受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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前回何故一進が紅魔館に戻って来たのか…なので今回は38話の続きみたいなものです。


それではどうぞ。


第40話 糖分の補給

 

sideこいし

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 お進が里の人達に啖呵を切って数分後…そこかしこに里の人達が地面に転がっている状況が出来上がっていた。

 

「…もう……終わりか…?」

「そうなんじゃない?」

 

 向かってきた人は一通りお進が千切っては投げ千切っては投げて倒してくれたからこんな死屍累々の状況に――。

 

「スキあり!」

「…あ!」

 

 もう終わりだと思って油断していた一瞬のスキをついて、動けなくなっている男達に紛れていたらしい一人の男が不意をついて飛びかかってくる!

 

「ふは!ふはははは!!ついに僅かにだが触る事が出来たぞぉ!!」

「…クッソ!最後の最後で…」

 

 お進も反応したけど完全に避ける事は出来ず、男は抱えられてるわたしの服を撫でるのに成功する。

 

「我が生涯にィ一片の悔い無しィィ!!」

「死にさらせッ!!」ドゴスッ

「ぎにゃぁぁぁぁ!!」

「お〜飛んでったね〜」

 

 里の人が喜んでいたのも束の間…お進の蹴りで断末魔を上げてギャグの如く吹き飛んでいっちゃった。

 

「はぁ~あ…やっと片付いた……」

「はいお疲れ様♪」

「…………」

「え〜!そんな非難の目で見なくてもいいじゃん!」

 

 まぁでも、わたしがお進に抱きついたから周りの人達がヒートアップしたのは分かってるけどさ…。

 

「……もう何も言うまい」

「許してよ〜」

「はいはい」

 

 む〜、わたしをあやすようにするだけでちゃんととりあってくれない…。

 

「ま、想定より大勢で来たから焦ったけど…大きなケガもさせてないから大丈夫だろ」

「正当防衛だからいいんじゃない?人里のルールにも抵触してないし」

 

 途中から目的がお進からわたしに変わってたのが考えどころだけど……お進が守ってくれたからね♪

 

 ……それに嬉しいのが…今はお姫様だっこをして貰えてるし///

 

「ああ…そういや聞きたかったけどココのルールって妖怪が人間を襲えないんだろ?さっきは流したけど他には――」

「さぁ?わたしは詳しく知らないよ。気付かれないから気にする必要も無かったもん」

 

 お進が幻想郷に来る前だったら面白半分でフラフラしてた事もあったけど…これといって覚えてる事もないしなぁ。

 

「はいそんなルールなんて後回し!先ずはお進の服だよッ!」

「……あ〜覚えてたか…」

 

 と〜ぜん!折角お進が脱執事服になるんだから忘れたりはしないよ。

 

 

ガヤガヤ

 

 

「…ん?」

「おろ?」

 

 さっきまでは気付かなかったけど…話し声が聞こえたかと思えばお進が蹴散らした人達の更に周りに何人もの人だかりが出来てる…。

 

「騒ぎがあったから集まったのかな?」

「…そんな悠長な事だったらいいんだけど…」

「?」

 

 お進は慣れてないから懸念に思ってるけど~旧都ならこんなの日常茶飯事だし別に大した事じゃないよ。

 

「同じ人間同士…いくらケガさせてないっつってもやり過ぎたのかもな」

「…あ」

 

 そうだよ!ついいつも通りで考えちゃってたけどみんなは人間じゃん!

 

 ……妖怪と違って人間は集団意識、仲間意識が強いからもしかしたら不信感や敵対心まで煽っちゃったかも…。

 

 なんて後悔をしても今更遅くて、ゆっくりと来た里の人が口を開く。

 

「いや〜あんたが里の若い男どもをのしてくれて助かったよ」

「「は?(え?)」」

「ほんとほんと…これであいつらも少しは懲りてくれればいいんだけどよ〜」

「これから里を担う奴らだってのにいつまで経っても浮かれてるからなぁ」

 

 色々な人から矢継ぎ早に言われるけど…そのどれもが悪意なんてものは一つも含まれていなかった。

 

「…なぁこいし…どういうこと?」

 

 って言われてもわたしも分からないよ?

