それではどうぞ。
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side一進
門前でサボり魔とメイドさんのやり取りを眺めてること少し…やっとメイドさんがこちらにフォーカスしてくれた。
「申し訳ありません。うちの門番が失礼をしたようで」
大丈夫大丈夫、気にしなくて結構です。それよりも貴女の後ろで倒れている美鈴に刺さっているナイフの方が気になるんですが…。
「私は紅魔館のメイド長を務めている十六夜咲夜と申します。それと、お聞きしたいのですがその服はどういう事でしょうか?」
「え?」
いや、え!?そんな目をされてもさ…これはこいしちゃんがここから借りてきてくれた服で……。
……ん?でもこいしちゃって当主にバレないように確か能力使ってたんだもんな。
……って事はそうじゃん。無断で拝借したに決まってるじゃん。
俺はここまで怪しまれている理由がなんとなく分かってしまい、恐る恐るこいしちゃんを見ると……。
「えへへ〜♪」
「えへへ〜じゃねぇのよ…」
確信したわ!借りてきたってかそれは窃盗だわ!
うん。それは怪しまれて当然だわな、
さてどうするかな、これはどう説明してもこいしちゃんが悪く見られるからな。
「……いえ、失礼しました」
「ん?」
おっと、何を言って謝ろうかと考えてたけど…向こうが勝手に納得してくれたようだぞ?
「おそらく八雲紫が楽しむ為に貴方に伝えていなかったのでしょう」
…………。
「ああ…悪かったな。俺も
「大丈夫ですよ、そういう方だとお聞きしていますから」
うん。これは仕方が無い。向こうが勘違いしているのだから仕方が無い事だな。
だってよ?人の間違いをいちいち指摘する人間ってのは嫌な奴だと思われないか?俺は時として波風立てないように勘違いさせておく事も大切に思ってるよ……。
……決して『別に紫さんなら評価下げられてもいいか』なんて思って無いからな。
「あ〜、通りで見た事ある服だと思いました」
「「…………」」
「おお!ホントにナイフ刺さっても平気なんだね!」
ああ、うん。確かにね…確かにそれも驚いたけど…。なぁ美鈴?もう少し館内で起こった出来事は覚えておけよな、これは解雇されても文句言えなくなるぞ。
俺は兎も角としてメイドからの視線が割と酷い事になってるのに気付け。
「…すみませんが、そちらの妖怪の方はお連れでしょうか?」
お?何だ?美鈴にまたお仕置きでもするかと思ったけど諦めたか?
「そうだけど…もしかしたら入れないのか?」
「いえ、一進様のお連れでしたらお嬢様も許可を出しますでしょう」
そっかそれなら良かった。
こいしちゃんの友達の家だ〜って事だったから話なんて余裕だと思っていたのに大幅に予定が狂ってしまっているんだ。
だとしても1人にさせるのもどうかと思っていたからその言葉は非常にありがたい。
「ねぇ咲夜さん?どうしてお嬢様は一進さんを呼んだんでしょうかね?」
「貴女はここで職務を全うしなさい…次サボったら契約的にか物理的に首が飛ぶわよ。ではお二人ともご案内します」
「ひぃん…」
頑張ってくれ美鈴。もうそれしか言えん。
~~~~~~~~~~
「は〜、ひっろい家だこと…」
歩けど歩けど景色が殆ど変わらない。
俺たちは、十六夜咲夜の案内により紅魔館の当主であるレミリア・スカーレットの下に向かっていた。
「うん。外から見えてたよりも明らかに広いよね」
「…ありえないけど…やっぱそういう事だよな」
そう、こいしちゃんの言う通りあまりにも館内が広すぎる気がするんだ。
これでも急いでいないとはいえ数分間も歩いているんだぞ?だというのに未だに目的の部屋にたどり着いていないのは異常だと思うんだが。
「はい。お二人の仰る通り、外観に比べて館内は広くなっています」
すると、前を歩いていた十六夜咲夜が振り返りそんな事を言ってきた。
「やっぱり勘違いじゃ無かったんだな…。それで、どうやってるのさ?」
俺は率直に問う。その理由は二つ…。
「この館に特別な術式が組まれてあるからです」
「術式?館内を広くする術式なんてあるのか?」
そんな方法があるならなかなか活用出来そうだし、教えてくれるのであればぜひ知っておきたい。敷地をあまり使わずに広い家が作れるってんなら覚えておいても損は無いだろ。
