受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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宴会で大波乱が巻き起こるまでの経緯ですね…。


それではどうぞ。




第32話 料理裏の誤解

 

 

~紅魔館キッチン~

 

 

 

 

「はいよ!時間内に出来上がったし流石にこれだけ作りゃ量も申し分ないだろ!申し分あってももうやらん!ぜってぇやらん!!」

「…………」

 

 慌ただしく動き回るもミス等は決して起こさない。家事能力上位者の得意分野である料理。

 

 作り手二人にお手伝い二人がフル稼働して、遂に今夜の宴会分の料理を作り上げる。

 

「パチュリーさま……私はもう…動けません……」

「あはは…こあちゃんたくさん走らされてたもんね」

 

 お手伝いとして来ていたのは徴収させられた小悪魔と自発的にやってみたかったこいしの二名。

 

 一進は技量的には問題が無かったが、いかんせん何が何処にあるのか分からなかった為にその手足となって小悪魔は走り回る羽目になっていた。

 

「助かったよお疲れさん。ムース出来てる頃だから冷蔵庫から持って行っていいぞ」

「いいんですか!?やったぁ!……最近パチュリー様体重気にされていたので目の前で食べちゃお

「聞こえてる聞こえてる…聞いたらダメだろうしそんな事やって殴られても知らんぞ…」

「こあちゃんのやったぁが食べれる事より煽れる事に対してになってるよね…」

 

 先程まで死に体だったのが嘘のように飛び起きる小悪魔…。

 

 二人が作っているのを間近で見ている分これらがどれ程美味しいのかもある程度分かっている。その為、一足早くその料理に舌鼓を打てるご褒美に浮き足立っていた。

 

「ありがたく頂戴します!バンケットルーム宴会場に並べる頃にはまた戻ります!お疲れ様でしたぁ!!」

 

 嬉々とした笑顔を浮かべて飛ぶように三人を後にする。おそらく先程のを実行する為に地下の大図書館に向かって行ったのだろう。

 

「…マジで決行しそうだけどいいのか?」

「うわ〜♪やっぱお進の料理美味しそ〜」

「……そうね」

「二人して興味無さすぎかよ…じゃあまぁ別にいっかあいつがパチェさんから制裁を受けようが納得の上だろ」

 

 ある程度こあがどうなるかの想定が出来ていた一進は残ったこいしと咲夜に話を振るも袖にされてしまう。その為、早々に見切りをつけて内心冥福を祈っていた。

 

「それでね?こあちゃんだけじゃなくてわたしも頑張ったんだけどなぁ?」

「どうぞ」

「わーい!」

 

 こいしからの抗議を一瞬で理解した一進はムースを持って行く事を了承する。そして颯爽と冷蔵庫に向かうこいしの背中を眺めながらも一抹の不安を口にしていた。

 

「喜んでくれるんなら俺も作り甲斐があるから良かったよ。…そんで咲夜?宴会って時はいつもこんぐらいで足りてんのか?」

「…………」

 

 結局あの後紫からは開始時間と、一進、こいし、紅魔勢を含めて十四人は集まると伝えられていた。

 

 そしてそこから行われた食材確保。まだ幸運だったのは咲夜が管理、把握をしていた為に比較的すぐに足りない物が分かった事である。

 

「俺はさとりちゃんと勇儀は知ってるけどよ、霊夢ってのと魔理沙ってのは名前しか聞いたこと無いからなぁ」

「ん?ふぃてぇに来たことあるよそのふはり」モグモグ

「こいしちゃん…モノ食ってる状態喋るのは――って食い過ぎだろ!!せめて味見程度に済ませって!」

「ゴクンッ…えへへ〜♪だって美味しそうだったんだもん」

 

 やや行き過ぎたつまみ食いをしたこいしに『全く…』と呆れている一進を余所に、咲夜は密かに戦慄していた…。

 

「…………ッ!」

 

 こいしの様に…とは言わないが咲夜も味見をする事で抱いていた予想は確信へと変貌する。

 

「(…美味しい)」

 

 身体に衝撃が走る…少なからず料理が得意な者として、咲夜はそれに見合うだけの確かな舌を持っている。

 

 それこそ小悪魔や、人里に出向いた際などに他の者が調理したものを口にした事はある。だが一進の作るものはそれらを大きく上回っていた。

 

