再び始まった僕達の旅。
次なる目的は過去か未来か。
そんな訳で初投稿です。
「辻斬り?」
某大学。先のハチャメチャな反省会から一夜明け、大学の講義に出席していた俺は、目の前の友人から奇妙な話を聞かされた。
「ああ、なんか近頃そんな噂が出回っててさ、何でも全身真っ黒な奴等がデカイ真っ黒女に殺されてるんだとか」
「えっ、な、なに? どっちがなんだって?」
「どっちも真っ黒なんだと」
友人が言うにはここ最近、街では全身黒ずくめの連中が同じ黒ずくめの女に殺されて回っている。なんて、怪談染みた噂が広まっているらしい。が、当然そんな噂が流れているのはネットの何処にも書き込まれてはいない。
友人はそんな信憑性のない、ネットにも掛かれないような小さな都市伝説みたいな噂を見付けるのが得意らしく、ネタを見付けては俺にちょくちょく話してくれる。
「全身黒ずくめかぁ。何かこの間まで流行ったショッカー強盗を思いだすな」
「あぁ、言われてみれば確かに」
全身黒ずくめ。その特徴はまさしくショッカー戦闘員を指したモノだが……真意はまだ定かではない。
しかも、噂の内容的にどうやらショッカー戦闘員同士が争っているみたいだ。何を目的に?
(今の俺達のいる世界にショッカーは至る所に潜伏し、潜んでいるとされている。三葉さんも同意していたから、その数と規模は計り知れない程に巨大な筈だ)
なのに、自らその数を削ぐような事に何の意味があるのだろうか。 より質の高い戦闘員の選定? それとも蠱毒の蟲理論でより強い怪人を生み出すための儀式?
もしくは……。
(裏切り者の粛清………か?)
脳裏に蘇るのは愛の力でショッカーの洗脳から解放されたと言う、三葉さんの妻であるユカリスさんの存在。昨晩のヤンキーのおっさんもユカリスさんが言うにはショッカーの洗脳から解放された個体みたいだと言われていたし、案外そういった存在は数多くいるのかもしれない。
で、そんなショッカーの鎖から解き放たれた戦闘員を野放しに出来ず、そんな彼等を粛清する戦闘員、或いは怪人が解き放たれた……と。
根拠のない推測だけど、黒ずくめ同士の争いが起きているのは事実。
(気になるのはその場合、現場を目撃した人間の生存の有無だ。一緒に消されたのか、それとも戦闘員に改造されたか……)
噂が僅かでも出回っているという事は、僅かでも生存者がいるという事。直接話を聞きたいところだが、下手に接触してその人を危険に晒すのも忍びない。
(この情報、後で三葉さん達にも回しておこう)
俺達の中で、一番物事を冷静に見て判断出来るのは三葉さんと岡田先生くらいだろう。
東島さんと一葉さん? あの二人って“待て”が出来ない人種だからなぁ。下手に暴れまわって警察の厄介になりそうで怖い。
(三葉さんなら相談に乗ってくれそうだし、冷静な判断もしてくれそうだ)
なんだかんだで、俺が一番頼りにしているのは三葉さんなのかもしれない。冷静だし、視野が広いし、自称ライダーマンだけあって東島さん達とは別ベクトルの頼もしさがある。
「おい白銀、おいってば!」
「ん? おお、悪い。考え事してたわ。どうした?」
「今の噂の何処に考える余地があるんだよ………それよりもほれ、これをお前にやるよ」
友人から渡されたのは一枚の紙切れ。これは………ライブのチケットだろうか?
