受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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今後の話をどういう流れで進ませるかの大体の道筋は考えましたが捻じ曲がる気しかしません。


それではどうぞ。




episode4〜巡る廻る幻想の地
第44話 晴天の霹靂


side紫

 

 

 

 暖かで、陽気ともいえる昼過ぎの時間帯。

 

 いつもであればそんな心地よい空気がうたた寝を…いや、微睡みを後押ししてくれるから抗いもせずに興じているのだけれど……今はそんな気分には今一つ浸れない。

 

「…………」

 

 ……小鳥が囀ってるし、空は十分に晴れているけど…そんな情景に相反するように私の心は一向に晴れやかでは無かった。

 

「ハァ…」カツンッ

 

 足を投げるように縁側に座り、一つ…また一つと…私は小石を外にある塀に向かって投げる。

 

「…………」カツンッカツンッ

 

 無心で塀にぶつけては、手元に小石が無くなるとスキマを使って手頃な場所から回収してはまた同じように投げ続ける。

 

 ………………。

 

「(ら、藍様!…なにやら紫様が怒っていらっしゃるのですが私何かしてしまいましたでしょうか!?)」

「(橙は何も悪い事をして無いから心配しなくて大丈夫だよ。…だけど少しの間向こうの部屋に行っててくれるか?)」

「(…は…はい…)」トトトトッ

 

 廊下の奥で様子を見ていた橙と藍がそんなやりとりをしているのが聞こえてくる。

 

 …ふ〜、ダメね。少し落ち着きましょうか。

 

 藍はともかくとしてまさか橙にも影響を与えているのは流石にね…。橙を怯えさせるのは心に刺さるわ。

 

「……ハァ」

「紫様……」

 

 ため息を吐く私の隣に座った藍が至極真面目な顔をしてなんとも物言いたげそうに私を見てくる。

 

「…悪かったわね」

 

 まぁ、私が空気を悪くしているのも事実だし、藍が言いたい事は大体分かっているから先んじて謝るのだけど…。

 

「不本意だったとはいえ自分でやった事なんですからね、早々に諦めてそろそろ機嫌を直してくださいよ」

「…………」

「それに今日は橙も来ているので変に悪影響を与えるのはやめてもらいたいのですが」

「藍」

 

 普通に名を呼んだのだけど…あまりにも冷め切った声が私からは発せられていた。

 

「…ッ!」

 

 …どうやら藍は驚いているようだけど…何を隠そうそれ以上に口に出した私自身もこんな声が出た事に驚いたわ…。

 

「……どう…しました?」

 

 そんな私の意図せず発せられた言動から察してしまったのだろう…酷く(かしこ)まってしまった藍の方を見やると、予想通り表情が硬くなっていた。

 

「藍……貴女には私のこの気持ちが理解できるとでも言うの?」

「……」ゴクッ

 

 別に藍が私の心配よりも橙の事を優先したから怒っている訳では無いし、それに私だって橙に悪影響を与えたいって訳でも無いわ。

 

 ていうか私の怒りの論点がかなり別の位置にあるし今更そんな事で怒りゃしないわよ。

 

「…軽々しく諦めろなんて言われたって!そんな簡単に諦める事なんて出来る訳無いじゃない!!」

「……はい?」

 

 何突然喚きだしているのかと呆気に取られようとそんなの構わないわ!私が怒りを隠せないのはこっちの方よ。

 

「貴女はちゃんと食べたんでしょうけど宴会の時私は一切料理に口付けてなかったのよッ!!」

「………あぁ…そう」

 

 ええい!その眼は何なのよッ!

 

 『……いや、逆に何で食べてないの?』ってなるのは勿論分かってるわ、私だってそれが大半の意見だと思うしね。

 

 けれど実際あの場所に居たらああするのは仕方ないじゃない!!

 

「…ハァ…いくら一進に『食べるな』なんて言われたからってそれに正直に従うからですよ…私はてっきり召し上がらなくてもいいものだと…」

「そんなわけないじゃないッ!だけどああまで言われたら普通意地でも食べてやらないわって気持ちになるわよ絶対ッ!!」

 

 それにバカバカしいと思われるかもしれないけど…それほど一進の料理が美味しいんだし食べるのだって期待していたって証拠よ!

 

 ……まぁ結果的に自分の意地の所為で後悔してるんだけど…。

 

「どうせ彼自身も本気で言って無かったと思いますよ」

「それは私だってそう思うわ……って言おうとしたけど言い切れないのが心なしか怖いわね…」

「……すみません。言ってて思いましたが一進なら本気で言ってる可能性も否めませんね」

 

 いや、だってほら…一進ったら何かと私に厳しいじゃない?

 

 ……こいしに甘やかせてるシーンは数あれど私なんて全カットされてるし…。

 

「まぁ、でしたらその意地を通したのでしたらそれはそれでよろしいのでは?」

「よろしく無いからこうやってやさぐれてるんじゃない!!」

「……何がしたかったのですか…」

 

 そんな呆れた顔されてもあの時は気の迷いでそれを決行しちゃったのよ!

