受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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修行回なのに修行描写ドコ…ドコ…。


それではどうぞ


第9話 生き残る為の術

 一進が暮らす事になった地底は元々地獄であった。

 

 その為、今でこそ妖怪たちが賑わう旧都が出来ているお陰でそんなにイメージをするのは難しいが、少し離れた所に目を向ければ荒れ果てた大地が続いている。それでもただの荒れた大地であって地獄とは程遠い……。

 

 しかし、地底の何処かに存在するとある荒地は、現在間違いなく地獄と化していた。

 

「おし~ん。いいの~?」

「ああいいぞお空!!かかってこいやぁ!!!」

 

 そんな地獄と称される荒地で、距離を空けた霊烏路空と藤代一進は互いに向かい合っていた。

 

「ファイトだよー!」

「あいよぉ!」

 

 そして少し距離を空けた所から声援を送るこいしに一進は軽く手を挙げて応える。

 

「それじゃあいっくよー!『ギガフレア』!!」

 

 そう言ったお空は自らの力を収縮させると共に途方もないほどの熱量を誇る大型の熱弾を一進へと放つ。そして、全てを焼き尽くす熱弾は真っ直ぐと轟音を響かせながら一進へと向かっていく所から今回の話は始まる。

 

 

 

 

 

side一進

 

 

 

『あなたも幻想郷で生きるなら自衛手段ぐらいは持っていた方がいいでしょう』

 

 そう。あの日呼び出された時にさとりちゃんから言われたこの言葉が切っ掛けで俺の地獄が始まった。

 

『幸いなことにあなたの能力は規格外なものだと思いますので、それを利用しない手はないですよ』

 

 いや…な?幻想郷にはさ?弾幕ごっこって言う遊びみたいな戦闘方法が普及しているって聞いたんだけど……。

 

「それじゃあいっくよー!『ギガフレア』!!」

「ざっけんな!?何だその攻撃!!!」

 

 お空の向けた筒からは熱気を孕む空気すらも焼き尽くす一撃が向かってくる。

 

 弾幕ごっこ。これでホントにごっこ遊びなのかと些か不安になるがやるしかない。しかし、最近では遊びの領域を超えている為に全くもって気が抜けない。

 

 基本的には幻想郷中に決闘様式として流布されている話なのだが…いかんせん地底の妖怪や下級妖怪には弾幕ごっこが主流とされて無いらしい。そんなわけで純粋な戦闘能力が必要になり平然とお空に生命を摘み取られかける羽目になっていた。

 

「お空と初めて会ったときに攻撃されて壁(未だに直っておらず応急処置で済ましている)が消し飛んだときも思ったけど…冗談抜きで火力高すぎんだろ!」

 

 事実お空の加減が下手なのか、する気が無いのかは分からないが確かに一つ一つの攻撃力が必殺の威力を誇っている。…攻撃自体は比較的ゆっくりなのだが、今さっきもそこらの岩が溶かされた所を見るにお燐に比べてお空の攻撃は遥かに危険なものだと分かる。

 

 くっそ、修行が始まった当初はお燐が上手く相手をしていたからある程度は安心して戦う事が出来ていたが…いざこんなのを眼前にすると流石に怖い。

 

 元々この辺は灼熱地獄跡地って事で気温が高かったけれど、たった今お空の一撃で明らかにそれが跳ね上がった。正直空気が蒸し返して汗が流れてくる。

 

 だがなぁお空?なんだかんだでそんな地獄に浸かってれば俺だって成長するんだよ。

 

 そう思いながら能力を発動して地面を強く蹴りつけて跳ぶ。否、飛ぶ。

 

 字で分かってくれる事だろう。いよいよもって俺は人外の仲間入りの如く空を飛ぶ事を可能としていた。まーじでさとりちゃんには感謝してもしきれない。俺の能力の解釈と可能性に基づいて修行した結果がこれだもの。

 

「そして『熱弾の攻撃対象から俺は拒絶される』」

 

 叫んだ直後に熱弾が爆ぜ、周囲は光と獄炎に包まれる。

 

 

 …………。

 

「おっしゃあ!!成功!!」

「うにゅ~……」

 

 まーーじで怖ぇ!!どっか消し飛んでないか自分の身体を確認するけどこの感じなら多分大丈夫だろう。これまでに何度か能力で試してはいたからいけると思ってたけど実際に身の危険レベルで実践したのは初めてだっての。

 

 段々と晴れてきてはいるが、こうまで炎と煙が立ち込めてるのに熱さも煙さも感じないから違和感が半端ない。視界の情報から起こり得るであろう事柄が身体に全く反映されて無い感じなのよね。

