受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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残念美人なポン再び。

それではどうぞ。


第12話 覚と鬼とスキマの対談

 

 

 新たに地底の仲間に加わった一進の歓迎が盛大に行われて暫く…。夜も更けて旧都の宴会も既に大半が道端でも構わず酔い潰れている為今では騒がしさも失せてすっかりお開きになっていた。

 

 しかし閑散とした中に主役である一進の姿が無く、有るの死屍累々如く倒れ寝込む妖怪たちの寝息やイビキ、強い酒の匂いだけがそこに残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

  〜地霊殿〜

 

 

「さとり、入るぞ」

「おや、勇儀さん。上手く関与して頂いたようでありがとうございます。それにお燐を迎えに行かせるつもりでしたがわざわざ二人を連れて来ていただいたようで」

「あー、いや私も聞きたい事があったから別に構わんさ」

 

 どうせ来るついでだしあいつらは適当な部屋に突っ込んどいただけだしな。とさとりのいる部屋に入りそう言った勇儀はさっきまで宴会を楽しんでいた顔から一変して真面目な顔をしていた。

 

「面白い人間を拾って妹が気に入った。地底で融通利かせられるように他の連中から一目置かれるようにしたい。お前の頼み事なんだからどうせ悪くはならないと思って乗ったけどな」

 

 …酒には合わないなぁ…なんて我が物顔でソファに腰を下ろして置いてあった焼き菓子口に運びながら淡々とさとりに話しかける。

 

「なぁさとり聞かせろ…。藤代一進……あいつはなにもんなんだ?」

 

 目を細めてさとりを見据える。

 

 勇儀はさとりの事を信用している。故にさとりからの頼み事があった際に特に深く話を聞くこともなく了承していたが…あまりに情報が少なくさとりから聞き出す為に地霊殿まで来ていた。

 

「? 人間なのにあまりにも妖怪に慣れていると?」

 

 勇儀の疑問に返しつつも、さとりは広がる書類を片付けて来客用にと新たに紅茶を用意しようと席を立つ。一進の事で世話になった恩義からか普段使わない高級品を惜しげもなく淹れていた。

 

「そうじゃねぇよ。恐らくここで暫く匿ってたんだろ?それぐらいなら驚くこたぁないし、それに地底にまで来る人間なら大なり小なり大抵そうだろ」

「まぁ異変解決に来た方達も其々強かったですしそれもそうですね」

 

 思い返すは少し前にやって来た二人の少女。派手に煌めく弾幕で誰もを魅了し、お空の暴走をも鎮めて地底中にその名を轟かせたのも記憶に新しい。

 

「問題はあいつの一撃の方だ。一進自身はその威力に気づいてないみたいだったけど……まず間違いなくあんな攻撃食らったら並の妖怪だと耐えられないぞ」

「……そんなに凄かったんですか?」

「私の歯へし折りやがった」

「そこまでだなんて!?」

 

 勇儀の言葉にさとりが驚くのも無理はない。それは勇儀が身体の頑強さにかけては幻想郷トップクラスの妖怪である鬼だからに他ならない。

 

 それもただの鬼に留まらず、彼女は四天王と呼ばれる鬼の中でも更に別格の存在となればなおさらだ。普通の人間…どころか妖怪に殴られようと怪我一つ負わない認識がある。

 

「……どうやら本格的に話を聞かなければならないようですね」

「話だぁ?」

 

 何を言ってるのか分からない、といった感じになる勇儀に対して、さとりは答えを教えるようにある所に指を向ける。

 

「どう言う事だって――――はぁ!?八雲ぉ!?」

 

 さとりの指した方を向いてそう勇儀が叫んだ通り、部屋の隅には妖怪の賢者……八雲紫が居た――。

 

「……ふふっ、良かったって。一進が幻想郷に来て良かったって……うふふふふふふ」

 

 ―――ただまあ、少々壊れていたが。

 

 

 

 

 

 八雲紫が何故地霊殿に居るのか。

 

 それは一進を旧都に送り出した少し後での出来事だった。

 

 

「さて、後は上手く頼みますよ勇儀さん」

「……さとり様、やっぱりあたいも付いて行った方が良かったのでは?」

「ダメよお燐。これは危機感を得る為にやってるって事もあるんだから……それにあなただって納得するまで一進を鍛えたんでしょう。だったら、後は信じて待ちますよ……一進と地底の妖怪たちを」

「……そうですね」

 

 それでもやはりお燐は一進を旧都に行かせるの事が心配らしい。

 

 それもその筈、お燐だって旧都へ何度も足を運んでいる妖怪だ。荒くれ者の多い地底ではケンカなんて日常茶飯事な光景だし…やり過ぎている事だって散々見てきた。

 