 

「大体いつもならそんな事気にも留めませんのに…何を律儀に守ってるんですか?」

「うっ、そ…それは…そうだけど……」

 

 藍に痛いところを突かれて若干しどろもどろになりながらも何か良い案はないものかと模索する…。

 

「まぁ、それなら今度家に呼んで作って貰えば良いのでは?」

「え……?」

 

 家に……家に一進を……!

 

「ふふ…ふふふふ……そうよね!一進に作って貰えばいいのよね!」

 

 彼自身が食べるなって言ったんだから冗談でもその責任を取ってもらうのは通りでしょうし。これでまた一進をうちに呼べるし良い事づくめじゃない♪

 

「さて、そうと決まれば通信札通信札…」

「…そういえばそんな札渡してましたね…」

「そうよ、一進が紅魔館に向かう時にちょっとね……だけど一進ったら全く使ってくれないのよ」

 

 困った事があったらいつでも呼んでくれれば良かったのに…『なんか携帯持たされた子供みたいで恥ずかった…』とか言って一切連絡してこなかったのよ!

 

「ま、そんな事今更言っても仕方のない事よ。…いっし〜ん聞こえてるかしら〜!」

 

 さ〜てさて〜今度は一体何を作ってもらおうかしら〜♪

 

 

『…………』

 

 

 ………………。

 

 

「…………」

「…………」

 

 …………。

 

 

「――あれ?」

「全く返答してきませんね…」

 

 えっ!どういう事かしら?うんともすんとも呼びかけに反応してくれないのだけれど……。

 

 仮にも従者の儀をしてるからあの札が機能して無い事は無い筈だし…ハッ!?も、もしかしたら私一進にシカトされてる!?

 

「返事が無い理由はなんとなく予想してますけど…どうしたんですかね?」

「思っても言わないでちょうだい!というか予想したなら心の中に留めておいてよ!」

 

 藍もどうやら私と同じ見解をしたらしいけど…私はそんなの信じないわ!おそらく一進が重要な事をやってたりして出る暇が無いか出れる状態じゃ無いってだけよ。

 

 

 …………。

 

「…いや、まさか…ね?」

 

 私は自分で思った事に、嫌な予感と共に新たな可能性が導き出してしまった。

 

「何がですか?」

 

 そんな小さな呟きを聞き取ったのか…首をかしげる藍に取り敢えず行き着いてしまった嫌な可能性を振り払う為に一進に渡した札でも説明しようかしら。

 

「この札の効果は基本的には電話と一緒よ。一進が出る気が無い…もしくはそもそもで札を持ち歩いていなければ一進が出ないこの状況も分かるんだけど」

「…向こうがそれを狙ってやってるとしたら既に札を渡した意味が無いのでは」

「そうね…流石に私もそこまでは考えたく無いから普通に一進が出掛ける時にでも忘れた事を祈るのみよ」

 

 なんて言いながらそれでも可能性の一つとして捨て切れなかった。その為、自分の予想が外れている事を切に願いながら札に力を送る……。

 

「藍ッ!!」

 

 そこで私は気付いてしまった。

 

 一進からの反応がない事と…それに加え一進に渡している札自体の反応が完全に感じられない事に。

 

「だから一体どうしたんですかいきなり叫び出して―「全力で一進を探しなさいッ!!」…は?」

「藍は感じ取れないから楽観してるのも分かるけど…お願いだから今だけは何も言わないで命令に従って!」

 

 そして時間の無さから私は藍に有無を言わせないようにまでして急いでスキマを開いて身を落とす…と同時に幻想郷各地に小さなスキマをいくつも作り出し急いで一進の姿を探す…。

 

 頬を伝う冷たい汗がいやに煩わしくも感じながらスキマの先に目を走らせる。

 

 

 ……しかし、

 

「何処に居るのよッ…!」ギリッ

 

 いくら探そうとも見つけられない…。

 

 更に自分に負荷を掛けて捜索範囲を増やすも……騒ぎになっている所は一向に見つからない。遂には天界と地底にもスキマを開こうとした所で私は落ち着きを取り戻す。

 

「……って事は何も問題は無いのかしらね」

 

 ……私の中では既に一進の身に何かがあると確信して動こうとしていたけど…だけどこの通りスキマにはいつも通りの幻想郷の光景が映って――無いッ!!

 

 数多く細かい場所を探せるように広げていたスキマを一度閉じ、何気なく今度は全体を見ようと上空にスキマを開いたらアッサリと異変が起きている場所を見つけてしまった…。

 

「魔法の森が……一体何が起きたっていうのよ!!」

 

 幻想郷でもかなりの面積を誇る魔法の森。

 

 それが現在スキマから見えている光景では、十数メートル程の範囲だが…確かにその一部分だけは更地となって周囲は荒れ果てていた。

 

 だったらもしかして一進はアレに巻き込まれて…。

 

「……一進お願いよ…この際反応が無かったのは私をシカトしてたって事でいいから……どうか…どうか無事でいてッ!」

 

 

 

 

 

 

 

side大妖精

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 ……苦しい…。

 

 妖精だから知れた速さでしか飛べないけど…私はそれでも一生懸命に目的地を目指して飛んで行く。

 

「も、もう少しで紅魔館に着くから…急いで美鈴さんを…!?」バッ

 

フシュルルル……

 

 妖怪!?マズいマズいマズいマズい!!

