受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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初のこいしちゃんメイン回なのに前話の踏襲回だぞ。


それではどうぞ。


第16話 言葉の真意

こいしside

 

 

「(へぇ〜、ここが八雲紫の家なんだ…)」

 

 目の前に広がるは風情漂ういかにもって感じの日本風のお屋敷…。

 

 たまに地上に出てフラフラしてたわたしでも分からない場所…となれば相当厳重に隠された所なんだろう。

 

 …そう、この通りわたしたちはついさっきまで地底に居たっていうのに今は八雲紫の所為で地上にいる…。

 

「(全く、お進を無理やり連れてくんだから!)」

 

 確かにわたしだって、お姉ちゃんが言ってたようにお進には幻想郷で生きてくんだから色んな所を見て回ってほしいと思ってる。

 

 けど、それだって地霊殿(わたしたち)の家族としてだからね。そして案の定八雲紫はお進の事を式にしたがっているんだけど…お進はわたしの従者なんだよ。渡すわけないじゃん。

 

 なんて、思ってると八雲紫の式がわたしの事を呼んだ。

 

「……お前は確か地底の…古明地こいしだな、少し来てくれ」

「?」

 

 ……ふ〜ん、この狐さんはお進があまりにも肯定的な返事をしないもんだから、お進を止めてるわたしに直接交渉を持ちかけてくる気なのかな…?

 

 嫌だなぁ〜交渉事はお姉ちゃん任せだからそういうのはあまり得意じゃないのに。

 

 あ、ゴメンね身長的に屈んでもらって。

 

「(頼む古明地こいし、藤代一進を式にする事を許してくれ。ちゃんとそちら側のメリットを残すようにする)」

 

 う〜ん……案の定交渉かぁ。でも力づくで来られたらわたしなんてひとたまりもないし、やっぱ話し合いで解決するのが得策なんだよね。

 

「(君が藤代一進を好いているのは分かる。…しかし紫様の願いがある以上、私も簡単には引き下がれないんだ)」

 

 お願いされてる以上こっちの立場が上の筈なのに、全くそうは思えない程の貫禄が向こうにはある。

 

 式神として八雲紫を立てなきゃいけないのは分かってるよ?でもわたしにだって独り占めにしたいって気持ちがあってもしょうがないじゃん。

 

 …だからと言って式神になればお進だってまだまだ強くなれるから安全性も増すだろうし八雲紫の後ろ盾を得れるなら中々に大きいもんね…。

 

 あ〜あ、どうすればいいのかな〜?

 

 ……あ!

 

「(……じゃあ、お進の意思を尊重して。長い間拘束するのもダメだよ)」

 

 コレなら、お進が式神になってもわたしと離れ離れになる事は少なくなるし大丈夫だね♪

 

「(……ふむ分かった、それで手を打とう)」

 

 かなりわたしに利がある条件なのに飲んでくれるんだ……。これも一途に自分の主人への忠誠の表れだよね。一進もわたしにそう思ってくれてるかな?思ってくれてるといいな♪

 

「(苦労してるんだね)」

「(ははっ、紫様も君と同じように彼を好いてしまったのでな。そしてそんな紫様についていこうと決めたのは私だから文句等無いさ)」

 

 ……わたしと同じように好きになった…か。

 

「(けど、お進の一番はわたしだからね!)」

「(ああ無論だ。約束は守ろう)」

 

 約束を守るなんて鬼じゃあるまいし、守る妖怪の方が少ないよ。心はもう読めないけどそれぐらい分かる。

 

「…うん、わかった。それならいいよ」

 

 けど、納得しないとわたしなんて潰されかねないからね、これぐらいは譲歩しないといけない。

 

「話の分かる妖怪で助かったよ」

 

 そう言って向こうは手を差し出してくる。形式上でしかないけど約束の履行の握手かな?

