受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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幻想郷編はもうちょい後なのじゃ。駆け足分を紫視点でお送りします。


それではどうぞ。


第4話 紫さんの受難 前

~外界~

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。やっと会えましたわね」

 

 …………。

 

 

 

「…もし、少しよろしいかしら?」

 

 …………。

 

 

 

「あなたに用件があります」

 

 …………。

 

 

 

「ちょっと、聞いているのかしら……?」

 

 …………。

 

 

「…………」

 

 

 前を行く男は一切の反応を示さない。目すらも合わずただただ何にも気付かないかの如く平然と歩き去っていく。まるで手応えのない毎日にいよいよ賢者のメンタルもやられてくる。

 

「まーーーーた無視されたぁぁーー!!」

 

 もう!!次こそは話しを聞いて幻想郷に来てもらうわ!!と。

 

 夜の街で何度言ったか分からないそんな言葉を吐きながら、八雲紫は何故あの青年にココまで執着するようになっていたのかを少しだけ思い返していた。

 

 

 

 

 

 

『スキマ、一つ頼みごとがある。外からある男を連れて来てもらいたい』

 

 最初は紅い館の小さな吸血鬼の言葉から始まった。

 

 あの吸血鬼はプライドが高く、絶対他人に借り作らないと思っていたが…珍しい事に紫に頭を下げてきた為に内容が少々気になった。

 

『外界にな、自身の力に振り回されている奴がいるんだが…終ぞ私たちでは救えなかった。そいつを助けてやって欲しい』

 

 次に山の神、彼女は酒の席で不意にそんな事を言ってきた。何でも昔出会った人間の子供が類稀な力を持っていたらしいが、あまり繋がりを持てず自分の力じゃどうにもならなかったらしい。

 

『紫〜私殿方の友人が欲しいわ〜。妖夢にも良い刺激になるだろうし〜』

 

 最後は笑顔を浮かべた紫の親友であるマイペースな亡霊少女がそうねだってきて――。

 

「(なによ!男との付き合いが全く無い私への当てつけなのっ!)」

 

 少しぐらい怒りたくなっていた。

 

 私だって少〜しやる気出せばすぐに――。そんな言い訳をしつつも、しっかりと目的の青年について山の神から教えてもらったことを紫は思い出す。

 

『男の名前は藤代 一進、奴は自分の能力(気づいているか分からないが)の所為で周囲の人物から自分は嫌悪されていると思い込んでおり、少々意思疎通をする事が難しいだけのただの人間だ』

 

 それを聞いた紫は驚きを隠せない。

 

 それは幾文か前に吸血鬼の館でも同様の名前が出されていたのであった。

 

 『レミリアは連れてきて欲しい…神奈子は救って欲しい…ついでだから幽々子への紹介もその人でいいわね。レミリアは何でそんな男を幻想入りさせたいのかは全くもってよく分からないけれど私のスキマがあれば簡単よ。了承して貰ったら手早く攫って家でゆっくりしようかしら♪』

 

 なんて言っていた過去の自分を殴りたい衝動に駆られる。

 

「【()()()()()()()()()()】ってなによ!使われたら私ですら干渉出来なくなるなんておかしいでしょ!聞いてないわそんな能力!!」

 

 溜め込んでいた鬱憤を吐き出しても多少紫のモチベーションが回復するくらいで何の効果も得られない。そんなこんなで、いつまで経っても一進と意思疎通が図れずにいる所為で話が進展出来ないでいた。

 

「ねぇ藍〜助けて〜このままだと貴方の主人が幻想郷に帰れないわぁ〜〜」グスッ

 

 今日の成果も乏しく、スキマの中に入りいつも通りのの字のの字といじけて愚痴りだす。

 

 それはそうだ、幻想郷に帰る事が出来ず(大見栄を切った為連れて行かないと立場がない)、少し不安で泣きそうになりながら今日も今日とて簡易で滞在の場と化してしまったスキマの中で拗ねるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 藤代一進は特殊過ぎた上に非常に危険な存在であった。

 

 そう、それは(ひとえ)に自分の能力が制御出来ていないからだ。

 

 たとえ人から話しかけられても相手を拒絶し、まったく気がつかなかった様に無視をしたり、初めて出会った人から拒絶され悪態を吐かれたりする。

 

 その上自分の記憶を拒絶することでそのこと自体覚えていなかったりと、一進本人は自覚する事が出来ず実に不安定な状態になっていた。

 

 

 

 そして、八雲紫による藤代一進の幻想入り作戦は全く進展せずに時は流れ――。

 

 

――数日後。

 

 

「(フッ、フフッ、私がいくら話しかけても無視するなんていい度胸じゃない…無理やりスキマに落としてやろうかと思ったけど私にもプライドがあるわ!もうこうなったら意地でも私と会話してもらうんだから!)」

 

 夜の街で紫は軽く笑う。

 

 前を歩く一進をまるで敵を見るが如く目で見据えて、若干趣旨のズレたことを思い壊れ始めた紫がそこには居た。

 