「当然ありますよ。ですけどそれは特別……と言うより、大半の方では到底真似出来ないものですが…」
「…へぇ~。難しい事なんだな」
……てことは、
二つ目の理由はこれだ。
ここは、今は大人しくなったといっても過去に幻想郷に被害を及ぼそうとした者達が居るところだからな。気を抜くわけにもいくまい…。
それに家族を幽閉しているような奴らなんだ。何の為に俺を招いたかは分からないけど……俺は
「そしたらちょっくらお願いがあるんだけど…俺も家ん中を広げたいからさ、空間を広げてる人教えてくれないか?」
だが、これで確認が出来る。
別に空間を広げる術を知るなんてのはオマケに過ぎない、そんなのはついででいいんだ。
もっと重要なのは、それをやっているのが誰なのか把握しておく事なんだ。
……さっきまでのセリフからだと、このメイドがやってるのか…それとも別の奴なのかまでは判断できないからな。
「一進様はお嬢様のお客様でいらっしゃいますので、拡張についてもお教えしたいのは山々なんですが……これは私の能力によるものですから似たような能力を持っていない限り難しいかと…。それに申し訳ありませんが、お嬢様の下に着きましたので…」
「ん…ああそうか、だったらいいわ。案内ありがとさん」
……フー危ねぇ危ねぇギリギリで聞き出せたわ。けどこれで確信したよ、空間を広げる事が出来るのはあんただ——十六夜咲夜。
まさか能力によって空間の拡張とはな…そりゃ大半は出来るわけねぇよ。それにしても俺は運が良いようだ、もしこれでこのメイドじゃない奴が能力者だったとしたら、結局誰だかも分からず仕舞いに終わってたかもしれない。
あ、でも悪いと言えば悪いかもな…ちょうど目的地に到着しちゃったからアレだけど…もう少し時間があればもっと詳しく聞けたかもしれなかったな。
「失礼しますお嬢様。藤代一進様を連れて参りました」
「……ああ分かった、入れ」
十六夜咲夜は荘厳な扉をノックしている。
さて、ようやくココのトップと顔合わせか……。しっかりやる事はやらないとな……。
~~~~~~~~~~
「くっくっく、よく来たな藤代一進。私はこの紅魔館の当主、そして高貴なる吸血鬼の末裔———レミリア・スカーレットだ!」
部屋の中に造られた段差にある背の高い玉座に座り、足を組んでこちらを見下ろす蝙蝠のような翼を生やした子供。
それが紅魔館の当主。レミリア・スカーレットの正体だった。
「本日はお招きいただきありがとうございます。存じているようですが自己紹介を、私は外の世界から来ました藤代一進です」
「…ほう、私を見て嘗める事も恐れる事も無いか……。なかなかに出来るじゃないか」
そりゃあ見た目で嘗めるわけにはいかないんだよ、もう既に見た目と年齢が合ってないのに会ってるからな…。
というか先に出会ったのがさとりちゃんで本当に良かったわ。先に紅魔館に来てたらマジで即死だったかもしれない。
「……レミィ。いい加減その振る舞いを止めたら?そこの彼は頼み事をする相手なのよ」
すると、近くに置かれていた椅子に座る紫のパジャマ?のような服を着た女性が声を出した。
「え~と、すみませんが貴女は……」
「……私はパチュリー・ノーレッジよ。そこのレミィ…レミリアとは長い付き合いでね…そっちの子は?」
「ん?わたしはこいしって言うの。よろしくね♪」
しばらくの間何も喋っていなかったこいしちゃんが、パチュリー・ノーレッジに問われてそう答える…。……が何かに引っ掛かりを覚える。
「…そうね分かったわ。確かにパチェの言う通りだし普通に話すとするわ。…あなた達も普段通りに話しなさい、それで全然構わないわ」
「悪いわね二人とも、レミィはこういうところがあるから。咲夜…悪いんだけど紅茶の用意頼めるかしら?」
「かしこまりましたパチュリー様」
そんな違和感があったが気にしている内に向こうに主導権を握られそうになるので注意を向ける。
「まぁ、貴方達が八雲紫になんて教えられたか分からないけれど……大方私達を危険視するようにでも言われたんでしょう。安心しなさい、別に取って食うつもりも無いわ」
おっと何だ?思っていたよりも全然理性的っていうか話の分かる奴らのように思えるぞ。
