受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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重いしどちゃくそにシリアスが続きそう…。


それではどうぞ。


第22話 悪魔の救済

 

 

 

「…母親を殺した?……」

 

 レミリアが重々しく口にした真実は一進を驚愕させるもので、それでいて理解しがたいものだった。

 

 親殺し…。

 

 一進がいた世界ではそんな事が考えられる筈が無かった。むしろ考えられる方が異常者である。

 

「ああ…その場に私も居たから今でも思い出せる。私達の母様はな…フランが産まれた時に死んだんだ」

「は?いやいや、流石にそれは———」

「冗談だとでも思うか?それに言っただろう。フランは()()()()()()()『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っていると…」

 

 一進の言葉を遮り、レミリアは再び同じことを言う。何故もう一度繰り返したのか?

 

 そしてその意図は……。

 

「……なるほどな」

 

 続けたレミリアの言葉で一進は納得する。

 

 話を自分に置き換えたら簡単な話だった。

 

 一進は紫と出会った事で自分の持つ能力に確信する事が出来た。最も…彼はあまりにも他人から嫌われていた為、朧げながらも自分の能力に気付きかけていたが…。

 

 だが、それでも確信に至った理由は他者から教えてもらったからにすぎない。外界に暮らしていた彼には能力なんてモノが身近に無かった為、そんな非現実的な発想に思い至らなかったのである。

 

 故に分かってしまった。

 

「……産まれてすぐに自分の母親を殺した事で妹の持ってる能力が発覚したってわけか」

 

 能力なんてものはもともと周りの環境から知る他、他者から教えてもらうしか方法が無い…。

 

 ましてや産まれた時なんて自分の意思すら持たないのだから能力を持っているのが分かった、という事は実際に発動している所を見る他はない。

 

「………………」

 

 赤子だったフランドールの意思はどうであれ、結果的に見れば自分の妹が自分の母親を殺した光景に対面していた…それは複雑な心境だろう。

 

「(…なんて言えばいい、気の利いた言葉なんて出ねーぞ)」

「………ぁぜたんだ…」

「あ?」

 

 一進がレミリアの言葉を理解したからこそ…話の重大さに気付いてしまったからこそ。彼女にかける言葉に一進は頭を悩ませる。

 

 しかしその前に、顔を俯かせて弱弱しく発せられたレミリアの言葉に彼女の様子がおかしい事に気付く。

 

「……爆ぜたんだ…数瞬前まで笑っていた筈の母様が突然…轟音と共に…肉片を散らして…」

 

 カタカタとその小さな身体を震わせながらもレミリアは言葉を紡ぐ……一度口に出してしまっては止まる事は無かった。

 

 幼いながらも当時の光景を鮮明に覚えており、ひたすらに頭の中が負の感情で埋め尽くされる。

 

「お、お嬢様」

「……代わりに、母様が居たところにフランが…鮮血に全身を濡らしたフランが泣き声を上げて…」

「レミィ!!落ち着きなさい!」

「ッ!?」

 

 心此処に在らず、そんな状態で喋っていたレミリアを止めたのはパチュリーだった。

 

「貴女がパニックになってどうするの!…フランを助けたいのでしょう」

 

 

 ……………………。

 

 

「…そう…だな……私がしっかりしないとな。フランも苦しんでいるんだ。………悪いな情けない姿を見せた」

 

 負けるわけにはいかない、そんな風に深く息を吐いた後にレミリアは落ち着きを取り戻す。

 

 そして、顔を上げたレミリアは再び当主の風格を漂わせていた。

 

「故あって危険すぎるフランは産まれてからこれまでの500年…まともな暮らしをさせてやれてない。だからこそ頼む。フランを助けて欲しい」

「…………なぁ、一つ聞いておくが…俺は普段通りに喋っていいんだよな?」

「? ああ構わない。そうしてくれ」

「…だったら言わせてもらうが……」

 

 先程までの様子から打って変わって一進は明らかに態度を崩す。

 

「……お前は何時まで御託を並べてんだ?」

「「「「!?」」」」

 

 一進の言葉でその場の空気が凍った。

 

 

 

 

 

こいしside

 

 

 

 

「——————フランはいとも容易(たやす)く殺して…いや、殺せてしまったんだ」

 

 不死の性質を持つ吸血鬼をも殺す力……フランちゃんは産まれた時からそんな危険な力を持ってたんだ…。全然知らなかったな…。

 

 でも、それであんな地下室に閉じ込めるなんておかしいよ!!だって産まれた時だよ!?そんな時に能力を発動させるなんて本人の意思で出来るわけ無いじゃん!