 

 「死と隣り合わせの緊迫した状況下に置かれ続けてようやく実ったよ……。これで能力を使いこなしたって事でいいんじゃね?」

「……あ~あ、当たらなかった~」

「っておい!?お空!お前悔しがってんじゃねーよ!!」

「だって~」

「だって~なんて付けたってダメなもんはダメだからな!」

 

 自信があったであろう攻撃が当たらなくて不貞腐れているお空を見て文句の一つでも言いたくなるが…まぁいい一先ずは生きている事に安堵してさっさと降りよう。

 

「ったくよぉ……。ミスってたらこっちは消し炭コースに一直線かもしれないっつーのに呑気な事だ――熱っつ!!!」

 

 足につんざく激痛ッ!?ってか降り立った矢先に急に足元燃え上がったんだけど何事じゃい!?

 

 …あ!?能力の拒絶範囲外か!さっきのお空の攻撃で地面は想像を絶するほどに熱されてって事!?

 

「――っ痛ってぇ!最後の最後でドジった…」

 

 俺の能力範囲は炎弾の拒絶で指定していた為にお空の攻撃自体からは身を守れた…。けど逆にそれ以外には作用されずに間接的なものは防げないってことじゃんね!

 

 大慌てで離脱して消火するも既に痛いもんは痛い。あのさぁ〜能力の条件をミスったのも油断してダメージ負ったのも俺の所為だけどあまりにも融通利かなすぎじゃないか?

 

「お進大丈夫ッ!?ヤケドしたの!?うわっ真っ赤…ちょっと待っててすぐに水持ってくるから!―――ヤケドさせた本人なんだからお空も来る!」

「えぇ〜今のはお進が「速く来るの!」は〜い。えーとケガさせてゴメンね?」

 

 離脱した所に足早とやってくるこいしちゃんに思いっきり心配されたのも束の間、冷やす物を取ってくるとお空を呼びながら大慌てで地霊殿へとすっ飛んで行ってしまう。

 

 完全に自業自得だってのに優しい主人に申し訳なくなる。それにお空は自業自得に気が付いていて苦言を呈しそうだったのに…こいしちゃんに言われるがまま素直に従って謝ってくるじゃん…。

 

 やめて!俺が悪いんだからそんな申し訳なさそうにされたらめちゃくちゃに居心地が悪くてこっちが謝りたくなっちゃうでしょ!

 

「いやいやいや!こんな事してるんだから承知の上だしそもそもこれは完全に俺が不注意なだけだったから気にしなくていいよ」

「おーくーうー!」

「分かってまーす今行きまーす!それじゃお進すぐ戻ってくるね」

 

 お空に気遣われてしまったのでこちらこそ申し訳ない気持ちでいっぱいである…。不意にこいしちゃんの方を見やれば既にかなり先に行ってしまっており、小さな姿しか見えない反面にその幼く高い声は良く響いていた。

 

 流石に何度も呼ばれたお空はその翼を広げてこいしちゃんの元へ爆速で飛んでいってしまう。俺にはそんな二人を見送る事しか出来なかった。

 

「二人して速すぎんだろ。…もう見えねぇし」

 

 俺自身飛べるようになったとはいえあそこまで自由自在で縦横無尽では無いのだ…。あとは慣れと経験って所でどうにかって感じかな?

 

「にしてもあっちぃ……」

 

 そんな事考えていたら汗が流れ落ちる。多少離脱したとはいえ、この辺もお空による温度上昇に巻き込まれているっぽい…駄目だ駄目だ倒れかねん。したっけもう少し熱源地帯から離れた所に腰を下ろしましょ。

 

 こうまで熱いと熱中症にでもなりかねないしな。それにそこまで離れた事も無いから地霊殿の方に急いで飛んで行ったであろう方角を眺めてたら戻ってきてくれたことにも気づけるべ。

 

「……ってか、なにも水なんて持ってこなくても俺が飛んで帰りゃ良くね?」

 

 ふと気がついたけど…だって足痛めたけど飛べるっちゃ飛べるし…。うん……考えるまでもなくその通りやん。

 

 ……まーいっか。

 

 ここでこいしちゃんの親切をあーだこーだ言っても悪いし、それに今までは他の人が俺の為に動いてくれる事なんて無かったからさ。少しはそんな状況に甘えてみてもいいだろ。

 

「足燃えたし確かに修行は地獄だったけど…こいしちゃんに手当てして貰えるんだったら役得ってもんかな?」

「地獄の修行で悪かったね。で?子供好きのお兄さんは怪我か何かかい?」

「…………お燐、お前何時から居たの?」

 

