ダグバになっちゃった。   作:アゴン

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呪術廻戦、来ましたね。

禪院直哉、彼が今回のキーマンになりそうですね。(存在しない記憶)

そんな訳で初投稿です。


PS.タグ追加しました。


Episode08

 

 

 

 月明かりが、その異形を照らし出す。

 

 筋骨隆々で全身が白く、額から伸びる四つの角は金色に輝き、形や腰、背中から伸びる黄金の装飾は異形でありながら、見る者に王の威圧を思わせる。

 

 手足から伸びる刺は鋭く、彼の者の心境を映し出す刃の様………何より、その漆黒(・・)の眼光は見る者全てに畏怖を、恐怖を、絶望を抱かせた。

 

 その日は夜でも少し暑苦しいのに、何故かうすら寒さを覚える日だった。

 

「か、怪人……!?」

 

 女戦闘員の一人が口に出す。それは、ショッカーの中でも選ばれし者だけが成れる強き者。強靭な肉体と精神力を併せ持つ、生きた災害。

 

 人の型を模した怪物……故に【怪人】。

 

 いや、そもそも怪人なら何故、我々ショッカーと敵対しているのか。誰もが混乱する最中、ライコと呼ばれる女戦闘員は仰向けに倒れる自分の直属の上司である蝙蝠男へ視線を向ける。

 

「ば、バカな! 怪人だと!? 怪人が何故、俺達ショッカーと敵対する!?」

 

 血反吐をぶちまけ、胸を抑えながら立ち上がる蝙蝠男。その瞳には怒りと困惑が色濃く浮かび、自分達の仲間である筈の白い怪人に疑問の声を投げ掛ける。

 

「…………」

 

 しかし、蝙蝠男の懇願にも似た詰問の言葉は白い怪人───ダグバの沈黙の殺意によって返される。

 

 全身から溢れんばかりの殺意。それは命を踏みにじり、尊厳を穢す者達に対する裁きの執行人であった。

 

 一歩、踏み出す。ズシンッと、周囲の空気ごと踏み潰す【白き闇】の一歩にその場にいる全員の顔が恐怖で引き攣る。

 

 白銀白斗が────ン・ダグバ・ゼバが絞り出す言葉はただ一つ。

 

「地獄を見せてやる」

 

 ショッカーに対する、過剰なまでの敵意。

 

 手を翳す(・・・・)。次にダグバの見せる仕草はただそれだけ、ただそれだけの挙動で───。

 

「え、ひ、あ、ギャぁッ!?

 

 女戦闘員の内側から炎が溢れ出す。脈絡なく、前触れもなく、突然炎に包まれる女戦闘員は断末魔の声を上げる間もなく、炎に呑まれ地に倒れ伏す。

 

「────え?」

 

 物言わぬ炭となり果てる女戦闘員(同僚)に同じ女戦闘員達は凍り付く。何が起きたのかと、理解出来ない事象を前に立ち尽くしていると………一人、また一人と、炎に呑み込まれていく。

 

「「「い、イヤァァァァッ!!!」」」

 

 其処からは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。泣き喚きながら逃げる者、自身の命を懇願する者、ダグバにすり寄りショッカーの裏切りを誓う者。

 

 その悉くが物言わぬトーチと化していく。曾てショッカー戦闘員だった者達が、瞬く間に炭と化して、灰となって消えていく。

 

 その光景にコンバットガールズは、元プロレスラーのライコは腰を抜かして座り込み、呆然と眺めることしか出来なかった。

 

「あ、あぁ……」

 

 気付けば、生き残っているのは自分達のみ。あれだけいた同胞とも呼べる女戦闘員達が須く物言わぬ灰となり、宙に浮かんで消えていく。

 

 何故、自分達は生きているのか。目の前の【白き闇】の慈悲? いいや違う、この怪物がそんな人間染みた感傷を抱く訳がない。

 

 自分達を生かしているのは、ただの気紛れ。なんの思惑も意図もない、ただ無関心故の放置。

 

 その事実を前に負けん気が強いライコが奮い立とうとするが……。

 

「─────」

 

「あ………」

 

 いつの間にか眼前に立ち、自身を見下ろしているダグバを前に、ライコの僅かな戦意は根刮ぎへし折れた。

 

 パキンッと、心の内から聞こえてくる音にライコは今度こそ立てることは出来なかった。

 

「あぁ、アアアアアアッ!!!」

 

 股から決壊したように溢れ、流れる小水。股座を濡らし、小さな水溜まりを作るその様子にダグバは興味もなく通りすぎていく。

 

 コンバットガールズも同様、逃げることも命乞いも無意味と知った彼女達は、ただ三人で寄り添いながら狂った様に嗤うしか出来なかった。

 

 ライコ同様股座を濡らす彼女達を無視し、ダグバは怪人────蝙蝠男へ向き直る。

 

「どうした、来ないのか?」

 

「お前、お前は………何なんだ!? 何なんだ、テメェはぁっ!!

