旅は終わった。なのに何故新たなサーヴァントが?
しかも人類の脅威特攻………これは、一体?
そんな訳で初投稿です
仮面ライダークウガ。その作品の事は東島丹三郎も知っていた。昭和最後の仮面ライダーである『仮面ライダーBLACK RX』の十年以上の間を開けて放映された所謂【平成最初の仮面ライダー】。
これ迄の仮面ライダーとは事なり、人間関係や刑事ドラマの様な部分も加えられ、これ迄とは異なる仮面ライダー作品の在り方に当時視聴していた東島は少しばかり戸惑っていたのを覚えている。
警察と協力し合い、超古代人グロンギと戦うという現実的な描写は、これ迄の仮面ライダーの作品とは異質なもの、けれど不思議と忌避感や拒絶といった感触はなく、いつの間にか『そういうものか』と受け入れている自分がいた。
クウガだけが戦うのではなく時に警察が協力し、怪人を解析しながら相手の弱点を突き、警察だけで怪人を追い詰めていくというドラマ性は見ていて飽きが来なかった。
けれど、リアル路線だからこそ視聴者に強烈な印象を与えたのもまた事実。敵怪人であるグロンギの殺戮ゲーム【ゲゲル】に巻き込まれた被害者とその遺族の描写は生々しく、時に恐ろしい残虐性を発揮するグロンギに当時の子供達の多くはトラウマを植え付けられた事だろう。
生々しくも、それでいて何処か爽やかな印象のある平成先駆けの仮面ライダー。東島丹三郎にとって、仮面ライダークウガとはそんな不思議な魅力のある仮面ライダーだった。
◇
目の前の対峙する二人。片や身構え、もう片方は自然体のまま佇むその光景に、島村達は固唾を呑んで見守っていた。
「なんて圧だ。直接対峙している訳じゃないのに、凄いプレッシャーだ……!」
「東島さんも攻めあぐねている。当然だ、迂闊に間合い込んだら、カウンター一撃で御陀仏だ」
目を見開き、一瞬たりとも視線を逸らさないようにしている島村兄弟も、凄まじい圧を放つダグバに圧倒されていた。
【白き闇】或いは【究極の闇を齎す者】、古代の碑文に記されし嘗ての怪人。その二つ名に偽りのないダグバの佇まいに、島村兄弟含めた四人は冷や汗を流す。
(兄さんなら自慢の跳躍力で上からの攻撃で機先を制する事は出来そうだけど、僕は合気道主軸のカウンター型。圧倒的膂力を誇る怪人相手にはどうしても足踏みをしてしまう!)
故に、今回の仮面ライダーとダグバの戦いは後のショッカーの対怪人戦に於いても大いに意味のある戦いなのだ。
そういう意味でも東島の戦い型を参考にしたい三葉であるが、当人である東島は未だ仕掛けようとしていない。
膠着状態の二人に不満こそ募るが、それも仕方のない事であると三葉は思う。相手はグロンギという殺人集団の中でも群を抜いて悪辣なン・ダグバ・ゼバなのだ。
慎重になるのは当たり前だ。寧ろ、原作で正面から殴り合いに挑んだクウガ……五代雄介に三葉は改めて内心で惜しみない称賛を贈る。
普段は平成ライダーに辛口な兄が、『凄い奴』だと絶賛する数少ない仮面ライダークウガだが、兄はただクウガの活躍を称賛した訳ではない。
人を殴ることに最後まで躊躇しながら、それでも誰かの笑顔の為に戦うことを決意した五代雄介の覚悟に心の底から尊敬しているが故にである。
その決意が、覚悟が、或いは勇気が東島にはあるのか。そして、その疑問はそのまま自分達にも当てはまる。
目を逸らす訳にはいかない。幼い頃にショッカーと相対し、その恐怖を知る自分達だからこそ、今一度その覚悟が問われるのだ。
「───動くわよ!」
「「ッ!?」」
正面からの真向勝負。ダグバを相手にその選択はあまりにも無謀だか、同時に英断でもあった。