 咲夜と一進は二人で宴会用の食事を調理をしている…それ故に下ごしらえ等を含めた、一進の異常なまでの手際の良さを目の当たりにしていた。

 

 その為、咲夜はその動きを一見しただけで料理が得意な人間だと感じていたがあまりにもそのレベルが高かった。

 

「んで咲夜?もっと作った方がいいのか?」

「……いいえ。メンバーに霊夢がいるから何とも言えないけど…足りなさそうならその時に作れば大丈夫よ」

「それじゃあしゅ~りょ~だねッ!お疲れさま~」

「……」

「……どうした咲夜?」

 

 咲夜は一進と料理をするのを機に再度一進から敬語を止めるよう言われ、まだ覚束ないがようやくこの口調を始めている。

 

 だから特に違和感は無かったのだが…一進は目敏(めざと)くも咲夜の反応の機微に気付いていた。

 

「何でもないわよ…悪いところなんて無いから安心して。貴女も手伝ってくれて助かったわ。お陰で無理せずに作れたから」

「ん~ん私も勉強になったから楽しかったよ♪それじゃ」

 

 そう言ってこいしは元気にキッチンを後にする…。

 

 咲夜は当初時間を止めてでも一人でやるつもりだった為四人もいれば当然楽に作り終える事が出来た。それに比較的にこいしが役に立ったのに加えて、更に一進がいれば尚の事である。

 

「ふ〜…あ~良かった。ダメ出しされるかと思って少しビビってたわ。次は会場設営か?」

「そっちは妖精メイドと私がやるからいいわよ。あの子達もデザート辺りで喜んで引き受けるでしょう。それに痛めた身体でここまで手伝ってもらったんだからそれぐらいは私がやるわ」

 

 一進は自分の思っていた予想が外れていた為不安から解放されて僅かに安堵の表情を見せる。

 

 そして次の準備に勤しもうとした所咲夜に気遣われてしまい一進は大人しくその言葉に甘える事にした。

 

「ん~、そう?んじゃよろしく~」

 

 痛めた身体は紫の手によって強制的に治されてはいるが…どちらかと言うと寝不足からの疲労がある。

 

 だったら…と残りは咲夜に任せようと一進が片手を軽く振りながら退室する。

 

「――一進」

「?」

 

 しかし、部屋を出ようとしかけたところで咲夜が声を掛ける。そして首だけ振り返った一進に対し言ってしまった。

 

「…お嬢様は渡さないわよ」

「……は?」

 

 胃袋を掴む。

 

 これは古来より、料理の味で相手から一目置かれる、また気にされるようになる事から意中の相手を落とす意味を指していて決して変な意味では無い。

 

 ……しかし。

 

「私だって長年続けてやっとお嬢様の好みが分かったのだから。それに、お嬢様が私の手で喜んでいる姿を見るのは私の楽しみでもあるの」

 

 料理の腕でレミリアが従者を代えるとも思わないが、もしもの事を考えてレミリアの一番として仕えているのは自分だというアピールをしてしまった…。

 

「……急にどうした…?」

「それだけ私はお嬢様を愛しているのよ。この想いは誰にも負けないわ」

 

 『料理』

 

 その一単語を付けなかったがゆえに酷く誤解を生む形で…。

 

「だから私は――」

 

「……………」パタンッ

 

 ……傍から聞いたらただの独占…はたまた良くない関係のように聞こえる…。

 

 無論一進は後者に思い至ってしまい、顔を青くしながらも『俺は何も聞いてない…俺は何も聞いてない』…と、ソッと扉を閉めていたのは妥当な判断だったと窺える。

 

 

 

 

 

 

sideこいし

 

 

 

 

「……は〜スゴかったな〜」

 

 わたしの目には先程までの二人の光景が未だに焼きついていた。

 

 なんて言えばいいのか分かんないけど…こう…お進とメイドさんが…スタタタタッ!ガーッ!って一時間かそこらであんなに沢山の料理を作ったちゃうんだもん。

 

 メイドさんはああ言ってくれたけど…わたしが手伝ってた意味があるのか疑問だったし。

 

「それでいてこんなに美味しんだもんな〜……」

 

 こっそりいくつか拝借してきた鳥の串焼きを味わいつつも今の自分と二人の腕を比べて考え込む…。

 

「うむむ…まだまだわたしじゃ辿り着けない領域か…もっと頑張んないと」

 

