番号に俺もダグバで書いた。書くしかなかった。
その後、三葉さんとは最初に戦いたくないと騒ぐユカリスさんの話を聞き入れ、最初の試合は東島さんとユカリスさんが勝負する事になった。
……ユカリスさん、ショッカーの戦闘員らしいけど、大丈夫かなぁ。て言うか東島さん、女の子相手にライダーパンチとか出せるの?
あと、全然関係ないけど………岡田先生のタックルってなに? そんな仮面ライダーいたっけ?
「…………えっ、仮面ライダーストロンガーに出てくる初の女性戦士!? そんなのいたの!?」
「えぇ、電波人間タックルよ。覚えておきなさい、テストに出るから」
「いやでないでしょ」
「私が出すわ」
「教師がテストに私情を持ち込むな」
絶対正解率低いだろその問題。
そうこうしている内に東島さんとユカリスさんの試合が始まる。ユカリスさんはショッカーの戦闘員、三葉さんへの愛の力とやらでショッカーの洗脳から解放されたと彼女。
そんな彼女に東島さんは戦闘員に変身してくれと懇願。子供の頃から憧れていたシチュエーションに土下座までして頼み込む姿は…………うん、ちょっと言葉に出来ないや。
そんな東島さんの願いをユカリスさんは渋々ながら了承………からの、可愛さアピールするユカリスさんに東島さんは大ブーイング、観戦に勤めている一葉さんも野次を飛ばすもんだからユカリスさんは大いにキレ散らかした。
戦う気処か殺す気で挑むユカリスさん、戦闘員特有の“イーッ!”という掛け声と共に変身、開始の合図を待たず戦いは始まった。常識で考えれば、常人の数倍の力があるとされる戦闘員の方が強さは上。
しかし。
「ライダァァァァ………変ッッ身ッッ!!」
東島さんが取り出したのは、お祭りや縁日の屋台で良く見かける仮面ライダーのお面。クオリティは低く、子供が付けるようなオモチャ未満のお面。
しかし、その時確かに俺は見た。仮面ライダーが、最初の仮面ライダーの姿がそこにはあったのだ。
迫る戦闘員ユカリスに仮面ライダーは見舞う。腰を落とし、右手を後ろに回し、握り締める拳と腕には太い血管が浮き出ている。
「ラ~~~~イ~~~~ダ~~~~~パンチ!!」
放たれた一撃は、綺麗にユカリスさんに直撃。鼻血が吹き出し、一回転二回転と回転しながら吹き飛ぶ彼女に俺達は言葉が出なかった。
まるで10tトラックに跳ねられた様な衝撃、顔面から地面に思い切り突き刺さり、受け身すら取れなかったユカリスさんはバタンと倒れ、ピクリとも動けなくなった。
「ゆ、ユカリスゥゥゥゥッ!?!?」
決闘後………というより、事故現場のソレ。当然カウントも入らず、勝者は東島さんとなった。
………いや、絵面がヤベェ。仮にも華の女子高生が顔面にグーパン入れられて失神とか、普通に警察案件じゃねぇか。
え、どうしよう。俺、てっきり簡単な応急処置用の医療箱しか持ってきてないんだけど!?