 それ故にそんな不幸が一進の身に降りかかるのかと気が気でないのだろう。

 

 そして、さとりはそんなお燐の心を読んで嬉しくなっていた。

 

「(少し前までだったらお燐は人と妖怪、どちらの場合でも死体を回収する事を優先に考えを巡らせていた筈ですが、他者の命を心配するとは。……本当に彼は周りに良い影響を与えてくれますね)」

 

 あっちに行ったりこっちに行ったりと、(せわ)しなく足を動かすお燐に優しく微笑みたくなるが、今日は早い時間帯に一進が外出してしまっている。その為地霊殿の仕事は自分たちでやらなければならないのだ。

 

「さて、家事技術があまりにも優秀だからついつい頼ってしまいがちですが、少しは自分たちでもやりませんと―――誰ですか!」

「えっ?」

 

 何かに気づいたさとりは咄嗟に声を上げる。お燐はそんなさとりに驚くもすぐにそんな事考えられなくなった。

 

 理由は、数瞬後に開かれたスキマから、やつれにやつれた八雲紫が姿を現したからだった。

 

「や、八雲紫ぃ!?!?」

「何故……あなたがここに?」

「…………しん…どこ……」

 

 突然の大物の登場にビビるお燐に来た理由に心当たりがないさとり。

 

 しかし、当人の紫は譫言(うわごと)のように何かを呟くだけで反応を示さずに幽鬼のようにフラフラとしているだけである。

 

「どういう状況かは分かりませんが条約の改定も済んだはずです。一体地霊殿に何の用があ「一進は………一進は何処にいるのよぉーーー!!!」はぁ?」

 

 そんな紫の突然の嘆きにさとりは困惑した表情で固まる事しか出来なかった。

 

「え、居ますけど」

「藍からの眼が厳しいから仕事片付くまで徹底的に監視されてまともに動けなかったし!やっと解放されたからあちこち探したけど誰も知らないって言うし!ああ〜ゴメンなさい一進!」

 

 取り敢えず自分が対応せざるを得ないと感じてお燐を部屋から退出させる。しかし紫自身相当焦っているのかさとりの声が届いておらず癇癪を起こしたように叫び散らかしている。

 

「話を聞いてください。彼は地底に居ます」

「ああ、やっぱり知らないわよね。それに地底なんて危険地帯に居たらすぐに妖怪にやられてしまうもの……こうなったら閻魔に話つけて彼岸から無理やりにでも」

「………だから!!居ますって!!!」

 

 人の話を全く聞かない紫に少々うんざりし始めるものの、半分怒鳴る勢いで言葉を紡ぐさとりは紫の穏やかでない心を読む事で大体は理解する事が出来ていた。

 

「(はぁ〜、一進を幻想郷に落としたはいいけど何処に行ったか分からなくなるうえ、その間自分は式神に拘束されてすぐに探せなかったと……だから彼を連れてきてそのままにしていたんですか…というか何をやってるんですかこの人は……)」

 

 心を読まれさとりに内心呆れられてる、なんてつゆほどにも知らない紫はようやく落ち着きを取り戻し、正常になってさとりを見ていた。

 

「………古明地さとり、申し訳ないけど聞き間違えたようだからもう一度言ってくれないかしら?今貴方一進が居るって」

 

 何度もそう言ってるじゃないか。なんて呆れ返った感情があるもののしっかり取り繕って再度紫に向かって話をする。

 

「彼は数週間以上も前に地底にやって来て…今は旧都に行ってますよ」

「―――っ「待ってください!」何故止めるのかしら?事と場合によっては貴方を今此処で―――」

「彼が心配で焦るのも分かりますが一進の身の安全は必ず保障します。だから」

「だから?」

 

 大妖怪特有の濃密な妖力が紫から放たれるが、さとりは恐れずに言葉を紡ぐ。

 

 今旧都にいる一進の元に八雲紫が行ってしまってはこちらの計画が破綻してしまう為、どうにかして時間を稼ぐ必要がある。そうすると取り敢えずまともに話を聞いてもらえる状態にまで紫を落ち着かせるしかないとさとりは理解していた。

 

「相当必死だったのでしょう。大丈夫です。一進はこいしと一緒にいますし勇儀さんに気に掛けてもらうよう頼んでいます。……それに愛する者の前にその顔で出るつもりですか?温泉貸しますので入ってきた方がいいですよ」

「…………」

 

 

 ………。

 

 

 ………。

 

 

「悪かったわね…有り難く頂くとするわ」

 

 ひとまず紫の暴走を止めれた事にさとりは一息つく。

 