 

それに……自分の意思に関係ない———無意識の行動の恐ろしさは私が一番よく分かってる。

 

 

「…母親を殺した?……」

 

 ていう事はフランちゃんにはお母さんがいたんだね。お進みたいにお母さんがいれば少しはその気持ちが分かるかもしれないけど……私には分かんないや。

 

 けど、お姉ちゃんやお進、お燐、お空がいなくなるなんて事は絶対に考えたくない!

 

「ああ…その場に私も居たから今でも思い出せる。私達の母様はな…フランが産まれた時に死んだんだ」

「は?いやいや、流石にそれは———」

「冗談だとでも思うか?それに言っただろう、フランは()()()()()()()『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っていると…」

「……自分の母親を破壊した事で妹の能力が発覚したってわけか」

 

 へぇ〜、何で産まれた時から能力を持っているなんて言ったと思ったらそういう事か。

 

 何も知らない者———産まれたばかりの子供の能力……確かにそれだったら周りに居る人が使用者に能力を教える必要が出てくる。そこから考えると……産まれた時に能力を使った事があったから…か。

 

私はもう能力が変わっちゃってるけど…心を読む能力はあって当然と思ってたし、無意識を操る能力なんて自分で勝手に付けただけだしな…。

 

「……爆ぜたんだ…数瞬前まで笑っていた筈の母様が突然…轟音と共に…肉片を散らして…」

「お、お嬢様」

「……代わりに、母様が居たところにフランが…鮮血に全身を濡らしたフランが泣き声を上げて…」

「レミィ!落ち着きなさい!」

「ッ!?」

 

 突然レミリアが震え出して言葉を紡ぎ始めた。家族が死んだ所を……それも爆ぜて死ぬなんて様子を見てしまったなら相当なトラウマとして残っているんだろうな。

 

「貴女がパニックになってどうするの!…フランを助けたいのでしょう」

 

 …良い親友さんだね。折れかかった心を支えてるし、なによりも互いが信頼し合ってるのもよく分かる。

 

「…そう…だな……私がしっかりしないとな、一番苦しんでいるのはフランなんだ。………悪いな情けない姿を見せた」

 

 それでも持ち直せるレミリアは強いと思う……。

 

 フランちゃんを———いや、妹を助けたい気持ち。読めなくなっちゃったけどそんな一心でいるのが見て取れる。

 

「まぁ、そんな事があった所為でフランは産まれてからこれまでの495年間閉じ込められているんだ」

「………なぁ一つ聞いておくが…俺は普段通りに喋っていいんだよな?」

 

 …あれ?

 

 どうしたんだろう?お進の機嫌が明らかにおかしい…。

 

「? ああ構わない。そうしてくれ」

「…だったら言わせてもらうけど……お前は何時まで御託を並べてんだ?」

「「「「!?」」」」

 

 

 

「ちょっとお進!?」

 

 不味いよ!そんなあからさまにケンカを売るような物言いなんてしたら間違いなく(いさか)いが…。

 

「大丈夫だよこいしちゃん。こいつ(レミリア)は俺にもこいしちゃんにも手出し出来ないから」

「………………」

「え、お進?どういう事?」

 

 紅魔館の主はプライドが高くて他人を見下しているって聞いた事があるけど…まさかここまで言われてるのに引き下がるなんて。

 

 それにお進は今までは散々向こうの様子を見るようにしてたみたいだったけど……もう確信して言ってるって事は向こうの意図が分かったのかな?

 

「ようするに…こいつは自分の目的を果たす為には俺が必要ってわけだ。そしてそれは自分の妹を救える唯一の可能性———いや、お前風に言ったら…運命になんのか?」

「……スキマからでも私の能力を聞いていたか…」

「ああ、つってもそれだけしか聞いてねぇけどな」

 

 あ!なるほどそういう事か!

 

 レミリアは運命を操る事が出来る。だからどうすれば解決する出来るか分かってるんだ、その結果お進が必要になったから呼んだと…。

 

 ん~、ってことはお進が紅魔館に来ることも運命づけられてたのかな?