 

 わたし達の近くに来た数人の里の人達が言った事は懸念してたような事は全然無く、逆にお進は感謝までされていた。

 

「お嬢ちゃんもごめんなさいね。そこの(バカ)達は貴女みたいな可愛い子や綺麗な子に過剰に反応するのよ」

「え、いや…え?」

 

 どうしよう…お姉さんに謝られた方はぶっちゃけたところそれが分かっていたから悪戯心で煽ったんだけど…そもそもの感謝されてる事がわたし自身全くついて行けてないんだけど……。

 

「ホラッ!!テメェらも寝てないで謝りやがれ!」

「「「はいィィ!すいませんでしたぁ!!」」」

「……ったくよぉ…」

 

 すると近くに居た一人が怒鳴り声を上げたかと思えば、お進に倒された人達がいっせいに頭を下げて大急ぎで逃げて行く…。

 

「なぁ?さっきの奴らって何なんだ?俺自身正当防衛だとしても少なからず反感は買うと思ってたんだが…」

 

 感謝されてる理由がホントに分からないのかお進が思い切って里の人に聞いている。まぁわたしもわからないんだけど…。

 

「反感?そんなのありゃしません。寧ろ感謝したいぐらいです。なぁ?」

「おう!あいつらにゃあほとほと手ぇ焼かされてたからな…あんだけこっ酷くやられりゃ少しは改心すんだろ」

「アッハッハ!!ちがいねぇや!」

 

 どうやらさっきの人達がお進に倒されたのがよっぽど嬉しい事なのか話が全然進まない…。

 

 ん〜と。でも内容的にはさっきの若い人達の迷惑行為を矯正して貰ったって感じか。

 

「何だ何だ!一体何があっ――ってお前が騒ぎの原因か!?」

「おっす慧音」

 

 なんて所に騒ぎを聞きつけたのか、慧音までやって来て更に混乱は加速してく始末。

 

「どうするのお進?こんなに騒がしくなったらゆっくりなんてしてられないよ?」

「……確かにそれは困るな……んじゃ利用するか…」

 

 と言ってお進は徐ろにわたしを抱え直してキョロキョロと辺りを見回し出す…。

 

「利用?」

「利用。オーケー道は見えた…舌噛むからちょっと口閉じてて…」

 

 わたしはお進の意図がよく分からなかったから聞き返したんだけど……ん?舌を噛むって…まさかッ!?

 

「…フッ!」

「――ッ!?」

「「「うおッ!!!」」」

 

 里の人達のどよめきが遅れて聞こえてくる…。

 

 どうやらお進が周りを見てたのは、里の人が少ない道を探していたみたいで、あっさりとわたしを抱えたまま騒ぎの中心から一瞬で離脱していた。

 

「それじゃあ慧音ぇ!騒ぎの収拾は頼んだぞ!!」

「は?……はぁ!?」

 

 うわ〜かわいそうな慧音…。

 

 人混みの少ない所で振り返ったお進は晴れ晴れした笑みを浮かべ…慧音は面倒ごとを全部押し付けられていた……。

 

「え!?おい!私も寺子屋に戻らないと行けな――」

「里の若者ぶん殴ってやったわ!よろしゅ〜!」

「ぶん殴…早速問題行動を起こしてるじゃないかぁ!!ちょっと待てぇ!!」

「って言われて待つ奴はおらんだろ」

 

 そのまま足早に退散すると慧音の叫びが遥か後方で響いてるのだけが聞こえる…。

 

 う〜ん…少しは悪いなぁと思うんだけどゴメンね♪わたしもお進といられる時間が惜しいんだもん♪

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

「スッゲ…二人掛けだけど甘味処に床机(しょうぎ)って本当にあるんだ……」

「わたしは初めてこれの名前聞いたよ…」

 

 何でお進はそんな事知ってるんだろうね?あの後騒ぎの広場から少し離れた所まで来てようやく人里探索が再開されていた。

 

 因みにお進が言ってるのは店先で…え〜と、大きな傘の下にある長椅子の事だよ。

 

「ふ〜ん…甘味処があるのかぁ……」

 

 そんな訳で、人混みからそそくさと退散してきたお進とわたしはさほど人通りの少ない甘味処の前に来ていた。

 

「なぁ…ここって数種類の団子やぜんざいもあるんだってさ」

「…………入りたいの?」

 

 入りたいんだろうなぁ。…だってわたしの事をちらちらと見てるんだもん。

 

 そんな意思表示されたらお進の言おうとしてる事なんて誰だって分かるよ……。

 

「当然!!」

「……ハァ…入ってもいいけど目的()は忘れないでよ」

「分かってる分かってる。すいませーん!ここ座っていいですか〜!」

 

 全く…食べ物の事や珍しい物となるとお進はこれだもの…そうやって子供みたいに目を輝かせてさ。

 

「……先ほどの大立ち回りと比べてかなりギャップがあるな」

 

 そうそれ!お進は見た目が大人っぽいのにたまに中身が(ともな)って無い事があるんだよねぇ……。

 

 ……まぁそんなとこも好きなんだけど……って、ん?

 

「耳に尻尾?…犬の妖怪か?」

「天狗だ。そして犬ではなく白狼だからな。……座るか?」

 

 声を掛けてきてたのは、近くの床机に座ってた犬耳と尻尾を生やした白い印象を受ける妖怪だった。

 

「私は犬走椛。普段は山で警備をしているのだが…たまの休みにはこうやって里まで降りてきているんだ」

「山…あぁ妖怪の山か。俺は藤代一進…こっちは古明地こいし」

「よろしくね♪」

 

 と言ってお進は自分とわたしの紹介をして椛と名乗った妖怪の隣に座る…。

 

「〜♪」

 

 そして二人掛けだから必然的にわたしはお進の膝に乗せてもらえる。

 

 そろそろ抱っこされ続けるのもどうかと思ってた頃だし~今度は膝に乗せてもらえてるからこのお店に寄って正解だったよ!