 

「────」

 

 自分のお気に入りが悉く消されたと言うのに、蝙蝠男は怒りに震えるだけで何もしなかった。

 

 否、出来なかった。目の前の奇怪な現象を前に、怒りよりも恐怖で封じられた蝙蝠男は、ただ佇むダグバを前に自ら怒りを引き出して言葉で吼える事しか出来なかった。

 

 圧倒的邪悪からくる畏怖と恐怖、対峙しているだけでも伝わってくる恐ろしさに全身が竦む。

 

 そんな蝙蝠男の絞り出すような遠吠えに、ダグバは沈黙で返す。

 

 それは、返事をしたところで意味がないと言う、ダグバからの返答。何を言おうと喚こうと、お前の末路は変わらないと言う無言の宣告である。

 

「殺す! 殺してやる!! お前はここで、俺に殺されるべきなんだッ!!」

 

 メキメキと音を立てて、蝙蝠男の背中から翼が生える。翼をはためかせ、ダグバを睨む蝙蝠男は走り出す勢いを乗せて飛翔。

 

 ダグバを両手で抑える様に抱え、空高くへ舞い上がる。

 

「蝙蝠男様!」

 

 遠くで部下の声が聞こえるが、構うことなく空を往く。この怪物は危険すぎる、今ここで確実に殺さなければ後のショッカーによる世界征服に大きな障害となるだろう。

 

 いや、なる。今は不思議と大人しくしている化物を明確なショッカーの敵として認識した蝙蝠男は、人気の無い山奥へ飛翔し、生い茂る大木目掛けて突進する。

 

「くたばれ、化物ォォッ!!」

 

 一本、二本と、巨大な杉の木をへし折りながら突き進む。次に手を離し、無防備に宙に浮かぶダグバへ向けて渾身の蹴りを放つことで吹き飛ばす。

 

バキバキと木々をへし折りながら吹き飛ぶ白い怪物を見送って蝙蝠男は確信する。そうだ、蝙蝠男である己も怪人、パワーなら負けはしないのだと、自分が戦える事に安堵している。

 

 そうだ、俺ならやれると、油断なくダグバが吹き飛んだ方へ眼を向ける。

 

 そこに広がるのは───闇。人を無条件で恐怖させる根源的暗黒。だがこの日、蝙蝠男は本当の闇を知る事となる。

 

 暗き闇から顕れる白き闇。幽鬼の様に顕れる怪物に蝙蝠男は息を呑んだ。

 

 無傷。自分に出せる最大限の一撃を受けて、それでもなお平然としていられるダグバに蝙蝠男は恐怖を押し殺すように歯を食い縛る。

 

 一歩、また一歩と近付くダグバに蝙蝠男は次なる攻撃に出る。腕を広げ、そこからも広げられる翼を展開し、横へ薙ぐ。

 

 大木すら両断する怪人の横薙ぎ、人間ならば両断されるであろう一撃を………ダグバは、当然の如く片手で受け止める。

 

 ならば一撃だと、もう片方の腕で縦に振り下ろすが……これも容易く止められる。

 

 分かっていた事だ。受け止められるのは、蝙蝠男にとっても当然の事だ。目の前の怪物は俺達とは何処か違う本物の化物だ。

 

 倒すのは至難、殺すのはもっと難しい。であるならば、取り込んでしまうまで。

 

「くぁぁぁっ!!」

 

 受け止められた腕を掴み、口を開いて飛び掛かる。生える牙を剣山の様に鋭くさせて、ダグバに噛み付き己の血を植え付ける。

 

 己の血液は人間をショッカー戦闘員に変える力がある。目の前のダグバに通じるか分からないが、それでも僅かな勝機を掴むにはこれしかないと、蝙蝠男が必勝の一撃を繰り出そうとして。

 

「─────あ?」

 

 その願いは、呆気なく砕かれる。

 

 噛み付いた牙、蝙蝠男にとって象徴の一つであり、手駒を増やす最強の一刺しは………ダグバの強靭な外皮を前に呆気なく砕け散る。

 

「なん、なんで、なん………でぇぇ??」

 

 理不尽。剰りにも不条理で、剰りにも度が過ぎている。折れた牙と共に戦意を挫かれた蝙蝠男が後退る中……。

 

「終わりだ」

 

 ダグバが迫る。黒い眼光に射貫かれ、戦意も闘争心も砕かれた蝙蝠男が選んだのは……。

 

「ヒィッ!!」

 