 

 ……あれ?運命を操る………?

 

「でもそれだったらそんな面倒な事しないで、普通に運命を操って救えばよかったんじゃないの?」

「だから俺達に手出し出来ない理由になる…それが出来ないから俺がココに呼ばれたんだろ、だから大方考えられるとすれば———未来予知とかそんなとこだろ」

 

 そっか。操るっていいながらもお進がここに来たのは紫を伝ってだもんね。結果を得る道筋自体は都合よく作れないのかな。

 

「ああ。私の能力は操るなんて名ばかりなだけで、そんなに大それた———」

「悪いけどいい加減その下らない前置きはやめろよ。俺が妹を救える未来が見えたんだろ?だったら早く妹の現状と情報を教えろ」

 

 うん。レミリアも速くフランちゃんを救いたいんだったら、必要な事をすぐお進に教えるべきだと思うんだけど…。

 

 ……なんだろう…食い気味に言葉を返してるお進の様子がいつもと違ってなんか変……。

 

「つーか逆に俺が聞きたい事を聞くからそれに答えてくれ、その方が速い」

 

 ほら、まただ。確かにお進は相手をからかう事や弄ったりするのはよくやってる……。

 

 でも、ここまであからさまに強い口調で相手を威圧する事なんて今まで無かったよ。

 

「まずは…あらゆるものの破壊は間違って無いだろ…なんせ吸血鬼の不死の概念でさえ壊せたんだ。だから発動について詳しく教えろ。思考するだけとかなら流石に不味い。俺は一度も食らわないが前提になってくるからな」

 

 淡々と理路整然に目的を達成すべく為にお進は動き出している。…何かがお進の琴線に触った?

 

「……フランの能力は掌握によって発動する。壊せる対象についてはおそらくその通りだ。生物だろうが何だろうがサイズも強さも関係ない。対象に向かって手を握ればそれだけで粉々に破壊された」

 

 お進の圧を感じ取ったのか、レミリアの口から次々にフランちゃんの事が開示される…。

 

 その力は対象に手を向けて握る、それだけで対象になった者は概念を含めて粉々に破壊……。

 

「そんなの……そんなの避けられるわけないよ!」

 

 補足からの掌握より速く対処しなきゃ避けれないなんて実質動作なんて無いようなものじゃん!!

 

「初見より遥かにマシだよ。じゃあ次に、動きを抑制させる為に弱点を確認するけど…日光とかだけなのか?」

「いや、よく噂で聞くものの中で有効だったのは私と同じで日光、流水、銀ぐらいだ。逆にニンニク、十字架、炎辺りは通用しない…それに炎に至ってはフラン自身が武器にも使っている」

「……有効って事はこの館に銀製の物があるのか?ならそれでも貸してもらうぞ」

 

 !? お進は驚かないの!?今からフランちゃんに会いに行くのに…。ホントに大丈夫なのかな…?

 

 それに、いくら地下室で日光も水も無いとはいえ銀なんて貸してくれないと思うよ。だって対吸血鬼用の武器なんだよ?

 

「……………」

「悪いけどそれは難しいわね。吸血鬼を殺せる武器をそうやすやすとは渡せないわ」

「そうだよお進。いくら手持ちに何も無いからって流石にそれは……」

 

 ほら、言った通りだ。いくらお進にその気が無いとはいえ万が一がある以上それは難しいよ……。

 

「………揃いも揃って何を勘違いしてんだ、別に俺は武器なんて借りる気はねぇぞ」

「え、そうだったの?」

「そりゃ銀の武器なんて持ってたらそれこそ話し合いが出来ないだろ。だから…銀貨一枚くらいねぇの?少しでも目を引ければ十分だから」

「……よし分かった、それなら用意しよう…咲夜」

「はい」

 

 そう言ってメイドさんは銀貨を取りに部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここが地下室の入口か」

「思ったより近かったね。またずっと歩くのかと思ってたけど何分かしか掛かってないよ」

「…既に単位が家の中じゃ無いよな」

「そうだね~♪」

 

 玄関からさっきの部屋までは直線に歩いてたから長く感じたのかな?部屋からここまでは曲がってきたから景色が変わるお陰で速く感じたよ。

 