何せダグバはその気になったら周囲の物質を原子・分子レベルで弄るモーフィングパワーを有し、対象を発火させる異能を持っている。
距離を離したらその時点で死は免れない。その上で接近戦に挑む東島丹三郎の勇気を、三人は素直に称賛した。
「ラ~~~イ~~~ダ~~~……パァァンチッ!!」
吐き出される裂帛の気合いと共に打ち出される
ダグバは構えない。避けようともしない。渾身の一撃を放つライダーを前に、
バゴンッと、それは凡そ人の体から発していい音ではなかった。明らかにこれ迄で一番………或いは蜘蛛男に見舞った時以上の会心の一撃は───。
「微動だに………していない!?」
「尻餅処か、
「やはり、怪物っ!!」
あの一撃を受ければ自分達も唯では済まない。正真正銘本気で相手を斃す意思と威力を込めた一撃は、しかしダグバを揺さぶる事すら敵わなかった。
加減も遠慮も容赦もなかった。今の一撃は東島丹三郎の最大にして最高の一撃だった。
それなのに。
「っ、グゥッ!?」
ダグバに有効打を入れる処か、殴った側の東島が苦悶の声を漏らす始末。
しかし、痕は残された。うっすらと自身の身体に付いた拳の痕をダグバは指先でなぞり……。
「────いいパンチだ」
「ッ!?」
「次は、此方の番だな」
ダグバは───嗤っていた。
「ッ!?」
拳を握り締める。右足を後ろに下げ、東島を見据えるその姿は───奇しくも、先の彼と酷似していた。
「確か、こうだったな」
「ま、まさか……!?」
ギリギリと、ダグバの握り締めた拳から異音が鳴る。
ダグバの
推定ダグバのパンチ力───80t。
「ライダァァァァ………!」
そんなダグバの拳が、ライダーパンチとして襲い掛かってくる。膨れ上がる力、まるで巨大な臨界寸前の爆弾を前にするような圧を前に東島の脚が竦む。
「避けろ東島ぁッ!! 死ぬぞォッ!!」
「ッ!!」
観戦側の一葉からの叫びで我に返った東島は、一目散に踵を返し……ジャンプ。
「パンチ」
溜めに溜め、放たれた一撃は東島のいた場所を通過し、地面に着弾。
瞬間、地面は爆発したように弾け飛び、東島諸とも周囲は爆風で覆われた。
◇
「い、つつ……全員、生きてるか?」
「な、何とか……」
「ユカリス、ユカリスは大丈夫!?」
「お、おしっこ漏らしちゃった」
地面に伏せ、土埃の付いた衣服を叩きながら四人は立ち上がる。その内の一人であるユカリスは自らの失態を赤裸々に告白するが、そんな彼女の恥態を笑う者はいない。
「に、兄さん、家が!!」
「縁側が崩壊しただけだ。まだ建て直せる」
ダグバの起こした爆発、その爆風と衝撃により一葉邸の縁側は吹き飛んでしまっている。
ダグバと東島が戦っていたのは家より離れた場所、それなのにアレ程の威力という事は、着弾した場所はもっとヤバイことになっている筈。
舞い上がる砂塵で覆われていた視界、再び何処からともなく吹いてくる風が一葉達の視界を開けていくと………その光景に、改めて四人は絶句する。
抉れた大地。何もなく、ただ平面な地面だった土地がたった一度の拳が振り下ろされただけでクレーターが出来上がっている。
半径10m以上に及ぶであろう爆心地。生身の人間が受ければ、跡形も吹き飛びそうな一撃、そんな爆心地の中心地にて佇むダグバを目の当たりにして、改めて四人は思い知る。
これがダグバ。グロンギの頭目にして“群”のショッカーと対を為す“個”の怪物。
「ね、ねぇ……東島さんは大丈夫なの?」
「いや、死んでるでしょう、流石に」