 心臓キュッてなったじゃん。音も無くいきなり出て来て隠密機動もビックリな事するなよ…。

 

「ついさっきさ。お空がやりすぎてないかちょいと様子を見に来たんだけど二人ともあたいに気付かず上の方飛んでってたね。…それで?地獄の修行が丁度終わったみたいだけどどうなんだい?」

「ん、ああ。ドジってケガしたけど問題は無いさ。それにそれのお陰で能力の改善の余地が見られた」

「良かったじゃないか。地獄の修行が為になって」

 

 ぬーん…。こりゃ耳聡く聞かれていたし根に持ってるなぁ…。不機嫌なお燐がジト目になってガンガンと突っ込んでくる始末なのでどうしましょ…。

 

「あ〜悪かったよお燐。手伝ってくれてホントに助かったありがとう」

 

 困ったら誠心誠意謝ろう。それに手助けして貰ってる立場だからそこまで言われれば謝らざるを得ない。

 

 ここまで能力を昇華出来たって言えるだけの事はやってきたつもりではあるが…切っ掛けと自覚を与えてくれたはさとりちゃんだし。そして忙しいさとりちゃんに代わって色々教えてくれたのはお燐だしなぁ。

 

「全く…お兄さんは教え甲斐のある後輩だけど困った後輩でもあるよね」

「後輩でもあるし生徒でもあるよ。ごめんてセンセ」

「……ニャー」

 

 ね。地底のみならず幻想郷の常識とかそこら辺まで指導して貰ったから正直お燐は俺にとって先生みたいなもんである。

 

 気を許してくれたらしいお燐は尻尾をふよふよさせながらも苦笑してくれたので良かった良かった。

 

「で、ケガは大丈夫なのかい?その足だろう?」

「無問題。見た目より酷くは無いし治すのは難しかったけど進行を止めるのは何とか出来そう。ホントさとりちゃん様々だよ」

 

 マジ話でその通りである。

 

 なんせさとりちゃんは俺が幻想郷に落ちてきた時に死なず、館内でお空の攻撃を受けた時も死なず、さらにさとりちゃんの能力が効かなかった事に加えて俺の言った【拒絶される能力】発言から、なんとこんなマイナス能力に希望を導き出してくれたのだ。

 

 要するにだ…『〇〇から拒絶される』という解釈をしてみれば?って事らしい。そして、俺の能力が万象の無効化って事を仮定に試行錯誤を繰り返したんだ。

 

 ………まぁ…最初舞い上がって調子に乗った所為で能力の限界値ってか落とし穴に気付かずガッツリ嵌って酷い目にあったのは後々語ろう。

 

 ま、そしてそれが上手く機能して認識した物事ならば条件をつける事で一先ずは能力を使って無効化出来る様になったってわけね。

 

「あぁぁお燐!何やってんのーー!!」

 

 てな感じでお燐とグダグダ駄弁っているとこいしちゃんが救急バックみたいなのを持って帰って来てくれた。

 

「っと、速いお着きだね。さすが惚れた相手の事になると心配になるって事かね」

「…………」

「ま、戸惑うのも分かるけど……こいし様を大切にしてあげてよ」

「もーお燐!お進を手当てするのはわたしなんだからね!」

「分かってますってこいし様、あたいは何もしてませんよ。こいし様はお兄さんが大好きですからね」

「えへへ〜♪だってお進はね〜わたしの事ね〜///」

 

 おい、顔赤くすんなってこいしちゃん。それに他の奴には秘密にする約束だろ。本当に恥ずかしかったんだからな。

 

 ……やっぱりいくら雰囲気に飲まれたからってあんな事言うのも俺らしくなかったなぁ……。

 

「それで?結局こいし様はあの時お兄さんになんて言われたんですか?」

「んー♪あのね〜「こいしちゃん。二人の秘密」そういう事なの、だから言えな〜い♪」

 

 嬉しそうに笑いながらも甲斐甲斐しくケガを手当てをしてくれるこいしちゃんを見てお燐も微笑ましそうに笑っている。

 

「え〜お兄さん少しぐらい教えておくれよ〜」

「げふっ!お燐…苦しい」

「あー!?お燐何お進に抱きついてんのー!!お燐はお進の事を普通の同僚としか思ってないって言ってたじゃん!」

「にゃははこいし様!あたいは妖怪ですよ!それにワガママで自由気ままな猫です、自分のやりたいように生きるのは当然でしょう」

 

 勘弁してくれ。手当して貰ってる以上座って脚投げ出してるんだからそんな状態で後ろから来られたら首と体幹が終わるわ。

 