 

 はぁ、いつもはお姉ちゃんに任せっきりにして悪いな〜って思うけど、頭も使うし下手な事も出来ないしこれだから強い妖怪と話すのって嫌いなんだよねぇ。

 

 あ〜あ、疲れた疲れ―ッ!?

 

 ……。

 

 ……ははっ。

 

 差し出された手を取ったらすぐに分かった。

 

 八雲藍、極限にまでその身に妖力を抑え込んでる技術とその絶対量……下手すれば勇儀並かも、わたしなんて足元にも及ばないぐらいに強い妖怪……。

 

「紫様、一進を式にしてもよいそうです」

「キャー!さっすが藍!」

 

 そしてその主人、八雲紫……か。

 

「え、良かったのこいしちゃん?」

「うん♪一進が強くなる為だもんね、わたしもワガママばかり言ってられないもん」

 

 ホント、ワガママなんて言ってる場合じゃないや……それに、わたしも人の事言ってられないよね。

 

 ……お進を取られないように強くならなくちゃ。

 

「ですが!」

「「?」」

「八雲家で彼を拘束してはいけない事が条件となります」

「え? ら、藍〜?どういう事〜?」

「はぁ〜、文字通りの意味ですよ。一進をこの家に…もとい、常に私達の手元に置いておく事が出来ないという事です」

 

 あんなアホそうにしてるけど、アレだって自分を可愛く見せる演技かもしれない、全く…油断のない……。

 

「ま、まぁ、一進が式になる事は確かになのよね」

「そういう事ですね」

 

 ………………。

 

「それなら呼び名ね〜色がいいから……それでは(しろ)にしようかしら」

「それじゃ犬の――ってどっかでやったぞこのやりとり!!!」

 

 ……あ、あれ?……ん〜と…………もしかしたら…。

 

「どうしてそこを取るんですか紫様は……」

「え、だって色で揃えたいじゃない」

「藤があるじゃないですか!」

「……藤って色なの?」

「はぁ〜あ……」

 

 嘘ぉ!そんな事も知らないのあの妖怪は!!

 

「(ねぇお進、あれホントにスゴイ妖怪なの? )」

「(…………多分)」

 

 気になってお進に聞いてみたけど、自信が無い返事をするところからお進もスゴイ妖怪か疑ってるって事だよね。

 

 さっきの狐さんの強さから考えて、さらに強い妖怪には違い無いはずなんだけど…とてもそうは見えない……。

 

 

「藤代一進の雑学!!」

「うひゃあ!?いきなりどうしたの!?」

 

 びっくりしたぁ〜、いきなり大っきい声出さないでよもう!

 

「ほら、向こうで藍さんが紫さんに呆れながらも藤について説明してるからこっちでもしようかなって」

「わたしだって分かってるよ?」

「え?藤色は何かって?」

 

 わたしは頭悩ませてるのにお進はなんか語りだしちゃったし……。

 

「誰も聞いてないよ」

「それについては藤について語ろう。藤っていうのはマメ科の植物でな、五月頃に紫色の花を咲かすんだ」

 

 わたしの話も聞いて無いし……。はぁ、テンション上がってるみたいだけどわたしはちょっと先行きが不安かな。

 

「へぇ〜」(興味なし)

「うぐっ、よ…よって、藤=紫色、薄紫色って事になるんだよ」

 

 はいはい、知ってる知ってる――!? そうだ…藤=紫…。

 

「いっしーん!貴方の名前が決まったわよ!」

「お、決まったみたいだな」

「…………」

 

 ……(お進)(ゆかり)ってなんかヤダな…。

 

「…どしたの?」

「……ん〜ん、なんでもないよ」

 

 …けどまぁ、約束した手前しょうがないよね。それにわたし心が広いもん♪それぐらいでいちいち気にするなんて―――。

 

「それで紫さん?結局俺の名前は藤になったんですか?」

「ん〜、それがね〜。普通に藤だと味気ないから、(かさね)ってどうかしら?」

 

 ――――は?