 逃走。翼を広げ、再び空へと逃げる蝙蝠男を前にしてダグバは……。

 

「逃がさない」

 

 屈む。両脚に力を込め、メキメキと音を立てると………不意に、ダグバの右の脚底に光が宿る。

 

 苛烈で、眩しい金色の光。その中に闇よりも昏い紅蓮の炎の………とある古代の文字が浮かび上がる。

 

 瞬間、ダグバは地を蹴り、地面を深く抉って遥か空高く舞い上がる。

 

 狙いを定めるは逃げ惑う哀れな蝙蝠。最早逃げ場は無いと、狙いを定めたダグバは両手を使って身体を押し出す。

 

 空間を面で捉え、空中での超高速移動。右脚を突きだし、左脚を折り畳むその格好は………奇しくも、彼の戦士と酷似していた。

 

「ぶッ!?」

 

 そして、音速を超えた一撃は蝙蝠男の背中を捉える。衝撃に顔を歪め、その原因がダグバであると知った蝙蝠男は、その顔を恐怖に染め上げる。

 

 嫌だ、死にたくない、死と恐怖で染まる蝙蝠男に────ダグバは、何も言わなかった。

 

 吹き飛ばす。ダグバの慈悲にて砕かれずに別の山の斜面に叩き付けられた蝙蝠男は、そんな事は関係なしに悶え始める。

 

 背中に浮かび上がる一つの文字、一種の紋様にも見えるそれは、遥か古代に失われた古代文字の一つ。

 

 その文字が意味するものは────ダグバ。

 

「あ、あぁ、あぁぁぁあ………ガァァァァァァァッ!!!

 

 痛みに悶え、熱さに苦しむ蝙蝠男の最期は、叩き込まれた膨大なエネルギーによる───爆散だった。 

 

 爆発するエネルギーは炎の柱となって天を衝く。

 

 この日、日本の各地にて炎の柱という現象が確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

『───では、次のニュースです。先日未明、○○県と╳╳県の県境にある山にて確認された炎の柱ですが、何故その様な現象が起きたのか一夜開けた今も原因は依然として不明のまま。現在は環境省が地元の自治体と連携し、調査に当たるとされています』

 

『尚、この為に県境にある一部道路は現在通行止めとなっており、地域住民の方は気を付けて通行してください。続いて───』

 

「………やっぱ、やりすぎたかなぁ」

 

 テレビから流れてくる情報、それは俺があの時戦った蝙蝠男との一戦………その決着の一撃に放った必殺蹴りに関するモノだった。

 

 あの時の俺の右足にはクウガの封印エネルギーと似た力が集約されていて、それを蝙蝠男に叩き付けた訳なのだが、それはあくまでダグバのエネルギー。

 

 当然堪えられなくなった蝙蝠男は爆散、吹き出した余剰エネルギーが今テレビに映る光景になったと言うわけだ。

 

 実は、あの瞬間の俺は内心ビビり散らしていた。もし原作でもあった数キロに渡る衝撃波とかだったら、もっと大騒ぎになっていただろうし、下手したら国際問題に発展しそうだ。

 

 ………ん? なら今回はショッカーの隠蔽工作に感謝するべきなのか? なんか嫌だな、ソレ。

 

 まぁ、奴らが物事を隠すのに勝手に苦労するならそれはそれでいい。問題は………別の所にある。

 

「何とも、思わなかったな」

 

 俺はあの時、明確な殺意を持ってショッカー戦闘員達を殺した。ダグバの力を行使し、一方的に彼女達を炎で焼き、殺し尽くした。

 

 そう、あの日俺は……人を殺した。奴等を生かしてはおけないと、自分の意思で、自分の手で戦闘員は殺した。

 

 言い訳はしない。ショッカー戦闘員が改造された元人間であっても、元は人間なんだ。その事実は変わらない。

 

 問題なのは、そんな虐殺行為を自分がしても、あまり感じる事はないという事だ。

 

 人を殺した。元人間を、ショッカーに改造されて洗脳されて………彼女達も被害者の筈なのに、そんな彼女達を鏖殺しても、俺の心はあまり後悔の念や罪悪感を感じたり、波風を立てる事はなかった。

 

 吐き気とかも特になく、忌避感すらなかった。

 

 覚えているのはあの時、確かな怒りがあったという事。

 

 何も感じない。というより、感じた上で何も感じない。みたいな、そんな感じ。もしこれがグロンギの心境だというのなら、俺はもう既に連中と同じ存在に成り果てたという事なのだろうか。

 

 もし、もし俺が今後ダグバの影響を受けて、心身共にグロンギとなったらどうすれば良いのか。

 

 ………いや、答えなら既に出ている。万が一事態に対するカウンター、それを可能とする人達なら、既に見当は付いている。

 

