当方アッパラパーなのでご期待に沿えるかは神のみぞですね。
それではどうぞ。
○
side一進
「こいしちゃーん!何処にいるんだー!!」
………………。
…………。
……。
「……やっぱり返事は無い…か」
俺はこいしちゃんに会う為にさとりちゃんの部屋を飛び出して地霊殿内を手当たり次第に探しているんだが…、いかんせんただでさえ広い地霊殿…一向に見つかる気配が無かった…。
「……クソッ!!俺の考えが甘すぎた!……まさか、こいしちゃんがあれだけ大きな事を抱えていたなんて…」
さとりちゃんから教えてもらった……こいしちゃんの過去と、保持している能力……。
そう考えると途端に、今まで浮かべていたこいしちゃんの可愛らしい笑顔が痛々しいように思えて心が苦しくなってきた。
能力の所為でみんなから気付かれず、もしくは忘れ去られるかもしれない…。
それに紫さんの言っていた妖怪が存在する為の条件。
それは、人間の恐怖を糧とする必要がある…。
だったら覚妖怪としての枠組みに入らなくなったこいしちゃんはどうなる!
クソッ!
クソォッ!!
「……何が」
何が拒絶されれば楽に移動出来るだよ!何が相手から完全に拒絶されれば相手に気付かれる事無くあっさり勝てるだよ!!
……こいしちゃんはずっと戦ってたんだ。無意識の能力の恐怖に…不安定な自分の存在に…。
いくら知らなかったとはいえ…俺はなんて言った!?
相手から完全に拒絶されれば…って覚として生まれた二人の人生を考えたら最悪すぎる一言じゃねぇか!!
「ハァ……何処に居るんだよ———」
「あ!お兄さん!こっち、この部屋だよ!……あたいじゃこいし様は扉を開けてくれなくてね」
「お燐!」
助かった…。このまま闇雲に地霊殿内を走り回っても見つけられる気がしなかったからな。
「ああ分かった。後は俺が何とか———って…は?鍵掛かってないぞ?」
「え?……そんな筈は…」
「……こいしちゃん。……居ない…」
「ウソッ!?こいし様がこの部屋に入ってからずっとあたいはこの部屋の前に居たよ!」
そんな事言われてもな、現にこいしちゃんはこの部屋の中に居ないし…窓には鍵が掛かってるから出るにしても扉から出るしか———!!
ハハッ…………。
……そうか……。
「………これが、無意識の力かよ…」
誰にも気づかれずに行動する事が可能になるこいしちゃんの持つ『無意識を操る程度の能力』。
お燐は扉の前に居たのにこの惨状…扉を開けて出てきたであろうこいしちゃんに気付けなかったんだ…。
これはもう、姿が見えないなんて話の次元じゃない…。…こいしちゃんが関与した事柄に他者は気付けなくなってる。
「こいし様が…どうすんのさお兄さん!?」
お燐の叫びで俺は現実へと引き戻される。
どうする…。考えろ……。
仮に今もこいしちゃんが能力を使っているとしたら、お燐達は気が付く事が出来ない…。だからこいしちゃんを見つけられるのは能力から拒絶される俺になる……。
「………それならまずはこいしちゃんを外に行かせないようにしないといけな———いや、ダメだ」
「? 何がダメなんだい?こいし様に気付けるお兄さんは危険があるから外には出れない……それならこいし様を館内に留めておく事は大切じゃないか」
そう。確かに探す範囲を狭める事を考えれば大切な事なんだ。
でもお燐の言う事とは少し違う。仮にこいしちゃんが外に居るなら、別に俺は危険な妖怪が蔓延っていようが気にせずに探しに行く気でいる…。
だから、そうじゃないんだ…。
「前提が間違ってた……こんな事になったのはこいしちゃんの事を考え無しに口走った俺の所為なんだ…だからお燐達に迷惑かけるわけには———」
「はぁ!?あたいがいつ迷惑なんて言ったのさ!!!」
ああ、言ってないのも分かってる。けど…これは俺なりのケジメなんだ。
「悪いけど……」
「あああ~~もうッ!!だったらあたいが探したいから勝手に探すよ!それでいいかい!!ていうかダメって言われてもあたいはそうするからね!」
人の為では無く自分の為、口ではそんな風に言っているがその実お燐はこいしちゃんを探すのを手伝ってくれるつもりでいるのがありありと分かる。
……俺のワガママを聞く為に、わざわざ嘘まで並べて俺を手伝ってくれようと……。
「…………お燐……すま———」
「おっと、謝るなら先にこいし様に謝りなよ。…あたいとお空だって、さとり様とこいし様の苦しみを知らない訳じゃないんだから」
…………。
ホントに、二人の事が大切なんだな…。それなら謝るのも全てが解決した後だろう。
だから今は、
「…ありがとう……そして任せた」
「了解さね、お兄さんも頼んだよ!」
謝罪よりも感謝をするべきだな。…まってろよこいしちゃん、今すぐ見つけてやるからな!
