受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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シリアス疲れを起こしたので口直し兼補足の回


それではどうぞ。


第28話 心緒の憧憬

side一進

 

 

 チュンチュン

 

「っく〜…あ〜よく寝たよく寝た」

 

 窓から差し込む朝っぽい日の光に当てられて目を覚ます。うん、久々のベッドにご満悦ですっと。

 

 ……う〜ん、なんかひっさびさに俺の視点になったような気がするな。

 

「……頭は重いが身体はだいぶ軽くなったかな」

 

 それで何で寝てたかって言うと、あの後姉妹の仲が良好になったのを確認した俺は緊張の糸が解けてバタンキュー状態になった訳ですわ。

 

 んで、倒れた俺は客室に運ばれたっぽいけど…起きた後こっから俺はどうすりゃいいの?勝手に出てって良いのかな?

 

 

 コンコン

 

 ん?

 

「へ〜い起きてますよ〜」

「失礼します。一進様、お身体の方は……大丈夫そうですね」

「ああ、寧ろ来る前より元気かもしれない」

「現状の行動に全く動じないで会話するのはどうかと……。取り敢えず危険ですので降りて下さい」

「うい」

 

 怒られちまったわ。流石に窓から出ようと手を掛けてる所見られりゃ止められるわな。

 

 残念だが反省はしてるけど後悔はしてない。……外観もそうだったけど目ぇチッカチカで疲れるし部屋の中まで紅まみれにしなくていいと思うぞ。それにそれを踏まえなくても庭園が鮮やかだしこっちから出てった方が面白そうだったし。

 

 まぁ…そんな事は置いといて…。

 

「そんで何の用?お嬢様辺りが連れて来いと?」

「そんな所です。様子を伺いに来たのもありますが、目が覚めたのでしたら食事でも…と」

「ああ〜、そういや朝に食ったっきりか」

 

 紫さんとこで朝は済ませてから紅魔館(こっち)に来たから……アレ?でも今は日が昇って……。

 

「……飯も非常に有難い申し出だけど先にシャワーと服借りていいか?」

 

 これはようするに、多分だけど最低でも一日は寝てた事になるんだよなぁ…。にしては綺麗な気もするが気持ちの問題もあるわな。

 

「かしこまりました。服はそちらに、浴室は部屋に備え付きがございますのでそちらをお使い下さい。それと簡易ですが食堂までの見取り図も用意致しますので。ではごゆっくり」

 

 そう言った咲夜は、ものの数秒で見取り図を完成させて頭を下げ退室する…。

 

「……至れり尽くせりだな」

 

 使い方合ってるか微妙だけど伝えたい事は分かるだろう。幻想郷に来てからしっかりした人に会ったのが稀だからな……。

 

「ま、いいや。シャワーシャワーっと……おいおい、何着執事服あるんだよ」

 

 …ゾッとしたよ、クローゼットの中身がほぼほぼ黒なんだもん。

 

 いや、男物の服があるだけいいのかな?そういや今ん所男って、地底で会った妖怪ぐらいとしかハッキリ会ってないんだけど幻想郷ってあまりにも女性社会すぎないか……。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「次を曲がって三つ目の扉…と。お?ここだな」

 

 良かった良かった、部屋から思ったより近くて助かったわ。にしても廊下歩いてて気づいたけど吸血鬼である以上本当に窓少ねぇのな。

 

 そう考えたら日光入る部屋で寝かされていたのはこちらへの優しさなのだろう。地霊殿ではそれなりに恋しかったし何よりも体内時間の感覚がマジで狂って大変だった。

 

「よっと、待たせてたなら悪いな」

「ん!!お進やっと元気になったんだ!」

「咲夜から目が覚めたと聞いていたがなかなかに重役出勤ではないか」

「あ~はいはいサーセンサーセン」

 

 いち早く俺の下に来てくれたこいしちゃんを撫でつつも、息つく間も無く悪態を吐くレミリアに誠心誠意詫びを入れる。

 