救急車? それとも警察? 一人アワアワしている俺を他所に、三葉さんが駆け寄りユカリスに人工呼吸。
この場面で人工呼吸って有効なの? なんて不思議に思っていると、ユカリスさんは無事目覚めた。頸椎とか大丈夫なのだろうか? 最悪、俺がモーフィングパワーで何とかするしかないのかと心配していたが、案外元気そうなユカリスさんに安心した。
それで次の試合、一葉さんと三葉さんの兄弟対決が始まるのだが………正直、あまり集中できなかった。
いや、三葉さんの合気道は凄まじかったし、一葉さんの軽快な動き、飛んでるような縦横無尽のジャンプから繰り出される蹴り技は見ていて素直に凄いと思えた。
けれど、それ以上に隣で座る東島さんからの圧が凄かった。鼻息荒く、目をキラキラと………いや、血走っている彼の目付きは最早犯罪者のソレ。
恐怖すら感じる40のオッサンの圧力。お陰で女性二名からもスッカリ距離が離れてしまった気がする。畜生、俺が何をしたって言うんだ。
そんな訳で、兄弟対決はいつの間にか三葉さんの勝ちで幕を下ろしていた。
「強くなったな三葉。兄として、V3として、お前の成長を嬉しく思うぞ」
「ありがとう、兄さん」
「さて、それでは次の試合だが……」
「あ、あの……」
「白銀君、どうかしました?」
「俺、ちょっと腹の具合が悪くて……」
隣にいる東島さんから逃げ出したい意味を含めて、やんわりと断ろうとしたのだが……。
「さぁ、やろうダグバ!」
「白銀です」
「市販された整腸剤ならあるぞ? ダグバ」
「白銀です」
「応援してますよ、ダグバ君」
「白銀です。アンタわざと言ってるだろ」
三人の自称ライダーから肩を捕まれ、逃げ道を封殺されてしまう。最後の頼みである女性陣に助けを求めるが、岡田先生は笑顔で手を振るだけでユカリスに至っては………おい、お前今親指で首をかっ切ったな? 発火させたろかコノヤロウ。
しかし、どうあっても戦いは避けられない。なら、立ち向かうしかないじゃないか。
◇
「まさか、君と本気で戦えるとはな。ダグバ」
「今は白銀です。それに俺は【クウガ】に出てきたダグバじゃない」
対峙する二人、未だ仮面ライダーのお面を装着していない東島丹三郎はその目に涙を溜めて歓喜に震えている。
「勿論、分かっているさ。君はショッカーに改造された怪人ダグバ、でもその心は人間、そうだろ?」
「………そのつもりです」
それはそうだろう。確かに白銀白斗は自身が改造された経緯も記憶も持ち合わせていないが、それでも人の心まで捨てた覚えはない。
人並みに悲しむこともあれば、怒る事だってある。何処にでもいる、極々当たり前な一般市民なのだ。
ダグバにならなければショッカーに関わろうとは思わない。あの日、ショッカー達と出会わなければ自分は今もただの大学生でいられた筈なのだ。
「………東島さん」
「うん?」
でも、これから先もあの時のように逃げられない場面に遭遇したら、俺は立ち向かう。立ち向かうしか選択肢がないのだ。
何故なら、今の俺はただのパンピーであると同時に。
「お望み通り、見せてあげますよ。ダグバを」
「ッ!?」
「だから、死なないで下さいね」
超古代の民族、グロンギ最強のン・ダグバ・ゼバなのだ。
◇
「ラ・イ・ダァァァァ───変ッ身ッ!!」
目の前の青年の纏う空気が変わる。それに合わせて鳥肌が立つ程に寒気を感じた東島は、咄嗟に変身し、お面を被る。
場の空気の変化を感じ取れたのは東島だけじゃない。岡田ユリ子や島村兄弟も食い入る様に前のめりになっている。
彼等が脳裏に浮かぶのは、【クウガ】の最終回。
雪が吹き荒ぶ山の中で、究極の力をぶつけ合う白と黒の戦士達。
目の前の二人とは似ても似つかない状況なのに、何故か三人は妙な予感が働いて仕方がない。
「見えるか、三葉」
「うん、僕も見えるよ、兄さん」
「もしかしたら、これが事実上の決勝なのかもね。私、戦ってないけど」
冷や汗を流し、事の成り行きを見守る三人。そんな時、何処と無く風が吹き、土埃が舞い上がり二人を隠してしまう。
「な、何!? 急に風が!?」
動揺しているユカリスを他所に、見放せない三人。明らかな予感を抱きながら土埃の先を見つめていると……。
「あ、兄さん! 東島さんが、東島さんがいます!」
「ヨシ、まだ生きているな!」
二人が姿を消したのは時間にして数秒程度、それでも無事な姿の東島に島村兄弟は安堵の溜め息を漏らす。
「白銀君は………ッ!?」
しかし、そんな安堵していた気持ちも束の間、土埃の隙間から覗かせる白と金の姿に岡田ユリ子は息を呑んだ。
顕になる【白き闇】、背中から生える金の触手をマントの様に靡かせ、佇むその姿は神々しくも禍々しい、その姿は正に白き悪魔。
その威容、その畏怖に観戦に徹していた四人が改めて度肝を抜かす一方で。
「さ、最高だ」
東島丹三郎は、お面の奥で歓喜の涙を流す。
「さぁ、俺を笑顔にしてみせろ───仮面ライダー」
今ここに、夢(?)の対決が始まる。
Q.主人公は五人の素性を知ってるの?
A.最初の集まりの時に知りました。
Q.主人公、タックルの事知らないの?
A.ストロンガーはすこーし知っているが、タックルなんて存在は全く知らない。
「勉強不足ね。少し前には映画にも出ていたのに」
「何気に衝撃的でしたね」
Q.主人公、ダグバの能力の使えるの?
A.待て次回!