 

(かさね)?」

「ええ、昔の着物の色でね。藤襲(ふじがさね)って言うのがあるんだけど……それが薄紫を表しているのよ、私を表しているなんて素敵と思わない?」

 

 …………。

 

「まぁ、字面は良くないけど(かさね)なら呼びやすいでしょう。それに貴方になら文字通り襲われても……キャーー///」

 

 八雲紫が聞き捨てならない事を言ってるけど、今は気にしてられない。

 

 …だって。

 

「……言ってくれるじゃん狐さん」

「ほう…気付いたか、見た目に反してなかなかに博識だな」

 

 むぅ…やっぱり確信してやってるよね。

 

 お進も言った通り紫を表したいんだったら名前は(ふじ)でも構わない。

 

 それをわざわざ藤襲(ふじがさね)にする理由は……。

 

「気付いた通り藤襲は紫だけでは無い、表が薄紫……裏が青の衣服の色合わせの事だ。我ながらこれほど合う名もなかなか無いと思うぞ、それに約束も守ってるからな」

 

 薄紫と青、紫だけじゃなくて藍も表す…か。

 

 そしてそれは、お進は私達のものっていう明確な意思表示。

 

 確かに約束は(たが)えてない、違えてないけど……。

 

 はぁ〜、上手いとこ突かれちゃったなコレは。

 

「文字通り()は裏だ、だからせいぜい自分の役目を全うして(紫様)を引き立てるとするさ」

 

 知識でも実力でも強大すぎる妖怪が立ちはだかる。

 

 偶然とはいえお進は地底に来てくれたお陰で幻想郷に住んでる中じゃわたしが一番交流が深い。でも、だからと言ってワガママを通せるような立場じゃないから強くは出れない。

 

 けど、それぐらいじゃお進の事は諦めたりしないもん。

 

「……負けないよ」

「…ふふっ、まぁそんな顔をするな。驚かすような事を言ったが、私も人を愛する妖怪の姿を見ていると……昔の自分がそこにいるようで見ていて楽しいんだ」

 

 不意にそう言った狐さんは、先程まで貼り付けられていた笑みを崩して朗らかに笑う。

 

「私の時は周りが……いや、世界がそれを許してはくれなかった。…無論悔しかったさ、私だって人が恋しかったのだからな……。だが此処は違う、紫様が作ったこの世界は、妖が妖でない者…人が人でない者と愛し合う事が許されるんだ」

 

「…………」

 

「だから、という訳では無いが……知りたい事や教えてもらいたい事があったら聞いてくれ、先人としてアドバイスぐらいならしてやれるさ」

 

 完全に保護者みたいな目で見られてわたしは少し困惑する。

 

 何で?わたしは自分の主人のライバルになるかもしれないのに、どうしてこうもわたしに手を貸してくれようとするのだろう?

 

「そんな事…教えてもらっていいの?」

「当然だ。これでも大国を引っ掻き回して滅ぼそうとした悪女として残されているが…それでも、私とあの男の中には確かな愛があったさ。その人間は私の事を妖怪と知ってもなお愛してくれたよ」

 

 古い記憶だがな…今でも心に残っている……。なんて狐さんに言われちゃったら思いっきり敵対心出してたわたしが恥ずかしいじゃん!

 

 

 …でも、そっか……それなら……。

 

「……料理…教えてくれる?」

「はっはっは!紫様も壊滅的だからな!ああ分かった教えよう」

「狐さんは大国を落としかけてるんでしょ?じゃあ一人の男の落とし方くらい簡単だよね♪」

「なんだ、おっかなびっくりだったのに中々に言ってくれるじゃないか」

「えへへ」

 

 待っててねお進、わたしもお進の為に頑張るから♪

 




面に出さないだけでちゃんと考えてるタイプなので主観と他者視点でかなりのギャップ差なのです。


それではまた次回。
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