すみません、予定していた話は次回に持ち越しになりました。
今回は地味回。
そんな訳で初投稿です。
「や、やりきった……」
「うぅ、脇が痛ェ、四回くらい吊りそうになったぞ」
それから数時間。陽も沈み、夜の帳が落ちきった時間帯。滝行しながら1万回の正拳突きを終えた俺達は、無事に一葉さんの自宅へ戻っていた。
「良く1万回突いたな」
「う、ウッス」
珍しく一葉さんが労ってくる。
つーか俺、ダグバに変身するようになってから体力が妙に付いた気がするが……この人達を前にすると本当に“気がする”程度になってしまうな。
東島さんも一葉さんも体力ありすぎ、普通にアスリート並じゃねぇか。いや、下手したらそれ以上かも?
トライアスロンとか、体操選手にでもなれば大成しただろうに、つくづく《仮面ライダーで在ること》に全振りした人達なんだなぁと改めて思い知った。
「それで、何でお前まで来たんだ?」
「あ、はい。東島さんのベルトを創る為に集中したくて、ここなら作業も捗るかなと思いまして……」
「俺のベルト!?」
自分の目的を伝えると、東島さんが跳び跳ね、眼を輝かせながら俺に詰め寄ってくる。うん、分かっていたけど圧がヤベェ。
「べ、ベルトって、アレか!? 本当にアレなのか!?」
「えっと、まぁ……はい。一応そのつもりで製作するつもりです」
まぁ、ここに東島さんが来ている以上どうせバレるし、話しても別に良いだろう。重度の仮面ライダーオタクだけあって、“アレ”で伝わるのが非常に助かる。
「あ、一応一葉さんの分も創るつもりですから、安心して下さい」
「い、良いのか!?」
今度は一葉さんが迫ってくる。分かっていたけどイチイチ近ェよ!
「それはまぁ、ただ東島さんの方を優先しますし、何日かここで寝泊まりさせて欲しいんですけど……」
「お前さえ良ければ何時までもいていいぞ白銀、我が魂の兄弟よ」
おい、コイツ急に俺の名前を呼び始めたぞ。やっぱワザと呼び間違えてたな。つーか兄弟って何よ、アンタには三葉さんと二葉さんという立派な弟妹がいるでしょーが。
「お前、こういうの必要ないとか言ってなかったか?」
「忘れた」
何やら東島さんが一葉さんにメンチきってるけど、俺は今まで疑問に思っていた事を口にする。
「えっとそれで此方の方は? 確か二葉さんの居酒屋でボコしたショッカー戦闘員の……」
「中尾だ」
ショッカー戦闘員の中尾さん。何でも元々はヤクザで、今まで三人の舎弟と一緒に生活していたけど、組の親父さんが殺されたり、怪人に襲われたり、気付いたら戦闘員に改造されたりと、中々ファンキーな人生を歩んでいるお方らしい。
いや全然笑えんけどね。
んで、ショッカー戦闘員なのにショッカーに従わない中尾さんを裏切り者と断定、ショッカーから狙われる事に。
その後は紆余曲折を経て、東島さんと一緒に逃げて今は一葉さんの所で厄介になっているとか。
「じゃあ、その時に舎弟さん達は……」
「あぁ、俺を……逃がす……為に!」
そういって涙ぐむ中尾さんに俺は自分の失言を謝罪した。ヤクザで強面な中尾さんでも、その三人の舎弟はとても可愛がっていたのだろう。
ホント、不躾な質問をして申し訳ない。
「そ、それよりも白銀……だったか? お前さん、何だか随分とコイツらから慕われているみたいだが……何をしたんだ? 言っちゃ悪いが、普通にただの堅気にしか見えねぇが………」
「「俺達もカタギだよ!」」