「これ、【コンバットガールズ】のライブチケットな、商店街の景品で当たったからやるよ」
「【コンバットガールズ】って、最近話題になってるアイドルグループの奴か。良いのか?」
「良いよ。俺アイドルにキョーミないし、お前ボインちゃん好きだろ?」
「人の性癖を公に晒すな」
「へへ、その代わり今度バイト先のカレー、奢ってくれよな。じゃな!」
それだけ言って友人は教室を後にする。恐らくは新たな噂話でも探しに行くのだろう。
相変わらず行動派な友人に顔を綻ばせながら席を立つ。
今日の講義は無事終了。友人から受け取ったチケットをポケットにしまい、俺も大学を後にするのだった。
◇
「ありがとうございましたぁ~」
間延びした店員の声を背に、店を出る。場所はいつぞやの雑貨店、東島さんへのプレゼントを
「いやー、相変わらず高いなぁ。中古品なのに価格二万五千とか。この間のフィギュアと良い、こう言うモノってやっぱプレミア付くんかね」
手に下げた袋から伝わってくる重さ。最近は大人でも装着できる“CSM”なる大人向けのハイクオリティな代物もあるから値段は相当に高く、今回購入した物は状態が良い為にこの値段なのだとか。
手痛い出費だが、俺がこれから創るモノを考えれば仕方がないかもしれない。酒の席とはいえ、約束は約束なのだ。
「……でも、これから創るものを考えれば
それは創ろうとする品物によって異なるが、体力と精神力を消費するのは、恐らく足りない俺の想像力を補う為のモノであると勝手に解釈している。
逆を言えば、想像力を補えるモノがあれば大概の代物は創り出せるという事。
あと、精神力は兎も角、体力面は日頃からトレーニングしていれば然程苦にならないという点。
ホント、チートと呼ぶに相応しい力だな、モーフィングパワー。
「後は適当な素材を集めて……ん?」
荷物をバイクに取り付けて自宅へ帰ろうとした時、ふと歓声の様な音が俺の耳朶を叩く。
いや、実際それは歓声だった。顔を上げた俺の視界に入ってきたのは、とあるアイドルグループがライブをしている────所謂
看板に掲げられている写真からして、どうやらあそこは【コンバットガールズ】のライブ会場の様だ。
「そう言えば、チケット貰ってたんだったな」
ジャケットの胸ポケットをまさぐれば、折り畳まれたライブチケットが出てくる。折角戴いたライブチケット、ここで使うのがベストだと思った俺はバイクを走らせライブハウスへ向かう。
◇
────生のアイドルって、スゴいのな。
ライブハウスを後にし、会場から出てくるドルオタの先駆者達を見送りながら、一人そう溢す。
歌やダンスもさることながら、会場まるごと一つになったかの様な一体感は中々に刺激的だった。バイク以外で趣味を持たない俺だったが、アイドルの追っかけも悪くないと思える程、今回目にしたライブは良かった。
単に、胸の大きさが売りのグループではないんだと痛感させられた。いや、本当に舐めてたわ。
「いやー、今回も良かったな! コンバットガールズのライブ!!」
「炭子のライブも良かったけど、コンバットガールズは迫力が違ェ! 次のライブも絶対観に来ようぜ!」
目の前を通る男三人もコンバットガールズに夢中らしい、今なら分かる。アイドルと言うものがどれだけ素晴らしいものなのか、理屈ではなく心で理解した。
彼女達の歌には“芯”がある。人を惹き付け、人を魅了する本気の“芯”が。
人は、そういう“本気”に眼を奪われる生き物だ。本気でアイドルをやるコンバットガールズ、本気で仮面ライダーをやっている東島さん。
これ等二つの人種は、不可解ながら人をアツくさせる何かがある。だからこそ、人もまた集まるのだ。
「………うん、我ながら恥ずいポエムが出来たな」
口に出てなくて本当に良かった。
「なぁ、お前何か今日可笑しくね? ライブの最中でもあまりノれてなかったみたいだし」
「もしかして、何処か具合でも悪いのか?」
「い、いや別に……そう言う訳じゃないんだ」
どうやら仲間の一人があまり体調が優れない様子らしい。顔色の悪い青年は取って付けたような苦笑いを浮かべている。
確かに具合が悪そうだ。冷や汗もダラダラ掻いてるし、端から見ているだけの俺でも分かる程に辛そうに見える。
いや、アレは単に具合が悪いと言うより………何かに怯えている?
俺の中で違和感が募り始めた時、彼等の前に一人のジャージ姿の女性が現れる。
大きい
「磯根くん、だね」
「っ!?」
「え、だ、誰この人?」
「磯根の知り合いか?」
「い、いや……」
調子の悪そうだった奴の顔色が更に青くなっていく、出会ってはいけない奴と遭遇したような、死刑を執行する死神を前にした罪人のように、恐怖に顔を歪ませる。
「ねェ、どうしてショッカーの洗脳が解けたの?」