「……おい今言動と地の文が噛み合って無かったぞ」

「わぁすっげぇ豪華…。なあ、これ一人で作ったのか?」

「はい。私の役目ですので」

「おいッ!?」

 

 そうかそうか、咲夜はこれだけの量と品数を作れるのか……。ふむ、これは食べるのが楽しみではないか。

 

「……ねぇパチェ…私絶対に無視されてるわよね…」

「ええそりゃね」

「辛辣ッ!?」

 

 さてさて…なんか元気に叫んでる館の主(笑)はほっといて、早速頂こうと思うんだけど……。

 

「…誰?」

「こあッ!?」

 

 パチェさんの後ろで見知らぬスーツ?ベスト?姿の紅髪ロングの女性がずっと俺を見てたんだもの…そりゃ気になるって。

 

 ……引くほど見られてるけど別に俺が自意識過剰って訳では無いからな。

 

「ああ、その子は私の使い魔の小悪魔って言うんだけど…ちょうど別の所に行っていてね。貴方が倒れた後に帰って来たのよ。ほら、こあ挨拶」

「は、はい!私はパチュリー様に使役されている小悪魔と申します!この(たび)一進様はレミリア様とフラン様をお救いして頂いたというのに挨拶が遅れて申し訳ありませn――」

「あ~硬い硬い、咲夜にも言ったけど…俺の好きでやってんだからフランクにしてくれよ」

「…ですが……」

「いいじゃない、向こうがそうしてくれって言ってるんだからそうしてあげれば」

 

 んだんだ、パチェさんの言う通り。俺はいつまでも他人行儀なんて嫌いだよ。

 

「そう…ですか、分かりました。…それでは一進さん、私の事はこあと呼んで下さいね♪」

「ああそれでいいしそれがいい。――咲夜もあんな大袈裟な敬語は止めてくれよ」

「承知…かしこ……分かりました」

 

 ……あ〜あ、こりゃ根っからの真面目人だな。俺調べだけど…多分幻想郷じゃ真面目って苦労する側のタイプだからなぁ。

 

「…自分の従者ぐらいちゃんと労ってやれよ?」

「無論当然だ…なんて言ってるが一進。お前は初めと比べて随分とくだけた感じになったな」

「ん?そうかぁ?まぁ、俺は(しか)るべき時だけはちゃんと真面目にしてるからな」

「…………」

 

 何時でも気を張ってるなんてしたら疲れるだけだしな、だから然るべき時だけは真面目にするんだよ。たまには息抜きも必要なのさ。

 

「……レミィ。当然バカにされてるわよ」

「やっぱりそうなるわよねッ!?」

「くっくっく…」

 

 ヤベェ、さっきも思ったけど…レミリア(こいつ)弄るのスゲェ楽しい!

 

 だっていちいち流さないでちゃんと反応してくれるんだぞ?それで面白くない訳がないじゃないか。

 

「お前は何処まで私をバカにすれば気が済むんだ!!」

 

 本気で怒ってはいないと思うが…掴みかからんとするレミリアを手で制して俺は言ってやった。

 

「落ち着けレミリア嬢。何も俺はバカになんてする気はさらさら無いぞ」

「…………本当か?」

「ああ。だって…」

 

 仮にもココの当主なのにバカにするなんてとんでもない…。そんな事が出来る筈があろうか。いや、無い。(反語)

 

 

 だって俺は…。

 

 

「ただ単純に舐めてるだけだ」

「尚更悪いわッ!!!」

「くっくっく…」

 

 いや〜、実に楽しい。ここ最近真面目すぎだった所為か凝っちゃってさ。面白い玩具見つけられたし暫く遊んでられそうだわ。

 

「……相変わらずだね…お進」

「何で〜仲良いのはいい事だよ?」

「いや、そうなんだけどね…」

「ところでフラン?一進が来たからもう言っていいんじゃないかしら…地下で彼と何を計画してたか」

「うん♪」

 

 はあ?地下での計画……って。

 

「え、まだ言ってなかったのかよ……」

 

 俺が寝ていたとはいえ、一日も経ってるからとっくに説明し終わってるもんだと思ってたわ。

 

「フラン本当に何があったの!結局私は三日も待たされてるのよ!」

 

 あらホントに言われてなかったんだ。でも計画つってもそんな大したもんじゃ………ん?