 尚ここ数日の努力で紫は既に彼の生活を熟知しており、ストーカーも真っ青レベルで1日のスケジュール、時間、行動範囲を予測出来てしまっている。

 

「(挨拶から入ってもダメ。近くで叫ぶのもダメだったわ。それなら――)」

 

 コレしかないと思った紫は。

 

 「あなたは人に嫌われた」

 

 何時ものように話しかけるのではなく、少し趣向を変えて怒らせる様に話しかける事にしていた。

 

「(あなたの所為で私は大変な目に遭っているのよ!コレぐらいなら言っても許されるでしょ!!ていうかダメなら引っ叩いてやるわよ!)」

 

 …正直半分以上は本人のストレス発散が混じっているので理由としては最低だったが、既に数日間何の成果も挙げられていないから仕方ないと言えば仕方ないだろう。

 

「あなたは社会に嫌われた(はいはい、どうせ聞こえて無いんでしょ!だったらもっと言ってやろうかしら!)」

 

 だんだんと今までの恨みを思い出し、それを晴らす為に言葉をエスカレートさせようと考え始めた時――。

 

「あなたは―「いい加減にしてくれ!」」

「(!?!?!?……い、ぃやったぁぁぁぁ〜〜!!!)」

 

 祝!八雲紫。初めて一進と会話することが出来たのである。

 

「いきなり何なんだよあんたは!俺の何が分かるって言うんだ!」

「(あ゛ぁ゛(# ゚Д゚)何がいきなりよ!!ふっざけんじゃないわよあんた!無視され続けた私の心の方をわかってみせなさいよ!)…『いきなり』、ねぇ…まぁいいわ、私は貴方の忌み嫌われた能力を知るものですわ」

 

 そんなキれそうになる感情を必死に抑え、いつものように胡散臭い雰囲気を身に纏う。

 

「(落ち着け、落ち着くのよ私。ここで慌てるのは馬鹿がやること。折角のチャンスを逃すわけにはいかないわ)」

「なっ!?」

 

 一進が驚きの声を上げた為、思わず紫も笑みがこぼれる。

 

「(ふふっ、驚いてもらえて嬉しいわ。この調子で説明しちゃいましょう♪)」

 

 

 ………その笑みも一瞬で凍る事も知らずに。

 

 

「ねぇ」

「………………」

 

 

 ……………。

 

 …………。

 

 ………。

 

 

「………」

「………」

「(…あっ、あれっ?シカト?………えっ嘘!まさかまた能力が発動したっ!?)」

 

 一進は拒絶を司る…。それ故に意思疎通すらままならず強制的に相手を遮断する事もしばしばあった。

 

 その為、この沈黙の時間とは裏腹に紫の精神はゴリゴリと音を立てて削られていく。

 

「…ねぇ」

「……………………」

「(…いやいやいや勘弁してちょうだい!?もしかしたら認識している途中からでも能力行使されるの!?)」

 

 失敗続きで散々な目に遭っていた外界での生活。本日奇跡的に会話が出来たまたとないチャンスなのだ。だからこそこんな所で再びあの地獄の毎日を過ごすのは御免(こうむ)りたかった。

 

 

 ………………………。

 

 ………………………………。

 

 

「(やばいやばいやばいやばい、これ本当に能力が発動してたらもうわたs—「なぁ」よかったぁぁぁ~~~大丈夫だったぁぁ~~)」

 

 長い沈黙の末に一進から声を掛けられる事でまだ拒絶されてない事が分かり間一髪の所救われる。もう既に情緒の乱高下によって心臓バックバクで半泣きになりかけている紫は決して悪くない。

 

「……何かしら?(全く…脅かさないでほしいわ!)」

 

 不安と安堵と怒りがいっぺんに押し寄せたため表情の変化を悟られないよう扇子で口元を隠す。

 

「俺の能力とやらについて詳しく知りたい。あと、あんた本人についてもだ。何故その…俺の能力に影響されないんだ?」

「(毎っ回毎っ回しっかり完っ璧に影響受けてたわよバーカ!!あぁ〜もういいわ。少しだけ嘘を教えてあげましょう、これだと私の気が済まないもの…)」

 

 そして、紫はある仕返しを思いつく。

 

「えぇ、もちろん。私はその為に態々外界まで来ましたから。まず貴方の能力、それは【拒絶される程度の能力】ですわ」

 

 仕返しの為に虚しい嘘をつき、してやったりと再び笑みを浮かべて紫は言うのであった。

 

「いきなりこんなことを言われて戸惑うのも分かるわ、けれども安心してちょうだい、私は、いや、私の世界は貴方を受け入れます(能力名を聞いて絶望した後にこんな事言われれば誰だって縋りつくでしょう)」

 

 ストレスもあってのことか、もう完全に悪役思考状態の紫さんである。

 

「次は私について教えるわ」ビュオォォ!

