英雄気取りの魔法少女 作:ねこ
魔法の源泉は、強い意志。
私の持論は少し違う。強い意志なんてものではない。精神を統べる技術。自分の心をどれだけ冷静に処理し、その感情から力を絞り出すか。
私は、高度3000メートルの上空で欠伸をかみ殺した。目の前で敵意をむき出しにしているのは、黒い鎧の騎士。腕を何本も生やし、剣をなん十本とこちらに向ける、異形の怪物である。このタイプは初めて見るが、――だが、それでも感想は同じである。
「――懲りないなぁ……」
「憎悪も、悪意も。この世に腐るほどある。冥天連盟は――まさしく世の救い主であるということだ」
「三百回は聞いたな、そのくだらない戯言を」
魔力を練り上げ、武装に昇華する。中空に浮かぶ小さな星。私の武装、遊撃衛星。私の計画通りに、攻撃をしてくれる便利な武装だ。
「相変わらずそうやって、高みの見物か――星屑の魔女」
「墜としたければ精々頑張れ。あと、初対面じゃなかったっけ? たこ足剣士さん」
衛星を、二つ、三つと増やしていく。指を鳴らせば、自然と弾幕が舞い踊る。「わたしのかんがえたさいきょうのせんじゅつ」。それは、不可避の弾幕。飽和攻撃による物量突破である。私自身は、何もしない。オーケストラを指揮するように、指図を下すだけ。
「それじゃぁ、超えてみろ、救世主!」
「卑怯者め――ッ!」
異形の戦士は、刃をこちらに向けて襲い掛かってくる。私は、指を鳴らすだけだ。衛星のレーザーが騎士の腕を焼き千切り、もうもうと煙を立てる。それだけでは終わらない。
「私は、まずは小手調べとかそういうことをするタイプじゃないから。――無様に吹き飛べ」
最大出力。全方面、全範囲を焼き尽くす完全不可避の飽和攻撃が、騎士に突き刺さる。
「――クソ」
騎士は、黒焦げになって消え去った。
冥天連盟は、突如として世界にあらわれるようになった異形の集まり。いわく、偽りに満ちた世を救う組織である――恐ろしいことに、本人たちは本気らしい。その被害は甚大で、人類の三割が冥天による「救済」を受けた。
通常の破壊兵器は核ですら冥天の異形たちには効かず、人類は犠牲の中である力を獲得した。
魔法、と呼ぶしかない技術。特定の少女に力を与え、異形を滅する力を持つ。きわめて特異な破壊兵器となってしまった少女は魔法少女と呼ばれ、文明護持のため戦う使命を背負わされたのである。
「スターダスト、すぐに帰ります」
魔法少女の活躍は、人類の結束を示す象徴となる。魔法少女スターダスト・シュバリエ。それが、私に与えられた「希望の象徴」としての記号。
人類最強。不撓不屈。そんな魔法少女集団の中で、最も弱い。が、それ故に最も重宝されている。損耗してもいい、便利な人材だからだろう。この前だって、新人に最高出力で数値で敗れたし。同期には魔力量で惨敗している。私が多少長く戦えるからといって、ここまで駆り出されるのはどう考えても一番死んでもいいからな気がする。
部署移動があって、初陣ではあった。うん。めちゃくちゃ楽勝。これで今日の戦闘は終わり、なのだろうか。
『お疲れ、スターダスト。あまり無理はしないでね』
「無理に見えましたか、先輩。――ヨユーです。ヨユー。あと三日くらいは動けます」
『そう? でも、戦闘効率評価を出すから。はやく帰ってらっしゃい』
「ふぅん、これで終わりですか。了解しました」
またの名をスターダスト・シュバリエ。