涙を拭き、次は俺の事情を訪ねてくる中尾さん。彼の疑問に応える為に俺は立ち上がり、構える。
「お、その変身ポーズ知ってるぞ。クウガだろ?」
「そうですよ。中尾さんもライダーファンで?」
「いや、俺はどちらかと言えばショッカーの戦闘員が好きでな。ガキの頃ライダーをやりたがるガキ共相手に特攻したりしてた」
「そりゃまた随分と癖の強い少年期な事で………変身!」
中尾さんの戦闘員好きに苦笑つつ変身。腰から現れる悪魔の顔を模したバックルを中心に変異が始まり、俺は瞬く間に【白き闇】のダグバへと変身する。
「なっ、なっ、なっ」
案の定、中尾さんは腰抜かして驚いていた。まぁ、目の前にダグバが現れたらそういう反応になるよな。
「……やっぱ狡いよなぁコレ」
「あぁ、やっぱり狡い」
そんでこっちはこっちで反応がコレである。何が狡いと言うのだろうか。
「っと、まぁこれが理由でして。体を元に戻して貰う為に俺もショッカーと敵対している感じです」
「そ、そうなのか……いやまさか、ダグバに変身するとは、俺はてっきりコイツ等みたいにそう思い込んでいるだけの異常者の一人なのかと」
うん、分かっていたけど中尾さんってやっぱ俺の事をそんな風に思ってたのね。いや分かるけど、中尾さんがそう言いたくなる気持ちは死ぬ程分かるけども。
でも異常者は流石に言いすぎじゃね? ……いや、俺も強くは否定出来ないけど。
と、伝えたい事はそれだけじゃない。変身を解除し、自分がここに来た経緯を説明するために東島さん達に向き直る。
「……実は今回、東島さんと一葉さんのベルト創りの他に報告したいことがあってお邪魔しました」
「どうしたんだ改まって?」
「他に報告したい事?」
俺の真剣な顔に二人も佇まいを直す。
「実は先日、俺も例のショッカー戦闘員の粛清の現場に巻き込まれ、そこでショッカー複数の戦闘員と戦い、殲滅しました」
「え?」
「そして、その時に現れた蝙蝠の怪人と戦い───これを撃破しました」
「「「え!!!!?」」」
分かりやすく困惑する三人に思わず噴き出しそうになる俺であった。
◇
「ほ、本当に怪人を……その、倒しちゃったのか?」
「えぇ、誠に勝手ながら。俺の独断とその時の感情、あとノリと勢いに任せて殺っちゃいました」
「ま、じ、かぁ……」
淡々と説明する俺に東島さんと一葉さんは揃って困惑顔になっている。仮面ライダーを名乗る彼等にとって怪人は不倶戴天の強敵、恐らく複数体存在しているだろうショッカーの怪人を、単独で倒されたのだ。
彼等が困惑しているのは、自分が倒したかった相手を先んじて取られた事に対する悔しさ故だろう。
「……白銀、お前が倒したっていう怪人は本当に蝙蝠男だったのか?」
「えぇ、取り巻きの戦闘員がそんな事を言っていたので間違いないかと……それが何か?」
「その蝙蝠男な、俺の祖父母の仇だったんだよ」
違った。わりと本気で正当な理由をお持ちだった。
単にV3オタクじゃなかったんかい!?
しかも今一葉さんが住んでいる家も祖父母から相続したものらしい。成る程、だから昔からショッカーを倒す為にV3として鍛えてきたのか。
「いや、俺が
「あぁ、そうスか」
違ったらしい。一葉さんがV3に拘っているのは元からで、ショッカーとの因縁はその後に出来たようだ。通常の仮面ライダーとは切っ掛けの順番が逆らしい。
いや因縁が逆な仮面ライダーってなに?