 

 咄嗟(とっさ)に隠れたから見つかってはいないけど…時間が無い私はこのままあの妖怪が通り過ぎるのを待ってる訳にもいかない!

 

 …だけど私なんかじゃ見つかったらひとたまりもないし逃げ切れる自信もないし……。どうしよう…やっぱり私が待っててチルノちゃんに美鈴さんを連れて来てもらえれば……。

 

『え〜と、ちょっとした判断ミスがあったからこんな事になっちゃったけど、大丈夫だよ……絶対に守ってあげるから』

 

 ッ!!

 

 …そうだよ!あの時はチルノちゃんの暴走だったとはいえ私だってあの人に助けて貰ったんだから!

 

 今もあの人は苦しんでる。だから!だから今こそ頑張らないと!!

 

「(えいッ!!!)」

 

 向こうは見た限りだと動物型の下級の妖怪、それなら空を飛ぶ事が出来ない筈だから追い付かれる前に木の上まで出れば――。

 

ファシー!

キシュッ!キシュッ!

 

 ……え、声が二つ聞こえ……あ。

 

カロカロカロカロ!!

 

 僅かに振り返って確認すると…先ほどの動物型の妖怪の近く…草木が壁になるように虫型の妖怪が…生気の無い冷たい目で私を見ていた。

 

 そして当然羽を持つ妖怪なら実力に関係なく飛ぶぐらいの事は出来る…。そこで私はここでこの妖怪に殺される未来を理解してしまった…。

 

カカカカッ!

 

 飛び掛かってきた妖怪がとても遅く見えているが……それ以上に私の身体は遅くしか動かず思考だけが淡々と頭の中を駆け巡る。

 

 …あまりの事に涙が出てくる…。やっぱり妖精は妖精…力の無い者がどれだけ頑張っても所詮は弱い存在…。

 

 別に自分が殺されてしまうのが怖くない…とは言わないが、流れた涙の理由は死ぬ恐怖では無く、あまりにも自分が情けなかったからだと思う。

 

「たとえ私がどうなっても時間が経てば再生します……だけどごめんなさい、私は…あなたの助けを呼べそうにありま――」

「冷静じゃない紫様の様子から考えると所構わず無作為に探しているだろう。それなら私は目星の付いてる所から――邪魔だ」

 

カヒョ………

 

「わッ!!?」

 

 …………いきなり目の前で起きた出来事に思わず目を疑ってしまう。雑に払われる手…それだけで私に襲いかかってきた妖怪を死滅させていた。

 

「門に出ようとしたが近くの森…か。やはりスキマが使えるようになると言っても紫様のようにはいかないか…」

 

 妖獣最強と(うた)われる九尾…八雲藍さん。妖怪に襲われ死を覚悟した最中(さなか)、突如空間を割いて現れて私は救われていた。

 

「あ…あぁ…」

「…?」

 

 そこでようやく私に気付いた藍さんを見て、私はさっきまでの考えを捨てる。美鈴さんの下に行くまでの時間を省く為藍さんに助けて貰おうと必死になる。

 

「まぁ、妖精に聞いても確かな情報は―「お願いしますッ!!」…悪いが急ぎの用がある」

 

 にべもない態度で踵を返す藍さんの衣服を思わず掴んでしまう。

 

 多少力を持とうとそこらの妖精と変わらない私…。そんな立場で突然失礼な事をしている自覚はあるけど…それでも私は藍さんに縋り付いて懇願(こんがん)するしかなかった。

 

「助けてくださいッ…」

「…氷精と一緒にいる妖精だろう。離せ、今一度言うが私は急いでるんだ」

 

 ……ッ!?

 

 強引に振り払おうとはされないものの、一段と落とされた声には先ほどの妖怪とは比べようにも比べきれないぐらいに怖い……。

 

 だけど!!私はこの手を離す訳にはいかない!

 

「名前も知らない人ですが!…それでも私に優しくしてくれた男の人が今にも死にそうになっているんです!だから…だから!…ふえ!?」

「そいつは今何処に居るッ!!スキマで…いや、妖精の足で来れるなら飛んだ方が速いか…」

 

 …え?

 

「早く言え!そいつは何処に居るッ!!」

「……こ、ここから人里に行く途中です!」

 

 何を思ったのか…血相を変えた藍さんに私は担がれて今まで飛んできた道を最高速で流れるように戻る…。

 

 何故藍さんが急に話を聞いてくれたかは分からないけど……待っててください!このスピードならすぐにでも!

 

 

「クッ、まさか私の予想が外れて紫様の危惧した事になろうとはな…」

「…はぃ?」

「しゃべるな、更に加速させるぞ」

 

 

 

 

 




絶対的に時間が足りねぇ!!
感謝回は書きたいしそれなのに古代スタートの別の話を書きたいな~とか考えてる自分が怖いです。


それではまた次回。


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