何だ良かった…俺は可能性の一つとして、紅魔館との争い事になるかもと思っていたからな。
「ああ、分かったよ。それで?俺がここに呼ばれた理由は?」
何がともあれあちらさんは俺に用件があって呼んでるんだ。取り敢えず向こうの話を聞いて、その後に俺の目的を果たしてみよう。
「私の妹を……フランを救って欲しい」
「は?」
「え?」
しかし、ここで俺は思ってもみない事をレミリアから言われた。
一体何を言ってるんだこいつは?救うも何も自分で妹を閉じ込めているんだろう。
「…私には妹がいるんだがな…あの子は心に闇を抱えていて、たまに手が付けられなくなるんだ」
「心に闇……(こいしちゃん)」
「(…ううん、私は知らなかったよ)」
そうか…まだ確定とは言えないが、もしかしたら俺は大きな勘違いをしてるかもしれないな。
傍目に他のメンバーを見てもそんな雰囲気を感じる。
これはレミリア達が残虐非道だったのでは無く、その妹の抱える闇ってもの故に仕方なく閉じ込めるしかなかったように伺える。
……うーん。踏み込むべきだな。
「だったら地下に妹を幽閉しているあんたが何故俺にそんな事を頼むんだ?」
「な!?待て、どこでそれを知った!!」
「悪いがこっちには神出鬼没な情報提供者がいるんでね…」
「あのスキマ妖怪が…!」
すまん紫さん。ちょっとの間怒りの矛先になっててもらうかもしんないけど許してくれ。さっきメイドと話していた感じから案の定紫さんだと思ってくれたからこれで動きやすくなる。
さて、ここまで言われてどう動いてくる?そっちから見たら俺は秘密を知っているように見える筈だ。
これで―――。
「わたしがフランちゃんと友達なの!」
「「は?」」
ちょっとこいしちゃん!?何でこのタイミングで言うんだ!?まだ向こうの意図が読めてない以上、本当に知られたくない秘密だったとしたらそれは危険すぎるぞ!
……仮に戦いになったとしたら相手は何かと有名な吸血鬼ともう一人…怪しげな能力のメイドは離れているが守り切れるか……?
「お前がフランを……」
俺はすぐに動き出せるように少しだけ腰を浮かせる。
それに、いざとなればこいしちゃんだって能力を遣えば脱出出来るだろうし……。
「ありがとう。フランが喜んでいたのは扉越しだったとはいえ私も聞こえていた」
「うそっ、知ってたの!?」
……………。
フ~、取り敢えずはセーフって事でいいな。
こいしちゃんに頭を下げたレミリアの姿を見て、俺は安堵した。
~~~~~~~~~~
「それで?救ってくれって…俺は何をすればいいんだ?」
事なきを得た俺は、初めに決めていた決心を達成すべく為詳しい説明をレミリアに求めていた。
因みに途中でメイドも戻って来て、今はレミリアの後方に控えている。
「……そうだな、お前がどこまで知っているかは分からないから最初から話すとしよう。……フランの抱える闇…いわゆるもう一つの人格なんだ」
「……二重人格ってわけか」
「察しが良くて助かる…。フランはな、生まれた時からある能力を持っていたんだ」
「ある能力?」
なるほどな。フランちゃんは二重人格でありこいしちゃんは片方としか会ったことが無かったってわけか…。これでこいしちゃんが知らないのも合点がいったよ。
でも、吸血鬼が生まれもって能力を保持してる事なんてあるのか?特性上じゃ日光に当たらない限り不死身って事ぐらいしか……。
「フランは『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っている」
「「……………」」
…なぁそれ…もしかしなくても洒落にならないよな。
え?無制限?あらゆるって事は下手すりゃ万物の破壊が出来るわけだろ?生まれた時からそんなの持ってていいのかよ…。
「あの子の翼が異端だったのもあるだろうが、それ以上にその能力が周りから恐れられたのだ…」
レミリアの独白が周囲を包む。目を伏せて紡ぎ出す言葉には悲痛と後悔が入り混じっていた。
「普通は死ぬ事の無い吸血鬼を…母様を…フランはいとも
……………フランちゃんが母親を殺した?
ツッコミどころ満載になってきましたが広げた風呂敷の回収は未来の私に任せます。
それではまた次回。