「「ッ!?!?」」
女性の口から出てき一言は、俺を突き動かすには充分だった。唐突に現れたショッカー戦闘員、大学で友人から聞かされた辻斬りの噂話と脳内で照らし合わせた俺は、急ぎ地を蹴る。
「イーッ!! ま、なんでもいいけどね」
「い、イーッ!! し、死んでたまるかァッ!!」
「死ね」
女戦闘員の殺意に身を竦ませながら、同じく戦闘員へと変身する青年。それは後ろにいる二人の友人を守る為か、それとも単なる自己保身の為か。
どちらにせよ、青年ではあの女戦闘員には敵わない。故に俺はいつぞやの時のように敢えて庇うように割って入る。
「っ!?」
「なんだと?」
突然自分という乱入者に割って入られ、あまつさえ振り抜いた拳を片手で受け止められている。
女戦闘員は虚を突かれ、眼を丸くして固まっている。その隙を、俺は見逃さなかった。
「おい、逃げろ!」
「え、な、なに? 何なのアンタ!?」
だが、青年の方は状況に付いていけずに混乱してしまっている。
「アンタと同じコンバットガールズのファンだ! 同じアイドルを推す者同士、ここは俺が受け持つから早く逃げろ!!」
「あ、ウァァァァッ!!!」
混乱しながらも、それでも俺を敵ではないと認識したのか、青年戦闘員は涙と涎と鼻水を垂れ流しながらこの場から走り去っていく。
他の友人二人も困惑しながらも去っていく姿に俺は安堵した………っ。
「っと、危ね」
安心したのも束の間、飛んできた蹴りを躱して女戦闘員から距離を離す。鋭い攻撃だった、直撃したら死にはしなくとも、ダメージは受けてしまいそうな威力の蹴りを放つ女戦闘員に、俺は少しだけ意識を切り替える。
「なんだお前は?」
「ただの通りすがりさ」
ショッカー戦闘員といっても、その個体にもピンキリが存在するらしい。今度東島さんに聞いてみよう。
「それよりも、何でショッカーの戦闘員同士が争っている? 何かの儀式か?」
「………応える義理はない。お前も死ね」
女戦闘員は相変わらずクレバー、冷静に此方の動きを観察し、冷徹に此方の命を奪いに来る。振り抜かれる拳や蹴りには人を殺すには充分な威力が秘められている。
けれど、紙一重で躱し続ける俺にはあまり脅威には映らなかった。それもこれもあの集団、自称ライダーチームの彼等と退屈しない日々を過ごした賜物だろう。
繰り出される拳と蹴りは東島さんより迫力ないし、技のキレにしても一葉さん程でもない。
「クッ、この! 何故当たらない!?」
「動きが単調すぎる。それじゃあ当たらねぇよ」
場の運びの巧さは三葉さんに劣るし、技の引き出しの多さは岡田先生には及ばない。何処までも単調なゴリ押しスタイル、悪いがその程度では当たってやれんよ。
「だが、避けているだけでは私には勝てないぞ!!」
「それは……確かにそう」
であれば、こちらからも仕掛けさせて貰おう。
迫り来る女戦闘員の拳を躱し、重心をずらす様に手を添える。
「ッ!?」
女戦闘員の体が流れた所で脚を払い、手を捻って勢いを乗せたまま投げ飛ばす。三葉さんが得意としている合気道、どうやら上手く出来たようだ。
だが、それだけでは終わらせない。
「ブイスリーッ!」
先日の飲み会で、一方的にヤンキーの戦闘員をボコボコにした彼等の技の中で、俺が「あ、これ凄いな」と思ったコンボ技。
三葉さんの合気道で相手が倒れている間に地を蹴り、空中で翻って相手に遠心力を乗せた両足での蹴りを叩き付ける技。自称仮面ライダーV3である一葉さんが繰り出した必殺蹴りの一つ。
「反転……キィーーーック!!」
名付けて、受け流し反転キック。見様見真似ではあるが、割りと効果的な技ではないだろうか。
「がっ、は……!?」
口から血の混じった吐瀉物を吐き出す女戦闘員、しかし意識を刈り取れてはいなかったのか、受けた腹に手を添えて、此方を睨み付けている。
「お、お前! 何者……だ!?」
「言った筈だぜ、ただの通りすがりだってな。それよりそっちこそ質問に答え貰うぜ、ショッカーの拠点は何処だ?」
「そ、そんな事を聞いてどうするつもりだ?」
「決まっている。俺の身体を元に戻して貰うんだよ」
「?」
自分の質問の意図が理解できていないのか、女戦闘員は頭に疑問符を浮かべるばかり。………まぁ、察してはいた。
「なら質問を変えようか。怪人はどこにいる?」
「ッ!?」
今度は心当たりがあるのか、分かりやすく狼狽する女戦闘員。立ち上がって反撃したい所だが………そうはさせない。
「アンタには聞きたい事が出来た。悪いが、答えて貰うぞ」
『俺が答えてやろうか?』
「ッ!?」
突如、頭上から聞こえてきた声と感じた殺意に寒気を感じた俺は、本能に従いその場から後ろへ飛んで下がる。
直後、自分の居た場所に何かが墜落し、衝撃が辺りを蹂躙する。