「早く、コイツを完成させなきゃな」

 

 作業用のデスクの上に置かれたそれを見て、俺は笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全然集中出来なかった」

 

 あの後、何度か作業に専念しようとしても、全く手に付かなかった。

 

 理由はやはり先の件。自分がグロンギに近付いているとか、これからの事、考えれば考える程に思考の坩堝に嵌まっていく感覚に陥った俺は、遂に寝込んでしまう事態にまでなってしまった。

 

 このままでは作業も手に付かず、無為に時間だけが過ぎていくと憂慮した俺は、気分を変える為にある場所へとやって来た。

 

「連絡しないで来ちゃったけど……一葉さん、いるかなぁ。門前払いとかされないと良いけど」

 

 気分転換の為に訪れたのは、自称ライダーチームでV3担当の島村一葉さんの所。一葉さんの自宅は都心から離れた田舎で、空気も澄んでいて気分が落ち着く場所だ。

 

 ここでなら作業も進むだろうと思って来たのだが………やはり、アポイントも無しに来たのが良くなかったのか、自宅に一葉さんの姿は無かった。

 

 連絡を取りたいけど………あの人の連絡先、俺知らないんだよなぁ。というかそもそも、携帯持ってんのかあの人。

 

「どうしよ。勝手に家に入るわけにもいかないし………ん? なんか、聞こえる?」

 

 雑木林の向こうから、複数の人の声と微かに水の流れる音が聞こえてくる。そう言えばこの家の裏手には雑木林だけでなく、滝のある泉があるとか三葉さんが言ってたな。

 

 もしかして、一葉さんもそこに?

 

 恐る恐る雑木林へ入り、声のする方へ脚を進める。こういう時、お邪魔しますって無意味に言っちゃうの………俺だけ?

 

 なんて、そんなしょーもない事を考えながら進み、雑木林を抜けると……。

 

「「58、59、60!!」」

 

「ほ、本当に10000回もやるのか!?」

 

「当然だ! 俺達と共にショッカーを討つと言うのなら、その身で証を立てて見せろ!!」

 

「うぉぉぉぉっ! ライダーパーンチ!!」

 

 なんかオッサン三人が半裸で滝に打たれながら正拳突きしてた。

 

「いや、なにしてんスかアンタ等」

 

 しかもよく見れば三人の内の一人はこの間のヤクザのオッサン戦闘員じゃねぇか。え、マジでどういう状況?

 

「む? おお! お前も来たのかダグバ!「白銀です」ちょうど良い! お前も来い!」

 

「ヨシ! なら最初からだな!」

 

「ハァァァッ!? なんでだよ!?」

 

「えぇ………」

 

 その後、拒否権のない俺はオッサン達三人と並んで、滝に打たれながら正拳突きを1万回やらされる事になりましたとさ。

 

 いや、ノリと勢いが過ぎるだろう。

 

 

 

 





Q.今回、何人生き残った?
A.コンバットガールズ三名とライコちゃん一名。
 計四名生き残れました。やったね!

Q.なんで生き残れたん?
A.気紛れ。それ以上でも以下でもない。

Q.蝙蝠男さんにぶちこんだエネルギーって何?
A.クウガの封印エネルギーに似た何か。基本的に相手を内側からボンッする。
 ただそれだけ。


次回、【44歳の拳】




オマケ。

このすばらしいダグバに祝福を!その1


「いやぁ、何か変なカーテン潜ったら異世界とか。色々とやってんなぁ」

 ある日、気分転換で山道をバイクで走らせたら、銀色のカーテンを潜ってしまい、気付けば妙な所に来てしまっていた。

 内装的に……何処かのお城か? アニメとかでしか見たかとないから知らんけど。

「お前、何処から現れた。侵入者か!?」

「うわ! 西洋甲冑の首なし!? デュ、デュラハンって奴か!?」

「然り! 我が名は魔王軍幹部のベルディア! そういう貴様はここを我等が魔王の居城と知っての狼藉か!? 不埒者め、引っ捕らえてくれる!」

「や、やるしかないのか、変身!」




 10分後。



「はい、そんな訳でベルディア君をボッコボコにしてくれた此方のダグバ君を、新たに魔王軍幹部に迎え入れる事になりました~。みんな、仲良くして上げてね」

「わ~、お若く見えるのに凄いんですねダグバさん、私はリッチーのウィズです。仲良くして下さいね」

「フフハハハハ! 魔王よりも魔王らしいダグバ殿、我輩は見通す悪魔のバニルさんである。以後、お見知りおきを」

「……………え?」

 どういうわけか、魔王軍幹部に拝命されてしまった白銀君でした。

「フハハハ! 困惑の悪感情、大変美味である」



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