「うおっ!?」

 

 そして突然の突風、

 

「(風?ええぃやかましい。数日掛けての折角のチャンスなんだからこのまま決行しても問題ないでしょ!)」 

 

「私は、八雲紫。妖怪の賢者であり幻想郷の管理者でもある」

 

 長い金髪が風に靡き鬱陶しく感じながらも…。

 

「そして、貴方を攫う者よ。ねぇ、藤代 一進」

 

 最後までカッコつけるのが紫クオリティであった…。

 

 

 

 

 

 

 …そうしてあれだけ騒いでいた風も既に止み、数瞬の静寂が二人を包んでいる。そして再び思考に入ったであろう一進に対し紫は…。

 

「(呆気にとられて驚くのは嬉しいけれども私から注意を逸らすのは頂けないわね〜。ふふっ、スキマで脅かしてやりましょう♪)」

 

 不意にそんな事を思いつき、抑制のタガが外れかかっている事でイタズラ程度の気持ちが高まる。

 

「ねぇ、何時まで自分の世界にいるつもり?目の前にこんな美少女がいるのだから私にもっと意識を向けるべきだと思うわ」

 

 スキマを自分の後方に開く。そこからは当然無数の瞳が一進を見据えるようギョロついている。

 

「興が乗らない様ですし折角話をしても心ここにあらず…。あまり私を無視するようでしたら………すぐに攫いますわよ(そうだわ。もういっそ泣きなさい。泣けば私の気持ちも少しは――「いや、美少女って言う年じゃ」」プチッ

 

 が、しかしノータイムで地雷を踏み抜いた一進の一言で若干平穏に戻っていた紫の怒りメーターが一瞬にして振り切れてしまった。

 

 

「……ぃなさい」

 

 プルプルと震えながらも「(このままではいけない)」と、もう一度自分の自制心を呼び起こす事で落ち着かせようと試みる。

 

……だがしかし、

 

「もう一度言ってみなさい!!!」

 

 この数日、我慢に我慢を重ねていた紫は自分を止めることなど出来るわけが無かった。顔を赤く染めて、久しく出していなかった大妖怪の殺気を流してしまう。

 

「えぇ、そうよ!どうせ私はB○Aよ!。若く見せようとしてもどうせBB○に見えるんでしょ!!」

 

 当然紫とて少女に分類しようと思えば出来るのだろう。ただ幻想郷基準で周りにいる者達と比べてしまっては胡散臭さ故に老獪と捉えられてしまっている為に一度吐き出してしまってはもう止めることは出来ない。

 

 紫は叫びながら一進に近寄りどうしてやろうかと考えるのであった。

 

「(こうなったら二度と生意気言えなくなるぐらい恐怖を植え付けてやろうかしら。いや、それとも私の素がばれてしまったからには幻想郷で私のイメージが崩れるのを阻止するためもういっそ貴方を消し「美人です」え?」

 

 途中から少し口に出してしまっていたがそんなことは気にならない、それ以上に何か大切なことを――。

 

「八雲さんは美人ですよ。それに少女と言うよりも淑女と言う方が正しいです」

それに、と続け。

 

「かわいい系ではなく、きれい系だと思いますし」

「…………。」

 

…………………。

 

……………。

 

………。

 

!?

 

「(えっ!嘘っ!今、私美人って言われた!!)」

 

 叫びそうになる気持ちを必死に押し殺す。確かに間違いなく紫は美人である。美人であるのだが普段周囲にいる者達も女性だらけな上に総じてレベルも高い…。

 

 つーかあの世界観でどうやって男女間の仲になれと言うのだ。つまるところ紫を代表に男性への耐性が全くないのも割と居るのである。

 

 そんな心ここに在らずの状態で一進の方を見ると、偶然彼と目が合ってしまい…。

 

 

「―――ッ///」シュン

 

 あまりの恥ずかしさに、開いてあるスキマに慌てて飛び込み急いでスキマを閉じる。

 

 

 

 

 ~スキマ内〜

 

 

 

「びっ、美人って、綺麗って。そんなの今まで一度も言われたことないのに。ふふっ、うふふふふ………」

 

 

 紫はスキマの中で誰にも見せられないほどのにやけ顏でさっきの出来事を思い出し、一人笑っているのであった。

 

「(普通なら人間は本能的に妖怪を嫌悪するのに……彼は人の身でありながらも私を、妖怪である私を恐れないで見てくれたっ!)」

 

 幻想郷設立に携わると人間と接する事もあるのだが、当然の様に人間からは恐れられ遜られて常に自分とは全く違う生物だと言う反応しか受けられなかった。

 

 

「藤代 一進……///」

 

 名前を口に出せば何処か心が暖かくなり、少しの間そんな心地よさに紫は浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~同時刻、幻想郷~ 

 

 

「紫様ー!!いつまで外の世界にいる気なんですかー!早く戻ってきて頂けないと結界が~」ヒーン

 

 こっちはこっちで半泣きになりながらも主人不在のため1人奔走している従者の姿がそこにはあったが誰も知らないことだろう。

 

 




ええ、はい。皆さん大好き紫さんは愛すべきポンコツキャラでいきます。


それではまた次回。
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