 心を読んだ時点で一進へ恋慕の情があったのでいくら一進を安全だと説いても心配ですぐにでも旧都へ向かう可能性も十分にあった。その為、地霊殿に留まって身なりを整えるか五分五分だと思っていたが案外乙女で内心助かった。

 

 しかしそんな打算的な思考を抜きにしても、相当に時間を切り詰めて一人の男を探す為に幻想郷中を奔走した紫に対して、妖怪の賢者、地底のまとめ役、そんな立場を抜きにして一人の女性として紫を癒してあげたい……多少なりともそんな気持ちに駆られていた。

 

 

 

 

 

 

「で、結局なんであいつは感動してる訳だ?」

「それが…途中から待つのが我慢出来なくてスキマで覗いてたんですよ」

「なるほどな。そんでか」

「うふふふふふふふ」

 

 紫は一進が宴会の場で言った幻想郷に来てよかった宣言を聞いて、自分の世界が彼にとってプラスになった事が何よりも嬉しかったようで笑っていたのだった。

 

「はあ〜あ……オラッ!八雲!何時までもトんでないでこっち向け!」

「痛った!!え、何?何なの!?」

 

 だがしかし勇儀にはそんな事関係ない。トリップしていた紫の脇腹に蹴りを叩き込み強制的に現実へと引き戻した。

 

 そして目を(まばた)かせるように周りを見回した紫は、開いていたスキマに一進の姿が見えない事を確認するや否や再び慌て始める。

 

「ちょっ!さとり!一進が居なくなったんだけどどうす「ちったぁ落ち着けやぁ!!」ヘブッ」

「二人とも、時間が時間なんですから静かにして下さいよ」

 

 一度目より威力を上げた勇儀の蹴りをモロに食らう紫、話が進まなくてだんだんイラついてる勇儀、そして紫の心配よりも寝ている者たちを心配するさとり、なんとまぁカオスな展開になっていた。

 

 

 

 

 

 

「それで?二人とも、私に話とは何かしら?」

 

 ひとまず夢見心地だった紫を落ち着かせる為に、宴会は終わった事、一進は既に地霊殿の一室で寝ている事を彼女に伝えた。

 

 だがそれは逆効果を生んでしまい、すぐに一進のもとへと向かい出しそうになった紫は勇儀の再三に渡り蹴りを入れられる事で暴走が止まるのであった。

 

「なんかこの話を持ってくるまでにスゲー時間食ったけどもうこの際いいや…それで八雲?あんたが連れて来た藤代一進……一体あいつはなにもんなんだ?」

 

 勇儀はやや疲れた顔を見せるものの、やっと自分の知りたかった事が分かると思い、漸く報われた気持ちになる。

 

「……なるほど。どうやら貴方にも、一進の事を説明しておかなきゃいけないようね…」

 

 さっきまでの威厳などが微塵に感じられなかった姿はまるで嘘だったかのように、今やもう紫が身に纏っているのは大妖怪のソレだった。

 

「えっ、紫さんそれは「黙ってろさとり」え〜…」

 

 さとりは何かに気付くものの、真面目な顔をした勇儀に制される。

 

 勇儀とて強者の一人である以上紫の実力も把握している。そんな紫がこうまで空気を引き締めているのがだから嫌でも緊張が高まっていた。

 

「……まぁ、なかなかに沢山あるからまとめ辛いのだけど……」

 

 

「「………………」」

 

 

「そう…ね、一言で言ってしまえば彼は……」

 

 

 

 

 

 ……ゴクッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の最愛の人よ」

「……さとり邪魔すんな、ちょっとそいつを全力でぶん殴るだけだから」

「だから最初に止めようとしたじゃないですか!!後お願いですから止めて下さい!これ以上家に穴が空いたら予算が無くなります……」

 

 全くもって見当違いな事を言い出す紫、発言にキレてストレスが一周して既に笑顔で肩を回す勇儀、そして泣きそうになりながらも必死に勇儀を抑えるさとりを見ているといたたまれない気持ちになる。

 

「あ、あらっ?違ったかしら?」

「あんたがあいつに惚れてようが惚れてまいが!心っ底どうでもいいわぁぁああ!!!」

「静かにして下さい~……」

 

 きょとん顔の紫、草木も眠る丑三つ時に響き渡る鬼の咆哮、そして誰も起きない事を切実に願っている不憫なさとりがそこに居た。

 

 

 

 




チャッピー君にイラスト生成頼んでみたけどめちゃんこムズくて笑うしかない。ある程度話数進んでそこそこのが出力出来たら一進君のイメージ画として投げようと思います。


それではまた次回。
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