転がりながら衝撃を逃がし、体勢を整える。顔を上げた俺の視界に入ってきたのは、女戦闘員よりも更に大きく異様な姿をした男だった。
十中八九間違いない、この男───。
「怪人か!」
「ほぉ、俺の事を知っているのか? その通り、俺の名は蝙蝠男。以後、お見知りおきを」
そう言ってふざけた様子で頭を下げ、紳士を気取る怪人蝙蝠男。蜘蛛男に続く新たに現れた怪人に俺は身構えたまま立ち上がり……。
「ッ!?」
奴が手にしているソレに眼を剥いた。
「お、まえ……!」
「ん? あぁ、これか? なに、俺の部下が珍しくまたヘマをしてな。上司らしく尻拭いをしたまでよ」
そう言って蝙蝠男が俺の前に投げて寄越して来たのは………先程逃がした青年の戦闘員の頸だった。恐怖に顔を歪め、後悔と涙で見開いた眼は最期まで命を乞うた人の姿だった。
「も、申し訳ありません蝙蝠男様! 一度ならず二度までも!」
「気にするな、お前は強い。一度や二度の失敗で見切りを付ける程、俺は狭量じゃない。それに……」
蝙蝠男の視線の先へ眼を向ければ、其処には無数の女戦闘員達の姿があった。
これだけのショッカー戦闘員が人間社会に潜んでいるのかと、俺が愕然とするのも束の間、彼女達の中から前に出る三人の女性に俺は更に驚愕の底へと叩き落とされる。
「コンバット……ガールズ?」
その三人は先程ライブハウスで華麗な歌とダンスを披露した……今をときめくアイドルグループ。
何で彼女たちがいるのかと愕然としていると……。
「「「イーッ!!」」」
変身した。俺の目の前で、見せ付けるように手を上げてショッカーの戦闘員へと変化した。
驚愕に震える俺を見て、ウフフと妖艶に微笑むアイドル達。そんな俺に更なる追い討ちを掛けようと、複数の女戦闘員が抱えていたそれらを投げて地に落とす。
それは先の青年と同様、俺が逃がした筈のドルオタ達だった。首がへし折れ、死んでいる彼等を前に俺の心が冷たく沈んでいくのが分かる。
ただ一つだけ救いなのは、青年戦闘員とは異なり二人のドルオタの死に顔が幸せそうな顔をしていた所だろうか。
「悪いなぁ、折角お前が勇気を出して逃がした連中、全員殺しちまった」
蝙蝠の嗤う声が聞こえる。女戦闘員達の嘲笑が聞こえる。
「だが安心しろ。お前の強さに免じてお前も戦闘員に改造してやる。そしたら俺のライコーと一緒に裏切り者の粛清だ。二人合わせて200の裏切り者を粛清したら、揃って怪人にしてやる」
「………なぁ」
「あ?」
「お前ら、本当に何とも思わないのか? 人を、命を弄んで………少しでも良心が痛まないのか?」
コイツ等だって元は人間だ。同じ人間なのに、何故そうやって人を弄ぶ。尊厳を……命を踏みにじれる。
「んなの決まっている。俺が……怪人だからだ」
「そうか、分かった」
改めて理解した。ショッカーはこのまま放っておく訳にはいかない。コイツ等の存在は多くの悲劇を生み出してしまう。
俺は心の底から湧き上がる悔しさと悲しさを捩じ伏せ、両手を腰に添える。
「あぁ?」
瞬間、現れる悪魔の顔をしたバックル。それを目にした蝙蝠男は一瞬だけ首を傾げるが……。
「っ! て、テメェまさか!?」
気付き、拳を振り抜いた所でもう遅い。既に両手を使ったポージングを済ませ、ただ一言だけ言葉を紡ぐ。
「変身っ!!」
瞬間、振り抜いた蝙蝠男の拳が俺の胸板を叩くが……効きはしない。
“芯”も無ければ“矜持”も無い、ただ破壊と殺戮しかもたらさない三下に、このダグバは倒せはしない。
「こ、コイツ!?」
「───邪魔だな」
拳を突き出す。殴ると言うより、相手を押し出すように振るわれる俺の拳は、蝙蝠男の胸元を深く抉り、吹き飛んでいく。
「が、バァッ!?!?」
空気が変わる。自分達を支配する怪人が、血を吐き出しながら吹き飛ぶ光景に。
女戦闘員達は戦慄する。あってはならない事象に、あり得ない筈の現実に、全員の脚が竦み、震え、失禁する。
そんな彼女達の言葉にならない命乞いを前に───ダグバは口にする。
「その命、神に還してやろう」
月明かりの下で、再び【白き闇】が顕現する。
Q.なんか主人公の身体能力……バグってね?
A.順調に育ってますね。
Q.結局アレを造るの?
A.そうでないといつまでも改造してくれって頼んできそうだから……。
Q.主人公からみた東島達の印象は?
A.
東島丹三郎は……まぁ、普通に変な人。仮面ライダーが絡まなければ普通に良い人。
島村三葉は……仮面ライダーオタクだけど、話も通じるし普通に良い人。
岡田ユリ子は……タックルが絡まなければ普通に良い人。あとスタイル抜群。
島村一葉………悪い人ではないと思いたい。社会的視点から見れば多分悪人。
妹さんに誠心誠意謝れば良いと思う。
大体こんな感じ。