心配そうに呟くユリ子とは他所に、ユカリスは本音で呟く。心情的には否定したい三葉だが、今のダグバの一撃を前にしたら、それを否定出来る要素はない。
直撃は勿論、衝撃に巻き込まれただけで死ねる。あの時、東島は死に物狂いで避けようとしていたが………。
「舐めるな、仮面ライダーがあの程度の爆発で死ぬかよ」
そんな三葉達の心情を見透かす様に一葉が言葉を紡ぐ。この場にいる誰もが一度は見た。彼が仮面ライダーとなり、ダグバに挑む瞬間を。
であれば、未だ変身を解いていない東島が死ぬことはない。間接的な一葉の絶対的な信頼、それは東島こそが仮面ライダーであると認めている証でもあった。
そして。
「…………」
土埃の奥から、五体満足の東島が現れる。衣服はボロボロで、全身に擦り傷が出来ているが、それでも立ち上がっている東島に三人はホッと安堵の溜め息を漏らす。
「よ、良かったぁ、東島さん生きてたぁ……」
「ね、ねぇ流石にもう止めた方が良くない? 明らかにやりすぎだよ」
「…………」
ダグバの戯れで何とか生き残れている東島だが、それは相手がノリの良い
ダグバの用いるモーフィングパワーは物質でアレば大概通用する。無機物有機物問わず干渉し、プラズマを発生させて問答無用に燃やしてしまう。
勿論、
しかし、島村一葉が目指しているのはショッカーの打倒。幼き頃に殺された祖父母の仇を打つ為に今日という日まで鍛えてきたのだ。
今さら自分が引き返すつもりはない。しかし、それを
島村一葉がらしくもなく、そんな事を考えていると。
「すまない、少しだけ待ってくれ!」
今まで沈黙していた東島が、挙手して声を張り上げる。これにはダグバも困惑したように首を傾げている。
一体何をするつもりだと、仮面ライダーのお面に手を伸ばす東島にダグバ含めた全員が首を傾げた………その時。
バチャッと、そんな音と共にお面の内側から水が溢れ落ち、東島の足下を濡らしていく。汗? にしては凄い量だと
「すまない。感動のしすぎで涙で視界が塞がれてしまっていた。さぁ、続きをやろう!!」
再びお面を被り、構え直す。東島の言葉には恐怖や絶望はない。あるのは何処までも純粋な歓喜の気持ちだけ。
相手が手強い怪人だろうと関係ない。東島丹三郎にとって仮面ライダーとして戦えること、その事実だけあればショッカーと戦って死ぬことも辞さない。
加えて、相手は平成仮面ライダーの先駆け作品である【クウガ】のラスボス。夢のコラボだと、滾らずには、喜ばずにはいられなかった。
恐怖も挫折も絶望もない、ただ仮面ライダーに憧れ、仮面ライダーが好きな少年の眼差し。そんな純粋な眼差しを前にして……。
「………プッ、く、はは、ハハハ、アハハハハハ!!」
それは白銀白斗の笑いか、それともダグバの嗤いか、それは本人にしか分からない。ただ、一つだけ言えることは……。
「いいよ、やろう」
「行くぞ! ライダァァァァ………キィィィィックッ!!」
この時、
◇
はい。そんな訳で俺と東島さんとの試合は俺の勝利という事で幕引きとなりました。
いやね、東島さんてばタフ過ぎ。なんで直撃を避けたとはいえダグバの一撃に普通に耐えているんだよ。加減したとはいえ、ダグバの一撃だぞ? 死にはしないものの、普通は先の一撃で戦意やら諸々が意気消沈する所でしょうが。
え、もしかして本人に自覚が無いだけで実は東島さんも改造されてんじゃないの? そう思える位に東島さんの耐久力は常軌を逸していた。
基本的には拳圧で吹き飛ばしたり、三葉さんの合気道を見様見真似で投げ飛ばしたりしたのだが、何度吹き飛ばされようと立ち向かってくる東島さんに、俺は少し恐怖した。