「一応、その証拠として既にネットにあがっています」
「なに?」
「“大きな火柱”と検索すれば、出てくるかと」
俺がそう言うと、中尾さんがすぐに携帯を取り出してパタパタと画面を操作する。すると五秒も経たずに出てくる大量の画像やら動画に「本当だ」と息を漏らした。
「いやつーかコレ、まんまガドル閣下戦のやつじゃねーか!」
「この画角と構図、絶対狙ってるだろ!?」
そう、動画に出てくる映像は巨大な火の柱というだけあってどうしても“ゴ”の最強種、ゴ・ガドル・バ戦を彷彿とされるのだ。
しかも映像の画角や構図から当時の映像と酷似しているのもあって、一部ネットでは《【悲報?】甦りし閣下VSクウガ!?》なんてスレが既に幾つも乱立している。
現時点では殆ど冗談交じりのネタスレでしかないが……いつかネットの住民が真実に辿り着きそうで少し怖くなる。
というか、ちゃんと三人とも閣下呼びなのが少し嬉しい。そうだよな、ガドル閣下はガドル閣下だもんな。
実は俺、グロンギの中でもガドル閣下が一番好きなんだよなぁ。ゴツいし、格好いいし、ザ・武人なかんじで。
「と、そういう訳で俺は蝙蝠男を……怪人を倒しました」
「そうか……うん、まぁ、それなら仕方ないよな」
「とは言え、まだショッカーを倒せた訳じゃない。引き続き、俺達は気を引き締めて鍛えるぞ」
東島さんも一葉さんも起きた出来事に対して気持ちをすぐ切り替えるのは強いよな。こう言うのは素直に俺も見倣うべきなんだろうけど……。
「じゃあ、お部屋の一つを貸し切ってしまいますけど……」
「あぁ、適当に使ってくれ。何か分からない事があれば聞いてくれ」
自分のベルトも創って貰えると言われて、以前より親しみやすくなった一葉さん。物で人の気を引くのは少しアレだが、これで俺が集中出来る環境は整った。
後は、俺の頑張り次第。
「あ、そうそう。ここに来る途中精肉店に寄って来たので保存したいんですけど……」
「「「肉ッ!?」」」
いや急に食い付いてくるなよ。本当に元気だなこの人達。
尚、ベルト創りの作業に入る際。
「あ! そ、それは!?」
「え、東島さんコレを知ってるんです?」
「知ってるもなにも、そのベルトは俺が売ったグッズの奴だ! 君が買い取ってくれたのか!?」
なんと、あの雑貨店に大量に仮面ライダーグッズを売り付けた人物が、東島さんのモノであると判明。
嘗て自分の死にグッズを巻き込むのを偲ばれると思い雑貨店に売り払ったモノが、本当の意味で
脱水症状引き起こすのかってレベルで涙を流すんだもん、ビビったわ。
◇
その後、俺は東島さんのベルトを創りつつ、時折オッサン三人と混ざって筋トレに参加した。トレーニングの内容は主に木をサンドバッグに見立てて殴り付けたり、枝を使っての懸垂など他にも自然を使って多岐にわたる鍛練を行った。
その最中、中尾さんが一匹の鶏と何故かバトッていた。何でも一葉さんが飼っている鶏を見て、動物性タンパク質が欲しくなり、勝ったら喰っても良いという許可の下、対峙する流れになったのだとか。
まぁ、流石に推定大人四人では圧倒的に足りなかったもんなぁ。一晩で殆ど食べ尽くしちゃったし、その後は中尾さんが作ってくれた野菜の水煮で飢えを凌いでいたからなぁ。
そんな訳で動物性タンパク質確保の為に鶏を追い掛ける………筈が、いざ始まってしまえば一方的にシメられたのは中尾さんの方だった。
いやね、あの鶏ってばスゲェ凶暴。端から見て分かったけどあの鶏、明らかに普通の鶏じゃねぇ。絶対に闘犬とかそういう類いの奴だろ。確かそんな鶏の事を
ヤクザを一方的になぶる軍鶏とか、怖すぎないです? しかもあの後、何か目覚めた中尾さんが変にやる気になったし。
これから全力で前向きに生きると宣誓した中尾さんはその後も東島さん達との特訓に積極的に参加し、ぶっ倒れるまで鍛練を続ける事になった。
そんなやる気のあるオッサン三人と一緒に俺もまた特訓に参加する流れになった。
オッサン達との特訓は中々に過酷で、中でも過激なのは東島さんと一葉さんの肉弾戦。仮面ライダーとV3になりきっての殴り合いは喧嘩というより普通に“戦い”と呼ばれる代物になっていた。
タイミングは二人がその気になった瞬間。懸垂の最中とか木を殴っている時だったりと、外である事以外時と場所を選ばない。
そんな二人のやり取りを俺と中尾さんは“ライダーごっこ”と呼んでいる。ごっこと呼んでいるが、別に俺達は二人の殴り合いをバカにしている訳ではない。単に他に呼びようがないから、そう呼んでいるだけなのだ。