 だけど落ち込む事なんてしない、寧ろそんな現実を突き付けられたらやる気が出るのがわたしだもん♪

 

 それに、わたしだってこの数日ただ遊んでいたわけじゃ無いよ。

 

 確かにフランちゃんやお進と遊んでる時間もあったけど…二人は魔法について勉強もしていたからね。だからちょくちょく時間を見つけては本を読んでたし、メイドさんに頼んで色々作ったりもしたよ。

 

 地底でお姉ちゃんやお燐が料理してたの知ってたけど、その時なんて簡単に見えてたし出来て当然とも思ってたんだ。

 

 …だけど……自分が料理に詳しくなればなるほど難しいということが分かってくる。

 

「少しは地底でもやってれば良かったかなって……ん?お進どうしたの?」

 

 わたしが出てから少し遅れて一進も出てきたんだけど…なんだか若干顔色が悪いような……。

 

「…こいしちゃん…悪い事言わないから咲夜と二人きりにはならないでね」

「え?」

 

 メイドさんと二人きりにならないで?何でそんな事聞くんだろ?

 

 …んん〜二人きり二人きり………ああ!もしかして料理の事を言ってんのかな?そっかそっか、メイドさんから私が料理を教わりに来てたのさっき聞いたわけか。

 

「…こいしちゃん?」

「ん~…」

 

 それでえ〜と…ここ最近メイドさんと料理したのなんて細かく覚えてないなぁ。

 

「ふふっ、もう何回もやってるよ♪」

「………………」

 

 うんうん。わたしも図書館にいる時もあるから毎食毎食やってる訳じゃないけど少なくは無いかな?

 

 それにわたしはお進が魔法の事で上手くいってないのに諦めないで頑張ってるんのは知ってるんだよ♪だったらわたしだって簡単に諦めたりはしないんだから。

 

「……お、お願いだから!お願いだから思い留まって!まだこいしちゃんには早い世界だからきっと!!」

 

 早い世界って……は〜お進は心配症なんだから。いくらわたしが子供みたいでも流石に火や刃物の危険性は分かってるよ〜。

 

「まったくも〜、わたしだってちゃんと勉強してるんだよ♪」

 

 それに最近じゃ味だけじゃなくて含まれてる栄養のバランスっていうのも考えてたりもしてるし。

 

「日に日に上達してるのが自分でも分かるし、メイドさんも優しくしてくれるんだよ。それに…わたし自身最後までやってみたいの♪」

 

 初めは野菜一つ切るのにすごい緊張してたな~。でも、メイドさんは食材や用途に合った切り方を丁寧に教えてくれるし…それにもう少し上手くなったら他の人にも食べさせてみましょうって言われたんだよ♪

 

「……ヤッベェ…汚れたこいしちゃんなんて…さとりちゃんになんて言えば……」

 

 ん?汚れた…って、まぁ…生きてる動物もそのうち捌いたりするんだろうけどさ。もしかしてお進はそんな事気にしてるのかな?

 

 それは大丈夫だよ〜地霊殿にはペットじゃなくてちゃんと飼育してる動物もいるんだもん。

 

 きっとお姉ちゃんだって解体した事あるだろうから、お姉ちゃんに知られてもマズイ事にはならないって〜。

 

「大丈夫だよお進!」

「本当に大丈夫なんだよな?」

 

 あれ?…なんかいつもよりお進が疲れてるみたい。っていうかわたしに何か縋るような目で見てくるんだけどどうしたんだろ?

 

 …まぁ、わたしが動物を屠殺するのをお姉ちゃんが文句言う事は無いと思うから取り敢えず早く安心させてあげよう。

 

 

「……お姉ちゃんもだから♪」

「イヤァァァ!!!!」

 

 ありゃ行っちゃった…。

 

 ……う〜ん、疲れてると思ったんだけど…元気そうだったからいっか。

 

 

「……ビックリした〜。ねぇこいしちゃん、お兄様がすっごい勢いで走ってたけどどうしたの?」

「さぁ?なんかあったんじゃないかな?――それよりもハイッフランちゃん!」

 

 お進が急いでどこに行ったかも気になるけど…ちょうどフランちゃんが来てくれて良かった良かった。欲張ったつもりは無いんだけど…宴会中に他のが食べれなくなるのは悲しいからね。

 

「――わぁ美味しい!!え!?まさかコレってこいしちゃんが作ったの!?」

「ん〜ん、お進が作ったやつ。わたしもこんな美味しいの作ってみたいんだけどね〜」

 

 笑顔で串を頬張るフランちゃんを見てわたしは改めてお進の凄さを実感する。

 

 だって料理一口だけで人を笑顔に出来るんだもん。本当にスゴイよね!