対峙しているのは仮面ライダーなのにゾンビを相手している気分、そんな異常な
もうね、割りと屈辱的だったよ? グロンギ頭目であるダグバが、不殺という縛りはあっても相手の戦意を挫けなかったという事実は。
まさに『試合に勝って勝負に負けた』みたいな感じ。でも、気分としては悪くない。どんなに倒されても立ち向かってくる東島さんの姿はボロボロになっても普通にカッコ良く、最後辺りは本当に仮面ライダーと戦っている気分だった。
けれど流石に相手を殺さずに戦うというのは神経を使うので、一葉さんに壊れた縁側と庭の修理を条件に
その代わり東島さんは本人の希望もありそのまま続行。あれだけやったのにまだそんな元気があるのかと、この時の俺は正直引いた。
んで、その後の俺は壊した縁側や庭の修理、東島さんの衣服の修繕等をしていたのだが、その時も一悶着あった。何せ俺がモーフィングパワーを使えているのを目の当たりにしたのだから、四人はキラキラした眼差しを向けてくるのだ。
俺が破壊した縁側と庭、並びに東島さんの破れた衣服と破損した仮面は無事修復。時間的に5分も掛からなかった。
その後は予定どおりの試合運びになったのだが………いやー、みんな強い。島村兄弟の立ち合いの時点で分かっていたが、四人とも戦闘能力がバカ高い。
繰り出される技の数々と派手なアクション、普通にお金が取れる白熱した戦いは素人な俺でも見応え充分だった。
と言うか、全員が
と言うか、唯一女性であるユリ子さんの強さがエグい。元ネタの電波人間タックルの電波投げを得意な技としているらしいが、普通に打撃や絞め技も得意とか………もう教師じゃなくて総合格闘家になれよ。
そんでもってこのトーナメントに優勝したのもユリ子さん改めタックルでした。もうね、ちぎっては投げちぎっては投げと、彼女の足下は死屍累々でしたね。
いや、全員生きてるけど。
つーか、何度も言うけど全員タフ過ぎな。東島さんに至っては頭から地面にめり込んでたし………普通人間はアレだけで死ねるからね?
東島さんって本当に人間? 実は俺みたいに無自覚で記憶無しに改造されたんじゃねぇの? 違う? ソッカー……。
そんなこんなで優勝した
あの豊満なたわわは伊達ではないとだけ言っておこう。
その後、最後に一葉さんがユリ子さんに告白し、それをユリ子さんが蹴り飛ばしてトーナメントは無事終了、反省会は後日改めてという事で解散となった。
「いや、アンタ等ちゃんと病院行って精密検査受けろよ?」
「「「「?」」」」
「揃って首傾げてんじゃねぇよ。俺がバカみたいだろうが」
「だ、ダグバ様がツッコミしてる……」
あと、ユカリスさんは改めて俺を敬称呼びにする事になったそうだ。
理由は………聞かないでおく。
そして後日、とある居酒屋にて。
「まとめて掛かってこい。ライダーども!!」
「いやどういう状況?」
Q.ダグバのモーフィングパワー使えるのね。
A.まだ練習中だけど、取り敢えず物を修復するぐらいは出来た。
今回は東島の衣服とお面、島村家の庭と縁側、そしてタックルの割れたサングラス部分を新品同様に修復。
彼等に凄く感謝された。
Q.モーフィングパワー、医療とか治療に利用できない?
A.
「わ、分かんない。どうなんだろ? でも………出来た方がいいのかなぁ」(チラッ
「「「「?」」」」
「はぁ」
「ダグバ様、ドンマイ」
次回、【謝罪】
「よそのご家庭にこんな事言うのもなんですけど……一度、妹さんにちゃんと謝った方が良いんじゃないですか?」
「何故だ?」
「コイツ、人の心とか無いの?」
「V3だが?」