俺も時折誘われて何回か混ざっているが……もうマジで二人とも容赦がねぇ。一葉さんの動きは以前よりキレが増しているし、東島さんに至ってはライダーパンチ一発がクソ重いし、生半可な攻撃ではビクともしなくなっている。
「明らかに以前より強くなっているよな、東島さん」
「分かる。なんかもう重戦車って感じだよな」
しかも東島さん、明らかにヤバいダメージを受けた後も平然と動けているが、装着している仮面ライダーのお面を外したら電源が落ちたパソコンの様にグッタリになる。
色んな意味で人間の枠組みから外れつつある東島さんだが、俺は“アレ”を創る為の最終工程として、東島さんのお面に目を付けた。
「俺の
ある日、一葉さんと中尾さんが外に出ている間、俺は東島さんだけを呼びつけた。
「はい。ここ数日東島さんを見てて思ったんですけど、東島さんはそのお面を付ける前と後では明らかに強さが変動しています」
「そりゃあ、仮面ライダーは変身すれば強いだろ」
そうだけどそうじゃない。
「東島さんの場合、そのお面が“スイッチ”なんだと思うんです。東島さんが、仮面ライダーに変身する為の……謂わばベルトの代わりなんです」
「それは……そう、だな?」
あまり深くは理解していないようだけど、要は東島さんにとっての変身ベルトがこのお面と言うことだ。
「俺のモーフィングパワーで、このお面を創り直します。ベルトだけでは万が一悪用されたら大変ですので、その対応策として使わせて下さい」
「成る程……つまり白銀君は、俺の変身するスイッチをマスクとベルトの二つに分けたいんだね?」
東島さんの言葉に俺は頷いた。そう、これはベルトに対する安全装置。俺には人体改造なんて大それた真似は出来ないので、東島さん達の変身ベルトはどうしても外付け装備の扱いになってしまう。
万が一ショッカーや悪意ある者達にベルトを盗まれた際、その予防線となるのが東島さんのお面だ。お面とベルト、二つ揃って初めて本来の力を発揮できるように細工をする。
本当は血液接種による遺伝子情報を使っての防犯とかあるのだろうけど、俺のモーフィングパワーと変な反応されては困るのでその案は早々に却下した。
いやだって、万が一血液と混じった結果、東島さんがグロンギと化したら目も当てられないじゃん。
流石に本人はそれを望んだり………しないよな?
「ベルトの方は八割以上完成しました。後はもう残りの部分をこのお面を使わせていただければ……数日程で完成します」
「逆を言えばその数日は変身出来ないわけか。フフ、何だか燃えるな!」
いよいよ自分がその時を迎える事が出来ると知って、明らかに興奮する東島さん。
そんな彼の気持ちに水を差すようで申し訳ないが……彼にはもう一つ、お願いしたい事がある。
「………東島さん」
「ん?」
「二つ程、お願いがあります」
俺の真剣な雰囲気に何かを察したのか、テンション高めだった東島さんは大人しくその場に正座する。
「俺が東島さんのベルトを完成させます。だから東島さんは、決してコレを悪用しないで欲しいんです」
「ああ、勿論そのつもりだ」
仮面ライダーは全ての男子の憧れの存在。それを東島さんが悪用しないのは分かりきっているが、あくまで建前として言っておく。
「そして、もう一つは?」
「もし、もし俺が元の身体に戻れず、心身ともに本当のダグバとなったら、東島さん………俺を殺して下さい」
「白銀君。あぁ、分かったよ」
いや返事はや。
分かっていたことだが、本当にこう言うのは変に溜めない東島さんだ。
別に東島さんが適当に返事をした訳ではない事は分かっている。東島さんなりに考え、出てきた答えがそれなんだろう。
俺の命を軽く見ているわけではなく、仮面ライダーとして答えを出した。それで良い、その方が誰も後悔なく過ごせる。
無論、俺自身も諦めた訳じゃない。今後も元の人間に戻る為にショッカーと戦っていくつもりだ。
ただ、迷いなく答えてくれる東島さんに……気持ちが軽くなっただけ。それだけで充分だった。
今の俺はン・ダグバ・ゼバなのか、それとも白銀白斗なのか、それは定かではない。が、仮面ライダーに倒されるのは、怪人の常であり華だろう? そう思えば、幾分か心は軽くなった気がする。
気持ち良く答えてくれた東島さんに礼を言い、この日の俺は久し振りに心地よく眠れた気がした。
「…………」
そして数日後。
「ダグバァ! 俺と決闘しろォッ!!」
「いやなんでぇ?」
なんか中尾のおっさんと本気で勝負する流れになった。
いやホント何故に?