「それにしてもさ~何で案内してもらわないでわざわざ場所を聞いたの?それにあの人(レミリア)達を部屋から出ないようにって言ってたけど…何か意味があるの?」

「ん?ああ~その方が動きやすそうだったからな」

 

 レミリア達から離れたからだろうか…。先程までよりはお進の纏う雰囲気が収まっているように見える。

 

「………じゃあ最後にやってたコイントスして右か左かをレミリアに聞いたやつは何なの?右って言われてたけど結局どっちに持ってたか教えて無かったじゃん」

「ああ、あれはただの運試しだよ……」

 

 ……前半はともかく後半は嘘だね…。それぐらいだったらわたしでも見抜けるよ。

 

 まぁ、お進にはお進の考えがあるんだろうし別にいいんだけどね。それに私も少し聞きたい事があったからちょうどいいや……。

 

「だったらこれだけはちゃんと答えて———何で途中からあんなに当たりが強くなったの?確かにさ…初めから機嫌が良かったとは思わないけど……」

「………あぁ、やっぱりバレてたか」

「うん、だっていきなり豹変してたよ。後には直ってたけど口調も違ってたし……わたし、お進がおかしくなっちゃたのかと思って驚いちゃった♪」

「…………俺がおかしい…か」

 

 それでも、嫌な感じがしたのはその時だけで今はもう戻ってきてるから大丈夫なんだけど———。

 

「おかしいのはアイツ(レミリア)だ。ってかスカーレット家自体がイカれてる」

「え?」

 

 うそ、何で怒ってるの?言い回しが度々(たびたび)面倒だったりしたけど…レミリアはフランちゃんを助ける為に……。

 

「アイツ…話してて分かったけど、本当に自分の妹も助けたがっている」

「? わたしも分かってるよ?けど、能力が万能じゃ無かったから代わりにお進に助けてもらおうとしてるんでしょ?……妹()?」

「ああ。確かに妹を助けたい気持ちに嘘偽りは無さそうだった。それでも所々に家督を優先しようとする歪さがあった。……おそらく後発的にそういう教育で矯正されたんだろ」

「…え、家督…矯正?何でそんな事分かるの?闇の部分をどうにかしようとしてるんだよ?」

 

 今だってちゃんとフランちゃんを助けようと頑張っているみたいだったし……それをそんな風に言うなんて———。

 

「その工程が違和感すぎる。何で弱点や能力をあそこまで言い切れたんだ?…それに最悪な事に有効()()()って言いやがった」

「あ!?……フランちゃんを抑える為に全部試した…」

「言っちまったら被害数も計り知れない……何を使ったか分からないけど生物を使って能力を使わせてたんだからな」

 

 そんな!?自分の妹を抑えるのに弱点を試して…能力を知るために多くの犠牲を……。

 

「っと、鉄格子付きの扉って事は着いたらしいな…。まぁ、そんなところでさ…仮にフランの闇が無くなったとしてもここじゃ幸せなんて無いと思うんだ」

「え?」

 

 ……お進?何言ってるの…?

 

「だからさ…ここから先は見せたくないし『こいしちゃんがこの部屋に入る事を拒絶する』……ごめん」バタンッ

 

「!? お進ッ!?何やってるの!速く開けてよ!!」

 

 自分だけ中に入って扉を閉められた。どれだけ引いても、それどころか壊そうとしても全くビクともしない……。

 

 危ないから入れてもらえない?いや、わたしはお進より戦えるからそれは無いと思うけど…お進に能力を使われた以上わたしは中に入る事が出来ない。

 

 何でお進はそんな事を———『幸せなんて無いと思うんだ』『ここから先は見せたくないし』———あっ。

 

 

 ……まさか!

 

 

 …うそ…違う……違うよねお進!!!

 

 

 

 …そんな事しないよね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、フラン。ここは暗い部屋だね」

「あれ?あなた私を知ってるの?」

「ああ、俺は藤代一進って言うんだ。よろしく」

「うん♪よろしくね♪ああ~良かったぁ最近退屈だったんだよ」

「へぇ、それはちょうど良かったな」

「? 何が?」

 

 

 

「………俺はね…君が一生苦しむ事が無いように…ココから救いに来たんだ」

 

 

「アハハッ!食料が泣き叫ぶ以外に何か言ってる!!!」

 

 

 




自己解釈てんこ盛りよ。


それではまた次回。
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