 

「えへへ~♪」

「…相当好かれているようだな」

 

 うん!だってお進のこと大好きだもん♪

 

「そりゃあね。幻想郷での暮らしは暫く経ったけど…その中でも一番長く一緒にいるのがこいしだからさ」

 

 一番長く…ん〜そう言えばそうだよね〜。

 

 地底は当然として…紫に地上に連れてこられた後でも一緒に行動してるからね♪

 

「暫く?人里の人間には見えないから外来人なのは分かるが…最近幻想郷に来たんじゃないのか?」

「そうだなぁ…幻想郷(コッチ)に来てから一ヶ月は軽く過ぎてるぞ」

「え?二ヶ月は経ってない?」

「…マジ?」

 

 そうだよ。え〜と……確か地霊殿だけで一ヶ月くらい過ごした後紫の家で数日、最後に紅魔館でも一ヶ月は過ごしてる筈だし…。

 

「それだけ長く…それじゃ今まで何処に居たんだ?私の上司の天狗にネタ集めを生きがいにしている射命丸文というのがいるが…まだ会ってないだろう?」

 

 …射命丸文?…はてどこかで聞き覚えがある感じがするんだけど……あれれ、何だったっけ?

 

「天狗の上司とな…俺は会ってないし知らんぞ。…こいしは?」

「…ん〜聞いた覚えがあるよ〜な無いよ〜な」

「…どっちさ?」

 

 って言われてもさ~、お進が知らないって事はわたしだってお進が来る前にどこかで知ったかも~って話になるんだけど……。

 

「そうか…面白そうな物事に首を突っ込む習性だから格好の的だと思うのだが……。幻想郷各地に文々。新聞の名で情報紙を撒いているが知らないのか」

「ああ!!新聞の妖怪(ヒト)!!」

 

 そうだそうだ!あの新聞で名前を見たんだった!でもそれだったら聞いたんじゃなくて見覚えだから名前で言われても出ない訳だよ。

 

「……どっちみち俺は知らんけどな…」

「え、新聞だよ新聞?紅魔館にも届いてた筈だよ?」

「いや、『何で知らないの?』みたいに言われても外界だと紙ベースの新聞を読む習慣なんてそうそうないからな」

 

 へぇ~そうなんだ~、幻想郷だと天狗の趣味で出回ってたりするから読む側も娯楽程度で見てる人も多いんだけどな~。

 

「…だけど、そうだな……幻想郷の情報を知れるんだったら読んでみるのも――」

「やめた方がいいぞ」

 

 うん、わたしもそう思う…。お進の言うようにただ情報が欲しくて読むんだったら流石にあの新聞はオススメしないかな?

 

「何でだ?…そりゃまぁ個人でやってる新聞っぽいから内容の偏りがあったりするだろうけど……現在やこれからの情勢の話題が載ってる新聞なんて情報を得るにはもってこいの産物だろ」

「……確かに情報が載ってない事はないね…」

「じゃあいいんじゃねぇの?食い気味にまでして否定する事なくない?」

 

 うんうん…お進がそう言うのも分かるよ。……それでも内容なり何なり致命的に普通の新聞と違う所があるからなぁ…。

 

「どちらかと言えば確かな情報が載ってないんだがな…」

「確かな情報が……って、はぁ!?新聞として機能してねぇじゃねぇか!?」

「ホントだよね…。面白くするために捏造や脚色なんてざらだもん…」

 

 最悪情報どころか天狗の身内ネタだけが載ってる新聞もあるんだよ。仕事っていうより趣味みたいに捉えられてるから面白半分が正解かな?

 

「正しい記事を書く者も居るには居るが……内容が遥か過去の事すらあるからな」

「……それでいいのか天狗社会」

「そんな事を言うな……そんな天狗社会の末端に私はいるんだぞ」

 

 そう言った犬走椛は真っ直ぐ目を向けている筈なのにどこか虚ろな感じになって、お団子食べてた時と違って心なしか耳が倒れてるのが尚更哀愁が漂って見える…。

 

「…ここの支払いは俺が持つよ」

「…すまん。ありがとう……」

 

 ……なんか…出会っていきなりここまでかわいそうに思えたのもわたしの記憶の中じゃなかなかに無かったと思う…。

 

「元気出して!」

「…ああ」

 

 

 

 

 




椛登場!最後の最後まで人里で出すのを悩みましたが取り敢えず出てもらうことにします。

取り敢えずモチベ次第で週一投稿に落ち着きそうですね。


それではまた次回。
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