Q,主人公、大学の方はいいの?
A.卒業に必要な単位は全て取得し、論文も九割終えているので大丈夫でしょう。
多分。
Q.らライコーは?
A.次回辺りに来てくれるさ!
「え?」
オマケ。
このすばらしいダグバに祝福を!その2
その日、アクセルの街は未曾有の危機に瀕していた。
突如として現れた魔王軍。軍団長であるベルディアが潜んでいるとされる廃城に連日爆裂魔法を叩き込んだとある冒険者は、首なし騎士として知られるベルディアに目を付けられ、二度にも渡って強襲を受けていた。
一度目はベルディアが引き、今回はアクセルの街を蹂躙するつもりでやって来たベルディアとの戦いは熾烈を極めた。
貴族の身でありながらクルセイダーとしてベルディアと打ち合う女騎士ダクネス。彼女を中心に組み立てられた作戦。冒険者であるサトウカズマの健闘で遂に魔王軍の軍団長を追い詰める事に成功した。
「ぐ、クク……まさかこの私がここまで追い詰められようとは、アクセル。弱者の集まる街と聞いて油断したわ」
「めぐみんの爆裂魔法を受けてまだ生きてやがんのか! ダクネス並みにしぶとい!」
「おいカズマ、人を魔王軍扱いするのはどうかと思うぞ」
「く、クク。このベルディア相手にその余裕。嘗て魔王軍幹部だった俺が、落ちぶれたものだな」
「な、なんだって、元幹部だって?」
「プークスクス、ねぇ聞いたカズマさん。あのアンデットってば幹部から下ろされたんですって! ダッサ! 何処の上弦の参よ!」
「おい止めろ。あとお前猗窩座さんバカにしたな? 後で拳骨だからなお前」
相も変わらずボケとツッコミの応酬が止まないパーティーだが、そんな彼等を前にしてもベルディアの嘲笑は止まらない。
「あぁ、そうだ。私は確かに魔王軍幹部から引き摺り下ろされた。他の誰でもない、私自身がそう認めたのだからな!」
瞬間、ベルディアの背後から空間が割れる。黒く闇に覆われ、奈落よりも昏い底無しの闇。
その奥から現れるのは──白。それを目の当たりにした瞬間、誰もが息を呑んだ。
白と金の怪物。これ迄のベルディアとは異なる圧倒的に畏怖と絶望を身に纏うソレは、めぐみんを、ダクネスを、アクアを、そしてカズマを一瞥してベルディアへ向き直る。
「待たせたねベルディアさん。迎えに来たよ」
「……まさか、貴方が来てくれるとは。魔王様も酔狂な事をなさる」
「なに、偶々暇だったからね。友人とも会えたし、今日の所は帰るとしようか」
そういってベルディアを立たせ、先に黒い空間へ行かせる。何らかの転移魔法らしいソレを前に“彼”は一度だけ振り返り。
「ここからが本当のゲームだ。さぁ、アクセルのリント達よ──」
『ゲゲルを、始めよう』
それだけを言い残して、白き闇は昏い闇の中へと溶けていった。
「さて、なんか適当に脅してこいって言われたからダグバらしくそれっぽく言ったけど……まぁ、多分意味分かってないよね」
なんか適当に深読みして、勝手に混乱してればいいかなー、なんて本人は考えている一方。
「あぁ無理、終わったわー、俺の冒険ここまでだわー。ダグバさんが敵とか無理ゲーが過ぎるわぁー」
アクセルの街に住まうとある冒険者の少年は、すっかり意気消沈となっていた。
どうなる!このすば!?