 

 よーし!楽しみにしててねお進♪いっぱいいっぱい練習して、いつかお進を驚かせるほど美味しい料理を作ってあげるから♪

 

 

 

 

 

 

 

~大図書館~

 

 

 

 

 

「どうしよう…こいしちゃんがどんどんイケナイ道に進んでる……」

 

「は、はぁ?……何があったのかは分かりませんが取り敢えず一服します?紅茶でよろしければすぐに淹れますけど」

 

「…悪いけど貰っていいか?俺としてはこあのタンコブが気になるけど…多分案の定だろ?」

 

「はい。案の定です。…………それでどうしたんですか?」

 

「……聞いてくれるのか?」

 

「それは聞かせてもらいますよ。…というより聞くも何も一進さんが誰かに聞かせたいからわざわざ来たんじゃないんですか?」

 

「ああ、ありがとう…。俺の中でも収拾がついて無いんだけど……初めはパチェさんに持ち掛けようとしたんだけどさ、レミリアと話してたからな……」

 

「はぁ、パチュリー様は良くてレミリア様はダメなんですか?それにこいしさんがイケナイ道…というのは」

 

「………………」

 

「……一進さん?」

 

「…絶対に他言無用だからな」

 

「え、はい。分かってます」

 

「…………」

 

「…………」ゴクッ

 

 

………………。

 

 

「……レミリアと咲夜が主従を越えた関係かもしれない」

 

「うえぇ!!?何言ってるんですか!」

 

「……レミリアは自分のものだって…長年掛けてレミリアの好みが分かるようになったって…」

 

「ちょっと、本当ですかそれっ!?」

 

(とど)めに自分の手で悦ばせるのが楽しいって言ってたんだぜ…ハハッ…嘘ならどれほど良かった事か…。それにこいしちゃんも咲夜の毒牙にかけられててさ…」

 

「うわっ……そ、それは悲惨な…それで因みにこいしさんはなんて…?」

 

「……日に日に上達してるのが自分でも分かるって…咲夜が優しくシてくれるって…」

 

「ちょっと待って下さい私も脳内処理が追いついてないんですが!」

 

「最後までヤってみたいって言われて俺はなんて答えればいいんだよ!!」

 

「ちょっと待って下さいって!!一進さん一回、一回落ち着きましょう!!はい深呼吸して下さい!吸って~吐いて~吸って~吐いて~…」

 

「さとりちゃんも汚れきってるみたいだし…もう、これからどうしたらいいんだろ……」グスッ

 

「いやいやいや泣かないで下さいよッ!?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですよ~。一進さんが料理のしすぎで疲れていただけですって!きっと幻聴か何かですよ」

 

「そう…そうだよな、つーかそういう事にしとこう…じゃなきゃ身が持たんしこれからあのメンバーを見る目が変わりそう。……サンキュな…なんかぶちまけたら楽になったよ」

 

「はいはい何なりと〜私なんかで良ければいつでも話を聞きますよ」

 

「…………」

 

「どうしたんです?」

 

「いや……こあが頼りになるってのも珍しいなって…悪魔ってどことなく悪いイメージあるけどみんなそんなもんなのか?」

 

「あ〜それはどうでしょうかね〜。性格は種族によると思いますけど〜基本的に悪魔は契約内容は絶対厳守ですよ」

 

「ふーん成る程な、契約に抵触しなければ狡猾で残忍な奴もいるってわけか…因みにこあは何の悪魔?」

 

「私の種族ですか?え〜取り敢えずサキュバスですよ」

 

「…………え?」

 

「サキュバスです」

 

「…………」

 

「えへへ…実は私先ほどの様な話が好物なもので、若干興奮気味なんですよ~」

 

「さて、どうやらいつの間にか俺は夢を見てたんだな。それなら今までの惨状も納得出来――」

 

「夢の中なら私の独擅場になりますよ?」

 

「人の現実逃避を追い打ちすんのヤメロォ!!――藍さーん!!早く来てぇー!」

 

 




扱い不遇メンバーの出演の為に言葉足らずだとそうなるやんねって回です。


それではまた次回。
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