〜十数分後〜
「ハァ…ハァ…」
食堂、キッチンは行った。書庫、書斎も回ってきたし…ホール、浴室、談話室、客室、各個人の部屋。仕舞いには倉庫と物置部屋も見てきた……。
「オイオイ…何処に…居るんだよ」
………ダメだ、全部の部屋を回ったが何処にも居ない…。
所々で一つだけ引かれていた椅子、扉が開いたままの部屋、それらしい痕跡が見つかるものの結局こいしちゃんが見つからない。
お空は居ないし、流石にさとりちゃんにまで手伝ってもらう気にもなれず暫く館内を走り回っていたんだが……刻一刻と悪戯に時間だけが過ぎていく。
ここまで探しても見つからないとなると、もしかしたら既に外に出てる可能性が———。
「おや、お兄さん」
「!?お燐」
外に行く決心をした俺の下にお燐がやって来る。そして、その姿からは先程までの慌てようが全く見られなかった。
「まさか、こいしちゃんが見つかったのか!!」
無意識のこいしちゃんを見つける事が出来るのは俺だけ、だけどそれはこいしちゃんが能力を使っていたらの話。
だから、こいしちゃん自身が自分の能力を解除しているならばお燐でも———他の人も見つける事が出来るようになるんだ。
良かった……外に行かれてたら他の妖怪を考えて命がけで探しに行く必要があったけど、中に居るんだったら周りに注意する事無く話し合う事が———。
「こいし様?今日はお昼食べた後は会って無いけど…どうかしたのかい?」
「…………………は?」
いや、何言ってんだよ……?
息をするのも忘れるくらいの絶句。俺はお燐が何を言ってるのが全く分からなかった。
数十分前にやったやりとりを既に忘れている可能性を……いや、お燐に限ってそれは考えられない。
だけど、不思議そうに首を傾げているお燐はふざけているようには見えない。俺が言ってる事が本当に分かっていないようだった。
一体お燐は何を考えて……。
「いや~それより悪かったねお兄さん」
「……え、いや…え?」
あまりの衝撃に上手く言葉が出てこない。俺は軽快なトーンで話しかけて来るお燐とは真逆で、心此処にあらずな心境でいるしかなかった。
「ほらっ、さっきさとり様と話をしてる時に飲み物でも持って行くって筈だったのに…あたいったら何を思ったのか何時の間にかエントランスにいてさ~」
「…………」
朗らかに笑いながら発せられたお燐の言葉を聞いて、俺は今一度はっきりと理解してしまった。
これが…無意識を操る能力……。
そして同時に、背中に冷たい何かが流れ落ちるのが分かる。
気付かれず、意識されない者の能力…。僅かながらだけど予想はしていた。…していたけど、それを目の当たりにしたら———。
「それじゃあね、お兄さん」
「あ、ああ」
軽く手を振って遠のいて行くお燐俺は何も言えなかった。
少し前の出来事だけだが、確実にお燐の中からこいしちゃんが抜け落ちている。そんな事言えなかったし、言える筈もなかった。
だから、ここから先は俺の力だけで探さないといけない。嫌な事に、俺の頭は既にそれが理解出来ていた…。
~~~~~~~~~~
「……やるしかないか」
誰からの手も借りる事が出来なくなった俺は自分の部屋の前で足を止めていた。
「やるとしたら俺の部屋か、もしくはこいしちゃんの部屋だろうな…」
隠れている側からすれば、そんな真っ先に見つかりそうな所には隠れないと思うがこいしちゃんならやりかねない…。
それに、これは各部屋を探している時に入れ違いになった可能性を考慮しての事だ。地霊殿は部屋数も多いし一つ一つ回るのに多大な時間を要するからな……。
けど、
「これだけ探し回っても見つからない上に、お燐が能力の影響を受けていた……」
お燐から少しだけこいしちゃんに対しての記憶が消えていた。そうするって事は、地霊殿から出る為にお燐に能力を使ったと考えるのが妥当だよな…。
そうしたら地霊殿の外…地底の何処かに居る…。
もし………もしもこいしちゃんが外に行ってしまっていたら、俺はこいしちゃんを探しに外に行けばいい。それが普通だし、俺もさっきまではそうしようと考えていた。
でも、よくよく考えてみれば俺の置かれている状況はそれを許さないんだ。
俺は人間で…ましてやここ地底は妖怪達の蔓延る場所…。人間が地霊殿に居るなんていきなり広まったらそれこそさとりちゃんに迷惑が掛かってしまう。
俺は妖怪がどんなものかまだ良く分からないが……紫さんを相手に戦えるかって言われたら不可能と答えるよ。妖怪ってだけで常識では語れない要素が多すぎるからな。
故に、俺は他の妖怪に見つからないように、そして気付かれないように妖怪達に拒絶されるよう能力を使ってこいしちゃんを探す必要がある……。
なんて言ったが…しかしそれこそ絶対のタブー……。
他者から拒絶される。
それは、最もこいしちゃんの前ではやっていけない事に繋がってしまうからそれだけは絶対に避けておきたい。ヒリヒリと、かなりの時間が経ったっていうのにこいしちゃんに叩かれた頬が再び痛み出す…。
「……願わくはこんな事をしないで自力で見つけたかったけど、ここまで来たら無理やりでも使うしかないよな」
どう考えてもこいしちゃんは俺から逃げている。そして館内はもちろん、外である地底だとしても、その構造を良く知っているのは完全にこいしちゃんの方だ。
…それなら鬼ごっこをしていても埒が明かない…。だったら反則をしてでも勝つしか無いだろう。俺にはその力があるのだから!
「『俺は……こいしちゃんを見つけられない事象から拒絶される!』」
思う事で発動するならばいくらでも思ってやるよ!だから、今一度こいしちゃんに会わせてくれ!!!
ギャグ欠乏症により瀕死ですがもうちょいシリアスが続きます…。
それではまた次回。