 

「三日?」

「そうだよ?お進は三日間寝たきりで何しても起きなかったし。全く…手のかかるペットなんだから♪」

 

 ちょい待ち、三日間っておい。その間俺が何をされたのかは非常に気になる所ではあるが……。

 

「これ紫さん大丈夫かな…」

 

 用件も何も知らなかったけど、ちょろって行って帰ってくるつもりだったし、まさかこんな事になるなんて思わなかったしな…。

 

「「「…………」」」

「?…どったの?」

 

 俺はあまりにも面倒くさそうな顔を浮かべたこいしちゃん、パチェさん、咲夜についつい尋ねてしまった。

 

「……ハァ…来たよ…」

「は?」

「……運悪く貴方が倒れたぐらいの時にね…」

「……それを見た八雲紫は勘違いをして激昂しまして…」

 

……………………。

 

 待て待て、紫さんが来た?

 確か俺はレミリアとフランを仲違いを修復した後その場で倒れた筈だな。

 

 当然、大図書館の惨状と俺の格好もあのままだとすれば……。

 

 泣き合ってる二人を他所(よそ)に壊滅し掛かった所で倒れてる俺。

 

 …………え〜と。

 

 

「…紫さんがご迷惑お掛けしたようですいません」

「「「…ハァ」」」

 

 間違いなくあの人だったらロクに確認しないで俺がズタボロにされたと思い込むだろうな。

 

 紫さんは幻想郷換算で俺の実力がどの位置にあるか把握してるみたいだし…。

 

「いきなり妖力滾らせてさ、ホントに大変だったんだよ…」

「それに加えて、美鈴とこあが畳み掛けるように入って来て更に加速するわで…」

「お嬢様方はお二人の世界に入っておられ、気づいていないのか我関せずを貫いており…」

「……マジですいませんでした…」

 

 これ俺が悪いのか分からんけどなんか身内の恥みたいだし謝っておこう。

 

 これでも出てくる前に心配しなくていいって言ったんだけどなぁ…。

 

「まぁそれも、従者の九尾が治めてくれて助かったわ」

「というより周りの様子を見て理解した後、力尽くで引き摺って行きましたよ」

 

 さっすが藍さん!主人の不祥事を無理やり治めるなんて、そこにシビれる!あこがれるゥ!

 

「んで?こあは分かるが、勘違いを加速させた美鈴はココに居ないみたいだけど…?」

「…美鈴なりの理由があって来なかったのは不問にされていますが…話も聞かないで八雲紫と戦おうとした事で罰として修繕作業を行っております」

「……そっすか」

 

 美鈴、お前が来ていたら間違いなく手一杯になっていたから俺からしてみれば非常にありがたかったよ。まぁバチボコにキレていたであろう紫さんに逡巡せずに立ち向かう勇気に免じて何か労ってやるか……。

 

 

 

 

 

 

「え!?演技だったの!?」

 

 おっと、向こうでも説明が始まったみたいだな。…確か俺の計画って……。

 

 

 俺がフランと会う。

 

 その際に危険性を仄めかす事でこいしちゃんにレミリア達を連れて来てもらう。

 

 その間に裏人格ちゃんから興味を持たれて説得してみるも…必要とされて無いから。の一点張り。

 

 一生をここで過ごしたい訳では無いがレミリア達に恨みがある訳でも無くただただ情緒不安定だった。

 

 それでも今の自分を変えなきゃいけない想いもあったようで裏人格ちゃんから託されて自己防衛の殻からフランが出る決意をする。

 