「…んん〜もう!お燐に抱きつかれて喜んでるお進なんて知らない!!!」

「げ!?ちょっとこいしちゃん! お燐離せって拗ねられたら面倒になる」

………りが…う…

「……あ? 何か言ったか?」

「いーや?ほらこいし様行っちゃったよ?速く自分のご主人様追いかけなきゃいけないんじゃないかい?」

 

 …おーいコラー。元辿ったらお燐が分かった上でこいしちゃんを煽ったからじゃないですかねぇ………?言っててもしゃーないか。

 

「こいしちゃんは早いしこっちはこっちで足痛ぇし…。はあ〜あ機嫌とってくるか…」

 

 少し急ぎ足でこいしちゃんの後を追う。すると追い掛けて来た俺に気づいたこいしちゃんに再び笑顔が戻ってくれたのであぁ〜良かった良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ知ってるかい、お兄さん? こいし様が純粋に心から笑うのが増えたのはね、お兄さんがここに来てからなんだよ。それにね、心配事が増えたーなんて言ってるけど、なんだかんだ言ってさとり様も毎日を楽しんでいるのさ」

 

 二人を遠目で眺めるお燐は一人でに呟く。自分がまだ人型になれない妖獣だった頃の記憶も鮮明に覚えていた。

 

「あの頃はどうにかしてさとり様とこいし様を助けたくてただただがむしゃらだったっけ。今になって漸く二人を救えたのかね……ま、ほとんどお兄さんの手柄だったけど―――」

「…あれ〜お燐。こいし様たちは?」

「……お空。何であんたは地霊殿から来てる筈なのに真反対から来てんのさ?」

「…? 途中までこいし様と居たんだけど〜こいし様が先に行っちゃって場所分かんなくなっちゃったから?」

 

 案の定のお空の言葉に思わずお燐は溜息を吐きたくなるが、既に慣れたものでその気持ちも霧散する。

 

「本当にお空は何時見ても幸せそうだねぇ」

「うにゅ?うん幸せだよ♪だってさとり様もこいし様もお燐もお進もみ〜んなが幸せで楽しそうだもん♪」

 

 お空は能力ゆえに地底においても人工的に太陽まで浮かべられるレベルの存在である…。が、今浮かべるのは混じりっ気の無い晴れ晴れとした天然の笑顔。

 

「―――くくっあっはっは!そうかいそうかい!あたいも幸せそうに見えるかい!そりゃ良かった。それじゃ帰ろうかお空、二人共もう帰ったからね」

「うん♪ ん?もう帰ったの!?」

「ああそうさ、二人で仲良く地霊殿にね」

「ええ〜!?わたし置いて行かれたの〜!?」

「あの2人は互いにお熱だからねぇ。だから一緒に帰るよお空」

「うん…」

「(確かにこの子は頭が悪い、けどそれ故に人一倍純粋な心を持ってるのさ。後でお空に謝っておきなよお兄さん。……けど、ホントお兄さんには感謝しなきゃだね。人間なのにあたいたち妖怪を忌避せずにいてくれて、強くなる為とは言え弱音一つ吐かずに危険な修行を続けていた、その一つ一つの行動が皆に光を与えたんだよ。だから「お燐、何難しい顔してんの?早く帰ろ?」……お空」

 

 お燐はお空の澄んだ瞳に覗き込まれて考えを中止する。最近は一進に付きっきりだった事もあり、互いが他愛もない話をする事も久しぶりだった。

 

 お燐はそう思い意識を切り替える。

 

 「……はぁ、こんな所で考えてても仕方ないか。……あ、そういえば暫くお空とあたいって一緒に飛んでないね―――競争する?罰は倉庫の掃除で」

「ん?いーよー。フフン、久々だからってお燐には負けないから!」

「言うね〜!お空は一度も追いかけっこであたいに勝てた事なかったけどね〜」

「そっ、それは昔のことだし今は関係ないよ!―――よーいどん!」

「あ、ずるっ!?待てー!お空ー!!」

「あははは〜」

 

 

 

 

 まぁ、こんな事やってられるのもお兄さんのお陰さ。

 

 

 

 ……正面からは恥ずかしくてさっきみたいに言えずじまいになりそうだから…今はここからでもいいよね?

 

 

 

 

 

 

 本当にありがとうお兄さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「げ!?お空ぅーーー!!!地霊殿そっちじゃなぁああい!」

「えっ」

 

 

 これもこれで一つの幸せかねぇ…?

 

 

 

 




お二人の仲ガ深まりましたが何があったのかはどっかで振り返ります。


それではまた次回
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