 じゃあレミリアの本音を聞き出そうぜ!って事で保存して、あった血液ぶっかけて死んだフリをしてもらう。同時に俺の袖にも染み込ませて一役かってもらう。

 

 レミリア到着。そして案の定ブチ切れ。

 

 こいしちゃん、パチェさん、咲夜到着。助けようと駆け寄ったフランから内容を聞かされる。

 

 後は俺が悪役を演じきって、ある程度フランにレミリアの本心を聞かせたら解決したって訳で…。

 

「…不確定要素多すぎない?」

「だな、改めて考えたら俺もそう思う」

 

 割とギリギリだったんだよなぁ、怒りでレミリアの攻撃が単調になってなかったらもっと早い段階でアウトになってたかもしれないし。

 

 つーかそもそもの話、レミリアは何が何でも引き付けるつもりだったけどさ、こいしちゃん含めのメンバーがフランを経由してなかったら作戦も何も無くなって俺は即死だったのよね。

 

 血の気が多いのがレミリアくらいだったから決行したけど綱渡りも綱渡りだったわけで……。まぁ解決したから良かったんじゃないか?

 

 欲を言えば紫さんの言っていた強化状態になれればもっと安全に行ったかもしれないけど……。どうやってもなれないから途中ヤバイぐらい焦ったからなぁ。

 

 

「ふっ、ふふ、あっはははは!私か、私が初めからもっと素直になっていれば良かった事だったのね…」

「ん〜ん、お姉様は悪く無いよ!……私が、自分に自信持てなくて…」

「違うのよ、フラン。まぁ…私も貴女にそれだけの事を仕出かしたから言える義理も無いんだけど…」

「……?」

 

 レミリアとフランの花咲く笑顔を見てればそんな綱渡りでもやって良かったと思うし、当初の目的も達成してるんだから俺的には万々歳よ。

 

「私達は互いに擦れ違っただけよ。どっちも正しく無かったし、ましてや一人だけが悪いなんて事も無い。だから……これからは今まで出来なかった分、ちゃんと気持ちを伝え合って生きていきましょう」

「……うん…ありがとう。お姉様」

「何言ってるのよ。私は貴女の姉…当然の事じゃない」

「…………うん…うんっ…」

 

 まぁ…一歩前進か。

 

「良かったね、フランちゃん♪」

「お嬢様と妹様が仲良く…」

「全く、レミィ…いつの間にかそんな事言えるようになって……」

「お、泣いてるのか?年を取ると涙もろいってのも――痛ッ!?」

「パチュリー様ぁ!!静かにしましょうよ!!」

 

 ック~痛った~…バカな事言った瞬間に本で殴られたわ。口は災いの元とは良く言ったもんだな…。

 

「ねぇお進?」

「ん?」

 

 そろそろ締めに入ろうとした所で、俺はこいしちゃんに呼ばれる…。

 

「何でわざわざレミリアを騙すような事をしたの?」

「いや、騙すっつってもさ……俺自身幻想郷に来てから既に二回もやられてるけど」

「……あ、あははは〜♪そ〜言えばそ〜だったね〜…」

 

 完全に俺を嵌めた事なんて忘れてましたねこいしちゃん。地底の件と地霊殿の件、俺はしっかり覚えてますよ。

 

「まぁ、何でかって言われたら…俺が嵌められ続けるのも癪だったからな……それに」

「それに?」

「人を幸せにする嘘なんて、なんかカッコいいじゃん」

「…はあ〜、あっきれた…」

「別にいいだろ」

 

 言っとけ言っとけ。……俺にはカッコよく見えたんだからそれでいいじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 ……カッコよかったし嬉しかったんだよ…。

 

 

 

 

 

 

 ……嘘までついて、全員がグルになってまで、俺を幸せにしてくれようとした。

 

 

 

 …そんなこいしちゃん達にさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……憧れたんだよ。

 

 

 

 

 

 




紅魔顔合わせ編は終わり!閉廷!次は座談会挟んでから変わり映えするか不明な新章突入。


それではまた次回。
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